※本記事は、株式会社大谷工業 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大谷工業ってどんな会社?
同社は、電力・通信インフラを支える架線金物や鉄塔、大型建築物に使われるスタッドなどを製造・販売する金属加工メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1946年に大谷重工業株式会社富山支社小杉製作所として創業し、1947年に設立されました。1988年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2013年の市場統合を経て、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
同社(単体)の従業員数は181名です。筆頭株主は株式会社ニュー・オータニで27.82%を保有しており、第2位は株式会社エムアンドエーコーポレーション、第3位は株式会社テーオーシーサプライとなっています。上位株主には関連企業や取引先持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニュー・オータニ | 27.82% |
| エムアンドエーコーポレーション | 9.93% |
| テーオーシーサプライ | 7.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は鈴木和也氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 和 也 | 取締役社長(代表取締役) | 1981年同社入社。営業推進グループマネージャー等を経て、2018年代表取締役社長に就任。2025年6月より社長執行役員を兼務し現職。 |
| 中 澤 忠 彦 | 常務取締役 | 1983年同社入社。管理グループマネージャー等を経て、2023年常務取締役に就任。2025年6月より常務執行役員を兼務し現職。 |
社外取締役は、大谷卓男(テーオーシー代表取締役社長)、崎山喜代志(テーオーシー執行役員秘書室長)、長谷修嗣(テーオーシー顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電力通信部門」および「建材部門」事業を展開しています。
■(1) 電力通信部門
このセグメントでは、主に架線金物および鉄塔・鉄構の製造・販売を行っています。顧客は主に電力会社や通信会社であり、電力供給や通信網といった社会インフラを支える製品を提供しています。
収益は、電力会社や通信会社等の顧客への製品販売代金から得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 建材部門
このセグメントでは、主に建築用スタッド、免震ベースプレートの製造・販売および施工を行っています。建設会社を主な顧客とし、インフラや各種建物の建築資材として利用されています。
収益は、建設会社等の顧客への製品販売および施工サービスの対価として得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は60億円台から70億円台後半へと拡大傾向にあります。経常利益も変動はあるものの、直近では4億円台後半と高い水準で推移しており、利益率も改善傾向にあります。当期純利益も順調に推移しており、安定した収益基盤を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 61億円 | 64億円 | 72億円 | 79億円 | 79億円 |
| 経常利益 | 3.1億円 | 1.8億円 | 2.6億円 | 4.3億円 | 4.8億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 2.8% | 3.6% | 5.4% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.1億円 | 1.3億円 | 1.7億円 | 3.3億円 | 3.7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は横ばいですが、売上総利益および営業利益は増加しています。これは製造コストの見直しや販売価格への転嫁が進んだことによるもので、利益率の向上に寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 79億円 | 79億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.6% | 21.8% |
| 営業利益 | 4.2億円 | 4.7億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.0億円(構成比24%)、荷造運送費が2.4億円(同20%)を占めています。売上原価については、材料費が33億円(構成比65%)、労務費が10億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電力通信部門は売上が増加し、利益も伸長しました。一方、建材部門は売上が減少したものの、利益率は大幅に改善し増益となりました。全体として、両セグメントともに利益貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電力通信部門 | 46億円 | 49億円 | 7.0億円 | 7.8億円 | 15.7% |
| 建材部門 | 33億円 | 30億円 | 1.5億円 | 2.0億円 | 6.6% |
| 調整額 | - | - | △4.3億円 | △5.0億円 | - |
| 連結(合計) | 79億円 | 79億円 | 4.2億円 | 4.7億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大谷工業は、営業活動により潤沢な資金を生み出す一方、将来の成長に向けた設備投資を積極的に行っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加し、事業の収益性が向上していることを示しています。投資活動では、将来の事業基盤強化のために有形及び無形固定資産への支出が行われました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いにより資金が使用されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.8億円 | 7.8億円 |
| 投資CF | △2.4億円 | △3.6億円 |
| 財務CF | 4.5億円 | △0.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来、知識と技術で鉄に生命の息吹を与え「豊かな社会を築き上げる」ことを理念としています。経営方針として「目標達成、調和、志気高揚」を掲げ、基幹インフラ(電力・通信業等)の一翼を担う矜持を持ち、「安心・安全・高品質」な製品を提供する「社会に継続していく意義のある企業」としての貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「社会課題解決」と「企業価値向上」の双方を実現し、持続可能な社会への貢献を目指しています。環境負荷低減活動や環境保全に貢献する製品づくりに取り組み、多様な人材が活躍できる環境整備や人材育成を推進しています。法令遵守やコンプライアンス教育の徹底にも努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、毎期安定的な利益の継続的確保に加え、株主利益重視と経営効率化の観点から、以下の指標の向上に努めることを経営目標としています。
* 総資本利益率(ROA)
* 自己資本比率
* 配当性向
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、顧客の要望に応える「提案型」営業や新分野での製品開発に注力しています。電力・通信業界におけるインフラ復旧、再生可能エネルギー対応、ICT発展への対応に加え、建設業界の需要取り込みに向けた営業活動を展開しています。物流費負担の軽減や生産性向上による利益確保も重要な課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「一人一人の個性を活かした人材の育成及び多様な人材が活用できる環境の創出」を課題とし、持続的な成長に向けた環境整備を行っています。インターンシップや特別講座を通じた採用活動に加え、技術継承のための社内教育やOJT、外部講習、将来の幹部候補育成に向けた中堅社員研修などを実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.2歳 | 18.5年 | 6,094,195円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女賃金差異(全・正規・非正規)については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、入社3年以内の離職率(約14.0%)、正社員採用者に占める女性割合の目標(20%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化に伴うリスク
主力事業である電力通信関連および建材関連は、市場の景気動向や顧客ニーズの変化、国際情勢、設備投資や建築需要の抑制などの影響を受ける可能性があります。これらに的確に対応できない場合、中長期的な業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料等の価格変動によるリスク
製品製造に必要な原材料、副資材、外注加工品の価格が高騰し、原価管理上想定以上の製造コスト上昇が生じた場合、採算性の悪化により業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。同社は市況価格のモニタリングやサプライチェーンとの関係維持に努めています。
■(3) 事故・災害発生によるリスク
大規模地震等の自然災害や事故が発生し、設備の損傷や物流の寸断等により製品供給に支障が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は事業継続計画の策定や耐震対策、防災訓練等を行い、リスク軽減に努めています。



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