ダイニチ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイニチ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、石油ファンヒーター等の暖房機器や加湿器等の環境機器を主力事業としています。直近の業績は、加湿器の販売好調や燃料電池ユニットの増加により、売上高・各利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、ダイニチ工業株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイニチ工業ってどんな会社?


同社は、業界トップクラスのシェアを持つ石油ファンヒーターなどの暖房機器や、加湿器などの環境機器を製造・販売する新潟発のメーカーです。

(1) 会社概要


1964年に新潟県三条市で設立され、1971年に業務用石油ストーブ「ブルーヒーター」の製造販売を開始しました。1980年には家庭用石油ファンヒーターを開発し、現在の主力事業の基盤を築いています。1990年に株式を店頭登録し、2003年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。その後、加湿器やコーヒー機器等の新分野へも進出しています。

現在の従業員数は単体で470名です。筆頭株主はビー・エッチで、第2位にはダイニチビルが名を連ねており、創業家関連や資産管理会社等が大株主となっている特徴があります。第3位には地元の第四北越銀行が続いています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は吉井唯氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
吉井唯 取締役社長(代表取締役) 2014年同社入社。経営企画部長、管理本部長、開発本部長などを経て、2022年より現職。
吉井久夫 取締役会長(代表取締役) 1973年同社入社。資材課長、専務取締役などを経て、1999年代表取締役社長就任。2022年より現職。
野口武嗣 取締役管理本部長兼総務部長 1997年同社入社。広報室長、総務部長を経て、2022年より現職。
海保雅裕 取締役生産本部長 2013年同社入社。システム開発室、生産部、生産企画部長を経て、2019年より現職。
中村亨 取締役(常勤監査等委員) 1989年同社入社。品質保証部長、執行役員などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、宮島道明(公認会計士)、石川佳代(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「暖房機器」「環境機器」および「その他」事業を展開しています。

(1) 暖房機器


家庭用石油ファンヒーターを中心に、業務用石油ストーブ、電気暖房機器(セラミックファンヒーター等)などを製造・販売しています。主力製品である石油暖房機器は、新潟の自社工場で生産され、高い品質と迅速な供給体制を強みとしています。

収益は主に製品販売による売上で構成されており、運営は同社が行っています。冬季の気候変動が業績に影響を与える特性がありますが、高付加価値商品の投入により収益性の向上を図っています。

(2) 環境機器


加湿器、空気清浄機、燃料電池ユニットなどを取り扱っています。加湿器は静音性や加湿能力に定評があり、暖房機器に次ぐ柱として成長しています。燃料電池ユニットは大手メーカーからの受託製造を行っています。

収益は製品販売および受託製造による売上です。運営は同社が行っています。近年は健康志向の高まりや感染症対策としての需要もあり、事業の重要性が増しています。

(3) その他


コーヒー豆焙煎機や焙煎機能付きコーヒーメーカーなどのコーヒー機器、および金型や部品の販売を行っています。また、独自技術を活かした新規商品の開発にも取り組んでいます。

収益は製品や部品の販売によるものです。運営は同社が行っています。暖房機器や環境機器で培った技術を応用し、事業領域の拡大を目指しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は200億円前後で推移しています。2024年3月期は暖冬の影響などで一時的に売上が減少しましたが、2025年3月期は加湿器の好調などにより増収に転じました。利益面でも回復傾向にあり、経常利益率は概ね7〜8%台を維持するなど、底堅い収益力を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 229億円 211億円 212億円 197億円 199億円
経常利益 20億円 15億円 17億円 13億円 16億円
利益率(%) 8.9% 7.3% 7.8% 6.6% 7.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 11億円 12億円 9億円 12億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上原価率は改善傾向にあり、これが利益押し上げの要因となりました。販管費は研究開発費の増加等により微増しましたが、増収効果が上回り、営業利益率は上昇しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 197億円 199億円
売上総利益 54億円 57億円
売上総利益率(%) 27.6% 28.8%
営業利益 11億円 14億円
営業利益率(%) 5.6% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、その他が15億円(構成比33%)、従業員給料及び手当が11億円(同24%)を占めています。売上原価に関しては、材料費が92億円(構成比65%)、経費が28億円(同20%)となっています。

