サンコール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンコール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。自動車関連製品や電子情報通信部品を製造販売する。2025年3月期は、データセンター向け需要回復等により売上高は639億円と増収。営業利益は34億円と黒字転換を果たしたが、事業撤退損等の計上で最終損益は7.7億円の赤字(親会社株主帰属)となった。


※本記事は、サンコール株式会社 の有価証券報告書(第108期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンコールってどんな会社?


自動車用精密部品やHDD用サスペンション、光通信部品などを手掛ける独立系精密部品メーカーです。

(1) 会社概要


1943年に航空機用エンジンの弁ばね用鋼材を製造する三興線材工業として設立されました。1964年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1991年に現在のサンコールへ商号変更しています。2013年には東京証券取引所市場第一部へ指定され、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は2,133名、単体では658名です。筆頭株主は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は主要な取引先であり原材料の購入等を行っている伊藤忠丸紅鉄鋼です。第3位は資産管理を行う日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 25.46%
伊藤忠丸紅鉄鋼 15.41%
日本カストディ銀行 3.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長執行役員は奈良正氏です。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
奈良  正 代表取締役社長執行役員 トヨタ自動車入社後、エンジン開発等に従事。2017年よりサンコールにて執行役員、開発本部長等を歴任し、2024年6月より現職。
金田 雅年 代表取締役専務執行役員管理本部長 伊藤忠商事入社。自動車事業推進部や関連会社役員を経て、2017年よりサンコール取締役。企画・管理部門を管掌し、2024年6月より現職。
礒野 裕司 取締役専務執行役員生産事業本部長兼 製品戦略室長兼 精密製品生産部門長 1984年サンコール入社。米国現地法人社長や精密機能材料部門長を歴任。生産事業本部長として生産部門を統括し、2025年6月より現職。


社外取締役は、三宅義浩(神戸製鋼所執行役員)、鍵谷文子(弁護士)、小澤浩子(元ソニー)、掛川徹(元伊藤忠商事)、田中敦(関西学院大学教授)、山田泉(元住友信託銀行)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アジア」「欧州」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


材料関連製品、自動車関連製品、HDD用サスペンション、プリンター関連、通信関連製品の製造販売を行っています。顧客は自動車メーカーや電子部品メーカー等です。

製品の販売対価を収益源としています。運営は主にサンコールが行っているほか、子会社のサンコールエンジニアリング、サンコール菊池などが製造を担っています。

(2) 北米


米国およびメキシコにおいて、材料関連製品、自動車関連製品、通信関連製品の製造販売を行っています。現地の自動車関連企業や通信機器関連企業が主な顧客です。

製品の販売対価を収益源としています。運営は米国のSUNCALL AMERICA INC.やメキシコのSUNCALL TECHNOLOGIES MEXICO,S.A.DE C.V.が行っています。

(3) アジア


中国、タイ、ベトナム等において、自動車関連製品、プリンター関連製品、通信関連製品、材料関連製品の製造販売を行っています。各地域の製造業者が主な顧客です。

製品の販売対価を収益源としています。運営はSUNCALL CO.,(H.K.)LTD.、Suncall Technologies(SZ)Co.,Ltd.、SUNCALL HIGH PRECISION(THAILAND)LTD.等の現地法人が行っています。

(4) 欧州


主に通信関連製品および自動車関連製品の販売を行っています。欧州域内の顧客へ製品を提供しています。

製品の販売対価を収益源としています。運営はドイツのSUNCALL Europe Technology & Trading GmbHが行っています。

(5) その他


電子回路検査機器用プローブや歩行アシストロボット等の製造販売を行っています。

製品の販売対価を収益源としています。運営は主にサンコールが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近で大きく伸長し、600億円台に到達しています。利益面では、前期に多額の赤字を計上しましたが、当期は経常黒字へ転換しました。ただし、最終損益は依然として赤字が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 401億円 474億円 534億円 515億円 639億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 -10億円 10億円 8億円 -27億円 32億円
利益率(%) -2.5% 2.2% 1.6% -5.2% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.1億円 12億円 10億円 -108億円 -23億円

(2) 損益計算書


当期は売上高が大幅に増加し、売上総利益および営業利益が黒字化しました。前期の営業赤字から収益性が大きく改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 515億円 639億円
売上総利益 20億円 97億円
売上総利益率(%) 3.9% 15.1%
営業利益 -35億円 34億円
営業利益率(%) -6.9% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8億円、運送費及び保管費が5億円を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは電子情報通信分野の回復により増収となりました。北米やアジアも通信関連製品等が好調で売上を伸ばしています。欧州は本格的な販売開始により売上が計上されました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
JapanReportableSegments 320億円 393億円
NorthAmericaReportableSegments 87億円 105億円
AsiaReportableSegments 108億円 141億円
EuropeReportableSegments 0.0億円 1億円
Total 515億円 639億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


改善型:営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 7億円
投資CF -43億円 10億円
財務CF 29億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「技翔創変」を経営理念として掲げています。これは、技術集約型精密製品の創造を通じて、顧客の問題解決を図り、社会に貢献することを基本方針とするものです。

(2) 企業文化


経営効率を高めることにグループ一丸となって積極的に挑戦する文化があります。顧客の海外現地調達の加速や価格競争、為替変動などの環境変化に耐えうる経営体質の構築を目指し、持続的成長を支える姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2027」を策定しており、2027年度を最終年度とする経営指標を掲げています。既存自動車分野の収益性改善、成長事業の基盤強化、安定経営のための財務戦略を基本方針としています。

* 売上高480億円
* 営業利益30億円
* 営業利益率6.3%、当期純利益18億円

(4) 成長戦略と重点施策


自動車関連の既存事業では収益性を重視し、電動化関連の成長事業ではバスバー等の開発・量産拡大を進めます。また、電子情報通信関連ではデータセンター需要等を取り込み、財務面では不採算事業からの撤退を含めたポートフォリオ見直しを実行します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サステナビリティ経営の一環として人的資本経営を推進しています。女性活躍推進として2035年に女性比率20%以上を目指すほか、人権尊重の方針を制定し、差別やハラスメントの排除、労働時間の適切な管理などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 16.8年 5,927,968円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.3%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.0%
男女賃金差異(正規) 79.0%
男女賃金差異(非正規) 75.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員割合(12.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動による影響


海外売上高比率が高いため、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、為替予約等のヘッジ取引や海外子会社の資金調達現地化により対策を行っています。

(2) 人材確保や育成に関するリスク


事業拡大や技術継承には適切な人材の確保と育成が不可欠ですが、少子高齢化等の影響で十分な確保ができない可能性があります。企業価値向上活動や育成体制の強化により対応を進めています。

(3) 訴訟に関するリスク


事業遂行上で訴訟等を提起され、多額の損害賠償を命じられる可能性があります。契約審査による未然防止や、発生時の専門家との連携により影響の最小化に努めています。

(4) 知的財産権に関するリスク


第三者による技術模倣や特許権侵害の指摘を受けるリスクがあります。専門部署を設置し、適切な権利取得と管理、法的対応を推進することでリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。