※本記事は、モリ工業株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. モリ工業ってどんな会社?
ステンレス管や条鋼、鋼管およびその加工品を主軸とし、パイプ加工機械なども手掛ける製造メーカーです。
■(1) 会社概要
昭和4年に森製作所として創業し、昭和24年に日本輪業を設立しました。昭和36年に現社名へ変更し、昭和58年には東証・大証一部へ上場しました。平成24年にインドネシア現地法人を設立し海外展開を進めています。令和4年の市場区分見直しにより、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
連結従業員数は680名、単体では512名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には創業家の森明信氏が名を連ねています。第2位の光通信は純投資目的等で保有していると見られる事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.25% |
| 光通信 | 7.08% |
| 森 明信 | 5.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は森宏明氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森 宏明 | 代表取締役社長執行役員 | モリ金属社長、専務取締役などを経て、平成12年より社長。令和2年より現職。 |
| 浅野 弘明 | 取締役専務執行役員営業部門担当 | 東京支店ステンレス部長、ニットク社長などを歴任。令和5年より現職。 |
| 中西 正人 | 取締役常務執行役員管理部門担当 | 財務部長、人事部長、総務部長などを歴任。令和2年より現職。 |
| 元山 耕一 | 取締役常務執行役員技術・製造部門担当 | 茨城工場長、第一製造部長などを歴任。令和3年より現職。 |
| 奥村 輝一 | 取締役(常勤監査等委員) | 人事部長、総務部長、企画室長を歴任。令和6年より現職。 |
社外取締役は、林修一(公認会計士・税理士)、岩崎泰史(公認会計士・税理士)、齋藤友紀(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」および「インドネシア」事業を展開しています。
■(1) 日本
ステンレス管、ステンレス条鋼、鋼管およびその加工品・関連製品のほか、パイプ切断機等の機械の製造販売を行っています。自動車や配管、建材など幅広い産業向けに製品を提供しています。
製品の販売により顧客から対価を得ています。運営は主にモリ工業が行うほか、一部製品の加工を子会社のモリ金属、関東モリ工業が担当しています。
■(2) インドネシア
現地市場において、主にステンレス管の製造から販売までを行っています。自動車および二輪車業界向けの製品供給などが中心です。
製品の販売により顧客から対価を得ています。運営は連結子会社であるPT. MORY INDUSTRIES INDONESIAが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2023年3月期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、直近2期は減少に転じています。利益面では、2023年3月期をピークに営業利益、経常利益ともに減少傾向にあります。利益率は依然として高い水準を維持しているものの、収益性の低下が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 351億円 | 431億円 | 487億円 | 479億円 | 461億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 61億円 | 72億円 | 64億円 | 57億円 |
| 利益率(%) | 9.8% | 14.3% | 14.7% | 13.3% | 12.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 | 43億円 | 50億円 | 45億円 | 42億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しました。売上原価も減少しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方、営業利益は減少しており、利益率も低下しました。販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫している要因の一つとなっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 479億円 | 461億円 |
| 売上総利益 | 114億円 | 113億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.8% | 24.5% |
| 営業利益 | 59億円 | 54億円 |
| 営業利益率(%) | 12.3% | 11.7% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造・運送費が25億円(構成比42%)、給料諸手当が9億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは、ステンレス管や条鋼の販売数量減少や価格下落により減収となりました。インドネシアセグメントも、主要顧客の内製化や市場低迷により減収減益となりました。全体として、両セグメントともに厳しい事業環境にあったことがうかがえます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 455億円 | 440億円 | 57億円 | 53億円 | 12.1% |
| インドネシア | 24億円 | 21億円 | 2億円 | 0.6億円 | 2.7% |
| 調整額 | - | - | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 479億円 | 461億円 | 59億円 | 54億円 | 11.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.5%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る水準です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 66億円 | 41億円 |
| 投資CF | -10億円 | -38億円 |
| 財務CF | -16億円 | -26億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
独創的なアイデアに基づく製品開発、経済的な生産、適正価格での販売を通じて社会貢献と社業発展を目指しています。信用第一とし、堅実経営に徹しつつも進取的な姿勢で新分野へ挑戦することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
「ステンレスで創るきらきらの未来」をテーマに、変化をリスクではなく成長の契機と捉える柔軟かつ前向きな姿勢を重視しています。信用と堅実さを重んじながらも、常に新しい分野へのチャレンジを行う風土があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「MORY-PLAN26」を策定し、資本コストや株価を意識した経営の実現を目指しています。
* 令和9年3月期目標:売上高515億円
* 令和9年3月期目標:営業利益59億円
* 目標とする経営指標:ROE5年平均8%以上の維持
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、ステンレス管の収益力強化、生産設備のリニューアル、インドネシア市場での競争力確保に取り組んでいます。また、環境規制対応などの新規事業領域への進出や、高度人材の育成、DX経営の加速を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員の幸福を経営の基本目的に置き、働きがいのある職場作りを推進しています。ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、女性活躍や高齢者・障がい者の雇用促進に注力するとともに、人材育成や柔軟な組織体制の確立に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.7歳 | 17.0年 | 6,039,072円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含めております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 2.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 77.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 83.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 82.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 76.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 材料の調達リスク
主力製品であるステンレスパイプ・条鋼の材料は、海外メーカーの占有率が高くなっています。特定メーカーに不慮の事故等が発生した場合、供給が滞る可能性があります。同グループでは、可能な限り多くの供給元との取引を継続し、供給不足の回避に努めています。
■(2) ユーザーがステンレスから別の素材へ変更するリスク
技術革新により、ステンレスの性能・価格を上回る新素材が開発されたり、ステンレスパイプを必要としない新製品が開発されたりする可能性があります。同グループでは情報収集に努め、市場の変化に対応できる体制を整える方針です。
■(3) 材料価格の変動リスク
主力製品の素材であるステンレスにはニッケルが含まれており、その価格は需給や投機的要素、為替の影響を受け変動します。これらの要因はコントロールできないため、材料価格上昇時には取引先への説明を通じて製品価格への転嫁を進めています。



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