駒井ハルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

駒井ハルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、橋梁や超高層ビルの鉄骨、風力発電設備などを手掛ける建設・エンジニアリング企業です。2025年3月期の連結業績は、橋梁・鉄骨事業における大型工事の端境期や受注競争の影響等により、売上高・経常利益ともに前期を下回り、減収減益となりました。


※本記事は、株式会社駒井ハルテック の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 駒井ハルテックってどんな会社?


1883年創業の老舗企業で、橋梁・鉄骨・鉄塔などの鋼構造物の設計・製作・施工を主力とする会社です。

(1) 会社概要


同社は1883年に大阪で創業し、1943年に株式会社駒井鐵工所として設立されました。2010年に株式会社ハルテックと合併し、現在の商号に変更しています。2022年の市場区分見直しでプライム市場へ移行しましたが、2025年6月に東京証券取引所スタンダード市場へ市場区分を変更しました。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は620名、同社単体では493名です。筆頭株主は株式会社三井住友銀行、第2位は鉄鋼建材商社のエムエム建材株式会社、第3位は日本生命保険相互会社となっており、金融機関や取引先企業が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
三井住友銀行 4.40%
エムエム建材 4.10%
日本生命保険相互会社 3.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は中村貴任氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中村 貴任 代表取締役社長 1983年入社。財務部長、管理本部長、専務取締役などを歴任し、2021年4月より現職。
駒井 恵美 専務取締役兼専務執行役員環境インフラ本部長 1988年入社。経営企画室長、環境事業部担当、常務取締役などを経て、2025年6月より現職。
飯塚 勉 専務取締役兼専務執行役員管理本部長関係会社担当 1987年太陽神戸銀行入行。同社管理本部長、常務取締役などを経て、2025年6月より現職。
駒井 寛 取締役兼執行役員調達室担当鉄構事業統括 1989年入社。管理本部総務部長、鉄構営業本部長などを経て、2024年4月より鉄構事業統括。
森川 友記 取締役兼執行役員橋梁事業統括工事本部長 1997年入社。工事本部副本部長、工事本部長などを経て、2025年4月より橋梁事業統括。


社外取締役は、本井敏雄(元西宮副市長)、国崎肇(元日本総合研究所副社長)、田畑順二朗(ニッセイ保険エージェンシー社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「橋梁事業」「鉄骨事業」「インフラ環境事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 橋梁事業


鋼橋の積算から設計・製作・現場施工までを一貫して手掛けています。国道や高速道路、鉄道などの新設橋梁工事に加え、高度経済成長期に建設された橋梁の老朽化対策としての保全・補修・補強工事を行っています。主な顧客は国、地方公共団体、高速道路会社などです。

収益は、橋梁の建設工事および維持補修工事の請負代金として発注者から受領します。運営は主に同社が行うほか、連結子会社の東北鉄骨橋梁株式会社が製作や現場施工の一部を担っています。

(2) 鉄骨事業


超高層ビルや大型建造物に用いられる鉄骨・鉄塔の設計・製作・現場建方を行っています。国土交通省のSグレード認定を取得した工場を2箇所所有し、官公庁庁舎や超高層オフィスビルなどの大型案件に参画しています。主な顧客はゼネコンや施主です。

収益は、鉄骨製品の製作および現場施工の請負代金として顧客から受領します。運営は同社に加え、東北鉄骨橋梁株式会社、株式会社シップス、KHファシリテック株式会社などの連結子会社が製作や現場施工の一部を担っています。

(3) インフラ環境事業


主に陸上風力発電設備の製作および現場施工を行っています。中型風車メーカーとして、日本の地形や気象条件に適した風車の開発・製造・メンテナンスを提供しています。また、海外での鋼製橋梁等の提案も行っています。

収益は、風力発電設備の販売および設置工事、メンテナンス料として顧客から受領します。また、売電事業による収入も含まれます。運営は主に同社が行っています。

(4) 不動産事業


大阪市西淀川区にある大阪事業所の未利用地部分等について、賃貸事業を行っています。

収益は、保有不動産の賃貸料としてテナントから受領します。運営は同社および連結子会社が行っています。

(5) その他


報告セグメントに含まれない事業として、印刷業務やOA機器・文具等の取り扱いを行っています。

収益は、印刷物の製作や物品販売の対価として受領します。運営は連結子会社の株式会社シップスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台から500億円台の間で変動しています。2024年3月期に売上高554億円を記録しましたが、2025年3月期は406億円へ減少しました。利益面では、経常利益率が1%〜6%台で推移しており、年度ごとの変動が見られます。当期純利益は2025年3月期に投資有価証券売却益等の計上により増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 303億円 296億円 397億円 554億円 406億円
経常利益 8億円 18億円 5億円 13億円 6億円
利益率(%) 2.7% 6.1% 1.2% 2.4% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 14億円 4億円 10億円 16億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は26.8%減少しましたが、売上総利益は微増し、売上総利益率は改善しました。一方で、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少し、営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 554億円 406億円
売上総利益 42億円 43億円
売上総利益率(%) 7.6% 10.5%
営業利益 7億円 3億円
営業利益率(%) 1.3% 0.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が10億円(構成比24%)、調査研究費が8億円(同21%)を占めています。特に調査研究費は前期の約3倍に増加しています。

