日本発條 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本発條 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本発条(ニッパツ)は東証プライム市場に上場し、懸架ばね、シート、精密部品等の自動車部品や情報機器部品の製造販売を展開しています。直近の業績は、売上高が堅調に推移し増収となった一方、原材料費や物流費、固定費の増加等の影響を受けて営業利益から親会社株主に帰属する当期純利益まで減益となっています。


※本記事は、日本発条株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本発条ってどんな会社?


自動車用懸架ばねやシート、情報機器向けDDSなど多様なキーパーツをグローバルに提供する部品メーカーです。

(1) 会社概要


1936年に自動車及び車両用ばねの製造を目的に設立されました。1954年に東京証券取引所へ上場し、その後タイや米国、中国などに拠点を設けグローバル展開を加速しました。自動車部品で培った技術を活かし、情報機器向けのHDD用サスペンション事業なども確立し、事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で18,121名、単体で5,350名です。大株主については、筆頭株主ならびに第2位株主、第3位株主に、それぞれ資産管理や退職給付信託などの業務を行う信託銀行が名を連ねており、機関投資家による保有割合が高いことが特徴です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.02%
三菱UFJ信託銀行 退職給付信託 大同特殊鋼口 共同受託者 日本マスタートラスト信託銀行 11.00%
日本カストディ銀行(信託口) 6.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長執行役員は上村和久氏が務めており、社外取締役の比率は30.8%(13名中4名)です。

氏名 役職 主な経歴
茅本 隆司 代表取締役会長 1979年同社入社。2010年に執行役員となり、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2017年より代表取締役社長執行役員を務め、2024年より現職。
上村 和久 代表取締役社長執行役員 1983年同社入社。2014年に執行役員に就任後、2018年より常務執行役員および取締役常務執行役員を務める。2022年に取締役専務執行役員となり、2024年より現職。
高村 典利 代表取締役副社長執行役員 1983年同社入社。2014年に執行役員に就任。その後、2019年より常務執行役員、2023年より専務執行役員として同社の経営に貢献し、2025年より現職。
堀江 雅之 代表取締役副社長執行役員購買本部本部長 1986年同社入社。2017年に執行役員となり、2021年より常務執行役員、2024年に専務執行役員を経て、2025年より現職。タカノの取締役も兼務。
佐々木 俊輔 取締役専務執行役員営業本部本部長 1987年同社入社。2018年に執行役員に就任し、2022年より常務執行役員、2023年に取締役常務執行役員を歴任。2026年より現職。


社外取締役は、末啓一郎(ブレークモア法律事務所パートナー弁護士)、田中克子(元横浜市立大学理事長)、玉越浩美(横浜なごみ法律事務所代表)、古川玲子(元日本ユニシス執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「懸架ばね」「シート」「精密部品」「DDS事業」「産業機器ほか」の各事業を展開しています。

懸架ばね事業


自動車の乗り心地や操縦安定性を支えるコイルばね、板ばね、スタビライザなどの懸架ばね関連製品を自動車メーカー等に提供しています。EV(電気自動車)向けの軽量化や省スペース化ニーズに対応する高付加価値製品の開発も進めています。

収益源は製品の販売代金であり、国内外の自動車メーカーから収益を得ています。運営は日本発条のほか、国内ではニッパツ機工、スミハツ、海外ではタイや米国の現地法人が生産・販売を担っています。

シート事業


自動車用シートやシート用機構部品、内装品などを開発・製造し、自動車メーカーに提供しています。金属加工からウレタン成形、縫製までの主要工程を内製化し、乗り心地や軽量化を追求したシートコンプリート品を強みとしています。

収益源は自動車メーカーへの製品販売代金です。運営は日本発条を中心に、国内ではアイテスやフォルシア・ニッパツ九州、海外ではタイの現地法人や米国のNHKシーティングオブアメリカなどが事業を展開しています。

精密部品事業


自動車用モーターコアや薄板ばね、線ばね、HDD用機構部品、ファスナー(ねじ)などの精密加工品を提供しています。自動車関連の電動化進展や情報通信分野の高度化に伴うニーズに応えるため、高精度な加工技術を活用しています。

収益源は自動車部品メーカーや情報機器メーカー等からの製品販売代金です。運営は日本発条のほか、日発精密工業、トープラなどの国内子会社、および米国、タイ、中国、メキシコ、インドの各海外子会社が行っています。

DDS事業


データセンター向け高容量HDDなどに使用されるHDD用サスペンションや、半導体検査用のプローブユニットを提供しています。情報化の加速によるビッグデータ需要に対応し、AI・クラウドサービスの拡大を背景に成長を支える事業です。

収益源はHDDメーカー等からの部品販売代金です。運営は主に日本発条が担っており、海外ではタイの現地法人や中国の日發科技有限公司、日發電子科技(東莞)有限公司などが製造・販売を行っています。

産業機器ほか事業


半導体プロセス部品やセラミック製品、金属基板、配管支持装置、駐車装置、セキュリティ製品、ゴルフシャフトなど多岐にわたる産業・生活分野の製品を提供しています。また、物流やサービスなどの関連事業も手掛けています。

