東京製綱 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京製綱 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京製綱は東京証券取引所プライム市場に上場し、ワイヤロープや各種ワイヤ製品、スチールコード、道路安全施設などの開発製品、産業機械の製造販売等を展開しています。直近の業績トレンドでは、開発製品関連等の売上が伸長したことで増収となり、コスト低減と価格改定の浸透によって営業利益も大幅な増益を達成しています。


※本記事は、東京製綱の有価証券報告書(第227期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京製綱ってどんな会社?


鋼索鋼線、スチールコード、開発製品、産業機械などの製造販売やエネルギー不動産関連事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1887年に創立され、日本初のマニラ麻ロープ製造を開始しました。1893年に現在の東京製綱へと社名を変更し、1896年には東京株式取引所へ上場しました。その後、1970年にはスチールコードの製造会社を設立するなど事業を拡大し、ワイヤロープやエンジニアリング事業など広範な領域へ進出しています。

現在の従業員数は連結で1,430名、単体で537名体制となっています。筆頭株主は事業会社の日本製鉄で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は野村證券です。

氏名 持株比率
日本製鉄 15.91%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.14%
野村證券 4.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は原田英幸氏が務めており、社外取締役比率は42.9%となっています。

氏名 役職 主な経歴
原田英幸 代表取締役社長執行役員 1987年同社入社。鋼索鋼線事業部土浦工場製造部長、同事業部長などを経て、2021年より現職。
寺園雅明 取締役専務執行役員事業本部長兼調達物流部長 1992年同社入社。スチールコード事業部販売部長や鋼索鋼線事業部東日本営業部長等を経て、2025年より現職。
森忠大 取締役常務執行役員事業本部副本部長兼事業戦略室長 1994年同社入社。経営企画部部長、東京製綱インターナショナル社長などを経て、2025年より現職。
喜旦康司 取締役常務執行役員コーポレート本部長兼総務部長経理部・環境安全防災室管掌 1995年同社入社。総務部部長、総務部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、樋口靖(元熊谷組社長)、上山丈夫(元三陽商会社長)、葛岡利明(元日立製作所専務)、名取勝也(ファーストリテイリング法務部長等を経て名取法律事務所創設)、狩野麻里(元三菱UFJ銀行ミラノ支店長)、山本千鶴子(監査法人トーマツパートナーを経て山本千鶴子公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鋼索鋼線関連」、「スチールコード関連」、「開発製品関連」、「産業機械関連」、「エネルギー不動産関連」の事業を展開しています。

鋼索鋼線関連


ワイヤロープ、各種ワイヤ製品、繊維ロープ、網などの製造販売を行っています。建設・土木・水産等様々な産業の顧客に対して、長寿命かつ多機能なワイヤロープや繊維ロープなどを提供しています。

顧客に対する製品の販売によって収益を得ています。運営は同社が製造販売を行うほか、子会社の東京製綱繊維ロープなどが製造し、一部は同社で仕入れて販売を行う体制をとっています。

スチールコード関連


タイヤ用スチールコード、ホースワイヤ、ソーワイヤなどの製造販売を行っています。主にタイヤメーカーや自動車関連業界に対して、高強度化や軽量化を実現する製品を提供しています。

製品を製造・販売することで顧客から対価を得ています。主に子会社の東綱スチールコードが製造を担い、同社が販売を行う体制で運営しています。

開発製品関連


道路安全施設(落石・崩壊土砂対策等)や鋼構造物用ケーブル、炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)などの設計・製造・施工を行っています。インフラ保全や防災分野の顧客に対し製品と工法を提供しています。

