SWCC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SWCC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するSWCCは、エネルギー・インフラ事業と通信・コンポーネンツ事業を展開する企業です。直近の業績は、電力インフラおよび通信ケーブル事業が好調に推移し、さらに銅価の高騰や子会社化の要因も加わり、大幅な増収増益を達成しました。戦略製品の増産効果等により順調な成長を見せています。


※本記事は、SWCC株式会社の有価証券報告書(第130期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SWCCってどんな会社?


社会インフラを支える電線や電力設備、通信ケーブル等の製造販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1936年に東京電気(現東芝)から独立して設立され、翌年裸銅線の製造販売を開始しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2006年の持株会社化を経て、2023年に事業会社へ移行するとともに社名をSWCCへと変更しています。近年は通信分野等の子会社化を進め、事業基盤の強化を図っています。

従業員数は連結で4,813名、単体で1,467名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位も同様に金融機関ならびに信託銀行等の名義が上位を占めており、機関投資家による保有割合が高い構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.09%
日本カストディ銀行(信託口) 11.22%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 9.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役CEO 社長執行役員を小又哲夫氏が務めており、社外取締役の比率は高い構成となっています。

氏名 役職 主な経歴
小又 哲夫 代表取締役CEO 社長執行役員 1989年入社。杭州富通昭和光通信配件有限公司総経理や事業戦略本部経営企画部長、常務執行役員戦略本部長などを経て、2025年4月より現職。
長谷川 隆代 代表取締役会長・取締役会議長 1984年入社。技術企画室長や代表取締役社長、グループCEOなどを歴任し、2025年4月より現職。HOYAや荏原製作所の社外取締役も務める。


社外取締役は、椋野 貴司(元旭化成常務執行役員)、西村 美奈子(Next Story代表取締役)、内藤 宏治(元ウシオ電機代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー・インフラ事業」、「通信・コンポーネンツ事業」および「その他」事業を展開しています。

エネルギー・インフラ事業


主に電線、電力ケーブル、電力機器、制振・防振製品の製造販売やエンジニアリングの設計・請負を行っており、社会インフラを支える顧客が対象です。主力製品として高電圧電力ケーブル用コネクタなどを展開しています。

製品の販売や据付サービスから収益を得ており、運営は主にSWCCやSFCC、昭光機器工業などの子会社が行っています。国土強靭化やデータセンターの市場拡大に伴う旺盛な需要に対応し、独自製品の拡販を通じて収益の拡大を図っています。

通信・コンポーネンツ事業


通信ケーブル、光加工品、精密デバイス、巻線、自動車用電線などの製造販売を行っています。データセンター向けの通信ケーブルや、AI関連需要が拡大する半導体検査市場向けの製品が事業の中心となっています。

製品の販売を主な収益源とし、運営はSWCC、TOTOKU、冨士電線などのグループ会社が国内外の拠点で担っています。旺盛な需要に対し国内外での増産投資を進め、生産体制を強化することで確固たる収益基盤を確立しています。

その他


インダストリやITを軸とした事業領域です。物流業、リサイクル業、事務管理業務のほか、超電導技術の研究開発やネットワークソリューションの販売などを多角的に展開しています。

各サービスの提供に伴う対価を収益としており、運営はSWCCのほか、アクシオ、ロジス・ワークスなどの子会社が行っています。DXやデータに関する技術を掛け合わせた新規ビジネスモデルの創出にも取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が継続的に増加し順調な成長傾向を示しています。特に直近の事業年度では、電力インフラ事業等の好調や銅価格の高騰により売上高が大きく伸長しました。利益面でも戦略製品の増産効果が寄与し、経常利益が大幅に拡大して高い利益率を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,992億円 2,091億円 2,139億円 2,379億円 2,777億円
経常利益 99億円 104億円 122億円 113億円 261億円
利益率(%) 5.0% 5.0% 5.7% 4.7% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 94億円 94億円 88億円 114億円 188億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益のいずれも前期を大きく上回っています。価格改定の進展や高付加価値製品の拡販により、売上総利益率、営業利益率ともに改善し、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,379億円 2,777億円
売上総利益 386億円 506億円
売上総利益率(%) 16.2% 18.2%
営業利益 209億円 273億円
営業利益率(%) 8.8% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が27億円(構成比12%)、荷造運搬費が18億円(同8%)、研究開発費が17億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


