※本記事は、株式会社大阪チタニウムテクノロジーズの有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大阪チタニウムテクノロジーズってどんな会社?
金属チタンや高機能材料の製造販売を手がけ、航空機や半導体分野に高品質な素材を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1952年に日本で初めて金属チタンの工業生産を開始した事業を源流とし、1997年に金属チタン等の製造販売事業を譲り受けて操業を開始しました。2002年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2005年には市場第一部へ指定替えされています。2007年に現在の大阪チタニウムテクノロジーズに商号を変更しました。
従業員数は742名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は事業会社である神戸製鋼所、第3位には同じく資産管理業務を行う日本カストディ銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.44% |
| 神戸製鋼所 | 8.15% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表取締役社長は川福純司氏が務めています。取締役8名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川福純司 | 代表取締役社長 | 1985年神戸製鋼所入社。鉄鋼事業部門チタン本部長などを経て、2020年大阪チタニウムテクノロジーズ常務執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 脇治豊 | 取締役専務執行役員 | 1983年住友金属工業(現日本製鉄)入社。同社総務部長などを経て、2012年大阪チタニウムテクノロジーズ入社。2025年より現職。 |
| 荒池忠男 | 取締役常務執行役員 | 1991年大阪チタニウムテクノロジーズ入社。チタン製造部長などを経て、2016年執行役員に就任。2023年より現職。 |
| 松岡淳 | 取締役執行役員 | 1992年神戸製鋼所入社。素形材事業部門チタンユニット長などを経て、2024年大阪チタニウムテクノロジーズ顧問。2024年より現職。 |
| 島本信英 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年住友金属工業(現日本製鉄)入社。2012年大阪チタニウムテクノロジーズ入社。経理部長などを経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、山口重久(元アンリツ取締役)、村田雅詩(元参天製薬常勤監査役)、大石賀美(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「チタン事業」および「高機能材料事業」を展開しています。
■チタン事業
スポンジチタンやチタンインゴットなどの金属チタンを主な製品として製造販売しています。これらの製品は、高い品質が求められる航空機用をはじめ、電解プラント向けやプレート式熱交換器向けなどの一般産業用として、国内外の幅広い分野の産業プロセスに向けて提供されています。
収益は、展伸材メーカーや商社などの取引先への製品販売による代金から得ています。事業の運営は大阪チタニウムテクノロジーズが主体となって行っており、航空機産業の成長を支えるキープレイヤーとして、安定的な供給能力の確保に努めています。
■高機能材料事業
スポンジチタンの製造工程における中間生成物である四塩化チタンや四塩化チタン水溶液に加え、高純度チタン、粉末チタン、SiO等の高機能材料の製造販売を行っています。半導体分野や環境分野などの成長産業に向けて、新用途開発品を提供しています。
収益は、半導体関連メーカーなどの取引先への高機能材料の販売代金から得ています。運営は大阪チタニウムテクノロジーズが行っており、既存製品の営業力強化や生産性向上を進めるとともに、新規領域での事業創出を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期をピークに減少傾向にあり、利益面も同様に推移しています。航空機向けの需要増などで一時は急回復したものの、足元ではサプライチェーン内の在庫調整や国内向け販売の低迷が影響し、減収減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 285億円 | 431億円 | 553億円 | 519億円 | 470億円 |
| 経常利益 | -17億円 | 47億円 | 94億円 | 91億円 | 64億円 |
| 利益率(%) | -6.0% | 11.0% | 16.9% | 17.5% | 13.7% |
| 当期純利益 | -31億円 | 44億円 | 97億円 | 71億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間では、売上高の減少に伴い、売上総利益率および営業利益率がいずれも低下しています。特に営業利益はほぼ半減しており、販売数量の減少や輸出向けの価格下落が収益を圧迫していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 519億円 | 470億円 |
| 売上総利益 | 161億円 | 116億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.1% | 24.6% |
