CKサンエツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

CKサンエツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

CKサンエツは東証プライム市場に上場し、伸銅品や配管機器の製造などを展開する純粋持株会社です。三谷伸銅の連結子会社化や主要原材料の銅相場高騰により、売上高は前年比19.4%増の1494億円と大幅な増収を達成しました。一方、デリバティブ損失の計上等により経常利益は56億円となり減益で着地しています。


※本記事は、株式会社CKサンエツの有価証券報告書(第2026年3月期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. CKサンエツってどんな会社?


同社は伸銅事業や配管・鍍金事業を中心に展開し、純粋持株会社としてグループ経営を統括しています。

(1) 会社概要


1937年に阪根伸銅として設立され、1984年にサンエツ金属へ商号を変更しました。2011年に純粋持株会社体制へ移行してCKサンエツに商号を変更し、東京証券取引所市場第一部へ上場しました。近年は日本伸銅や三谷伸銅を連結子会社化するなど、積極的なM&Aにより伸銅事業の基盤を拡大しています。

現在の従業員数はグループ全体で連結1015名となっています。なお、同社は純粋持株会社であり単体の従業員は0名です。筆頭株主は取引先で構成されるCKサンエツ取引先持株会で、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
CKサンエツ取引先持株会 11.12%
日本カストディ銀行(信託口) 7.67%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は釣谷宏行氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
釣谷宏行 取締役社長(代表取締役) 1982年に北陸銀行へ入行し、1986年にシーケー金属へ入社。1997年に同社社長に就任し、2000年より現職。現在はサンエツ金属や日本伸銅などのグループ会社トップも兼任。
釣谷伸行 専務取締役営業管掌 1983年に日産自動車へ入社。2001年に同社取締役へ就任し、2007年に専務取締役営業本部長を経て、2011年より現職。サンエツ金属やシーケー金属の専務取締役も兼任。
松井大輔 取締役管理統括部長 1997年に北陸銀行へ入行し、2005年に同社へ入社。2011年に取締役管理本部長へ就任し、2013年より現職。サンエツ金属の取締役管理統括部長も務める。
森千恵美 取締役(常勤監査等委員) 2012年にサンエツ金属へ入社。2024年4月に同社秘書室長に就任し、同年6月より現職。


社外取締役は、桝田和彦(元住友軽金属工業社長)、山田政雄(元DOWAホールディングス社長)、浜田亘(公認会計士・元有限責任あずさ監査法人富山オフィス責任者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「伸銅」「精密部品」「配管・鍍金」事業を展開しています。

(1) 伸銅


自動車や家電製品、水栓金具などの素材となる黄銅の棒や線、めっき線を生産しています。鉛やカドミウムなどの環境負荷物質を使用しない環境対応合金を実用化し、多数の特許を取得して広範な需要に対応しています。

顧客への製品販売による収益を主な収入源としています。同事業の運営は、サンエツ金属、日本伸銅、三谷伸銅などの国内製造子会社のほか、販売を担うサンエツ商事、海外拠点の三越金属(上海)や台湾三越などが連携して行っています。

(2) 精密部品


デジタル一眼レフカメラの本体とレンズの着脱部品であるカメラマウントや、自動車のマニュアルトランスミッションに使用されるシンクロリング、水栓金具などの鍛造加工および切削加工を行っています。

黄銅素材を用いた精密部品の加工・販売を収益源としています。黄銅素材の生産から精密部品の加工までを一貫して手掛けており、同事業の運営はサンエツ金属のプレシジョン工場が主体となって行っています。

(3) 配管・鍍金


水道やガスの配管に使用される脱塩ビ継手などの配管機器の生産や、鋼材の防錆処理として環境負荷物質を使用しない「CKeめっきスーパー」ブランドの溶融亜鉛鍍金加工を手掛けています。

配管機器製品の販売および溶融亜鉛鍍金の加工受託による収益を主な収入源としています。配管機器の開発と生産はリケンCKJVが担い、溶融亜鉛鍍金事業はシーケー金属が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高はM&Aによる事業拡大や主要原材料である銅の相場高騰を背景に、直近の5期間で成長基盤を拡大し、当期は大幅な増収を達成しています。一方、経常利益は原料相場変動へのヘッジを目的としたデリバティブ取引の影響等により増減を繰り返しており、利益率も変動が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1153億円 1238億円 1114億円 1251億円 1494億円
経常利益 66億円 87億円 61億円 84億円 56億円
利益率(%) 5.7% 7.0% 5.5% 6.7% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 3億円 4億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は三谷伸銅の連結子会社化や銅相場の高値推移により前期比で大幅に増加しました。売上総利益や営業利益もそれに伴い伸長していますが、デリバティブ損失などの営業外費用が発生したため、経常利益段階では減益となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1251億円 1494億円
売上総利益 154億円 204億円
売上総利益率(%) 12.3% 13.6%
営業利益 103億円 142億円
営業利益率(%) 8.2% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比27%)、荷造及び発送費が13億円(同21%)を占めています。売上原価の内訳については具体的なデータが公開されていません。

