駒井ハルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

駒井ハルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する駒井ハルテックは、橋梁や鉄骨、インフラ環境事業を主力とする企業です。直近の業績トレンドは、大型案件の減少等により減収となったものの、橋梁事業における収益管理の徹底等により営業利益は増加し、減収増益で着地しています。


※本記事は、株式会社駒井ハルテックの有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 駒井ハルテックってどんな会社?


社会基盤となる橋梁や鉄骨の製造・施工から、風力発電設備の提供までを手掛けるインフラ企業です。

(1) 会社概要


同社は1883年に創業し、1943年に駒井鐵工所として設立されました。1989年に駒井鉄工へ社名を変更し、1961年の上場を経て事業を拡大してきました。2010年にはハルテックと合併して現在の駒井ハルテックへと社名を変更し、近年では洋上風力発電などのインフラ環境事業にも注力しています。

現在の従業員数は連結で618名、単体で486名です。筆頭株主はSUN YOU NING氏で、第2位にエムエム建材、第3位に日本生命保険相互会社が名を連ねており、国内外の投資家や取引関係のある事業会社・金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
SUN YOU NING 5.00%
エムエム建材 4.20%
日本生命保険相互会社 3.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は駒井恵美氏が務めており、社外取締役の比率は27.3%(11名中3名)となっています。

氏名 役職 主な経歴
駒井 恵美 代表取締役社長 1988年同社入社。経営企画室長や環境事業部担当を経て2021年に取締役就任。2026年4月より現職。
中村 貴任 取締役会長 1983年同社入社。財務部長や管理本部長などを歴任し、代表取締役社長を経て2026年4月より現職。
駒井 寛 取締役兼執行役員鉄構事業統括管理本部長調達室担当関係会社担当 1989年同社入社。橋梁工事部長や総務部長を経て2021年取締役に就任。2026年1月より現職。
森川 友記 取締役兼執行役員橋梁事業統括工事本部長 1997年同社入社。橋梁工事部長などを経て、2024年に工事本部長、2025年6月より現職。


社外取締役は、本井敏雄(奥村組土木興業環境開発本部担当部長等)、国崎肇(元三井住友銀行常務執行役員等)、田畑順二朗(ニッセイ保険エージェンシー代表取締役社長等)です。

2. 事業内容


同社グループは、橋梁事業、鉄骨事業、インフラ環境事業、不動産事業、およびその他の事業を展開しています。

橋梁事業


鋼橋の積算から設計・製作・現場施工までの建設プロセスを一貫して担っています。橋の新設だけでなく、高度経済成長期に建設された橋梁の予防保全・維持補修や耐震補強工事にも取り組み、国や地方公共団体、高速道路会社などにサービスを提供しています。

橋梁の建設やメンテナンス工事の対価を収益源としています。事業の運営は、駒井ハルテックおよび東北鉄骨橋梁が主に担当しています。

鉄骨事業


官公庁庁舎や超高層オフィスビルなど、数多くの著名な大型建築物向けに鉄骨を製造・納入しています。溶接加工などの施工データの蓄積と高度な技術力をベースに、設計から製作、現場施工までの全工程に対応可能な体制を整えています。

大型案件における鉄骨の納入や現場建方の対価が主な収益源です。運営は同社のほか、東北鉄骨橋梁、シップス、KHファシリテックなどが担っています。

インフラ環境事業


定格出力300kWや1MWの陸上風力発電設備を中心に、国内外向けに製作および現場施工を行っています。厳しい気象・立地条件に対応するため、事前調査からメンテナンスまでのトータルサービスを提供し、再生可能エネルギーの普及を支援しています。

風力発電設備の販売や現場施工、およびメンテナンス費用のほか、海外における鋼製橋梁等の引合いに対する提案で収益を得ています。本事業は同社などが運営しています。

不動産事業


大阪市西淀川区に所有する大阪事業所の未利用地部分などを活用し、不動産賃貸サービスを提供しています。

賃貸による家賃収入を安定的な収益源としています。運営は同社およびその子会社が担当しています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、グループ内で発生する印刷業務などを展開しています。

印刷物の提供等による対価を収益としています。この事業は主にシップスが運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において、売上高は第95期をピークに減少傾向にありますが、経常利益は変動を伴いつつ直近では増益を確保しています。利益率は1〜6%の間で推移しています。

