沖縄セルラー電話 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

沖縄セルラー電話 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

沖縄セルラー電話は、東京証券取引所スタンダード市場に上場する電気通信事業者です。沖縄県内においてモバイルサービスや固定通信、インターネット接続サービスなどを展開しています。直近の業績は、モバイル総合収入の増加などにより前期比で増収を達成し、各段階利益も増益となるなど好調に推移しています。


※本記事は、沖縄セルラー電話の有価証券報告書(第35期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月9日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 沖縄セルラー電話ってどんな会社?


沖縄県内で圧倒的なシェアを持つ総合通信事業者です。地域密着型のサービス展開で県民の生活を支えています。

(1) 会社概要


1991年6月に第二電電(現KDDI)などの出資により設立され、1992年に携帯・自動車電話サービスを開始しました。2000年には「au」ブランドを導入し、2010年には固定通信事業に参入しました。2020年にUQモバイル沖縄を吸収合併し、2025年には電力小売事業へも参入するなど事業領域を拡大しています。

従業員数は連結545名、単体347名です。筆頭株主は親会社であり事業会社のKDDIで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は沖縄電力と琉球放送が名を連ねています。

氏名 持株比率
KDDI 54.32%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 2.37%
沖縄電力 2.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は宮倉康彰氏が務めています。取締役における社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宮倉 康彰 代表取締役社長 1990年に日本移動通信(現KDDI)に入社。中部テレコミュニケーション代表取締役社長等を経て、2026年より現職。
丸米 郁男 代表取締役執行役員専務技術担当 1984年に国際電信電話(現KDDI)に入社。同社ネットワーク技術本部副本部長等を経て、2026年より現職。
國吉 博樹 取締役執行役員常務コーポレート担当 1992年に同社に入社。同社営業企画部長、ビジネス開発部長、営業本部長等を経て、2026年より現職。
上地 球二 取締役執行役員営業統括本部長 1990年に国際電信電話(現KDDI)に入社。同社営業企画部長、UQモバイル沖縄代表取締役社長等を経て、2025年より現職。
髙橋 誠 取締役 2003年にKDDI執行役員に就任。同社代表取締役社長、CEO等を経て、2025年に同社代表取締役会長に就任。2025年より現職。
中山 朋子 取締役 2015年にKDDIコンシューマ事業企画部長に就任。同社パーソナル企画統括本部長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、阿波連光(弁護士法人ひかり法律事務所所長)、渕辺美紀(ビジネスランド代表取締役社長)、与儀達樹(大同火災海上保険取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気通信事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) モバイル通信サービス


沖縄県内において「au」「UQモバイル」「povo」のブランドでモバイル通信サービスを提供しており、主に個人および法人の顧客を対象としています。
収益源は契約者からの月額基本料やデータ通信料、契約事務手数料などです。同社が主体となってサービスを展開しています。

(2) 固定通信・ブロードバンドサービス


個人向けから法人向けまで幅広い固定通信サービスやFTTH(光ファイバー)サービスを提供しています。インターネット接続やデータ通信の基盤を担っています。
収益源は顧客からの音声伝送サービス収入、データ通信サービス収入、初期工事費用などです。同社および連結子会社のOTNetが連携して運営を行っています。

(3) 附帯事業(端末販売・電力小売など)


スマートフォンなどの携帯端末およびアクセサリーの販売や、電力小売サービス「auでんき」の提供を行っています。地域のデジタル化推進にも貢献しています。
収益源は代理店等に対する端末卸売収入や、利用者からの電力料金収入です。同社および連結子会社が事業を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一貫して増収増益のトレンドを維持しています。安定した通信インフラ需要を背景に、売上高は着実に拡大しており、利益水準も高い水準で推移しています。経常利益率は20%以上の高水準を保っており、非常に強固な収益基盤を構築していることが分かります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業収益 701億円 735億円 741億円 801億円 826億円
経常利益 153億円 161億円 172億円 179億円 189億円
利益率(%) 21.8% 21.9% 23.2% 22.3% 22.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 101億円 102億円 112億円 113億円 123億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、営業収益は順調に拡大しており、それに伴い営業利益も増加しています。営業利益率はともに21%台をキープしており、効率的な事業運営が行われていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 843億円 863億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 178億円 187億円
営業利益率(%) 21.1% 21.7%

