東京製綱 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京製綱 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、鋼索鋼線、スチールコード、開発製品等の製造販売を行う企業です。当連結会計年度の業績は、売上高629億円(前期比減収)、経常利益39億円(減益)となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は32億円(増益)を確保しています。


※本記事は、東京製綱株式会社 の有価証券報告書(第226期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京製綱ってどんな会社?


同社グループは、ワイヤロープやスチールコード、炭素繊維複合材ケーブル等の製造販売および関連エンジニアリング事業を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1887年に東京製綱会社として創立し、日本初のマニラ麻ロープ製造を開始しました。1896年には東京株式取引所に上場しています。1964年に東洋製綱を合併、1970年には土浦工場および東京製綱スチールコードを設立し事業を拡大しました。2017年には海外防災製品等を扱う東京製綱インターナショナルを設立するなど、グローバル展開を進めています。

同社グループの従業員数は連結で1,450名、単体で528名です。筆頭株主は事業会社の日本製鉄で、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
日本製鉄 20.59%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.01%
日本カストディ銀行(信託口) 4.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名(うち監査役を含む)の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は原田英幸氏が務めています。取締役10名のうち6名が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
原田 英幸 代表取締役社長 1987年同社入社。鋼索鋼線事業部長や長崎機器社長を経て、2021年6月より現職。
寺園 雅明 取締役事業本部長調達物流部長 1992年同社入社。鋼索鋼線事業部東日本営業部長や新洋取締役副社長を経て、2025年4月より現職。
森 忠大 取締役事業本部副本部長事業戦略室長 1994年同社入社。経営企画部部長や東京製綱インターナショナル社長を経て、2025年4月より現職。
喜旦 康司 取締役総務部長経理部・環境安全防災室管掌 1995年同社入社。総務部長やTCT企画室部長を経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、樋口靖(元熊谷組取締役会長)、上山丈夫(元三陽商会代表取締役社長)、葛岡利明(元日立製作所代表執行役)、名取勝也(元日本アイ・ビー・エム取締役執行役員)、狩野麻里(元三菱UFJ銀行ミラノ支店長)、山本千鶴子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鋼索鋼線関連」「スチールコード関連」「開発製品関連」「産業機械関連」および「エネルギー不動産関連」事業を展開しています。

(1) 鋼索鋼線関連


ワイヤロープ、各種ワイヤ製品、繊維ロープおよび網などの製造販売を行っています。これらは、クレーン用、エレベータ用、水産用など幅広い産業分野で使用されています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。一部加工業務については加工代相当額を純額で認識しています。運営は主に東京製綱が行うほか、子会社の東京製綱繊維ロープや関連会社の東洋製綱などが製造販売し、一部は東綱ワイヤロープ販売などが販売を担っています。

(2) スチールコード関連


タイヤ用スチールコード、ホースワイヤ、ソーワイヤなどの製造販売を行っています。自動車タイヤの補強材などが主力製品です。

収益は、製品の販売対価としてタイヤメーカー等の顧客から受け取ります。運営は、製造を子会社の東綱スチールコードが担い、販売を東京製綱が行っています。

(3) 開発製品関連


道路安全施設(防護柵等)、長大橋用ケーブル、炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)、金属繊維の製造販売および橋梁等の設計・施工を行っています。

収益は、製品の販売および工事契約に基づく対価として顧客から受け取ります。一部取引では代理人として純額で収益認識します。運営は、東京製綱のほか、東京製綱インターナショナル、東綱橋梁、関連会社のベカルト東綱メタルファイバーなどが行っています。

(4) 産業機械関連


粉末冶金製品および産業機械(工業用自動計量機・自動包装機)の製造販売を行っています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、産業機械については子会社の長崎機器が、粉末冶金製品については子会社の日本特殊合金がそれぞれ製造販売を行っています。

