沖縄セルラー電話 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

沖縄セルラー電話 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の総合通信事業者です。KDDIの連結子会社として、沖縄県内でモバイル通信サービス「au」「UQ mobile」や固定通信「auひかり ちゅら」等を提供しています。2025年3月期の連結業績は、売上収益843億円(前期比8.1%増)、経常利益179億円(同4.3%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社沖縄セルラー電話の有価証券報告書(第34期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 沖縄セルラー電話ってどんな会社?


沖縄県に特化した地域密着型の通信事業者として、モバイル通信や固定通信、電力サービス等を展開するKDDIグループの企業です。

(1) 会社概要


同社は1991年に設立され、翌1992年に携帯・自動車電話サービスを開始しました。2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場し、2010年には沖縄通信ネットワーク(現・OTNet)を子会社化して固定通信事業を開始しました。その後、2013年に東証JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2019年には「auでんき」の提供を開始するなど事業領域を拡大しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は521名(単体325名)です。筆頭株主は親会社であり通信事業を展開するKDDI(持株比率53.24%)です。第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(同2.52%)、第3位は地元インフラ企業の沖縄電力(同2.00%)となっています。

氏名 持株比率
KDDI 53.24%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 2.52%
沖縄電力 2.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は宮倉康彰氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
宮倉 康彰 代表取締役社長 1990年日本移動通信(現KDDI)入社。KDDI商品・CS統括本部カスタマーサービス本部長、中部テレコミュニケーション代表取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
丸米 郁男 代表取締役執行役員専務技術本部長 1984年国際電信電話(現KDDI)入社。KDDI技術統括本部運用本部副本部長等を経て、2024年6月より現職。OTNet代表取締役社長を兼務。
國吉 博樹 取締役執行役員常務コーポレート本部長兼コーポレートDX推進部長 1992年同社入社。執行役員営業本部副本部長、取締役営業本部長等を歴任し、2025年4月より現職。
上地 球二 取締役執行役員営業統括本部長 1990年国際電信電話(現KDDI)入社。同社コンシューマ営業部長、執行役員ソリューション営業本部長等を歴任し、2025年4月より現職。
小禄 邦男 取締役 1982年琉球放送代表取締役社長。1991年6月より現職。琉球放送最高顧問を兼務。
阿波連 光 取締役 1994年弁護士登録。2000年ひかり法律事務所(現弁護士法人ひかり法律事務所)所長。沖縄弁護士会会長等を経て2019年6月より現職。
田中 孝司 取締役 2010年KDDI代表取締役社長。2018年同社代表取締役会長。2018年6月より現職。
中山 朋子 取締役 2015年KDDIコンシューマ事業企画部長。同社執行役員パーソナル事業本部パーソナル企画統括本部長等を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、小禄邦男(琉球放送最高顧問)、阿波連光(弁護士・元沖縄弁護士会会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気通信事業」および「附帯事業」を展開しています。

(1) 電気通信事業


モバイル通信サービス(au、UQ mobile、povo)や固定通信サービス(auひかり ちゅら等)を提供しています。個人および法人顧客に対し、スマートフォン等の通信回線やインターネット接続環境を提供し、沖縄県内の通信インフラを支えています。

主な収益源は、契約者からの月額基本使用料や通話・通信料収入です。また、固定通信サービスにおける音声伝送やデータ通信収入も含まれます。運営は、同社および連結子会社のOTNetが行っています。

(2) 附帯事業


携帯端末機器の販売や、電力小売サービス「auでんき」、ソリューション事業などを展開しています。また、子会社を通じて農産物生産・販売や観光事業、Webシステム構築なども行っています。

収益源は、代理店への携帯端末販売収入や、電力サービス利用者からの電気料金収入などです。運営は同社および、沖縄セルラーアグリ&マルシェ、沖縄セルラーみらいクリエイト等の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は安定的に増加傾向にあります。経常利益も毎期着実に増加しており、高い利益率を維持しています。当期純利益についても増加基調が続いており、堅調な成長を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 742億円 734億円 773億円 780億円 843億円
経常利益 146億円 153億円 161億円 172億円 179億円
利益率(%) 19.6% 20.9% 20.9% 22.0% 21.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 105億円 107億円 109億円 121億円 124億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益率も20%を超える高い水準を維持しており、安定した収益構造が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 780億円 843億円
売上総利益 -億円 -億円
売上総利益率(%) -% -%
営業利益 170億円 178億円
営業利益率(%) 21.8% 21.1%


