横河ブリッジホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横河ブリッジホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横河ブリッジホールディングスは東証プライム市場に上場し、橋梁事業やシステム建築事業、土木・建築分野のエンジニアリング事業を主力としています。直近の業績は、システム建築事業やエンジニアリング事業が増収となったものの、橋梁事業の受注減少などの影響を受け、連結全体では減収減益のトレンドとなっています。


※本記事は、横河ブリッジホールディングスの有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 横河ブリッジホールディングスってどんな会社?


同社は、鋼橋やシステム建築、土木・建築分野のエンジニアリングで社会インフラを支える企業集団です。

(1) 会社概要


1907年に創業し、我が国最初の橋梁・鉄骨専業メーカーとして事業を開始しました。1961年に東証二部、1962年に東証一部に上場を果たし、1991年に社名を横河ブリッジに変更しました。2007年には持株会社体制へ移行して現在の社名となり、2026年にはビーアールホールディングスを連結子会社化して総合橋梁エンジニアリング体制を構築しています。

同社グループの従業員数は連結で2,769名、単体で67名です。筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には事業会社である日本製鉄が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.54%
日本カストディ銀行(信託口) 7.71%
日本製鉄 4.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役会長は髙田和彦氏、代表取締役社長執行役員は中村譲氏が務めています。社外取締役比率は約54%です。

氏名 役職 主な経歴
髙田 和彦 代表取締役会長 1985年同社入社。横河ブリッジの代表取締役社長などを経て、2026年4月より現職。
中村 譲 代表取締役社長執行役員 1984年横河工事(現横河ブリッジ)入社。同社東京工事本部長などを経て、2026年4月より現職。
宮本 英典 取締役専務執行役員 1984年同社入社。財務IR室長などを歴任し、2026年4月より現職。
湯川 雅之 取締役常務執行役員 1989年住友金属工業入社。横河NSエンジニアリング社長執行役員などを経て、2026年4月より現職。
廣川 亮吾 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。横河ブリッジの営業第一部部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、黒本和憲(元小松製作所常務執行役員)、天野玲子(元鹿島建設知的財産部長)、神野秀磨(元MS&ADインシュアランスGHD執行役員)、尾﨑聖治(元サッポロビール東海北陸本部長)、渋村晴子(本間合同法律事務所パートナー弁護士)、梶山園子(日本マクドナルドHD社外監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、橋梁事業、システム建築事業、エンジニアリング事業、先端技術事業、およびその他事業を展開しています。

橋梁事業


新設橋梁の設計・製作・現場施工のほか、既設橋梁の維持補修工事を行っています。発注者は主に国や地方自治体、高速道路会社などの公共機関が中心となっています。

公共事業やインフラ保全にかかる工事請負代金を収益源としています。運営は主に横河ブリッジ、横河NSエンジニアリング、楢崎製作所、極東興和、東日本コンクリートが行っています。

システム建築事業


自社ブランドである「yess建築」を用いたシステム建築の設計・製作・現場施工を行っています。顧客は工場や倉庫などの非住宅建築を必要とする民間企業が中心です。

民間企業等からの建築工事請負代金や部材販売代金を収益源としています。運営は主に横河ブリッジシステム建築が行っています。

エンジニアリング事業


トンネル用セグメントなどの地下構造物や海洋・港湾構造物の設計・製作のほか、超高層ビル等の鉄骨建方工事、可動建築システムの設計・保守などを提供しています。

大型プロジェクト等の工事請負代金やコンクリート二次製品などの販売代金を収益源としています。運営は主に横河NSエンジニアリング、横河ブリッジ、楢崎製作所、極東興和、東日本コンクリートが行っています。

