横河ブリッジホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横河ブリッジホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の橋梁・鉄骨専業メーカーのパイオニア。橋梁事業やシステム建築等のエンジニアリング関連事業を主力とします。第161期は、エンジニアリング関連事業の売上減少等により減収となりましたが、橋梁事業の採算改善や投資有価証券売却益の計上等により、経常利益・当期純利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社横河ブリッジホールディングス の有価証券報告書(第161期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 横河ブリッジホールディングスってどんな会社?


橋梁事業とシステム建築等のエンジニアリング関連事業を展開する、国内橋梁・鉄骨業界のリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1907年に日本最初の橋梁・鉄骨専業メーカーとして創業し、1962年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2007年に持株会社体制へ移行し、現社名に変更。2009年には住友金属工業(現日本製鉄)と橋梁事業の共同事業化を行い、現横河NSエンジニアリングを子会社化しました。2022年に東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は2,095名、単体従業員数は59名です。筆頭株主と第2位は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位は橋梁用鋼材の主要仕入先であり共同開発等も行う事業会社の日本製鉄です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.06%
日本カストディ銀行(信託口) 7.81%
日本製鉄 4.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名、計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は髙田 和彦氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
髙田 和彦 代表取締役社長 1985年同社入社。横河ブリッジ代表取締役社長等を経て、2020年6月より現職。横河ブリッジ代表取締役社長執行役員を兼任。
中村 譲 代表取締役専務執行役員 1984年横河工事(現横河ブリッジ)入社。同社取締役常務執行役員等を経て、2025年6月より現職。横河ブリッジ代表取締役社長執行役員を兼任。
宮本 英典 取締役常務執行役員 1984年同社入社。財務IR室長、DX推進室長等を経て、2022年4月より現職。横河システム建築代表取締役社長執行役員を兼任。
湯川 雅之 取締役執行役員 1989年住友金属工業(現日本製鉄)入社。横河NSエンジニアリング取締役常務執行役員等を経て、2025年6月より現職。同社代表取締役社長執行役員を兼任。
廣川 亮吾 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。横河ブリッジ理事等を経て、2018年同社常勤監査役、2024年6月より現職。


社外取締役は、黒本 和憲(元小松製作所取締役兼専務執行役員)、天野 玲子(元鹿島建設知的財産部長)、神野 秀磨(元MS&ADインシュアランスグループホールディングス執行役員)、尾﨑 聖治(元サッポロホールディングス常勤監査役)、渋村 晴子(本間合同法律事務所パートナー弁護士)、梶山 園子(元LIXILグループ監査委員会事務局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「橋梁事業」「エンジニアリング関連事業」「先端技術事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 橋梁事業


新設橋梁の設計・製作・現場施工および既設橋梁の維持補修を行っています。公共インフラとしての橋梁建設や、高速道路の大規模更新・修繕工事などが主な業務です。国や地方自治体、高速道路会社などが主な顧客となります。

収益は、工事請負契約に基づく完成工事高等が主な源泉です。運営は主に株式会社横河ブリッジが行い、株式会社横河NSエンジニアリングおよび株式会社楢崎製作所も新設橋梁の設計・製作・現場施工を担っています。

(2) エンジニアリング関連事業


システム建築(yess建築)や可動建築システム(YMA)、トンネル用セグメント等の地下構造物、超高層ビル等の鉄骨、環境関連の水処理事業などを展開しています。工場・倉庫等の建築主やゼネコンなどが主な顧客です。

収益は、製品の販売や工事請負代金等が源泉となります。運営は、システム建築を株式会社横河システム建築、地下・海洋構造物を株式会社横河NSエンジニアリング、ビル鉄骨等を株式会社横河ブリッジ、水処理事業を株式会社楢崎製作所が行っています。

(3) 先端技術事業


橋梁事業で培った技術を応用し、液晶パネル・有機ELパネル・半導体製造装置向けの高精度フレーム(架台)などの精密機器製造や、ソフトウェア開発等の情報処理事業を行っています。精密機器メーカー等が主な顧客です。

収益は、製品の販売代金やソフトウェア開発費等が源泉となります。運営は、精密機器製造事業を株式会社横河ブリッジ、情報処理事業を株式会社横河技術情報が行っています。

(4) 不動産事業


同社グループが保有する不動産の一部を有効活用し、物流倉庫等として貸し出しています。

収益は、テナントからの不動産賃貸料収入が源泉となります。運営は主に横河ブリッジホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,300億円台から1,600億円台へと推移しています。2023年3月期以降は1,600億円規模で安定しており、利益面では経常利益率が約10%前後と高い収益性を維持しています。当期は減収ながらも、経常利益および当期純利益は過去最高を更新しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,361億円 1,369億円 1,650億円 1,641億円 1,594億円
経常利益 161億円 150億円 155億円 159億円 163億円
利益率(%) 11.8% 11.0% 9.4% 9.7% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 113億円 110億円 112億円 119億円 129億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、利益率が改善しています。売上原価率の低減や販管費のコントロールを通じて、効率的な経営が行われていることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,641億円 1,594億円
売上総利益 268億円 283億円
売上総利益率(%) 16.4% 17.8%
営業利益 159億円 167億円
営業利益率(%) 9.7% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が26億円(構成比22%)、役員報酬が9億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