エネルギー・インフラ事業は、電力網の強靭化等に伴う投資需要の恩恵を受け、堅調な売上成長を確保しました。通信・コンポーネンツ事業はデータセンター向けの戦略製品の需要が急拡大し、売上高が大幅な伸長を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エネルギー・インフラ事業 1,288億円 1,319億円
通信・コンポーネンツ事業 1,023億円 1,384億円
その他 67億円 74億円
連結(合計) 2,379億円 2,777億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 131億円 162億円
投資CF 1億円 -25億円
財務CF -15億円 -223億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「いま、あたらしいことを。いつか、あたりまえになることへ。」というSWCCパーパスを掲げています。創業100周年を迎える2036年に向けたありたい姿として、「エネルギーとデジタルの未来を創るグローバル・ソリューションカンパニー」を標榜し、持続可能な社会の発展に貢献する経営を行っています。

(2) 企業文化


「信頼」をキーワードとした経営理念に基づき、多様性に富んだ従業員のエンゲージメント向上を重視しています。「共感」「共存」「共栄」の精神で地域やバリューチェーンとのつながりを大切にし、個性や多様性を活かした働き方を推し進めることで、挑戦する風土や良き企業文化を醸成する行動様式が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2030年度をマイルストーンとする中期経営計画「Transformation for Growth SWCC 2030」を推進し、ROICを経営の軸に据えた資本効率の向上と事業成長の両立を目指しています。

* 営業利益400億円
* 営業利益率12%以上
* ROIC15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


従来の構造改革を中心とする経営から、成長投資による事業成長を生み出す経営へと深化させ、キャッシュ・フローの最大化を図ります。労働力不足等の社会課題に対応するため、省力化・省人化を推進する独自製品の拡販や、データセンター向け通信ケーブルの増産投資など、注力事業に対する資源投下を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略の実行力を高めるため、事業ポートフォリオと連動した人材基盤の構築を推進しています。グローバル展開や新規事業に必要な人材の確保に加え、自律的キャリア形成を支援する教育投資の拡充に取り組んでいます。また、現場力の強化やDX活用による業務変革を担う人材の育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.7歳 16.9年 7,231,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 57.6%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規雇用) 76.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員1人当たり年平均研修時間(47時間)、休業災害度数率(0.53)、エンゲージメントスコア(50)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サプライチェーンリスク


地域紛争の長期化等に伴う原材料やエネルギー資源の供給途絶、国際物流の混乱により、安定的な事業活動が困難となり、業績および財政状態に大幅な影響を及ぼす可能性があります。調達先の多様化や複数購買の推進によりリスク低減に努めています。

(2) 人材・労働リスク


労働人口の減少等により、営業機会の損失や製造の技能承継が困難になるリスクがあります。人材の確保が十分に進まない場合、製品の品質低下や成長機会の逸失を招く恐れがあるため、採用機会の拡充やエンゲージメント向上施策を実施して対策を図っています。

(3) 市場変動リスク


主要原材料である銅の価格変動や、ポリエチレン等の石油化学製品の価格変動により、製品採算が悪化するリスクが存在します。為替変動に応じた製品単価の見直しや、コスト増加分の適正な価格転嫁を通じて、収益への影響を最小限に抑えるよう取り組んでいます。

(4) 自然災害リスク


大規模な地震や台風等の自然災害により、製造拠点の操業停止や物流機能の麻痺が生じるリスクがあります。BCP(事業継続計画)の周知徹底や定期的な訓練を実施し、不測の事態においても事業の継続および早期復旧が図れるよう実効性の確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。