営業費用のうち、通信設備使用料が57億円(営業費用合計の約17%)、施設保全費が54億円(同約16%)、減価償却費が62億円(同約19%)を占めており、通信インフラの維持・運営に関わるコストが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


当期は、主力の電気通信事業が堅調に推移したことに加え、附帯事業におけるauでんき売上や端末販売収入が増加したことで、全体として増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
電気通信事業 505億円 507億円
附帯事業 275億円 336億円
連結(合計) 780億円 843億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金で借入返済を行い、投資も自己資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 113億円 151億円
投資CF 49億円 -36億円
財務CF -163億円 -112億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、事業環境の変化や顧客ニーズに対応し、モバイル事業の付加価値向上と高品質・低廉なサービス提供を通じて社会の発展に貢献することを目指しています。また、「お客さまに満足していただける企業、親しみと尊敬に価する企業」を目指すとともに、キャッシュ・フローを重視した高収益体質を構築し、株主や投資家にとって魅力ある企業となることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念に基づく「沖縄セルラー・コアバリュー」および「沖縄セルラーフィロソフィ」を制定し、役員・従業員が共有すべき考え方や価値観としています。これらを会社経営の両輪として実践することで、コーポレートガバナンスの強化と持続的な成長、中長期的な企業価値向上を目指す文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2025年度-2030年度」において、「新たな価値でこの島の未来を豊かにする 地元に全力! 沖縄セルラー」というビジョンを掲げています。

* 2030年度 営業収益1,000億円
* EPS(1株当たり当期純利益)340円超(2024年度比+30%超)
* 配当性向40%超

(4) 成長戦略と重点施策


「セルラー6X(síks)経営」を推進し、コア事業の安定成長と成長領域の拡大を目指しています。CX(顧客体験)、EX(従業員体験)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、DayX(働き方改革)、SX(サステナビリティ)、GX(グリーン)の6つのXを軸に経営を推進します。

* コア事業:地域密着の施策展開や、離島を含む通信ネットワークの構築。
* 成長領域:auでんき事業の小売電気事業への参入や、ビジネス事業における地域社会のデジタル化推進、スマート街づくりにより、2030年度に売上300億円規模を目指す。
* 投資:2030年度までに累計360億円規模の設備投資と戦略投資を実施予定。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「多様な人財が働きがいを持てる企業」への変革を目指し、人材の多様性確保と育成、社内環境整備を推進しています。採用ではキャリア採用の強化やコース別採用を導入し、育成面ではDX人材の育成や全社員のキャリア開発支援を行っています。また、年功序列から成果評価型への人事制度改定や、テレワーク環境の充実、健康経営の推進などにより、働きがいと働きやすさの両立を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.2歳 9.7年 7,236,404円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.1%
男性育児休業取得率 133.3%
男女賃金差異(全労働者) 74.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用人数(10人)、キャリア採用人数(25人)、DX基礎研修受講者数(370人)、女性の育児休業取得後の復帰率(100%)、ゼロトラスト型セキュリティ対応パソコン配布率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 通信市場の競争環境と事業環境の変化


競争促進政策や異業種参入により、サービス・料金プランが多様化しています。料金値下げによる収入低下、人口減少、新規事業の影響、端末価格上昇、新技術競争、他事業者との接続料金変動などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、エネルギー価格高騰や為替変動、政策動向などもリスク要因です。

(2) 情報セキュリティとサービスの適正利用


サイバー攻撃や不正利用のリスクに対し、同社は情報管理体制の強化や社員教育、販売店の管理徹底を行っています。しかし、情報漏洩やサービス停止、不正利用が発生した場合、ブランドイメージの失墜や損害賠償により、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 通信障害と自然災害への対応


通信ネットワークシステムに依存しているため、災害やシステム障害によるサービス停止のリスクがあります。同社は信頼性向上や防災対策に取り組んでいますが、大規模な障害や災害、パンデミック、サイバー攻撃等によりサービスが停止した場合、信頼性の失墜や顧客満足度の低下を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 法規制および制度変更の影響


電気通信事業法や電波法などの規制改廃や政策決定が事業に影響を与える可能性があります。接続料金算定、周波数割り当て、競争政策、消費者保護ルールなどの変更に加え、経済安全保障や環境規制の強化もリスク要因となります。これらに適切に対応できない場合、事業活動の制限やコスト増加につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。