(5) エネルギー不動産関連


石油製品の販売、不動産賃貸、および太陽光発電による売電事業を行っています。

収益は、石油製品の販売代金、不動産賃貸料、売電収入として顧客から受け取ります。運営は、石油製品販売を子会社の東綱商事が行い、不動産賃貸および売電事業は東京製綱が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は600億円台で推移しており、当期は前期比で減少しました。経常利益は前期に最高益を記録した後、当期は減少しています。当期純利益については、前期から増加し30億円台を回復しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 592億円 638億円 671億円 642億円 629億円
経常利益 2億円 20億円 37億円 48億円 39億円
利益率(%) 0.4% 3.2% 5.4% 7.4% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -33億円 11億円 25億円 18億円 26億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は減少しましたが、売上総利益率は同水準を維持しています。販管費は微増しており、結果として営業利益および営業利益率は低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 642億円 629億円
売上総利益 142億円 139億円
売上総利益率(%) 22.0% 22.0%
営業利益 39億円 36億円
営業利益率(%) 6.1% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料賞与及び諸手当が30億円(構成比29%)、荷造・運搬費が19億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期のセグメント別業績は、主力の鋼索鋼線関連およびエネルギー不動産関連が増収となりましたが、スチールコード関連の大幅な減収などが影響し、全体では減収となりました。利益面では、スチールコード関連が黒字転換したものの、鋼索鋼線関連等の減益により連結全体では減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
鋼索鋼線関連 280億円 289億円 26億円 22億円 7.7%
スチールコード関連 75億円 55億円 -2億円 0億円 0.0%
開発製品関連 181億円 177億円 8億円 8億円 4.3%
産業機械関連 41億円 37億円 3億円 2億円 5.6%
エネルギー不動産関連 66億円 70億円 4億円 4億円 5.3%
連結(合計) 642億円 629億円 39億円 36億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の範囲内で投資(投資CFマイナス)と借入返済(財務CFマイナス)を行っており、健全型のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 34億円 24億円
投資CF -3億円 -16億円
財務CF -40億円 -0.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「トータル・ケーブル・テクノロジー」の追求により、世界の安全・安心を支えることを中長期的ビジョンとして掲げています。ワイヤ、ロープ、エンジニアリング等を広範に保持し、多様な対応が可能な世界的にもユニークかつ競争力あるサプライヤーとして、社会に貢献する企業価値の高い会社を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「共存共栄」を企業理念とし、ステークホルダーと共に栄えることを重視しています。また、経営トップのコミットメントとして「安全・安心な職場作り」と「組織風土改革」を掲げ、ハラスメントの防止や上司・部下間での双方向の積極的な情報共有・対話を行動原則として示しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画『TCTRX』を策定しています。創業140周年を迎える最終年度の2027年3月期には、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:680億円
* 営業利益:45億円
* EBITDA:65億円
* ROE:8.4%以上
* EPS:200円/株以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画『TCTRX』では、「重点育成事業への経営資源投入強化」、「既存事業の競争力強化」、「全ステークホルダーにとって魅力ある会社作り」を基本方針としています。既存事業の収益力を維持・向上させつつ、将来の柱となる重点育成事業を推進し、財務基盤強化と株主還元を両立させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「共存共栄」の理念に基づき、従業員の心身の健康確保、多様性の理解・確保、および主体的で多様なキャリア形成支援を重点的に行っています。女性管理職比率の向上や次世代リーダーの育成を執行役員の評価項目とし、性別にかかわらず活躍できる職場環境や、育児・家事と業務の両立を可能にする環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 15.2年 6,421,152円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.7%
男女賃金差異(正規雇用) 76.8%
男女賃金差異(非正規) 60.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ハラスメント研修参加率(95%)、国内主要製造拠点災害強度率(0.05)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料などの供給リスク


主材料である線材や亜鉛・心綱等を数社の仕入先から購入しており、仕入先の業績不振や操業停止による供給停止・遅延、世界的な需給逼迫による仕入量の制約、価格高騰などが、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外拠点におけるリスク


アメリカ、ベトナム等に海外事業拠点を有しており、現地の政治・経済的混乱、疫病・テロ等の社会的混乱、法的規制などにより事業活動が制約される可能性があります。現地情報の早期入手等により対応に努めていますが、影響を受ける可能性があります。

(3) 固定資産の減損に関するリスク


同社グループは多額の固定資産を所有しています。経営環境の変化などに伴い収益性が低下し、投資額の回収が見込めなくなった場合には、固定資産の減損処理が必要となり、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 取引先の信用リスク


取引先に対して信用供与を行っており、信用状態に応じて限度額設定や担保取得等の対策を講じていますが、取引先の予期せぬ信用状態の悪化や経営破綻等により債権が回収不能となった場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。