※本記事は、三洋工業株式会社の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 三洋工業ってどんな会社?
同社は、建築用金物や資材の製造・販売から施工までを一貫して手掛ける総合金属建材メーカーです。
■(1) 会社概要
1948年10月に創業者である山岸福次郎氏が東京都港区に三洋商会を創業し、1958年に三洋工業が設立されました。1971年に東証二部へ上場を果たし、1976年には東証一部に指定されています。近年では、2021年に三洋UDを子会社化するなど、継続的に事業基盤の強化を進めています。
従業員数は連結で383名、単体で307名です。筆頭株主は三洋工業協力会社持株会で、第2位はインタラクティブ・ブローカーズ証券(常任代理人)です。上位の株主には協力会社や社員の持株会が含まれており、ステークホルダーとの強固な協調体制がうかがえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三洋工業協力会社持株会 | 18.36% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC (常任代理人インタラクティブ・ ブローカーズ証券) | 5.80% |
| 三洋工業社員持株会 | 3.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は山岸茂氏が務めています。監査等委員を含め、社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山岸茂 | 代表取締役社長 | 1999年富士機械製造入社、2007年同社入社。常務取締役購買部長兼子会社担当等を経て2021年より現職。 |
| 鈴木将晴 | 常務取締役開発統括部長兼技術研究所長 | 1985年同社入社。常務取締役営業統括部長等を歴任し、2022年より現職。 |
| 武田眞吾 | 常務取締役生産統括部長兼購買担当 | 1982年同社入社。取締役生産統括部長兼開発統括部長兼技術研究所長等を経て2021年より現職。 |
| 吉見紀昭 | 常務取締役営業統括部長兼子会社担当 | 1984年同社入社。取締役関東支店長兼子会社担当などを歴任し、2024年より現職。 |
| 園田崇之 | 取締役財務部長兼情報管理部長 | 1987年三和銀行入行。2017年に同社へ入社し、執行役員管理統括部財務部長等を経て2022年より現職。 |
| 大内一彦 | 取締役総務部長兼経営企画室長兼法務監査担当 | 1988年第一勧業銀行入行。2019年に同社へ入社し、執行役員総務部長兼経営企画室長等を経て2024年より現職。 |
| 原田実 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1981年同社入社。常務取締役経営企画・総務・法務監査担当等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、堀之北重久(公認会計士堀之北重久事務所代表)、萩原園子(渡部・萩原法律事務所弁護士)、植草寛(植草寛公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「三洋工業」「システム子会社」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 三洋工業
建築用の軽量壁天井下地、床システム、アルミ建材などの建築用金物・資材の製造、販売、および施工を手掛けています。耐震・防振対策製品や環境配慮型製品など、多様化する市場ニーズや社会課題の解決に応える高付加価値製品を提供しています。
ビルや住宅の建設に携わる顧客からの製品販売代金や工事施工代金が主な収益源です。また、システム子会社やその他の関連会社に対しても製品を販売しています。事業の運営は同社が行っています。
■(2) システム子会社
建築用金物・資材の販売および施工を担っており、主に学校体育館用の鋼製床下地材製品やOAフロアなどの床システムの施工を中心に事業を展開しています。設計指定活動を通じた積極的な拡販を図っています。
顧客からの床システム等の施工代金および関連資材の販売代金を収益源としています。施工に必要な商品の一部は三洋工業から仕入れています。運営は三洋工業九州システムや三洋工業東北システム、三洋工業北海道システムなどが地域ごとに担当しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、建築用金物や資材の製造、販売、および施工を行っています。アルミ建材や気密材などの専門的な建材製品を取り扱い、多様な建築需要に対応しています。
顧客への製品販売および施工代金が収益源です。事業に必要な商品の一部は三洋工業から仕入れています。事業の運営はフジオカエアータイトやスワン商事などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は建設投資の回復を背景に順調に拡大していましたが、近年は着工床面積の減少や工期遅延の影響により伸び悩んでいます。経常利益と当期利益についても、原材料価格や物流費の高騰などコスト負担の増加により、直近2期は減益傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 245億円 | 283億円 | 305億円 | 295億円 | 290億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 20億円 | 27億円 | 23億円 | 20億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 7.0% | 8.8% | 7.7% | 7.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 15億円 | 17億円 | 17億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の微減に対し、原価率の上昇は限定的ですが、人件費や物流費などの増加により販売費及び一般管理費が膨らんでいます。その結果、営業利益率は低下し、収益性の確保が課題となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 295億円 | 290億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 84億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.1% | 29.0% |
