※本記事は、瀧上工業株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 瀧上工業ってどんな会社?
橋梁や鉄骨といった鋼構造物の設計から製作、施工までを一貫して手がける、老舗の総合エンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1937年に瀧上鐵骨鐵筋工業として設立され、1939年に現在の社名となりました。1961年に東証・名証の市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード・名証メインへ移行しました。2024年には株式会社菊池鉄工所を連結子会社化するなど、事業基盤の拡大を進めています。
連結従業員数は509名、単体では322名です。筆頭株主は同社の関連会社である瀧上精機工業で、第2位は投資事業組合の万年青投資事業有限責任組合、第3位は株式会社ジーグとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 瀧上精機工業 | 17.09% |
| 万年青投資事業有限責任組合 | 12.19% |
| ジーグ | 5.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は瀧上晶義氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀧上晶義 | 代表取締役社長監査室管掌 | 1990年同社入社。営業本部長、管理本部管掌などを歴任し、2010年代表取締役社長に就任。現在は監査室管掌を兼務し、2024年より現職。 |
| 小山研造 | 取締役兼常務執行役員社長補佐兼コンプライアンス統括兼品質管理室管掌兼安全環境管理室管掌・橋梁インフラ本部長 | 瀧上建設興業取締役を経て2015年同社入社。保全本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 瀧上定隆 | 取締役兼常務執行役員調達室管掌・鉄構本部長 | 2009年同社入社。管理本部長、生産本部購買グループリーダーなどを経て、2025年より現職。 |
| 武藤英司 | 取締役兼執行役員橋梁インフラ本部技術統括部長 | 1986年同社入社。生産本部長、鉄構生産本部長、技術本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 岩田亮 | 取締役兼執行役員管理本部管掌・社長室長兼事業創造本部長 | 2018年同社入社。管理本部長、事業創造本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 浜島伸治 | 取締役兼執行役員橋梁インフラ本部営業統括部管掌 | 2014年同社入社。営業本部副本部長、営業本部長、橋梁インフラ本部営業統括部長を経て、2025年より現職。 |
| 畠山智行 | 取締役兼執行役員橋梁インフラ本部副本部長兼保全統括部長 | 1986年瀧上建設興業入社。同社転籍後、保全本部副本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 織田博孝 | 取締役監査等委員(常勤) | 1994年同社入社。企画管理室長、管理本部管掌兼技術本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、小野寺隆実(元三菱UFJニコス会長)、大瀧敏幸(元中部電力執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鋼構造物製造事業」「不動産賃貸事業」「材料販売事業」「運送事業」「工作機械製造事業」および「その他」事業を展開しています。
■鋼構造物製造事業
橋梁や鉄骨、その他鉄構物の設計、製作、施工、現場据付までを行っています。官公庁や高速道路会社からの公共工事や、民間企業からの建設工事が主な対象です。
収益は、発注者からの工事請負代金や製品販売代金から得ています。運営は主に同社が担うほか、瀧上建設興業、東京フラッグ、菊池鉄工所などの子会社も製造や施工を行っています。
■不動産賃貸事業
自社グループが保有する不動産の賃貸および管理業務を行っています。
収益は、テナントや入居者からの賃貸料収入です。運営は同社および丸定産業、瀧上工作所、瀧上不動産が行っています。
■材料販売事業
鋼板の切断・加工販売や、鉄筋・建材の販売を行っています。
収益は、顧客への鋼材等の販売代金です。運営は主に丸定産業が行っています。
■運送事業
橋梁、鉄骨、その他鉄構物の製品輸送を行っています。
収益は、顧客からの運送代金です。運営は丸定運輸が行っています。
■工作機械製造事業
工作機械の設計、製作および販売を行っています。
収益は、顧客への製品販売代金です。運営はケイシステックニジューサンが行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、太陽光発電設備による売電事業を行っています。
収益は、電力会社への売電収入です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に2024年3月期以降は230億円台で推移しています。一方、利益面では変動が見られ、2025年3月期は経常利益が大きく減少しました。利益率は低下傾向にあり、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 162億円 | 147億円 | 186億円 | 233億円 | 238億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 2億円 | 8億円 | 12億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 1.5% | 4.4% | 5.2% | 1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 1億円 | 8億円 | 8億円 | 1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増となりましたが、売上総利益および営業利益は大幅に減少しました。特に営業利益は赤字に転じており、コスト構造の変化や採算性の低下が影響していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 233億円 | 238億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.4% | 7.3% |
