SWCC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SWCC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のSWCCは、電線・ケーブルを中心にエネルギー・インフラ、通信、電装部品を展開するメーカーです。当期は電力インフラ需要の拡大等を背景に、売上高2,379億円(前期比11.2%増)、営業利益209億円(同63.2%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、SWCC株式会社の有価証券報告書(第129期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SWCCってどんな会社?

電線・ケーブル製造を祖業とし、現在はエネルギー・インフラや通信、電装分野で多様な製品を展開する企業です。

(1) 会社概要

1936年、東京電気(現東芝)より独立し設立されました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2006年には持株会社体制へ移行して昭和電線ホールディングスへ商号変更。2023年に事業会社へ移行し現在のSWCCへ商号変更、2025年3月にはTOTOKUを子会社化するなど体制強化を進めています。

同グループは連結従業員4,945名、単体1,453名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。上位株主には事業提携関係にある企業よりも、信託銀行等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.59%
日本カストディ銀行(信託口) 8.63%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 8.19%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役会長は長谷川隆代氏、代表取締役CEO 社長執行役員は小又哲夫氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川 隆代 代表取締役会長・取締役会議長 1984年同社入社。技術開発センター次長、技術企画室長、取締役社長等を経て2025年4月より現職。
小又 哲夫 代表取締役CEO 社長執行役員 1989年同社入社。杭州富通昭和光通信配件有限公司総経理、経営戦略企画部長、戦略本部長、COO 副社長執行役員等を経て2025年4月より現職。
山口 太 取締役(常勤監査等委員) 1988年同社入社。経理統括部長、経営企画部長、ファイナンス戦略本部長、CSR推進本部長、経営管理統括部長等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、坂倉裕司(元日商岩井証券社長)、市川誠一郎(元サッポロビール取締役)、西村美奈子(Next Story代表)、内藤宏治(元ウシオ電機社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「エネルギー・インフラ事業」、「電装・コンポーネンツ事業」、「通信・産業用デバイス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) エネルギー・インフラ事業

国内の電力インフラや建設関連向けに、電線、電力ケーブル、免震装置、制振・防振部材などを提供しています。電力会社や建設会社などが主な顧客となります。

製品の販売やエンジニアリングサービスの提供を通じて収益を得ています。運営は、SWCC、SFCC、冨士電線、昭和サイエンスなどが主に行っています。

(2) 電装・コンポーネンツ事業

巻線、裸線、無酸素銅、銅合金線、自動車用電線などを製造販売しています。これらは電線導体用の線材や汎用モータ、自動車などに使用されます。

製品の販売対価を主な収益源としています。運営は、主にSWCCが担当しています。

(3) 通信・産業用デバイス事業

通信ケーブル、ワイヤハーネス、精密デバイスなどを製造販売しています。通信インフラや家電、産業機器向けの製品を提供しています。

製品の販売によって収益を得ています。運営は、SWCC、冨士電線、およびベトナムや中国の海外子会社などが担っています。

(4) その他

上記セグメントに含まれない物流業、リサイクル業、事務管理業務、材料の研究開発、ネットワークソリューションの販売などを行っています。

物流サービスやITソリューションの提供対価などを収益源としています。運営は、SWCC、アクシオ、ロジス・ワークスなどが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、第125期の1,617億円から当期は2,379億円へと拡大しています。利益面でも、経常利益は78億円から113億円前後で推移し、当期純利益は当期において114億円と高い水準を記録しています。全体として成長基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,617億円 1,992億円 2,091億円 2,139億円 2,379億円
経常利益 78億円 99億円 104億円 122億円 113億円
利益率(%) 4.8% 5.0% 5.0% 5.7% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 15億円 5億円 166億円 118億円

(2) 損益計算書

前期と当期を比較すると、売上高は増加し、売上総利益率も13.5%から16.2%へ改善しました。これに伴い営業利益率は6.0%から8.8%へと上昇し、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,139億円 2,379億円
売上総利益 290億円 386億円
売上総利益率(%) 13.5% 16.2%
営業利益 128億円 209億円
営業利益率(%) 6.0% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が68億円(構成比38.2%)、その他が49億円(同27.7%)、福利厚生費が18億円(同10.2%)を占めています。

