瀧上工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

瀧上工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

瀧上工業は東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場し、橋梁、鉄骨などの鋼構造物の設計や製作、施工を行う総合エンジニアリング企業です。直近の業績では、鋼道路橋や鉄骨需要の伸び悩みにより減収となったものの、保全工事の収益改善や設計変更の獲得などにより大幅な増益を達成しました。


※本記事は、瀧上工業株式会社の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 瀧上工業ってどんな会社?


橋梁や鉄骨を中心とする鋼構造物の製造と現場施工を手掛け、社会インフラ整備に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1937年に瀧上鐵骨鐵筋工業として設立され、1939年に瀧上工業へと改称しました。1961年に東京、名古屋証券取引所へ上場し、その後も全国各地に営業所を開設しながら事業を拡大しました。2014年には関連企業6社を完全子会社化し、2022年に現在の市場へ移行するなど、グループ体制を継続的に強化しています。

現在の従業員数は連結で488名、単体で312名です。大株主については、筆頭株主が事業会社の瀧上精機工業で、第2位は万年青投資事業有限責任組合、第3位は事業会社のジーグとなっています。

氏名 持株比率
瀧上精機工業 19.32%
万年青投資事業有限責任組合 9.87%
ジーグ 5.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 監査室管掌は瀧上晶義氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
瀧上晶義 代表取締役社長監査室管掌 1990年に同社入社。取締役営業本部営業部部長等を経て、2010年代表取締役社長監査室管掌。2024年より現職。
小山研造 取締役兼 常務執行役員社長補佐兼 コンプライアンス統括兼 品質管理室管掌兼 安全環境管理室管掌・橋梁インフラ本部長 2015年に同社入社し執行役員保全本部長。2018年取締役兼常務執行役員。2024年より現職。
瀧上定隆 取締役兼 常務執行役員調達室管掌・鉄構本部長 2009年に同社入社。執行役員管理本部長等を経て、2019年取締役兼常務執行役員。2025年より現職。
武藤英司 取締役兼 執行役員橋梁インフラ本部技術統括部長 1986年に同社入社。品質管理室長等を経て、2018年取締役兼執行役員。2024年より現職。
岩田亮 取締役兼 執行役員管理本部管掌・社長室長兼 事業創造本部長 2018年に同社入社し管理本部副本部長。2021年取締役兼執行役員。2024年より現職。
畠山智行 取締役兼 執行役員橋梁インフラ本部副本部長兼 保全統括部長 1986年に瀧上建設興業入社後、2005年同社転籍。2024年取締役兼執行役員。2025年より現職。
香川尚史 取締役兼 執行役員橋梁インフラ本部副本部長 2008年に同社入社。営業本部大阪支店長等を経て、2025年取締役兼執行役員。2026年より現職。
織田博孝 取締役監査等委員(常勤) 1994年に同社入社。執行役員企画管理室長等を経て、2020年取締役技術本部長。2024年より現職。


社外取締役は、小野寺隆実(元三菱UFJニコス会長)、大瀧敏幸(元中部電力執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鋼構造物製造事業」「不動産賃貸事業」「材料販売事業」「運送事業」「工作機械製造事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 鋼構造物製造事業


鋼橋、鉄骨、その他鉄構物の設計、製作、施工などを提供しており、国土交通省や高速道路各社を中心とする公共事業のほか、民間建設案件を対象としています。
収益源は製品の受注生産販売および施工代金であり、運営は主に同社や子会社の瀧上建設興業、東京フラッグ、菊池鉄工所などが行っています。

(2) 不動産賃貸事業


同社グループが保有する不動産の賃貸および管理業務を提供しており、賃貸用アパート、老人介護施設、賃貸オフィスビルなどを対象としています。
収益源は保有する不動産物件からの賃貸収入であり、運営は主に同社および子会社の丸定産業、瀧上工作所、瀧上不動産が行っています。

(3) 材料販売事業


鋼板の切断や加工販売、鉄筋および建材の販売のほか、ボルトやナット類などの製造販売を顧客に向けて幅広く提供しています。
収益源は鋼板や鉄筋などの材料販売代金であり、運営は主に子会社の丸定産業や、その他の関係会社である瀧上精機工業が行っています。

(4) 運送事業


橋梁や鉄骨、その他鉄構物などの大型製品の輸送サービスを提供しており、主にグループ内の製品輸送を担いながら外部顧客にも対応しています。
収益源は顧客から受け取る運送サービスにかかる代金であり、運営は主に子会社の丸定運輸が行っています。

(5) 工作機械製造事業


工作機械や自動車用工作機械、冶工具などの設計、製作および販売サービスを提供し、関連業界の顧客を対象としていました。
収益源は製品の販売代金ですが、運営を担っていた子会社のケイシステックニジューサンは清算されたため、現在は事業を終了しています。

