高田機工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高田機工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、橋梁や鉄骨など鋼構造物の設計・製作・施工を主力事業としています。直近の決算では、橋梁事業の受注低迷や原価高騰などの影響を受け、売上高は185億円、経常利益は4億円と減収減益となりました。保全事業や独自製品の生研トラス事業への注力により、収益改善を目指しています。


※本記事は、高田機工株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高田機工ってどんな会社?


1921年創業の老舗企業で、橋梁や高層ビル鉄骨などの大型鋼構造物を手掛けるエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1921年に創業し、土木用機械の販売と鉄骨橋梁の製作を開始しました。1939年に現社名へ変更し、1962年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。その後、東京証券取引所市場第一部への上場を経て、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。

同社(単体)の従業員数は338名です。筆頭株主は日本生命保険相互会社で、第2位は個人の神吉利郎氏、第3位は総合建設会社の奥村組です。

氏名 持株比率
日本生命保険相互会社 5.91%
神吉利郎 5.21%
奥村組 4.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は中村 達郎氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
中村 達郎 取締役社長(代表取締役)内部統制担当 1983年入社。営業本部東部営業部長、執行役員営業本部長などを経て、2023年6月より現職。
小林 雄紀 常務取締役 1980年入社。技術本部設計部長、執行役員技術本部長などを経て、2019年6月より現職。
蔭山 昌弘 常務取締役環境問題担当 1978年入社。工事本部安全技術部長、常務取締役執行役員和歌山工場長などを経て、2023年6月より現職。
西田 明 取締役安全衛生担当 1980年入社。工事本部橋梁工事部長、取締役執行役員工事本部長などを経て、2024年4月より現職。
西尾 和彦 取締役コンプライアンス担当 1983年入社。管理本部経理部長、取締役執行役員管理本部長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、川谷 充郎(神戸大学名誉教授)、吉永 一夫(周商事代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「橋梁事業」「鉄構事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 橋梁事業


新設鋼橋の設計から製作、現場据付までを一貫して行うほか、既設橋梁の維持補修工事や橋梁関連鋼構造物、複合構造物の設計・製作・施工を手掛けています。また、土木・海洋関連の鋼構造物や制震部材などの製品も取り扱っています。公共工事が主体であり、国や地方自治体が主な顧客となります。

収益は、請負工事契約に基づき、顧客である官公庁等から工事代金を受け取ることで計上されます。また、各種デバイス製品の製造・販売による収益もあります。運営は主に同社が行っています。

(2) 鉄構事業


超高層ビルの鉄骨や、体育館などの大空間構造物の設計・製作・現場施工を行っています。また、制震部材の製作も手掛けています。民間工事が主体であり、ゼネコンなどが主な顧客となります。

収益は、請負工事契約に基づき、顧客である建設会社等から工事代金を受け取ることで計上されます。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は150億円台から一時197億円まで伸長しましたが、直近では185億円へ減少しています。利益面では、経常利益率が変動しており、直近の2025年3月期は経常利益4億円、当期純利益3億円と、前期と比較して大幅な減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 152億円 157億円 160億円 197億円 185億円
経常利益 10億円 9億円 5億円 14億円 4億円
利益率(%) 6.3% 6.0% 3.1% 7.3% 2.0%
当期純利益 5億円 7億円 3億円 9億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が縮小しています。売上総利益率は前期の14.7%から当期は10.4%へと低下しました。販売費及び一般管理費は増加傾向にあり、営業利益は前期の13億円から2億円へと大きく減少しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 197億円 185億円
売上総利益 29億円 19億円
売上総利益率(%) 14.7% 10.4%
営業利益 13億円 2億円
営業利益率(%) 6.8% 1.3%


売上原価のうち、外注費が77億円(構成比47%)、材料費が39億円(同24%)を占めています。販売費及び一般管理費のうち、給料手当が7億円(構成比40%)、雑費が2億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


橋梁事業は、受注低迷による工場稼働率の低下や原価高騰の影響を受け、売上・利益ともに前期を下回りました。鉄構事業は、着実な受注と生産体制の見直しにより増収となり、セグメント損益も黒字転換を果たしました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
橋梁事業 156億円 130億円 16億円 1億円 0.9%
鉄構事業 41億円 54億円 -2億円 1億円 2.1%
連結(合計) 197億円 185億円 13億円 2億円 1.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業キャッシュ・フローがマイナスとなる中、設備投資等のための投資キャッシュ・フローもマイナスとなり、これらを借入金等の財務キャッシュ・フローで賄う「勝負型」のキャッシュ・フロー状態となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -1億円 -5億円
投資CF -2億円 -4億円
財務CF -5億円 11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、ビジョンとして「世代を超えて、感動と笑顔あふれる豊かな世界を創造する」、ミッションとして「人とまちをつなぎ、空間に価値を創り出す」を掲げています。創業以来、高度な技術力で安全を重視した施工を行い、良質な社会資本を提供することで社会に貢献し、顧客の信頼を得ることを目指しています。

(2) 企業文化


社会貢献を目標とし、顧客の信頼を得ることを経営の基本としています。高度な技術力と安全重視の姿勢を貫き、良質な社会資本を提供することを使命としています。新たな素材の活用や技術開発、市場要請に応える新規事業の創造に挑戦し、持続的な豊かな社会創造と企業の成長を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2024」(2024年4月〜2027年3月)において、「基幹事業の集中と選択」および「事業変革への挑戦」をテーマに掲げ、以下の目標を設定しています。
* 期間平均売上高:205億円
* 期間平均営業利益:10億円
* 最終年度ROE:5.0%以上
* 期間中配当性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「事業ポートフォリオの高度化戦略」「経営基盤戦略」「サスティナビリティ戦略」を主要戦略としています。2026年3月期は、工場生産体制の見直しと人財再配分を最優先課題とし、成長分野である保全事業および競争優位性のある生研トラス事業の受注拡大による売上補完と採算性向上を図ります。
* 工場生産体制の見直し
* 成長分野(保全事業、生研トラス)への積極的な投資
* 全社でのDX及び自動化の推進
* 人的資本の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「専門性の強化」「多様性ある人財の確保」「経営人財の育成」を3本柱としています。品質と安全維持のための資格取得奨励、多様な価値観の融合、マネジメント人財の育成に注力しています。また、従業員のパフォーマンス向上と定着促進のため、「ワークライフバランス」を重視した社内環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.5歳 18.4年 6,611,238円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規雇用) 76.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア人財採用比率(44%)、女性採用比率(19%)、安全朝礼の参加者率(94%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への依存


同社の主力である鋼橋事業は公共工事が大部分を占めるため、国や地方公共団体の財政状況や公共事業予算の動向に業績が左右されやすい特性があります。発注量の減少や計画変更などが発生した場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害・事故等の発生


生産設備を和歌山工場に集中させているため、同地域での自然災害発生時に操業が停止するリスクがあります。また、重量物を扱う事業特性上、工場や現場での事故発生は損害のみならず社会的信用の失墜につながり、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 原材料価格の変動


主力事業において鋼材が主要原材料であるため、鋼材価格の高騰は収益を圧迫する要因となります。価格上昇分を受注価格に転嫁できない場合や、需給逼迫により必要な鋼材量が確保できない場合、業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。