先端技術事業


フラットパネルディスプレイや半導体製造装置向けの高精度フレームの設計・製造、および構造解析・情報処理・ソフトウェアの開発・販売を行っています。

精密機器メーカーへの製品販売代金やソフトウェア販売代金を収益源としています。運営は主に横河ブリッジ、横河ブリッジ技術情報、ケイ・エヌ情報システムが行っています。

その他事業


同社が保有する不動産の一部を物流倉庫等として貸し出す不動産賃貸事業を展開しています。

テナント等からの不動産賃貸料を収益源としています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向から一転して直近で減収に転じています。経常利益も堅調に推移していましたが、直近では減益となりました。利益率は9%から11%台の安定した水準を維持していますが、資材価格の高騰や事業環境の変化により、直近の利益水準は押し下げられています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,369億円 1,650億円 1,641億円 1,594億円 1,439億円
経常利益 150億円 155億円 159億円 163億円 136億円
利益率(%) 11.0% 9.4% 9.7% 10.2% 9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 35億円 43億円 49億円 62億円 43億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も前期比で減少しています。売上総利益率はわずかに改善していますが、販売費及び一般管理費等の負担増により、営業利益率は約1ポイント低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,594億円 1,439億円
売上総利益 283億円 261億円
売上総利益率(%) 17.8% 18.1%
営業利益 167億円 135億円
営業利益率(%) 10.5% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が28億円(構成比22%)、役員報酬が10億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


橋梁事業は新設橋梁の受注減により大きく減収減益となりました。一方、システム建築事業は安定した生産量を確保して増収増益となり、エンジニアリング事業や先端技術事業も堅調に売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
橋梁事業 983億円 781億円 137億円 101億円 12.9%
システム建築事業 408億円 434億円 26億円 41億円 9.4%
エンジニアリング事業 156億円 176億円 18億円 13億円 7.4%
先端技術事業 42億円 43億円 4億円 4億円 9.3%
その他事業 6億円 5億円 3億円 3億円 60.0%
調整額 - - -20億円 -27億円 -
連結(合計) 1,594億円 1,439億円 167億円 135億円 9.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -22億円 430億円
投資CF -20億円 -221億円
財務CF -37億円 67億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会公共への奉仕と健全経営」を企業理念に掲げています。また、経営ビジョンとして「匠の技とデジタル技術を融合し、良質な社会インフラを提供することで、安全・安心で豊かな暮らしに貢献します」と定めています。良質な製品をつくり、守り、次世代につなぐことで社会の発展に寄与することを使命としています。

(2) 企業文化


長年にわたり培ってきた「モノづくりへのこだわり」を企業価値創造の根幹に据えています。熟練した技術者の「匠の技」を重んじつつ、AIや最新のデジタル技術を掛け合わせることで、多様な人材が能力を最大限に発揮できるイノベーション促進の環境づくりを重視する文化です。

(3) 経営計画・目標


2025年度を初年度とする「第7次中期経営計画(2025年度〜2027年度)」を策定し、「成長分野へのグループ経営資源の積極投入と収益構造の強靭化」を基本方針としています。最終年度の数値目標は以下の通りです。

* 売上高2,000億円
* 営業利益185億円

(4) 成長戦略と重点施策


橋梁事業では、新たにグループに加わったビーアールホールディングスのPC技術と独自の鋼橋技術を融合させ、「総合橋梁エンジニアリング」体制を確立します。システム建築事業では冷凍冷蔵倉庫などの需要を取り込みトップシェアを拡大し、エンジニアリング事業ではリニア中央新幹線などの大型案件に注力して収益基盤を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」と「技術」を両輪とした成長戦略を推進し、多様な従業員が継続的に成長できる中長期的な育成を人材育成方針としています。また、働く人の安全と心身の健康を守り、人権を尊重する健全な職場環境の確保を社内環境整備方針に掲げ、計画的なジョブローテーションや資格取得支援を通じて専門性の高い人材を育成しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.9歳 17.3年 8,600,418円


※平均年間給与は基準外賃金および賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 106.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規雇用) 69.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 122.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有資格者数(1,294名)、定着率(新卒3年目)(89.3%)、新卒女性比率(31.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 重大災害の発生リスク


工場での生産活動や工事現場での施工において、労働災害や第三者を巻き込む災害が発生した場合、発注者からの指名停止処分による受注機会の喪失や損害賠償負担が生じ、業績や社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 品質不適合と検査不正のリスク


製品の特異性や複雑な構造、短納期などの事由から製造工程でエラーや検査不正が発生する懸念があります。重大な品質不適合が生じた場合、大規模な再製作による工期遅延や競争力の低下を招くリスクがあります。

(3) 事業環境の急激な変化に関するリスク


中期経営計画は策定時の市場動向や受注確率を前提としていますが、資材価格の高騰や建設コストの増大、発注者の予算制約などにより事業環境が大きく変化した場合、受注の減少や工事損益の悪化を招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。