(3) セグメント収益

エネルギー・インフラ事業は電力インフラ向けの需要増や価格改定効果により大幅な増収増益となりました。通信・産業用デバイス事業も通信ケーブル等の堅調な推移により増収増益です。一方、電装・コンポーネンツ事業は一部市場の調整局面の影響を受け減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エネルギー・インフラ事業 1,232億円 1,412億円 107億円 181億円 12.8%
電装・コンポーネンツ事業 553億円 568億円 16億円 14億円 2.5%
通信・産業用デバイス事業 307億円 351億円 14億円 28億円 7.9%
その他 47億円 48億円 2億円 5億円 10.0%
調整額 - - -11億円 -18億円 -
連結(合計) 2,139億円 2,379億円 128億円 209億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

SWCCは、財務健全性の維持・向上に向けた取り組みを進めています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や棚卸資産の増加等により、大幅な収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得や有形固定資産の取得・売却等により、収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 177億円 131億円
投資CF 10億円 1億円
財務CF -156億円 -15億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同グループは、「いま、あたらしいことを。いつか、あたりまえになることへ。」というSWCCパーパスのもと、「SWCCグループは、信頼の輪をひろげます。」を経営理念として掲げています。信頼される製品でインフラを支え、社会の安心安全に貢献することを使命とし、「SWCCはソリューション提案型メーカーへ!」というビジョンの実現を目指しています。

(2) 企業文化

ビジョンを実現するために大切にすべき価値観や行動基準として「SWCCウェイ」を定めています。これは、「「迅速」・「情熱」・「考動」で価値創造を実現する」という指針であり、変革や挑戦を恐れないマインドセットへの転換や、多様な人材が活躍できる風土づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標

2026年度を最終年度とする中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」を推進しています。足元の好調な事業環境を反映し、2026年度の数値目標を上方修正しました。

* 2026年度 営業利益:257億円(当初計画より上方修正)
* 2026年度 ROE:12.9%
* 2026年度 ROIC:10.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策

「Change & Growth」をスローガンに、成長牽引事業の強化、第2の成長事業の確立、DX経営の加速を重点施策として掲げています。特に電力インフラ向け製品「SICONEX」の増産投資や、TOTOKUの子会社化を通じたモビリティ・半導体領域の強化を進めています。また、電装・コンポーネンツ事業と通信・産業用デバイス事業を統合し、新たな成長の柱とする方針です。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「変革」「挑戦」「成長」を人事戦略の柱に据え、省人化・オートメーション化による製造現場の変革や、研修制度・キャリア形成の高度化に取り組んでいます。エンゲージメント向上を最重要課題とし、多様な人材の活用(DE&I)や、自律的な学習を促す環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 16.8年 6,691,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 53.1%
男女賃金差異(全労働者) 68.6%
男女賃金差異(正規雇用) 74.2%
男女賃金差異(パート・有期) 64.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員1人あたり年平均研修時間(23時間)、エンゲージメントスコア(44)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害等

大規模な地震、台風、洪水などの自然災害が発生した場合、製造拠点の操業停止や物流機能の麻痺などが生じ、計画的な生産活動に大幅な制限がかかることで、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、BCPの策定やインフラ設備の強靭化投資を進めています。

(2) 原材料・エネルギー価格変動

主要原料である銅や、ポリエチレン等の石油化学製品の価格変動リスクがあります。製品価格への転嫁が困難な場合や相場が大きく下落する局面では損失が生じる可能性があります。対応として、価格スライド制の適用や先物取引によるヘッジ、調達先の多様化などを行っています。

(3) 人材の確保および育成

製造の技能承継や営業機会の確保において、人材の確保・育成が困難になった場合、事業継続や業績目標の達成に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、多様な人材活用の促進や人材育成プログラムの拡充、エンゲージメント向上施策などに注力しています。

(4) サプライチェーン寸断・喪失

サプライチェーンの寸断や喪失により原材料の供給が停止・遅延した場合、生産活動や業績に影響が出る可能性があります。調達先の多様化や複数購買の推進、代替品の確保、調達先の個別管理徹底などによりリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。