(3) セグメント収益


橋梁事業と鉄骨事業が売上の大半を占めていますが、両事業ともに前期比で減収となりました。特に鉄骨事業は営業損失(赤字)に転落しています。インフラ環境事業は売上が増加しましたが、開発費用の先行等により損失が拡大しました。不動産事業は安定的に利益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
橋梁事業 205億円 159億円 22億円 26億円 16.1%
鉄骨事業 342億円 235億円 1億円 -1億円 -0.4%
インフラ環境事業 2億円 7億円 -3億円 -5億円 -64.5%
不動産事業 4億円 4億円 3億円 3億円 79.4%
その他 1億円 1億円 -0億円 -0億円 -7.3%
調整額 -1億円 -1億円 -16億円 -20億円 -
連結(合計) 554億円 406億円 7億円 3億円 0.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

駒井ハルテックは、営業活動により資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化し、財務活動で資金調達と返済のバランスを取ることで、安定的な資金繰りを実現しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少による収入が主な要因となり、プラスで着地しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却や補助金の受取があったものの、固定資産の取得による支出が上回りました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入があったものの、借入金の返済や社債の償還などが支出を上回る結果となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -86億円 82億円
投資CF -1億円 -9億円
財務CF 74億円 -36億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「高い技術力で夢のある社会づくりに貢献する」を経営理念としています。橋梁、鉄骨、風車といった国民の生活基盤となる構造物の建設に従事し、社会基盤整備の一翼を担う企業として自覚と責任を持った経営を行うことを方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「一人一人が利益を追求する変革の当事者たれ!」をスローガンとして掲げています。これは、利益追求と社会貢献、企業価値の向上に邁進するための指針であり、社員一人ひとりが当事者意識を持って変革に取り組む姿勢を重視する文化を表しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画を推進しており、2025年度はその最終連結会計年度にあたります。持続的成長と中長期的な企業価値向上に取り組むことを目標としています。具体的な数値目標の記載はありませんが、各事業を通じた社会基盤整備への貢献と効率的な事業運営を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存の橋梁・鉄骨事業での技術力を活かしつつ、成長分野である脱炭素化関連への投資を強化しています。特に、洋上風力発電分野への参入を計画しており、NEDOのグリーンイノベーション基金事業や経済産業省の補助金を活用して、洋上風車タワー製造のための大規模設備投資を実施中です。

- 洋上風車タワー製造:2026年のサプライヤー認証取得、2027年以降の製作契約締結を目指し、大型試験体の製作や溶接・塗装の合理化技術開発を進めています。
- 橋梁・鉄骨事業:国土強靭化や老朽化対策に伴う需要を取り込みつつ、生産性向上による収益力強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、技術力の源泉である人的資本への投資を重要視しています。多様な人材が能力を発揮できるよう、各種資格取得支援やスキル経験の蓄積、人材開発投資を進めています。また、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や労働安全環境の整備にも取り組み、従業員が安心して働ける環境づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 15.8年 5,967,650円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 74.4%
男女賃金差異(正規雇用) 75.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.8%


※男性育児休業取得率は、提出会社(株式会社駒井ハルテック)の実績値です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全労働者に占める女性労働者の割合(18.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への依存及び橋梁市場縮小によるリスク


主力事業の一つである橋梁事業は、国や地方公共団体からの発注に大きく依存しています。今後、政策や財政事情により発注量が減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、民間需要への対応や橋梁以外の鋼構造物への取り組みを進めています。

(2) 鋼材価格等の変動に関するリスク


鋼材等の材料価格が高騰した際、その上昇分を製品価格に速やかに転嫁できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は、発注者への価格転嫁を図るべくきめ細かく交渉することで対応しています。

(3) 原価先行に伴うリスク


橋梁・鉄骨事業において、取引先の追加変更要望により原価が先行発生する場合があります。工事の大型化に伴い先行原価が多額になる中、タイムリーな売上追加計上ができない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。発注者との関係強化やきめ細かい追加変更精算に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。