高周波熱錬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高周波熱錬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高周波熱錬は東京証券取引所プライム市場に上場し、土木・建築用のPC鋼棒や自動車用の高強度ばね鋼線等の製造と、重要保安部品の熱処理受託加工や誘導加熱装置の製造を手掛けています。直近の業績は、コスト上昇分を販売価格へ転嫁したこと等により売上高583億円、営業利益19億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、高周波熱錬の有価証券報告書(第115期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高周波熱錬ってどんな会社?


同社は熱処理技術を中核に、インフラや自動車を支える高強度鋼材の製造や熱処理加工を行うメーカーです。

(1) 会社概要


東亜無線電機として1940年に設立され、1946年に現在の高周波熱錬へ社名を変更し、高周波誘導加熱装置の製作や熱処理加工の受託を開始しました。1964年に株式を上場し、国内外で生産拠点を拡充しています。近年では事業領域拡大に向け、2025年にドーケンやMDIを子会社化しました。

従業員数は連結で1,651名、単体で872名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は原材料等の主要な仕入先であり共同開発なども行う事業会社の日本製鉄、第3位は主要な取引銀行である三菱UFJ銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.11%
日本製鉄 9.51%
三菱UFJ銀行 4.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は大宮克己氏が務めています。社外取締役は2名(比率22.2%)です。

氏名 役職 主な経歴
大宮 克己 代表取締役社長執行役員 1983年同社入社。IH事業部電機部長、取締役、常務取締役、代表取締役社長などを歴任し、2021年6月より現職。
一色 信元 取締役専務執行役員技術開発・事業開発・DX推進・情報戦略担当研究開発本部長情報統括室長 1982年TRWオートモーティブジャパン入社。2001年同社入社後、東洋ファスナーを経て2007年再入社。製品技術本部長などを経て2026年4月より現職。
鈴木 孝 取締役常務執行役員物流統括管理者(CLO/Chief Logistics Officer)製品事業部長調達本部長 1985年同社入社。製品事業部業務部長等を経て、高周波熱錬(中国)軸承董事長やネツレンアメリカ社長を歴任し、2026年4月より現職。
安川 知克 取締役上席執行役員安全衛生・環境担当管理本部長 1986年同社入社。管理本部副本部長、ネツレン・名南社長などを歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、森山義子(TMI総合法律事務所カウンセル弁護士)、伊藤豊次(元コニカミノルタ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製品事業部関連事業」「IH事業部関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 製品事業部関連事業


土木・建築分野向けのPC鋼棒や、自動車・二輪車のサスペンション向け高強度ばね鋼線、自動車部品、建設機械用の旋回輪などの部品を製造・販売しています。国内外の多様な顧客へ向け、高度な熱処理加工を施した高品質な製品を提供しています。

顧客への製品販売による代金を収益源としています。事業の運営は同社が行うほか、韓国の高麗熱錬、中国の上海中煉線材や高周波熱錬(中国)軸承、米国のネツレンアメリカコーポレーションなどの子会社・関連会社がそれぞれの地域で製造販売を担っています。

(2) IH事業部関連事業


自動車、工作機械、建設機械などの重要保安部品に対する熱処理受託加工を行っています。また、各産業分野に向けた誘導加熱(IH)装置や産業用機械、およびその部品の製造販売、顧客先での装置のメンテナンスサービスも幅広く展開しています。

顧客からの受託加工賃や、加熱装置などの製品販売代金、保守サービス料を収益源としています。同社が運営を行うほか、国内ではネツレン・ヒートトリートやネツレンハイメック、海外では中国の塩城高周波熱煉、インドネシアのPT.ネツレン・インドネシア等が展開しています。

(3) その他


上記の報告セグメントに含まれない不動産賃貸事業や、プレキャスト・コンクリート製品の製造販売、廃熱回収コンサルティングや省エネシステムの設計・製造販売などを展開しています。