収益源は各業界の企業や一般消費者向けの製品販売・サービス提供対価です。運営は日本発条のほか、日発販売、日発運輸、ニッパツサービスなどの関連会社が販売や運送事業を含めて幅広く担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年3月期から2026年3月期までの5期間において、売上高は5,869億円から8,169億円へと右肩上がりで順調に成長しています。経常利益についても2025年3月期に580億円まで拡大しましたが、2026年3月期はコスト増等の影響で522億円と減益になりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,869億円 6,932億円 7,669億円 8,017億円 8,169億円
経常利益 307億円 373億円 478億円 580億円 522億円
利益率(%) 5.2% 5.4% 6.2% 7.2% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 311億円 44億円 319億円 321億円 426億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も微増しましたが、売上総利益率は14.1%から13.9%へやや低下しています。また、固定費の増加などが影響し、営業利益は522億円から458億円に減少し、営業利益率も6.5%から5.6%に低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8,017億円 8,169億円
売上総利益 1,131億円 1,137億円
売上総利益率(%) 14.1% 13.9%
営業利益 522億円 458億円
営業利益率(%) 6.5% 5.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料・手当・賞与が309億円(構成比45%)、支払手数料が85億円(同13%)、運送費が59億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


DDS事業が利益の過半を稼ぎ出す柱となっています。懸架ばね事業やシート事業は売上規模が大きいものの、原材料費や固定費の増加等が響き、シート事業や精密部品事業、産業機器ほか事業は減益となりました。一方、懸架ばね事業は売価転嫁等により増益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
懸架ばね 1,691億円 1,674億円 5億円 7億円 0.4%
シート 3,039億円 2,926億円 112億円 81億円 2.8%
精密部品 1,020億円 1,056億円 43億円 37億円 3.5%
DDS 1,115億円 1,268億円 267億円 261億円 20.6%
産業機器ほか 1,152億円 1,245億円 95億円 73億円 5.9%
連結(合計) 8,017億円 8,169億円 522億円 458億円 5.6%


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 557億円 774億円
投資CF -478億円 -416億円
財務CF -236億円 -270億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ニッパツグループ企業理念」を経営の基本方針として掲げています。グループの多様な技術と発想を生かして常にお客様に魅力ある商品・サービスを提供するとともに、社会課題の解決と持続的な成長を通じて、ステークホルダーに信頼される企業集団を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「人を大切にし、社会へ貢献する」というスローガンのもと、「ちゃんと買って ちゃんと造って ちゃんと売る」を基本方針として掲げています。人の価値を高め、多様な人材の成長と活躍を促しながら、なくてはならないキーパーツを提供し社会環境の課題解決に貢献する風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「2026中計」の最終年度である2026年度に向けて、以下の目標を掲げて事業を推進しています。

・売上高:8,500億円
・営業利益:520億円
・経常利益:570億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:430億円
・ROE:10%以上
・ROIC:7%以上
・自己資本比率:50%以上
・配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


激変する事業環境への対応を加速し、将来に向けた安定的な収益基盤の確立を目指します。自動車関連分野では電動化に伴う軽量化・高耐久化製品の開発を加速し、情報通信分野ではAI・クラウド向けの高容量HDD需要を取り込みます。また、自動化推進や生産性改善により利益率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、価値創造の源泉は「人の力」であるとの認識に立ち、「人を大切にする」方針のもと人への投資を継続しています。多様な人材が成長とやりがいを感じ、能力を発揮できる組織風土の醸成を目指し、人事制度改革や採用基準の見直し、教育体系の再構築などを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 18.6年 8,527,125円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 76.6%
男女賃金差異(全労働者) 80.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 87.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職定期採用女性採用比率(23.9%)、従業員エンゲージメント診断スコア(68.7pt)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 災害等による影響


地震、台風等の自然災害や火災、感染症が発生した場合、製造設備の損壊による追加費用の発生やサプライチェーンの中断が生じるリスクがあります。同社は対策本部を設置しBCP(事業継続計画)を定めていますが、広範囲な影響が出た場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


事業活動における情報システムの重要性が高まる中、想定を超えるサイバー攻撃や不正アクセスにより基幹システムの停止や情報の流出が発生するリスクがあります。同社はハード・ソフトの両面で適切なセキュリティ対策を講じていますが、万一発生した場合、業績への影響が懸念されます。

(3) 世界経済の急激な変動


自動車関連や情報通信関連の製品をグローバルに供給しているため、インフレの長期化や地政学リスクの高まり、各国の経済政策の転換等により各地域で予測を超える需要縮小が生じた場合、業績に影響を与えるリスクがあります。複合的な要因による事業環境の先行き不透明感への対応が課題です。

(4) 原材料・エネルギーの価格変動


鋼材などの主要原材料や電気・ガス等のエネルギー価格の大幅な変動は、販売価格への転嫁の遅れ等により収益に影響するリスクがあります。また、地政学的要因やサプライチェーンの混乱による部品不足が生じた場合、生産活動が低下する可能性もあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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