※本記事は、モリテック スチール株式会社 の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. モリテック スチールってどんな会社?
特殊帯鋼の専門商社機能と、焼入鋼帯や鈑金加工品のメーカー機能を併せ持つ企業。
■(1) 会社概要
1943年に森商店として創業し、1950年に森ゼンマイ鋼業として法人化。1963年に大阪店頭市場へ公開し、1966年にベーナイト鋼帯の量産化に成功した。2000年に大阪証券取引所市場第一部へ上場し、2013年の市場統合に伴い東京証券取引所市場第一部へ上場。2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行した。
連結従業員数は727名、単体では337名体制で事業を展開している。筆頭株主は主要な仕入先でもある事業会社の日本製鉄で、第2位は日本生命保険、第3位は金融機関の三菱UFJ銀行となっている。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 10.02% |
| 日本生命保険相互会社 | 5.67% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は門高司氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 門 高司 | 代表取締役取締役社長 | 1984年入社。海外事業本部長、常務取締役執行役員製造本部副本部長兼三重大山田工場長などを経て2019年6月より現職。 |
| 岩崎 泰治 | 常務取締役執行役員開発本部長 | 1990年日商岩井入社。メタルワン特殊鋼部長などを経て2019年入社。鋼材事業本部長などを歴任し2025年6月より現職。 |
| 大川 良太 | 取締役上席執行役員生産本部長 | 1992年入社。三重大山田工場長、製品事業本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 田中 正三 | 取締役上席執行役員管理本部長 | 1990年入社。日輪鋼業代表取締役社長、経営企画部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 坂手 恵志 | 取締役上席執行役員営業本部長 | 1989年入社。技術本部長、グローバル製品事業戦略部長などを経て2025年6月より現職。 |
| 内山 良成 | 取締役(監査等委員) | 1987年入社。取締役執行役員サステナビリティ推進部長、監査役を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、阪口誠(弁護士)、藤谷和憲(弁護士)、谷野砂矢香(バルテック代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「商事部門」「焼入鋼帯部門」「鈑金加工品部門」「海外事業」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
**(1) 商事部門**
特殊帯鋼(みがき特殊帯鋼、熱間圧延鋼帯、ステンレス鋼帯)や普通鋼などを主とした鋼材の販売を行っています。自動車関連や家電、半導体業界など幅広い顧客に対し、材料供給の役割を担っています。
収益は、顧客への鋼材販売による対価が主な源泉です。運営は、モリテック スチールや子会社の日輪鋼業、中川産業などが行っています。2023年3月期に子会社化した中川産業とのシナジーにより、ステンレス鋼の取り扱いや販路拡大を進めています。
**(2) 焼入鋼帯部門**
特殊帯鋼を主原料とした焼入鋼帯(ベーナイト鋼帯を含む)の製造販売を行っています。独自の熱処理技術により、耐久消費財向けの部材として高い品質を提供しており、自動車関連部品や刃物などの用途で使用されています。
収益は、製造した製品の販売対価が源泉です。運営は主にモリテック スチールが担っており、海外メーカーとの競争が激化する中、海外市場の開拓や国内向け販路の拡大を進めています。
**(3) 鈑金加工品部門**
コードリールやゼンマイを含む鈑金加工品の製造販売を行っています。自動車業界や家電業界など、耐久消費財分野の広範な需要に対応した機能部品を提供しています。
収益は、製品の販売対価および一部の金型費用の回収などから得ています。運営はモリテック スチールが主体となり、EV(電気自動車)化の進展に対応したEV充電器の開発・拡販にも注力しています。
**(4) 海外事業**
タイ、中国、ベトナム、インドネシア、メキシコの海外拠点において、鋼材の輸出入販売代理業務や鋼材加工販売、および自動車・家電・農業機械用部品の製造販売を行っています。
収益は、各国の現地顧客への製品・商品販売対価が源泉です。運営は、ジュタワン・モリテック(タイランド)、上海摩立特克鋼鉄商貿有限公司、モリテックスチールメキシコなどの現地連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は第83期に大きく伸長した後、当期は横ばいで推移しています。経常利益などの利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰、為替の影響などを受け、変動が見られます。当期は売上高が前期比微減となり、経常利益も減少しましたが、黒字を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 223億円 | 276億円 | 363億円 | 508億円 | 505億円 |
| 経常利益 | -4.0億円 | 2.9億円 | -0.0億円 | 4.4億円 | 3.2億円 |
| 利益率 | -1.8% | 1.0% | -0.0% | 0.9% | 0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.8億円 | 2.7億円 | -7.4億円 | 3.4億円 | 3.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比でわずかに減少しましたが、売上総利益および売上総利益率は改善傾向にあります。一方で、営業利益は増加したものの、全体的な利益率は依然として低水準で推移しており、コストコントロールや高付加価値化が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 508億円 | 505億円 |
