巴コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

巴コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

巴コーポレーションは、東京証券取引所スタンダード市場および札幌証券取引所に上場し、鉄構建設事業と不動産事業を展開する企業です。直近の業績では、売上高が350億円と前年並みを維持しつつ、営業利益は48億円、経常利益は55億円と増益傾向にあります。独自技術による立体構造物などの建設に強みを持ちます。


※本記事は、株式会社巴コーポレーションの有価証券報告書(第94期、自2025年4月1日 至2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 巴コーポレーションってどんな会社?


同社グループは、立体構造物や橋梁などの鉄構建設事業と不動産事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1917年に巴組鐵工所として創立されました。1963年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場し、その後第一部指定を経て、現在はスタンダード市場に上場しています。1971年には札幌証券取引所にも株式を上場しました。近年では2024年に巴技研および泉興産を、また令和建設を連結子会社化するなど、グループ体制の強化を図りながら事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で518名、単体で390名です。同社の大株主には、財団法人や投資組合、事業会社などが名を連ねています。筆頭株主は公益財団法人の野澤一郎育英会で、第2位はESG投資事業組合、第3位には野澤が名を連ねています。

氏名 持株比率
公益財団法人野澤一郎育英会 7.21%
ESG投資事業組合 6.31%
野澤 6.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員事業部門総覧を深沢隆氏が務めています。役員のうち社外取締役は4名であり、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
深沢隆 代表取締役社長社長執行役員事業部門総覧 1977年同社入社。常務執行役員、専務執行役員、副社長執行役員等を経て、2014年より現職。
三木康裕 取締役専務執行役員本社部門長不動産部門長人材開発センター統括 1987年住友銀行入行。2019年同社入社。常務執行役員等を経て、2024年より現職。
大家貴徳 取締役執行役員経営企画総括鉄構部門副部門長事業開発部門副部門長鉄構営業統括西日本営業統括鉄構営業部長 1998年同社入社。鉄構営業部長、西日本営業統括等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、堀切良浩氏(元保土谷化学工業取締役兼常務執行役員)、西山誠弘氏(元三菱自動車ファイナンス代表取締役社長)、五十嵐規矩夫氏(東京科学大学環境・社会理工学院教授)、髙田明氏(元野村インベスター・リレーションズ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄構建設事業」および「不動産事業」を展開しています。

鉄構建設事業


立体構造物・橋梁・鉄骨・鉄塔の設計、製作、施工ならびに総合建設工事の企画、設計、施工を行っています。官公庁および民間企業を主な顧客とし、独自技術を活かした大空間ドーム建築や競技場大屋根などの難易度が高い高付加価値な建設サービスを提供しています。

顧客との工事契約に基づき、工事を完成させて引き渡しを行うことで対価を受け取る収益モデルです。運営は主に巴コーポレーションが行い、札幌巴コーポレーション、東北巴コーポレーションなどの子会社が製品加工や一部工事を担っています。

不動産事業


オフィスビルなどの不動産の売買、管理および賃貸借、ならびにこれらの仲介に関するサービスを提供しています。グループが保有する所有不動産の有効活用を通じて、適正規模の安定した収益基盤の構築を目指しています。