(3) セグメント収益


各事業の売上状況を見ると、主力の暖房機器は暖冬の影響等で減収となりましたが、環境機器が加湿器の販売好調や燃料電池ユニットの増加により大幅な増収となり、全体を牽引しました。その他事業はコーヒー機器等が堅調でしたが、全体としては横ばいでした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
暖房機器 144億円 136億円
環境機器 39億円 51億円
その他 13億円 13億円
連結(合計) 197億円 199億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ダイニチ工業のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動では、税引前利益の計上や棚卸資産の減少などが主な要因となり、資金を獲得しました。一方、投資活動では、有価証券の取得や定期預金の預入により資金を使用しました。財務活動では、配当金の支払いにより資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1億円 28億円
投資CF -9億円 -30億円
財務CF -4億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「常に新しい技術を生み出し、私達が心から誇れ、お得意が安心して販売でき、使用者にいつまでも愛される、よい商品をつくる」という方針を社是として掲げています。この方針に基づき、全ての企業活動を行っています。

(2) 企業文化


「お客様重視」と「製品安全の確保」を基本とし、他社にはない商品の開発・製造を目指しています。また、環境面ではISO14001に基づき環境負荷の低減に取り組み、品質・安全面では情報の収集・分析体制を強化し、迅速な対応による品質向上を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


収益性と経営効率の観点から、客観的な経営指標として以下の目標を掲げています。

- 売上高経常利益率10%以上の確保

(4) 成長戦略と重点施策


石油暖房機器市場の成熟化や競争激化に対応するため、中核事業である石油暖房機器および加湿器事業において高付加価値商品の比率を高め、収益向上を図ります。また、研究開発部門を強化し、燃焼技術や気流制御技術等のコア技術を進化させることで、新規分野での商品開発と育成に取り組みます。

- 国内物価上昇への対応として販売価格の改定とコスト削減の推進
- アフターサービスの充実による顧客満足度の向上とリピーター獲得

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員を重要な経営資本と位置づけ、一人ひとりが経営理念を実現できる人材となるよう育成に取り組んでいます。能力を発揮できる教育研修体制を整備するとともに、公正な人事考課・処遇を行います。また、安全衛生に配慮した職場環境づくりや、ライフイベントに対応した福利厚生の充実に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 20.2年 6,321,963円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.8%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.2%
男女賃金差異(正規) 72.5%
男女賃金差異(非正規) 75.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、自己都合退職者の退職率(2.1%)、障がい者雇用率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 暖房機器への依存度


同社の売上高の6割以上を暖房機器が占めており、冬季の天候や気温の影響を強く受ける構造となっています。暖冬等の気象条件によっては需要が減少し、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、加湿器など他分野の構成比を高めることでリスク低減を図っています。

(2) 業績の季節偏重


主力製品が季節商品であるため、売上高が第3四半期(10月〜12月)に集中する傾向があります。また、第4四半期には返品が集中するリスクもあります。同社は通年販売が可能な商品や新規事業の育成により、売上の平準化を目指しています。

(3) 原材料価格の高騰


製品製造に必要な原材料やエネルギー価格の高騰は、製造コストの上昇要因となります。価格転嫁やコスト削減に努めていますが、急激な変動や長期化が生じた場合、収益を圧迫する可能性があります。

(4) 災害による生産停止


主力商品の生産拠点が新潟県内の1箇所に集中しているため、地震や水害等の災害により操業が停止した場合、製品供給に支障をきたす恐れがあります。在庫確保や倉庫の分散等の対策を講じていますが、長期化すれば業績への影響は避けられません。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。