※本記事は、日本製罐株式会社 の有価証券報告書(第120期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本製罐ってどんな会社?
金属缶(18リットル缶・美術缶)の製造販売を主力とし、大手商社や鉄鋼メーカーを大株主に持つ老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
1925年に前身となる川俣製罐所が設立され、1942年に日本製罐を買収し現社名となりました。1963年に東京証券取引所市場第二部に上場し、長年にわたり金属缶製造を行っています。2013年には関連会社を統合して新生製缶を設立し、生産体制を再編しました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は213名(単体128名)です。大株主の構成は、筆頭株主が鉄鋼専門商社、第2位が大手鉄鋼メーカー、第3位が法人となっています。商社やメーカーとの強固な関係性を背景に事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤忠丸紅鉄鋼 | 11.67% |
| 日本製鉄 | 7.85% |
| みみっく | 7.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は西尾文隆氏、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西尾 文 隆 | 代表取締役社長 | 伊藤忠商事入社後、伊藤忠丸紅鉄鋼欧州会社社長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 土屋 昭 雄 | 常務取締役 | 1984年日本製罐入社。技術部長、新生製缶社長等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、宮入小夜子(開智国際大学名誉教授・客員教授)、立花俊浩(伊藤忠丸紅鉄鋼執行役員)、塔下辰彦(元伊藤忠丸紅鉄鋼社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金属缶製造販売事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。
■金属缶製造販売事業
18リットル缶(一斗缶)や美術缶(デザイン性の高い缶)等の金属容器を製造・販売しています。主な顧客は塗料、化学、油糧、菓子メーカーなどです。新生製缶が関西地区、日本製罐が関東地区に製造拠点を持ち、相互にOEM生産を行うことで効率的な供給体制を構築しています。
収益は、顧客への製品販売による対価です。運営は、主に関東地区を日本製罐、関西地区を子会社の新生製缶株式会社が担当しています。原材料は主に関連当事者である伊藤忠丸紅鉄鋼から仕入れています。
■不動産賃貸事業
同社が保有する不動産(土地・建物)の有効活用を行っています。本社敷地内にある物流施設やオフィスビルなどを外部テナントへ賃貸しています。
収益は、テナントからの賃貸料収入です。運営は日本製罐が行っており、安定的な収益源の一つとなっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移です。売上高は100億円台前半で推移していますが、直近の2025年3月期は減収となり、経常損益および当期純損益が赤字に転落しました。原材料価格の高騰や設備稼働の遅れ、減損損失の計上が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 110億円 | 105億円 | 109億円 | 122億円 | 113億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 2億円 | 3億円 | 3億円 | -5億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 2.1% | 2.5% | 2.6% | -4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 2億円 | 3億円 | 3億円 | -3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高の減少に加え、売上原価率は依然として高く、売上総利益が大きく減少しました。営業損益段階で赤字となっており、コスト構造の見直しや収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 122億円 | 113億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 9億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.5% | 7.6% |
| 営業利益 | 3億円 | -5億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | -4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が6億円(構成比40%)、給料及び手当が3億円(同23%)を占めています。物流費等のコスト負担が重い構造となっています。
■(3) セグメント収益
セグメントごとの状況です。金属缶製造販売事業は、18リットル缶の販売は堅調だったものの、美術缶の新規設備稼働遅れ等が響き減収となり、営業損失を計上しました。不動産賃貸事業は安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金属缶製造販売事業 | 121億円 | 111億円 | 2億円 | -6億円 | -5.6% |
| 不動産賃貸事業 | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 51.0% |
| 連結(合計) | 122億円 | 113億円 | 3億円 | -5億円 | -4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本製罐は、営業活動により資金を創出し、投資活動で設備投資や有価証券の売買を行い、財務活動で借入金の返済や配当金の支払いを行っています。
当連結会計年度は、営業活動で資金を増加させ、投資活動では有価証券の売却収入が固定資産取得による支出を上回りました。
財務活動では、借入金の減少や配当金の支払いなどにより資金を使用しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 9億円 |
| 投資CF | -7億円 | 6億円 |
| 財務CF | 3億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、顧客、社員、社会への「+(プラス)」の創造と提供を通じて、明るく豊かな未来を創造することを企業パーパス(使命)としています。金属缶の製造販売を通じて、日本を代表する成長性と収益力を持つ企業を目指し、業界に新風をもたらす魅力ある企業となることを基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
「+(プラス)創造企業」をコーポレートビジョンとして掲げています。顧客には付加価値の高い新製品とソリューションを、社員には夢を持って働ける安心安全な職場環境を、社会には持続可能な未来づくりに向けた貢献を提供することを重視しています。また、「未来のKAN-Kyouを今日も考えています」という環境理念のもと、地球環境への配慮も企業文化として根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度に創業100周年を迎えるにあたり、2026年度以降の安定した成長を実現するための経営改革を進めています。2025年度を最終年度とする中期経営計画において各種施策を実行中ですが、美術缶新規設備の稼働遅れや業績悪化を受け、抜本的な経営改革を断行する方針です。なお、具体的な数値目標は有価証券報告書には記載されていません。
■(4) 成長戦略と重点施策
製造コスト低減とプロダクトミックス改善による経営基盤の強化、および新製品開発や新規顧客確保による収益基盤の創造を最優先課題としています。具体的には、製造ラインの集約やDX化推進によるコスト競争力強化、高付加価値製品の比重拡大、同業他社との提携推進などに取り組んでいます。また、バランスシート改革としての投資有価証券売却や有利子負債圧縮も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員を最も重要な経営資本と位置づけ、企業文化の変革と働き方改革を推進しています。これまでの年功序列や終身雇用からの脱却を図り、多様な価値観を尊重した人事制度への刷新を行いました。教育・研修制度の充実やダイバーシティ推進により、社員の能力を最大限発揮できる環境整備と、やりがいを持って働ける組織づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.8歳 | 13.6年 | 5,099,025円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 65.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途入社比率(68%)、中途入社者の管理職比率(58%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 売上高の変動について
金属缶の需要減少に加え、原材料価格やエネルギーコストの高騰による製品価格上昇が、他容器への移行を加速させる可能性があります。また、美術缶の大型設備稼働の大幅な遅れや、主要顧客の購買方針変更(複数社購買化)による売上減少のリスクも懸念されています。
■(2) 原材料価格の変動について
鋼材価格の値上げ要請に加え、物流費、印刷代、部材費の上昇、従業員の待遇改善コストなどが増加しています。これらを製品価格へ転嫁するための交渉を継続的に行っていますが、転嫁が十分に浸透しない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 外部負債と金利変動リスク
同社グループは短期および長期の借入金等の外部負債を有しています。今後、金利水準が大きく上昇した場合、支払利息の増加などを通じて同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 業界状況について
主力である金属缶業界は、過剰設備と長期的な需要減退により、稼働率低下や過当競争という構造的問題を抱えています。今後、需要に見合った業界再編の動きが予想され、適切な経営判断が求められる局面にあると認識しています。



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