製品の販売や土木建築工事の対価として収益を得ています。同社のほか、東京製綱インターナショナルや東綱橋梁などが製造販売し、トーコーテクノなどが工事を行っています。

産業機械関連


粉末冶金製品、工業用自動計量機、自動包装機などの製造販売を行っています。高度化する顧客ニーズに対応した超硬工具や各種産業向けの機械設備を提供しています。

製品の販売対価として顧客から収益を得ています。産業機械は子会社の長崎機器が製造販売を行い、粉末冶金製品は日本特殊合金が製造販売を行っています。

エネルギー不動産関連


店舗施設等の不動産賃貸事業のほか、太陽光発電による売電事業、石油製品や高圧ガスの販売を展開しています。

不動産の賃貸料や電力の売電収入、石油製品などの販売代金を収益源としています。同社が不動産賃貸や売電事業を行い、石油製品などは子会社の東綱商事が販売しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上高は600億円台半ばで安定的に推移しています。経常利益は変動しつつも増加傾向にあり、利益率も直近では8.0%に達するなど収益性の改善が進んでいます。当期利益も堅調に推移し、安定した利益基盤を構築していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 638億円 671億円 642億円 629億円 641億円
経常利益 20億円 37億円 48億円 39億円 51億円
利益率(%) 3.2% 5.4% 7.4% 6.2% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 25億円 18億円 26億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と比較して微増となっていますが、売上総利益および営業利益は大きく増加しています。製品価格改定の浸透や操業コストの低減等により、売上総利益率や営業利益率が改善し、収益力が着実に高まっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 629億円 641億円
売上総利益 139億円 153億円
売上総利益率(%) 22.1% 23.9%
営業利益 36億円 48億円
営業利益率(%) 5.7% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料賞与及び諸手当が30億円(構成比29%)、荷造・運搬費が20億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高をみると、炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)などのプロジェクト案件が堅調な開発製品関連や、産業機械関連が大きく伸長しています。一方で、スチールコード関連などは市況の影響を受けて減収となっており、事業ごとに成長の明暗が分かれています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
鋼索鋼線関連 289億円 282億円
スチールコード関連 55億円 48億円
開発製品関連 177億円 199億円
産業機械関連 37億円 45億円
エネルギー不動産関連 70億円 68億円
連結(合計) 629億円 641億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 24億円 54億円
投資CF -16億円 -17億円
財務CF -0.3億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も46.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は中長期的ビジョンとして、≪「トータル・ケーブル・テクノロジー」の追求により、世界の安全・安心を支える≫を掲げています。ワイヤ、ワイヤロープなど幅広い技術蓄積に異素材の技術開発を融合し、ケーブルに関して様々な対応が可能なユニークかつ競争力あるサプライヤーとして社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社の企業理念は「共存共栄」であり、これを基本精神として事業を展開しています。株主、取引先、地域社会、従業員など、多様なステークホルダーからのサポートが企業価値の向上に不可欠であると認識し、それぞれの立場や価値観を尊重しながら良好な協働関係を構築していく企業文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画『TCTRX』(2025年3月期~2027年3月期)において、最終年度である2027年3月期の目標を掲げています。

* 売上高:680億円
* 営業利益:45億円
* EBITDA:65億円
* EPS:200円/株以上
* 総還元性向:40.0%以上
* ROE:8.4%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画において、「重点育成事業への経営資源投入強化」、「既存事業の競争力強化」、「全ステークホルダーにとって魅力ある会社作り」を基本方針に定めています。炭素繊維ケーブル(CFCC)事業、橋梁ケーブル事業、洋上風力発電関連事業の3事業を重点育成事業と位置づけ、次期経営計画を見据えて既存事業の収益力を維持・向上させつつ、将来の柱となる重点育成事業を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「共存共栄」の実現に向け、役員・従業員の健康確保と増進、多様性の理解と確保の促進、主体的で多様なキャリア形成や必要なスキルアップの支援を人材戦略の重点方針としています。各人が能力を最大限発揮し、エンゲージメントを高く維持できる安全・安心な職場環境の構築を進めることで、持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.4歳 15.5年 6,824,297円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 74.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ハラスメント研修参加率(96%)、国内主要製造拠点災害強度率(0.16)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気の動向


世界および日本経済の動向に依存しており、主要需要業界であるタイヤ業界や建設業界などの活動水準が影響を受けた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料などの供給リスク


主材料である線材等の供給を数社の仕入先に依存しており、仕入先の操業停止による供給停止・遅延、世界的な需給逼迫や価格高騰が製造コストを上昇させ、業績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 海外拠点におけるリスク


アメリカやベトナムなどの海外事業拠点において、当該国における政治的・経済的な混乱、疫病やテロといった社会的混乱、法的規制の変更などにより事業活動が制約される可能性があります。

(4) 競合のリスク


国内・海外の生産・販売活動における競争が激化しています。継続的なコスト削減や新製品開発を進めていますが、市場価格の低下が同社グループの収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。