| 営業利益 | 101億円 | 55億円 |
| 営業利益率(%) | 19.4% | 11.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比20%)、研究開発費が8億円(同14%)を占めています。また、当期製品製造原価の中では、材料費が188億円(構成比48%)、経費が152億円(同39%)を占めています。
■(3) セグメント収益
チタン事業は、航空機エンジンの需要が堅調だった一方、サプライチェーンでの在庫調整や国内向け販売の低迷により減収減益となりました。高機能材料事業も、一部の半導体市場での需要低迷が響き、前年同期のスポット受注の反動もあって減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| チタン事業 | 452億円 | 404億円 | 90億円 | 47億円 | 11.5% |
| 高機能材料事業 | 67億円 | 65億円 | 11億円 | 9億円 | 13.4% |
| 連結(合計) | 519億円 | 470億円 | 101億円 | 55億円 | 11.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 29億円 | 42億円 |
| 投資CF | -35億円 | -97億円 |
| 財務CF | -7億円 | 50億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も41.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
大阪チタニウムテクノロジーズは、スポンジチタンメーカーのグローバルリーダーとしての地位を確固たるものとし、世界の航空機産業の一角を担う企業として国際社会へ貢献することを目指しています。また、持続可能な社会の実現に向けて企業の社会的責任を果たし、中長期的な企業価値の向上を追求しています。
■(2) 企業文化
安全と健康は経営の基盤であるとの認識のもと、従業員が能力と活力を十分に発揮し、安全で活き活きと働き続けられる職場環境づくりを重視しています。また、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を整えるとともに、人権の侵害を認めない公正な職場風土の醸成に継続的に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「OTC 2030」において、2026年度から2030年度を計画期間とする目標を掲げています。チタン事業の持続的成長や事業ポートフォリオの変革、人的資本経営などを推進し、財務面では収益力の改善を通じてPBR(株価純資産倍率)の維持・上昇を目指しています。
* スポンジチタン新工場の稼働による生産能力増強(4万トン/年から5万トン/年)
■(4) 成長戦略と重点施策
チタン事業で得た収益を高機能材料事業へ重点的に投入し、半導体や環境などの成長分野への事業ポートフォリオ変革を図っています。また、コア技術を応用したリサイクル事業など環境分野での事業創出を進めるほか、全社データの一元管理によるスマートファクトリー化などのDX推進にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「採用」「育成」「活躍」の三位一体の人材戦略を通じて人的資本の強化を図り、人材への投資を起点としたエンゲージメントの維持・向上を目指しています。多様な背景を持つ従業員一人ひとりが能力や専門性を最大限に発揮し、活き活きと働くことができるよう、柔軟な働き方の支援や次世代リーダーの計画的な育成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 16.0年 | 7,163,437円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.7% |
| 男性育児休業取得率 | 76.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 70.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の比率(49.1%)、年次有給休暇取得日数(18.1日/人・年)、3年未満離職率(20.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 航空機産業などの需要変動リスク
輸出向け金属チタンの主要用途は航空機用であり、航空機メーカーの受注やメンテナンス需要の変動によって業績が影響を受ける可能性があります。また、一般産業用の需要や世界経済の動向、通商問題などもチタン事業および高機能材料事業に影響を及ぼします。
■(2) 外貨建取引に伴う為替変動リスク
売上高の多くを占める輸出の大半が米ドル建てであり、原材料の輸入やエネルギー調達を含めても米ドルの受取超過となる傾向があります。為替予約取引などでリスクの低減に努めていますが、急激な円高の進行などは業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 大量電力消費に伴う電力供給・料金リスク
製造工程において大量の電力を消費するため、設備の改良によるエネルギー効率化に努めています。しかし、電力供給に制限が生じた場合や、原油価格の変動や発電構成の見直しなどによって電力料金が大幅に改定された場合は、業績が影響を受ける可能性があります。



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