橋梁事業は豊富な手持ち工事の進捗と設計変更の獲得により増収増益となり、利益を牽引しました。一方、エンジニアリング関連事業はシステム建築事業の受注伸び悩み等により減収減益となりました。先端技術事業は精密機器製造事業の受注回復により増収増益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
橋梁事業 974億円 983億円 88億円 137億円 13.9%
エンジニアリング関連事業 631億円 563億円 84億円 43億円 7.7%
先端技術事業 29億円 42億円 1億円 4億円 8.9%
不動産事業 6億円 6億円 4億円 3億円 55.0%
調整額 - - -18億円 -20億円 -
連結(合計) 1,641億円 1,594億円 159億円 167億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

横河ブリッジホールディングスは、営業活動によるキャッシュ・フローが売上債権の増加により使用超過となりました。投資活動では、有形固定資産等の取得により使用超過となりました。財務活動では、配当金の支払い等により使用超過となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -16億円 -22億円
投資CF -10億円 -20億円
財務CF 25億円 -37億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会公共への奉仕と健全経営」を理念として掲げ、誠実なモノづくりを通じて良質で安全な社会インフラの整備等を行い、社会に貢献することを目指しています。また、経営ビジョンとして「匠の技とデジタル技術を融合し、良質な社会インフラを提供することで、安全・安心で豊かな暮らしに貢献します」を掲げています。

(2) 企業文化


「誠実なモノづくり」を行い、良き企業市民としての自覚を持って法令や社会規範等を遵守することを重視しています。また、働く人々が信頼感で結ばれ、安全で安心して生活できる企業づくりに努める姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2025年度を初年度とする第7次中期経営計画(2025年度~2027年度)を策定しています。最終年度(2027年度)の数値目標として、以下を掲げています。

* 売上高:2,000億円
* 営業利益:185億円

(4) 成長戦略と重点施策


「成長分野へのグループ経営資源の積極投入と収益構造の強靭化」を基本方針とし、橋梁保全事業、システム建築事業、エンジニアリング事業(土木関連)、全社的なデジタル化推進の4つを注力分野としています。橋梁事業では保全事業を中心とした領域拡大、システム建築事業ではトップシェアの維持拡大、エンジニアリング事業では新規分野への進出を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「良質な製品をつくり、守り、次世代につなぐことで社会の発展に貢献すること」を基本方針とし、会社の持続的な成長には人材育成が極めて重要と位置づけています。高い専門性を身につけるため、多様な従業員一人ひとりが継続的に成長できるよう中長期的な観点で育成する方針です。また、働く人の安全と心身の健康を守り、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境を確保することを社内環境整備の方針としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 16.7年 8,576,885円


※平均年間給与は基準外賃金および賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用) 74.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有資格者数(1,321名)、資格取得支援実施率(100%)、定着率(95.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 死亡災害のリスク


製造部門や現場部門において重大な労働災害が発生した場合、生産活動の遅延や指名停止措置による受注機会の喪失、社会的信用の失墜等により、業績や事業活動に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。同社は労働安全衛生マネジメントシステムを構築し、過去の事例周知や安全パトロール等による再発防止対策に取り組んでいます。

(2) 第三者災害のリスク


工場製品輸送中の交通事故や、工事現場における資機材等の落下・倒壊によって第三者が被災する災害が発生した場合、指名停止等の行政処分や損害賠償、社会的信用の失墜等により、事業活動に重大な悪影響を与える可能性があります。同社は輸送計画書や施工計画書の作成、作業手順書への対策反映等によりリスク低減を図っています。

(3) 検査不正の発生リスク


製品の製作工程におけるエラーを担当者の判断で修正せず合格させる等の検査不正が発生した場合、企業の社会的信用を大きく損なう可能性があります。同社は適切な工程管理やデジタル技術を活用した報告書作成プロセスの自動化、定期的な人事異動等により、不正の発生要因を排除する対策を講じています。

(4) 人材の確保・育成リスク


多角的な事業の優位性を確保するためには幅広い経験とスキルを持つ人材が不可欠ですが、離職者増加や採用計画未達により人材が不足した場合、受注減少や技術断絶等のリスクがあります。同社は体系的な教育研修やジョブローテーション、働きやすい環境づくり等を通じて、人材の確保・育成に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。