(3) セグメント収益


同社は「電気通信事業」の単一セグメントですが、サービス別の収益を見ると、主力のモバイル総合収入が全体の半数以上を占め、着実に成長しています。また、携帯端末の販売も堅調に推移しており、通信インフラから端末まで総合的なサービス提供により安定した収益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
モバイル総合収入 442億円 460億円
携帯端末収入 158億円 166億円
その他 243億円 237億円
連結(合計) 843億円 863億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.2%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、事業環境の急速な変化と高度化・多様化する顧客ニーズに柔軟かつ迅速に対応するため、モバイル事業における付加価値の向上に努めています。高品質なサービスを低廉な料金で提供して社会の発展に貢献するとともに、顧客に満足され、親しみと尊敬に価する企業を目指すことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


創業以来大切にしてきた「地元に全力!」の精神を組織文化の基盤としつつ、社員一人ひとりが自律的に働き方を設計し、それぞれの強みを発揮できる組織づくりを進めています。新たなブランドステートメント「All for Family.」を体現し、地域密着型の事業展開を通じて沖縄経済を牽引する存在となることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2025年度-2030年度」を発表し、「新たな価値でこの島の未来を豊かにする 地元に全力! 沖縄セルラー」というビジョンを掲げています。「セルラー6X(síks)経営」を推進し、財務目標として「3増(増収、増益、連続増配)」および「配当性向40%超」の達成を目指しています。

* 2030年度 営業収益1,000億円
* 2030年度 EPS340円超(株式分割前の金額)
* 2030年度 成長領域の売上300億円規模

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長に向けて、コア事業の安定成長に加え、成長領域を飛躍的に伸ばす戦略をとっています。コア事業では顧客接点の品質向上や新たな顧客体験の創出を進めます。成長領域では電力小売事業への参入による「auでんき」事業の拡大や、クラウド、ドローンなどを活用したビジネス事業の拡充を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様かつ高度な人財の育成と働きがい・働きやすさの実現」を重要課題とし、自律的なキャリア形成支援と人財の最適配置を推進しています。働き方を自律的にデザインする「DayX」の定着や、コアスキル育成などの人的資本戦略ディレクションを設定し、社員が強みを発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.2歳 9.4年 7,200,451円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.3%
男性育児休業取得率 66.7%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 78.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 76.1%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) 76.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DX推進パスポート1取得率(3.0%)、DX推進パスポート2取得率(1.0%)、DX推進パスポート3取得率(0.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の激化と市場の変化


通信業界では異業種からの参入や料金プランの多様化が進んでおり、同社の競争優位性が損なわれた場合、期待通りの需要や収入を維持できず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、人口減少や無料通話アプリの拡大による音声通話料の縮小もリスクとなります。

(2) 情報セキュリティと顧客情報の取り扱い


サイバー攻撃や不正アクセスによる顧客情報の漏洩、またはサービスの不正利用が発生した場合、同社のブランドイメージや信頼が大きく失墜する恐れがあります。莫大な補償や対応コストの増加が生じ、財政状態に深刻な影響を与える可能性があります。

(3) 通信障害や自然災害の発生


地震や台風などの自然災害、サイバー攻撃等により、ネットワークシステムや通信機器に障害が発生しサービスが停止した場合、顧客満足度の低下や損害賠償を招くリスクがあります。また、エネルギー価格の高騰による調達費用の増加も懸念されます。

(4) 親会社(KDDI)への依存リスク


同社はKDDIの子会社であり、通信設備の運用や端末調達などの多くを同社に依存しています。KDDIの業績悪化や事業方針の変更、ブランドイメージの低下が生じた場合、同社の事業展開や財務状況に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。