| 売上総利益 | 45億円 | 48億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.9% | 9.5% |
| 営業利益 | 2.6億円 | 4.0億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | 0.8% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬・給料手当が13億円(構成比29%)、運賃保管料が12億円(同27%)を占めています。
■(3) セグメント収益
商事部門は自動車向けや家電需要の調整により減収減益となりました。焼入鋼帯部門と鈑金加工品部門も、在庫調整やコスト増により減収減益です。一方、海外事業は新規受注部品の生産開始等により増収となり、損益も黒字転換を果たしました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 商事部門 | 370億円 | 363億円 | 4.6億円 | 4.1億円 | 1.1% |
| 焼入鋼帯部門 | 15億円 | 15億円 | 1.5億円 | 1.3億円 | 8.6% |
| 鈑金加工品部門 | 73億円 | 72億円 | 7.3億円 | 6.4億円 | 9.0% |
| 海外事業 | 49億円 | 55億円 | -3.8億円 | 0.8億円 | 1.4% |
| 連結(合計) | 508億円 | 505億円 | 2.6億円 | 4.0億円 | 0.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
モリテックスチールは、短期借入れや長期借入れによる収入を増加させ、財務活動によるキャッシュ・フローを大きく伸ばしました。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や仕入債務の減少があったものの、棚卸資産の増加などにより資金が減少しました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産や投資有価証券の取得により、わずかに資金が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18.4億円 | -17.6億円 |
| 投資CF | -6.0億円 | 0.3億円 |
| 財務CF | -3.6億円 | 7.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人を大切にして、共に成長する会社つくり」という経営方針を掲げています。特殊帯鋼の専門商社や各種産業機械向けの機能部品メーカーとして、価値提案型企業を目指し、環境にも配慮した独自性の高い商品・製品の提供を通じて社会・経済の発展に寄与することを使命としています。
■(2) 企業文化
経営方針のもと、透明で公正な企業活動を通じて販売力の強化とシステム(仕組み)の再構築を推進する文化があります。また、多様化するニーズに的確に対応し、信頼される企業であることを重視しており、サステナビリティに関する課題にもコーポレート・ガバナンスの強化や人的資本の確保などを通じて取り組む姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営指標として資本に対する収益性である自己資本利益率(ROE)8%台を目標に掲げています。資本コストと株価を意識した経営の実現に向け、収益力の向上に取り組む方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
2020年の設立70周年を機に「3つのステージ」と呼ぶ中長期成長戦略を推進しています。第1ステージでの事業再構築を経て、現在は第2ステージとして2030年に向けた環境配慮型の事業展開を進めています。具体的にはEV充電器のシェア拡大や脱炭素製品への取り組みを強化し、商事部門では子会社とのシナジー加速を図ります。
* EV充電器:2030年の政府整備目標30万口に対し、10%以上のシェア獲得を目指す。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、ジェンダー、国籍、年齢等を問わない多様な人材の登用を行っています。すべての従業員を公平に幹部候補として育成し、適材適所の配置を進めるとともに、有給休暇取得推進や男性育児休業の取得促進など、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた職場環境の整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.6歳 | 15.8年 | 5,055,577円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.3% |
| 男性育児休業取得率 | 20.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有休取得目標の達成率(100.0%)、フルタイム労働者1人あたりの各月の時間外労働及び休日労働の合計時間数(16.1時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車関連業界への売上依存
製品・商品の販売先は多岐にわたるものの、自動車業界への売上割合が相対的に高くなっています。そのため、自動車業界の生産動向や主な取引先の事業方針等の変化が、同社グループの業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 鋼材の仕入先集中
主として日本製鉄の販売代理店であるメタルワンより多くの鋼材を仕入れており、仕入高に占める割合が高くなっています。今後の供給体制に変化が生じた場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 固定資産の減損リスク
多額の固定資産を所有しており、経営環境の変化により将来キャッシュ・フローの見込額が減少したり、時価が著しく下落したりした場合、減損処理が必要となり、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
■(4) 為替相場の変動
海外事業展開や輸出入取引等で外貨建て決済を行っており、海外子会社間での貸付も実施しています。為替予約等でリスク軽減に努めていますが、急激な為替変動が生じた場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。