※本記事は、株式会社巴コーポレーション の有価証券報告書(第93期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 巴コーポレーションってどんな会社?
立体構造物や特殊鉄構、鉄塔等の設計・製作・施工を行う「鉄構建設事業」と、ビルの賃貸等を行う「不動産事業」を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1917年に巴組鐵工所として創立されました。1963年に東京証券取引所市場第二部に株式上場し、1972年には市場第一部に指定替えとなりました。2017年には創業100周年を迎えています。2024年には、持分法適用関連会社であった株式会社巴技研および株式会社泉興産を連結子会社化するとともに、令和建設株式会社を新たに連結子会社化するなど、グループ体制の強化を進めています。
同グループの従業員数は連結で531名、単体で399名です。筆頭株主は創業者関連と思われる公益財団法人野澤一郎育英会で、第2位は同社の関連会社である株式会社野澤、第3位はメインバンクの株式会社三井住友銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人野澤一郎育英会 | 6.56% |
| 野澤 | 5.52% |
| 三井住友銀行 | 5.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員事業部門総括は深沢 隆氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 深沢 隆 | 代表取締役社長社長執行役員事業部門総括 | 1977年入社。鉄構部門長、事業部門長を経て2014年より現職。 |
| 神崎 謙二 | 取締役専務執行役員建設部門長 | 1981年入社。建設工事部長、上席執行役員等を経て2022年より現職。 |
| 三木 康裕 | 取締役専務執行役員本社部門長不動産部門長人材開発センター統括 | 1987年住友銀行入行。SMBCキャピタル・マーケット会社副社長等を経て2024年より現職。 |
| 西原 普明 | 取締役常務執行役員鉄構部門長 | 1982年入社。小山工場長、事業開発部門長を経て2024年より現職。東北巴コーポレーション社長を兼務。 |
社外取締役は、堀切 良浩(元保土谷化学工業常務)、西山 誠弘(元三菱自動車ファイナンス社長)、五十嵐 規矩夫(東京科学大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄構建設事業」および「不動産事業」を展開しています。
■(1) 鉄構建設事業
立体構造物・橋梁・鉄骨・鉄塔の設計、製作、施工ならびに総合建設工事の企画、設計、施工を行っています。株式会社巴技研、株式会社東北巴コーポレーション、令和建設株式会社などの子会社とともに、独自の技術力を活かした製品や工法を提供しています。
収益は、官公庁や民間企業からの工事請負代金などが主な柱です。運営は主に同社が行い、一部業務を株式会社札幌巴コーポレーションや株式会社巴技研などの関係会社が分担しています。
■(2) 不動産事業
所有する不動産の売買、管理および賃貸借、ならびにこれらの仲介業務を行っています。オフィスビルやマンション等の賃貸を通じて安定的な収益確保を目指しています。
収益は、テナントや入居者からの賃貸料収入や不動産の売却益などから得ています。運営は主に同社が行い、業務の一部を株式会社泉興産などの関係会社に委託しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台で推移しており、当期は前期比で増収となりました。経常利益も30億円台後半から40億円台後半で推移し、安定した利益を確保しています。当期は利益率も向上しており、堅調な業績トレンドを示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 232億円 | 253億円 | 360億円 | 333億円 | 347億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 39億円 | 43億円 | 38億円 | 47億円 |
| 利益率(%) | 10.4% | 15.5% | 12.0% | 11.4% | 13.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 25億円 | 30億円 | 25億円 | 31億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の333億円から347億円へと増加しました。売上総利益も43億円から52億円へ増加し、売上総利益率は12.8%から15.0%へ改善しています。これに伴い、営業利益も32億円から39億円へ増加し、本業の収益性が高まっていることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 333億円 | 347億円 |
| 売上総利益 | 43億円 | 52億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.8% | 15.0% |
| 営業利益 | 32億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 9.5% | 11.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が8億円(構成比31%)、賞与引当金繰入額が3億円(同10%)、役員報酬が2億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
鉄構建設事業は、前期比で売上高が微増となりました。不動産事業は、前期比で売上高が約1.4倍に増加しており、全体の増収に寄与しています。主力の鉄構建設事業が安定的に推移する中、不動産事業が成長を見せています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 鉄構建設事業 | 311億円 | 314億円 |
| 不動産事業 | 23億円 | 33億円 |
| 連結(合計) | 333億円 | 347億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「技術の巴」として培ってきた信頼を基盤に、技術的に特色のある製品・工法を品質第一かつ低コストで提供することを通じて社会に貢献することを目指しています。また、「創造力を発揮し、信頼と安心の技術で社会に貢献する」ことなどを企業方針として掲げています。
■(2) 企業文化
「技術立社」を堅持しつつ、「企業体質の改善・強化」「事業領域の拡大、新規事業の創出」「グループ総力の結集」を基本戦略としています。また、人を大切にし、明るく活力あふれる企業を構築することを方針としており、変革にチャレンジする姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度からの5年間を第3期中期経営計画「TOMOE BUILD up 5」と位置づけ、グループ保有力の有効活用、事業基盤の強化、周辺領域の拡大に取り組んでいます。株主資本利益率(ROE)、株価純資産倍率(PBR)を意識した財務体質の構築と収益確保を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業継続性の確保」と「変革」へのチャレンジを新たな基本戦略に加え、経営の近代化とグループ経営資源の有効活用を推進しています。具体的には、関連会社であった株式会社巴技研や株式会社泉興産、令和建設株式会社を連結子会社化するなど、グループ一体となった企業価値向上を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業は人なり」の考えに基づき、次世代経営者、管理職、プロフェッショナルの育成に注力しています。また、個々の生活スタイルに沿った出勤時間の選択やジョブローテーション、男性の育児休業取得促進など、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.3歳 | 13.7年 | 6,849,276円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.8% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 38.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、非管理職従業員の平均残業時間/月(15.4時間)、非管理職従業員の有給休暇取得率/年(92.77%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先の信用リスク
工事代金を受領する前に取引先が信用不安に陥った場合や、下請業者が同様の事態になった場合、請負金額が多額になることも多いため、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、受注時の与信調査の厳格化や定期的な再調査など、与信管理の徹底に努めています。
■(2) 建設市場の動向
国内経済の悪化等により官公庁事業や民間設備投資が大幅に減少し、発注量が低下した場合、競争激化等により受注量や条件が悪化する可能性があります。営業戦略の見直しやコストダウン推進、採算回復力の向上によりリスク低減を図っています。
■(3) 資材価格、労務費の変動
原材料価格や労務費が高騰し、請負金額への転嫁が困難な場合、利益率の低下や工期・原価への悪影響が生じる可能性があります。資材価格動向のモニタリングや適切な購買を通じて価格上昇を抑制することで対応しています。
■(4) 資産保有リスク
不動産や有価証券を保有しているため、経済状況の変化による時価下落や収益性低下、株式市況の悪化による減損処理等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。個別物件・銘柄ごとに保有の適否を検証し、意義が認められないものは売却を進めています。



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