| 営業利益 | 21億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が21億円(構成比32%)、運賃・荷造費が12億円(同19%)を占めています。売上原価の内訳は、当期商品仕入高が94億円(売上原価合計に対する構成比46%)、当期製品製造原価が75億円(同36%)を占めています。
■(3) セグメント収益
三洋工業セグメントは床システムの受注増により増収となりましたが、コスト増や市場低迷により利益は減少しました。システム子会社セグメントは、競争激化の影響を受け減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 三洋工業 | 223億円 | 226億円 | 14億円 | 13億円 | 5.6% |
| システム子会社 | 66億円 | 58億円 | 5億円 | 4億円 | 6.9% |
| その他 | 6億円 | 5億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 5.7% |
| 連結(合計) | 295億円 | 290億円 | 21億円 | 18億円 | 6.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を行いながら借入金の返済や株主還元を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 10億円 |
| 投資CF | -10億円 | -14億円 |
| 財務CF | -8億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「国際化社会の中で、社員1人ひとりの自己の成長と企業の安定、発展をはかり、快適空間の創造を通じて社会に貢献します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、総合金属建材メーカーとして、住まう人や働く人が安心して心地よく過ごせる環境づくりの実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「人間尊重の経営」「お客様第一の経営」「地域・社会と共生する経営」の3つを基本方針としています。また、社員の多様性や人権を尊重し、健康的で働きやすい職場環境の構築を推進するとともに、共創の精神を大切にして新しい価値を生み出す「環境共創カンパニー」としての文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2025年度を初年度とする中期3ヵ年経営計画「SANYO VISION 79」を推進しています。同計画では、事業の発展と安定的かつ持続的な企業価値の向上を目標とし、売上高、営業利益率、および自己資本利益率(ROE)を重要な経営指標として位置づけ、その向上に努めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「高付加価値化追求に向けた事業基盤強化とサステナブル経営推進による企業価値向上」を基本方針とし、成長戦略商品の拡販やデジタル化による営業活動の高度化を進めています。また、生産・物流網の最適化や3次元振動試験棟を活用した研究開発を推進し、経済的価値と社会的価値の両立を目指しています。
* 成長戦略商品の販売額:2028年3月期までに137億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員の成長が企業の持続的発展に繋がるという考えのもと、職位や職能に応じた研修制度を整備し、自立したプロフェッショナル人材の育成に取り組んでいます。また、目標管理制度を基軸とした公正な評価を行い、多様な価値観を尊重しワークライフバランスに配慮した、安全で働きがいのある職場環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.2歳 | 16.7年 | 6,090,637円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.1% |
| 男性育児休業取得率 | 11.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 91.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断の受診率(99.9%)、ストレスチェック受検率(99.2%)、正規雇用労働者の中途採用比率(50.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建築市場の需要縮小
少子高齢化と人口減少の進行に伴い、新規の建築需要が縮小することで販売競争が激化し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、コスト低減や「安心・安全」「環境・省エネ」をコンセプトとした成長戦略商品の開発に積極的に取り組んでいます。
■(2) 鋼材・アルミ等の材料価格高騰
取扱商品の材料である鋼材やアルミの市場価格は、世界景気や為替変動などの影響を受けます。材料価格が高騰した場合、収益を圧迫するリスクがあります。原価低減や売価転嫁の推進に加え、定期的な市場動向の把握と新規仕入先の開拓によるリスク分散に努めています。
■(3) 製造物責任等に伴う訴訟リスク
総合金属建材メーカーとして品質管理には万全を期していますが、製造物責任による損害賠償や施工面での重大な瑕疵が発生した場合、同社の業績に悪影響を与える可能性があります。品質安全管理規程に基づき、予防措置と迅速な対応ができる体制を構築しています。
■(4) 会計上の見積りにおける不確実性
工事原価総額や債権の貸倒れ、固定資産の減損等に関して会計上の見積りを行っていますが、実際の状況が見積りと異なった場合、引当不足や減損処理が発生し業績に影響を及ぼす可能性があります。定期的な工事進捗管理や与信管理を徹底し、リスクの軽減を図っています。



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