(6) その他


報告セグメントに含まれない事業として、太陽光発電設備を活用した再生可能エネルギーの供給などを提供しています。
収益源は自家発電設備による売電収入などであり、運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長期的に増加基調で推移してきましたが、直近は大型案件の減少等により微減となりました。一方、経常利益は変動しつつも当期は大幅に改善し、過去5期間で最高の水準を記録するなど、着実な収益力強化が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 147億円 186億円 233億円 238億円 234億円
経常利益 2億円 8億円 12億円 3億円 14億円
利益率(%) 1.5% 4.4% 5.2% 1.4% 6.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 8億円 8億円 1億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前期からわずかに減少したものの、売上総利益は大幅に増加し、利益率も大きく改善しました。これにより、営業利益は前期の赤字から黒字へと力強い転換を果たしています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 238億円 234億円
売上総利益 17億円 26億円
売上総利益率(%) 7.3% 11.0%
営業利益 -4億円 5億円
営業利益率(%) -1.6% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が7億円(構成比34%)、役員報酬が2億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の鋼構造物製造事業は設計変更の獲得などにより売上が微増し、利益も大幅に改善しました。不動産賃貸事業も好調に推移しましたが、材料販売事業は需要の落ち込みにより減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
鋼構造物製造事業 207億円 207億円
不動産賃貸事業 10億円 10億円
材料販売事業 18億円 14億円
運送事業 1億円 1億円
工作機械製造事業 2億円 0.6億円
その他 0.3億円 0.3億円
連結(合計) 238億円 234億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFもプラス、財務CFがマイナスであることから、営業利益や資産売却で得た資金で借入の返済を進める改善型の局面にあると判定されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 36億円 2億円
投資CF -25億円 9億円
財務CF 26億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「鋼の強靭さと人の優しさを融合させ、高品質で安心・安全な社会基盤づくりに貢献する」ことを経営理念に掲げています。社会インフラが成熟し多様化していく時代において、この理念のもとで社会課題の解決や地球環境の保護に貢献していくことを存在理由としています。

(2) 企業文化


同社は、あらゆる分野において「受け継ぐ技術、さらなる高みへ」を合言葉に、信頼される総合エンジニアリング企業を目指すというビジョンを掲げています。長年にわたり培われてきた技術と技能、そして顧客の信頼をベースとして、社員一人ひとりの価値観と自律性を尊重する文化を重視して経営を行っています。

(3) 経営計画・目標


第5次中期経営計画において、「変革とチャレンジ」をキーワードに持続的成長と企業価値の向上を目指しています。直近の環境変化を踏まえ、最終年度の連結数値目標を見直して設定しています。

・売上高:235億円
・営業利益:2億円

(4) 成長戦略と重点施策


鋼構造物製造事業の利益向上を最重要課題とし、事業戦略、財務戦略、経営基盤の強化を実行します。新設橋梁事業では中部地区を重点とした受注拡大やDX推進に取り組み、橋梁保全事業では大型案件への注力やグループ連携を強化します。鉄骨事業では首都圏の超高層案件に挑戦し、資本効率を意識した経営基盤の構築を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


主力事業の強化と変化する事業環境に適応するため、専門性と多様性に富んだ人材の確保・育成を進めています。社員一人ひとりの価値観や自律性を尊重し、安心・安全・健康で働きがいのある職場環境を整備する方針です。人事情報システムの活用による適材適所の配置やDX人材の計画的な育成など、多角的な取り組みを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.2歳 15.2年 6,541,204円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 44.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める外国人従業員の比率(7.4%)、採用者に占める中途採用者の比率(61.9%)、有給休暇取得率(73.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 発注案件の減少リスク


鋼構造物製造事業は公共事業の割合が大半を占めており、鉄骨事業も民間設備投資の動向に依存しています。原材料や人件費の高騰、不測の事態によって発注数量が予想を大幅に下回るまで減少した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 固定資産の減損リスク


同社グループは、鋼構造物製造事業や不動産賃貸事業を中心に多くの固定資産を保有しています。今後、市場環境の悪化や業績の低迷などが発生した場合、保有する固定資産の価値が低下し、減損損失が発生して業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 人材確保の困難化リスク


鋼構造物製造事業においては、高度な知識を持つ技術者の確保が重要となります。近年の労働者人口の減少を背景とした建設業の人材不足が進行する中で、必要な人材を十分に確保できなかった場合、事業遂行に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 大規模災害等による影響リスク


同社グループの生産拠点は愛知県の知多半島に集中しています。今後、この地区を襲うと予測される南海トラフ大地震などの大規模災害が発生した場合、生産設備等に多大な被害が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。