賃貸用不動産の賃貸収入や、販売用不動産の売却代金を主な収益源としています。事業の運営は巴コーポレーションが主体となって行い、泉興産などの関係会社に業務の一部を委託して事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台半ばで安定的に推移しています。経常利益も底堅く推移し、直近では55億円まで拡大しました。利益率も10%台を維持して高水準にあり、高付加価値を追求する事業体制が奏功して堅調な収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 253億円 360億円 333億円 347億円 350億円
経常利益 39億円 43億円 38億円 47億円 55億円
利益率(%) 15.5% 12.0% 11.4% 13.6% 15.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 30億円 25億円 31億円 55億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は347億円から350億円へと微増していますが、売上総利益は減少しています。一方で、営業利益は39億円から48億円へと増加し、営業利益率も13.6%へと向上しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 347億円 350億円
売上総利益 52億円 43億円
売上総利益率(%) 15.0% 12.4%
営業利益 39億円 48億円
営業利益率(%) 11.3% 13.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が9億円(構成比31%)、雑費が4億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の鉄構建設事業は前期から減少したものの、不動産事業が大きく伸長しました。不動産事業の大幅な増収が鉄構建設事業の減収を補い、全体として増収を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
鉄構建設事業 314億円 279億円
不動産事業 33億円 70億円
連結(合計) 347億円 350億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益や保有資産の売却によって得た資金を用いて、借入金の返済などを進める改善型のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 50億円 99億円
投資CF -45億円 28億円
財務CF 9億円 -143億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.8%でこちらも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「技術の巴」として幅広く株主および取引先の信頼を得ることを目指しています。「創造力を発揮し、信頼と安心の技術で社会に貢献する」「組織の総力を結集し、時代を先取りした積極的な経営を展開する」「人を大切にし、明るく活力あふれる企業を構築する」という企業方針を掲げ、社会に貢献しお客様の信頼と満足を得ることで企業利益を確保していくことを使命としています。

(2) 企業文化


「技術立社」を標榜し、信頼と安心の技術をもってお客さまの信頼を頂戴するという姿勢が根付いています。技術的に特色のある製品や工法を創り出し、これらを品質第一、低コストで提供することに重きを置いています。また、「企業は人なり」という考えのもと、人を大切にし、明るく活力あふれる職場環境の構築を目指す価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


グループ保有力の有効活用を推進するとともに、事業基盤の強化、周辺領域の拡大を図ることを目的とした第3期中期経営計画「TOMOE BUILD up 5」を推進しています。株主価値の向上による財務体質の強化を重要視し、株主資本利益率(ROE)や株価純資産倍率(PBR)を意識した財務体質の構築と、高付加価値・高営業利益率による収益確保を目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「技術立社」を堅持しつつ、「企業体質の改善・強化」「事業領域の拡大、新規事業の創出」「グループ総力の結集」を基本戦略としています。さらに近年では、「事業継続性の確保を図る」ことや、DXの適用拡大、働き方改革を含む「変革」にチャレンジすることを新たな重点施策として加えており、企業価値の向上を図るべく真摯に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業は人なり」との考えに基づき、人こそが会社を形作るものと位置づけ、次世代経営者の育成、管理職の育成、プロフェッショナルの育成に注力しています。工学博士号や技術士、一級建築士などの難易度の高い資格取得を推進し、個々の生活スタイルに沿った出勤時間の選択や男性の育児休業取得推進など、一人ひとりが働きやすい職場環境を整備するための施策を積極的に実施しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 13.6年 7,032,404円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 60.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 67.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 68.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) 37.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、非管理職従業員の平均残業時間/月(12.2時間)、非管理職従業員の有給休暇取得率/年(91.77%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の需要変動による業績への影響

国内の経済状況が悪化し、官公庁事業や民間設備投資が減少した場合、企業間競争が激化し、受注量や受注条件の悪化が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は営業戦略の強化やコストダウンの推進によりリスク低減に努めています。

(2) 取引先や下請業者の信用不安

工事代金の受領前に取引先が信用不安に陥ったり、下請業者が同様の事態に陥った場合、一取引における請負金額が多額であるため、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は厳格な与信管理の徹底により対策しています。

(3) 資材価格や労務費の高騰

事業活動には多くの資材調達と労務費が必要であり、これらが高騰し請負金額に反映できない場合、見積時の利益率低下や工期・原価に悪影響を与える可能性があります。資材価格の動向モニタリング等を通じて価格上昇の抑制に努めています。

(4) 製品の欠陥に伴う損害賠償

同社は品質管理の徹底に努めていますが、各種工事や製品において誤作、納期遅延、瑕疵担保責任、製造物責任による損害賠償が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。