項目 第93期 第94期 第95期 第96期 第97期
売上高 296億円 397億円 554億円 406億円 344億円
経常利益 18億円 5億円 13億円 6億円 8億円
利益率(%) 6.1% 1.2% 2.4% 1.6% 2.4%
当期利益 14億円 4億円 10億円 16億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間において売上高は減少したものの、売上総利益は増加し、売上総利益率および営業利益率ともに改善が見られます。

項目 第96期 第97期
売上高 406億円 344億円
売上総利益 43億円 47億円
売上総利益率(%) 10.5% 13.6%
営業利益 3億円 5億円
営業利益率(%) 0.7% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、調査研究費が12億円(構成比29%)、従業員給料手当が10億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の橋梁事業は利益率16.3%と高水準を維持していますが、鉄骨事業とともに減収となりました。インフラ環境事業は先行投資の影響で赤字が継続しています。

区分 売上(第96期) 売上(第97期) 利益(第96期) 利益(第97期) 利益率
橋梁事業 159億円 132億円 26億円 22億円 16.3%
鉄骨事業 235億円 205億円 -1億円 9億円 4.3%
インフラ環境事業 7億円 2億円 -5億円 -6億円 -315.8%
不動産事業 4億円 4億円 3億円 3億円 80.0%
その他 1億円 1億円 -0.1億円 -0.1億円 -5.2%
連結(合計) 406億円 344億円 3億円 5億円 1.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローのパターンを示しています。

項目 第96期 第97期
営業CF 82億円 47億円
投資CF -9億円 -19億円
財務CF -36億円 -70億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.6%でスタンダード市場の製造業平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「高い技術力で夢のある社会づくりに貢献する」を経営理念に掲げています。関東と関西に保有する主力工場等の経営資源を最大限に活用し、技術力を結集した効率的な事業運営を目指すとともに、社会基盤整備の一翼を担う企業としての自覚と責任を持った経営を行っています。

(2) 企業文化


持続的な成長を実現するためには、高度な技術力を有する人材の確保・育成および技術継承が不可欠であると認識し、「人材強化」を重要施策として位置付けています。従業員の能力や成果を適切に評価して処遇へ反映させ、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進める文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2026」の達成に向け、収益力の強化と持続的成長の実現を目標としています。人材の確保・育成および生産性向上に向けた取り組みを通じて、安定的な収益基盤の構築と企業価値の向上に努めています。

(4) 成長戦略と重点施策


橋梁の新設発注量の低迷や鉄骨需要の減少といった厳しい事業環境に対応するため、民間需要の開拓や既存インフラの補修・更新需要の獲得に注力しています。また、次世代エネルギーとして期待される洋上風力発電分野において、洋上風車タワーの製造体制構築に向けた大型設備投資を推進し、新たな成長の柱として育成しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材強化」を中期経営計画の重要施策とし、技術者・技能者および次世代リーダーの育成、人材の流動化による最適配置、DX人材の育成を重点課題としています。資格取得支援や階層別教育、専門教育の充実を図ることで、高度な技術・技能の継承と組織能力の向上を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第97期 44.2歳 15.2年 5,989,446円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 9.1%
男女賃金差異(全労働者) 76.3%
男女賃金差異(正規雇用) 75.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全労働者に占める女性労働者の割合(18.7%)、管理職育成研修受講率(90.3%)、技術系資格取得率(7.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共市場への依存と橋梁発注量の減少


橋梁事業は国や地方公共団体からの発注に大きく依存しているため、政策や財政事情による発注量の抑制が続いた場合、受注量の減少を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は民間需要の開拓や橋梁以外の鋼構造物への取り組みを進めて対応しています。

(2) 鋼材など資機材価格の高騰


鋼材をはじめとする材料価格が高騰した際、その上昇分を速やかに製品価格へと転嫁できない場合、収益性が圧迫され業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。発注者に対するきめ細やかな価格交渉を通じて適正な価格転嫁を図っています。

(3) 大型工事における原価の先行発生


橋梁事業や鉄骨事業の大型工事において、取引先の追加・変更要望に対応するため原価が先行して発生することがあります。タイムリーな売上追加計上ができない場合、収益に影響が及ぶ可能性があるため、発注者との関係強化による追加変更精算の徹底に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。