| 営業利益 | 6億円 | -4億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | -1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が7.0億円(構成比33%)、役員報酬が2.0億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の鋼構造物製造事業は増収となったものの、利益面では赤字となりました。不動産賃貸事業は安定的に利益を計上していますが、材料販売事業や運送事業、工作機械製造事業など他のセグメントでは利益貢献が限定的または赤字となっており、全体として収益性の確保に課題を残しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鋼構造物製造事業 | 196億円 | 207億円 | 4億円 | -5億円 | -2.6% |
| 不動産賃貸事業 | 9億円 | 10億円 | 5億円 | 5億円 | 50.0% |
| 材料販売事業 | 25億円 | 18億円 | -0億円 | -0億円 | -1.5% |
| 運送事業 | 2億円 | 1億円 | 0億円 | 0億円 | 24.1% |
| 工作機械製造事業 | 1億円 | 2億円 | -0億円 | -0億円 | -18.8% |
| その他 | 0億円 | 0億円 | 0億円 | 0億円 | 54.5% |
| 調整額 | -11億円 | -10億円 | -3億円 | -3億円 | - |
| 連結(合計) | 233億円 | 238億円 | 6億円 | -4億円 | -1.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
瀧上工業は、運送事業における取引価格見直しやグループ内取引の増加により、営業活動によるキャッシュ・フローは大幅な資金収入となりました。一方で、工作機械製造事業では新規案件の採算性確保が課題となり、投資活動では有形固定資産の取得による支出が増加しました。財務活動では短期借入金の増加により、資金収入を得ています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -44億円 | 36億円 |
| 投資CF | -4億円 | -25億円 |
| 財務CF | -3億円 | 26億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「鋼の強靭さと人の優しさを融合させ、高品質で安心・安全な社会基盤づくりに貢献する」ことを経営理念として掲げています。社会インフラの整備を通じて、強さと優しさを兼ね備えた価値を提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「社会インフラが成熟・多様化していく時代に適時的確に対応し、あらゆる分野において、『受け継ぐ技術、さらなる高みへ』を合言葉に、信頼される総合エンジニアリング企業を目指す」というビジョンを掲げています。長い歴史の中で培われた技術を継承しつつ、常に高みを目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は第5次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)において、持続的成長と企業価値向上を目指しています。「変革とチャレンジ」をキーワードに、中長期的に基幹事業ポートフォリオの最適化を図り、事業利益のさらなる向上を目指すことを基本方針としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、新設橋梁事業では中部地区や大規模プロジェクトへの注力、保全事業では市場拡大への対応と連携強化を掲げています。鉄骨事業では首都圏超高層案件への挑戦やM&Aによるシナジー創出を図ります。また、DX戦略による業務効率化や、人財戦略による専門人財の育成と多様性の確保にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化する事業環境に適応できる専門人財の育成や、多様な人財の活用・配置を推進しています。また、社員の価値観と自律性を尊重し、働きがいのある労働環境の整備や社員エンゲージメントの向上に取り組むなど、人的資本への積極的な投資を進める方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.9歳 | 15.0年 | 6,130,337円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.3% |
| 男性育児休業取得率 | 62.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 67.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 45.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職数(1人)、全従業員に占める外国人従業員の比率(6.0%)、採用者に占める中途採用者の比率(64.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 固定資産の減損リスク
鋼構造物製造事業や不動産賃貸事業を中心に多くの固定資産を保有しています。事業環境の変化や業績の低迷などにより、これらの資産の収益性が低下した場合、減損損失が発生し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材確保のリスク
主力事業である鋼構造物製造事業では、専門的な技術を持つ人材の確保が不可欠です。しかし、建設業界全体での労働者不足や高齢化が進行しており、必要な技術者や技能者を十分に確保できない場合、事業遂行に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 取引先の信用リスク
事業活動において多数の取引先と関係を持っていますが、取引先の信用状態が悪化し、債権の回収が困難になった場合、貸倒損失が発生する可能性があります。これにより、同社グループの業績や財務状況に影響が及ぶリスクがあります。



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