※本記事は、エヌアイシ・オートテック株式会社の有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エヌアイシ・オートテックってどんな会社?
エヌアイシ・オートテックは、独自のアルミフレームシステムを核としたFA装置などを提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1971年に富山県で設立され、1986年に独自の産業用アルミフレーム「アルファフレーム」を開発しました。2006年にジャスダック(現・東京証券取引所スタンダード市場)へ上場を果たしています。2008年に自動設計・組立サポートサービスを開始し、2025年には本社を東京都江東区へ移転しました。
現在の従業員数は189名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長兼社長CEOの西川浩司氏が株式の過半数を保有しており、第2位は同社の従業員持株会、第3位は資本業務提携の経緯がある事業会社の三協立山となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 西川浩司 | 68.00% |
| エヌアイシ・オートテック従業員持株会 | 1.91% |
| 三協立山 | 1.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役会長兼社長CEOは西川浩司氏が務めており、社外取締役の比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西川浩司 | 代表取締役会長兼社長CEO | 不二越を経て同社入社。日本エヌ・アイ・シー社長、クレト社長を歴任し、代表取締役社長に就任。管理本部長兼経営企画室長等を経て、2022年より現職。 |
| 西川重子 | 取締役相談役 | ゲン企画プロダクション、ソサエティ・オブ・スタイルを経て、2023年より現職。 |
| 山崎克己 | 取締役執行役員 | 同社入社後、設計部設計2課長、技術開発部長、立山第3工場長、常務執行役員などを歴任し、2026年より現職。 |
| 澤井洋通 | 取締役執行役員 | 同社入社後、海外子会社出向、立山第1工場長、執行役員営業本部副本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、竹田進亮(元みずほ情報総研専務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「FA部門」および「商事部門」を展開しています。
■FA部門
アルミ製構造部材「アルファフレームシステム」および同システムを使用したFA装置やクリーンブースなどの開発・設計・製造・販売を行っています。半導体やFPD製造装置関連企業向けなどに提供しています。
一般顧客や大口顧客への製品販売に加え、専用の3D-CADソフト「カクチャ」や組立省力化システム「マーキングシステム」といった付加価値サービスにより収益を得ています。運営はエヌアイシ・オートテックが行っています。
■商事部門
FA部門のメーカー機能を活用し、顧客に対して工場等の製造設備導入の提案営業や、工業用砥石・工具・油脂類などの工業生産財の販売を行っています。
主に自動車関連業界などの主要顧客における新規設備投資や設備更新需要、および消耗品のリピート受注から継続的に販売代金を得るモデルです。運営はエヌアイシ・オートテックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、直近にかけて売上高や経常利益のデータが非開示となっているものの、当期利益は継続して黒字を計上しています。ただし、直近の当期利益は前年度から減少傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 74.3億円 | 66.6億円 | - | - | - |
| 経常利益 | 2.7億円 | -0.9億円 | - | - | - |
| 利益率(%) | 3.6% | -1.4% | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | -1.6億円 | -6.0億円 | 2.1億円 | 0.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上総利益や営業利益は前年度から減少しており、当期は営業損失を計上しています。原材料価格の上昇やFA部門の減収に伴う固定費負担の増加、将来に向けた先行投資が影響しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | 14.3億円 | 12.8億円 |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 2.3億円 | -0.1億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が4.6億円(構成比36%)、その他が2.3億円(同18%)、旅費及び交通費が1.3億円(同10%)を占めています。売上原価(50.2億円)の製造費用では、材料費が16.2億円(同42%)、外注加工費が13.0億円(同34%)と大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
FA部門は半導体やFPD製造装置向けの設備投資減速が影響し減収となりました。一方、商事部門は消耗品や治工具類の需要回復、主要顧客の設備投資を背景に増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| FA部門 | 54.3億円 | 50.2億円 |
| 商事部門 | 12.2億円 | 12.9億円 |
| 連結(合計) | 66.5億円 | 63.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.1億円 | 6.1億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | -2.1億円 | -8.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「モノづくりを通じて社会の発展と創造に貢献する」ことを経営理念に掲げています。また、「製造業の品質向上と合理化に貢献」をミッションと位置づけ、フレキシブルな独自のシステムを活用して製造業の高品質化や高効率化に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「100年の技術で日本のモノづくりを支える~“PASSION & CHALLENGE”~」を行動の軸に掲げています。社員に対しては、仕事を通じて自己実現の機会を与え、快適で働き甲斐のある職場環境を醸成することで、新規の取り組みにも果敢に挑戦する組織文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
将来的な目標数値として、ROE15%以上、EPS(1株当たり当期純利益)140円以上を掲げています。中期経営計画(2027年3月期)の主要な業績目標は以下の通りです。
・売上高:75.0億円
・営業利益:3.0億円
・ROE:5.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
アルミフレームの専門メーカーかつFA装置メーカーである「Only One企業」を目指し、顧客の潜在ニーズ発掘や大型構造物件の受注拡大を図ります。
・「カクチャ」や「マーキングシステム」を活用した販売・サポート戦略の推進
・クリーン環境技術や次世代FA装置の開発力強化
・生産効率を高めるための生産体制の最適化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高品質・高付加価値な製品の提供を通じた社会貢献の実現に向け、高度な技術力と提案力を備えた人材の確保と育成を重視しています。実践的な教育を通じて専門能力の底上げを図るとともに、多様な人材が意欲をもって活躍できる活力ある組織の構築に向け、新卒および中途採用を積極的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 12.0年 | 5,010,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女の賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) アルミフレームの販売価格競争
主力製品「アルファフレームシステム」において、専門性を必要としない分野への裾野拡大に伴い、国内の競合他社や海外産の廉価製品との価格競争が生じています。競合激化や知的財産権の侵害対応の実効性に時間を要した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の取引先への依存
同社は特定の取引先への依存度が高く、大型の設備投資案件によって売上が大きく変動する傾向があります。新規大口顧客の開拓など販売先の多様化に努めているものの、特定取引先との継続的な取引が困難になった場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 外部経営環境と自然災害
主要な生産・研究施設が富山市およびその周辺に集中しています。地震や洪水などの自然災害、あるいは感染症の蔓延により生産活動の縮小・停止を余儀なくされる可能性があります。また、テロや地域紛争等により国内外からの材料調達が困難となるリスクもあります。



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