保有不動産の賃貸料やコンクリート製品・システムの販売代金を収益としています。同社がオフィスビルのフロア等を賃貸するほか、近年子会社化したドーケンやMDIなどの子会社がそれぞれの事業領域で運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は530億円から583億円へと緩やかに拡大しています。一方で、原材料価格やエネルギーコストの上昇等の影響により、経常利益や親会社所有者帰属の当期利益については変動が見られ、さらなる収益性の向上が課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 530億円 575億円 572億円 576億円 583億円
経常利益 44億円 31億円 25億円 23億円 27億円
利益率(%) 8.3% 5.4% 4.4% 4.0% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 6億円 16億円 17億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2年間の売上高は微増して推移しており、原価低減活動や価格転嫁が進んだことで売上総利益が増加しています。それに伴い、営業利益および営業利益率も前期と比較して改善が見られます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 576億円 583億円
売上総利益 103億円 112億円
売上総利益率(%) 18.0% 19.2%
営業利益 16億円 19億円
営業利益率(%) 2.8% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が21億円(構成比22%)、運搬費が16億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の製品事業部関連事業では、海外での自動車向け製品の販売が堅調に推移し、建設機械関連製品の販売価格改定等も寄与して売上が安定しています。一方、IH事業部関連事業は国内外での加熱装置の販売量低下により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
製品事業部関連事業 366億円 363億円
IH事業部関連事業 209億円 195億円
その他 1億円 24億円
連結(合計) 576億円 583億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 41億円 18億円
投資CF -34億円 -52億円
財務CF 17億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「熱処理技術を中核として、常に新商品・新事業の開発を進め社会の発展に貢献します」をはじめとする5つの経営理念を掲げています。安全と健康を基本として人を育て、地球環境との共生を重視しながら社会的責任を全うし、社会から信頼されるパートナーとなることを目指しています。

(2) 企業文化


「たゆまぬ自己変革に努め、常に成長することを目指します」という理念のもと、透明で公正な企業文化を築いています。また、無公害(Ecological)と省資源(Economical)のダブル・エコ(W-Eco)を強みとする技術力を背景に、長期的な視野で環境貢献を重視する組織となっています。

(3) 経営計画・目標


長期経営ビジョン「NETUREN VISION 2030」に基づき、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「Aggressive Challenge One NETUREN 2026」を推進しています。同計画の連結経営目標は以下の通りです。

・売上高:640億円
・営業利益:21億円
・営業利益率:3.3%
・ROE:2.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「成長ドライバーの創生」「成長エンジンの育成」「グローバルマーケットの拡大」「自発的貢献意欲のある人財の育成」を基本戦略としています。既存の現場力に新たな技術を掛け合わせて競争力を高めるとともに、M&Aや資本参加を通じて事業基盤の強化を推進し、新たな価値創造に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人は当社の財産であり、経営基盤を成すものである」という基本理念のもと、多様性を認め合い前向きに挑戦する人材の育成を最重要課題と位置付けています。女性や外国籍人材の活躍推進を強化し、グローバル人材の育成やリスキリング支援、ワークライフバランスの向上などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.1歳 14.3年 6,331,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 67.7%
男女賃金差異(全労働者) 77.4%
男女賃金差異(正規雇用) 79.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 73.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の平均取得日数(13.30日)、管理職に占める女性労働者の割合の増加(2022年3月末比1.7倍)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化による受注減少


自動車や土木・建築、建設機械などの業界へ製品を展開しているため、各業界の市場動向や政治・経済情勢が悪化した場合、受注が減少する可能性があります。これにより固定費の負担が相対的に重くなり、設備投資やM&Aに伴うのれんの減損損失が発生するなど、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 製品品質に関するトラブル


同社の製品は重要保安部品などの重要な部位に使用されるため、細心の注意を払って品質検査を行っています。万が一、品質上のトラブルが発生し、人的・社会的な被害が生じた場合には、同社グループの信用低下や損害賠償などにより業績に重大な影響を与えるリスクが考えられます。

(3) 電気料金および資材価格の高騰


熱処理工程において多大な電力を消費するため、電気料金の上昇は製造コストを圧迫します。また、主原料である鋼材などの価格高騰や物流業界のドライバー不足による輸送コストの増加も懸念事項です。これらに対して適切な価格転嫁や原価低減が追いつかない場合、収益性が悪化するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。