※本記事は、浅香工業株式会社 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 浅香工業ってどんな会社?
1661年創業の老舗企業で、「象印」ブランドのショベル・スコップ等の生活関連用品と物流機器を扱っています。
■(1) 会社概要
同社は1661年に創業し、1893年にショベル・スコップの国産化に成功しました。1949年に大阪証券取引所に上場し、1963年には物流機器の製造販売を開始して事業を拡大しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
従業員数は単体で145名です。大株主については、筆頭株主は取引先持株会で、第2位は従業員持株会、第3位は個人株主です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 浅香工業取引先持株会 | 10.64% |
| アサカ従業員持株会 | 3.52% |
| 浅香佳子 | 3.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は岡田実氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡田実 | 取締役社長(代表取締役) | 総務部部長、常務取締役管理本部本部長、専務取締役等を経て、2019年代表取締役社長に就任。2024年より営業本部本部長を兼務し現職。 |
| 河本幸博 | 常務取締役物流システム本部本部長 | 物流システム部営業担当部長等を経て、2011年取締役物流システム本部本部長に就任。2019年より現職。 |
| 田中隆信 | 取締役管理本部本部長兼内部監査室室長 | 総務部部長を経て、2021年取締役管理本部本部長兼内部監査室室長に就任し現職。 |
| 西川強 | 取締役生産部部長 | 生産部製造担当部長、国富産業代表取締役社長を経て、2024年取締役生産部部長に就任し現職。 |
| 小原誠 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 商品部部長、取締役営業本部本部長等を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、中務正裕(弁護士法人中央総合法律事務所代表社員)、田中宏明(田中宏明税理士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「生活関連用品」「物流機器」の2つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 生活関連用品
ショベル、スコップなどのショベル類の製造・販売に加え、園芸用具などのアウトドア用品類、土木・建築工事用機器や農具などの工事・農業用機器類の販売を行っています。ショベル類は同社が製造販売し、アウトドア用品類などは仕入商品を販売しています。
収益は主に製品および商品の販売代金です。ショベル類の製造は同社が行い、部材であるショベル柄などは子会社の国富産業が製造しています。その他の仕入商品はすべて同社が販売を行っています。
■(2) 物流機器
電動移動棚、回転ラック、重・中・軽量ラック、搬送用具、店舗什器などの仕入商品の販売を主な業務としています。倉庫や店舗等のバックヤード向け設備が中心です。
収益は主にこれらの機器・什器の販売代金です。運営は同社が行っており、顧客のニーズに合わせた物流システムの提案・販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は80億円台半ばで安定的に推移しています。利益面では、経常利益が2億円から4億円の間で推移しており、売上高経常利益率は2%台後半から4%台前半の水準です。当期は前期に比べ減益となりましたが、黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 86億円 | 86億円 | 86億円 | 84億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 3億円 | 3億円 | 4億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 3.7% | 3.4% | 4.3% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 2億円 | 2億円 | 3億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は若干減少しましたが、売上総利益率は26.6%から27.1%へと改善しました。一方で、販売費及び一般管理費の増加などにより、営業利益率は3.6%で横ばいとなっています。原材料価格等の変動がある中で、利益率の維持に努めています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 86億円 | 84億円 |
| 売上総利益 | 23億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.6% | 27.1% |
| 営業利益 | 3億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が6.4億円(構成比32%)、運賃諸掛が3.2億円(同16%)、業務委託費が2.5億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、「生活関連用品」において販売価格改定や消費動向の変化により減収減益となりました。一方、「物流機器」は前期末受注案件の売上計上などが寄与し、増益を確保しました。全社費用等の調整額の影響もあり、全体としては微減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 生活関連用品 | 52億円 | 50億円 | 1億円 | 0.5億円 | 1.0% |
| 物流機器 | 34億円 | 34億円 | 4億円 | 5億円 | 13.5% |
| 連結(合計) | 86億円 | 84億円 | 3億円 | 3億円 | 3.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.3億円 | 2億円 |
| 投資CF | 1億円 | -3億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | 0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来のモットーとして「良品声なくして人を呼ぶ」を掲げ、品質第一主義の経営理念のもと、顧客に満足される製品・商品を提供し信頼を得ることを目指しています。また、顧客のニーズに機敏に対応できる企業として、常に高い目標に向かって邁進し社会に貢献することを経営の基本としています。
■(2) 企業文化
同社は、自然環境との共生を図り、次の世代に持続可能な社会を引き継ぐことを目指しています。また、従業員の生活向上と安全で働きやすい環境を確保し、あらゆる差別やハラスメントを排除することを重視しており、コンプライアンスの徹底やリスク管理を含めた内部統制の充実に力を入れています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、ROE(自己資本利益率)を客観的な経営指標としています。品質第一主義に基づき、中長期的には販路拡大と粗利益の改善を図りつつ、販売費及び一般管理費の削減に努め、効率的な経営を推進することで株主利益の拡大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は営業力強化とコスト削減による収益性向上を図りつつ、少子高齢化を見据えた製品の軽量化・軽労化や、地域性・機能性を重視した開発を推進しています。また、海外事業では特に欧州での売上拡大を目指して現地仕様の商品開発に取り組み、EC事業の強化や、堺工場の生産設備刷新による生産体制の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、各部門の目標に沿った個人目標を設定する目標管理制度を導入し、従業員の自主性と能力開発を促しています。採用においては性別やルートを問わない人物主義で評価を行い、女性や中途採用者の管理職登用も進めています。また、将来の管理職育成のための研修実施など、意欲と能力のある人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.3歳 | 20.3年 | 5,436,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の割合(14.4%)、有給休暇の取得率(77.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不良債権発生によるリスク
取引の1社集中が進む中、同社は債権管理を強化していますが、予測不能な事態により取引先の支払能力が低下した場合、貸倒れが発生し、業績と財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、保証金の確保や定期的な調査を行ってリスク軽減に努めています。
■(2) 天候不順によるリスク
同社のアウトドア用品や工事・農業用機器、除雪用品などは季節商品の比重が大きく、天候の影響を受けやすい特性があります。梅雨の長期化、猛暑、暖冬による小雪などの天候不順が発生した場合、製品需要が減少し、業績や財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外取引および為替変動リスク
同社は原材料や商品の輸入を行っており、外貨建て取引には為替変動リスクが伴います。為替予約によるヘッジを行っていますが、大幅な変動があった場合には業績に影響する可能性があります。また、輸出においては主要相手国の経済情勢の変化が業績に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。