(3) セグメント収益


伸銅事業は三谷伸銅の連結子会社化による販売量の増加や銅相場の高騰により、売上高・利益ともに大きく伸長しました。精密部品事業も増収増益を確保した一方、配管・鍍金事業は需要の減少等の影響により減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
伸銅 1064億円 1314億円 71億円 112億円 8.5%
精密部品 56億円 60億円 6億円 9億円 15.1%
配管・鍍金 131億円 120億円 22億円 19億円 15.6%
連結(合計) 1251億円 1494億円 103億円 142億円 9.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」を示しています。営業活動で安定的に資金を獲得しつつ、M&Aや有形固定資産の取得など将来の成長に向けた積極的な投資活動を実行しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 53億円 30億円
投資CF -23億円 -48億円
財務CF -3億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「良いものだけを、安く、早く、たくさん生産する」「努力するに値するプロの仕事と働きがいのある職場を提供する」「期待を超え、弛みない努力を重ねる」という3つの経営理念を掲げて社会への貢献を目指しています。これらの理念のもと、「地味だけど凄い価値の創造」を追求しています。

(2) 企業文化


経営理念に基づき、性別や年齢、国籍などにかかわらず、努力して働くほど報われる「働きがいのある職場」の提供を重視しています。また、社員一人ひとりが働きがいを感じ、成長意欲を高く持ち続けるために、安心して健康的に働ける職場環境の整備を組織の重要な価値観として定着させています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営状況を判断するための客観的な指標として経常利益を重視しています。伸銅事業において原料相場の変動リスクをヘッジし、経常利益段階での利益安定化を図る方針を掲げており、具体的な中長期の数値目標として以下の指標を設定しています。

* 2027年3月期の経常利益:100億円

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業である伸銅事業や配管・鍍金事業の国内市場が成熟し需要の漸減が予想される中、新製品の開発による市場開拓とM&Aによる事業拡張に注力しています。伸銅事業では新素材の開発やグループ間のシナジー追求による差別優位化を目指し、配管・鍍金事業では生産拠点の統合効果の創出を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人事申告制度」を通じて社員が希望する職場への配属を支援し、適材適所の人材配置によって活力ある組織づくりを進めています。また、各種研修会や通信講座による教育機会の提供、「働き方選択制度」による多様な働き方の支援に加え、「夜勤レス」の推進など健康的な職場環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


提出会社は純粋持株会社で従業員が0名のため、ここではグループ内で最も従業員数の多いサンエツ金属のデータを記載します。同社の従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.3歳 16.2年 7,283千円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 14.3%
男女賃金差異(全労働者) 65.9%
男女賃金差異(正規雇用) 73.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 32.7%


※女性管理職比率については、対象となる連結子会社が公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。また、上記の数値はサンエツ金属のデータです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人事希望等成就率(78.9%)、有給休暇取得率(81.7%)、夜勤率(2.1%)、休業災害発生件数(3件)、通信教育受講者割合(58.3%)、通信教育修了率(97.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 材料価格変動と電力供給のリスク


主原料である銅や亜鉛の相場が乱高下した場合、棚卸資産に評価損益が発生するほか、代替材への転換で需要が減少するリスクがあります。また、電気炉を使用するため、電力供給の悪化が生産障害につながるおそれがあり、デリバティブ取引によるヘッジや代替生産体制の構築で対応しています。

(2) M&Aおよび事業提携のリスク


事業基盤の拡大に向けてM&Aや事業提携を積極的に活用していますが、予期し得ない経済情勢の変動や事業環境の悪化などにより、当初見込んでいたシナジー効果や投資の成果を十分に得られないリスクがあります。

(3) 製品クレームや代替製品の登場によるリスク


各種規格に沿った厳格な品質管理を行っていますが、製品に欠陥が生じた場合、製造物賠償責任等による費用が発生する可能性があります。また、主力製品である黄銅とは競合関係にあるアルミニウムや樹脂などの代替製品が台頭することで、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクが存在します。

(4) 海外事業展開と人材確保のリスク


中国や台湾などの海外拠点で事業を展開しており、現地の政治的・法的な規制やビジネス環境の悪化が業績に影響を与えるリスクがあります。また、継続的な成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠であり、採用や育成が計画通りに進まない場合も、事業運営に支障をきたす懸念があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。