研創 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

研創 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場、建築物の内外に用いるサイン製品の製造・販売を主力事業とする企業です。第54期の連結業績は、民間非住宅建築投資が堅調に推移する中、売上高は59億円で前期比微減、経常利益は3億円で横ばいとなりましたが、当期純利益は2億円で減益となりました。


※本記事は、株式会社研創 の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 研創ってどんな会社?


建築物の内外に設置される金属製・樹脂製のサイン製品(看板等)を製造・販売するメーカーです。

(1) 会社概要


1908年に造船関係のネームプレート製造業として創業し、1971年に株式会社広島研創を設立しました。1979年に現社名へ変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。2022年には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

2025年3月31日時点の従業員数は258名です。筆頭株主は代表取締役社長が代表取締役を務める研創エンタープライズで、第2位は研創親和会、第3位は研創社員持株会となっており、上位株主には同社の関連当事者や従業員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
研創エンタープライズ 20.60%
研創親和会 5.70%
研創社員持株会 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は林大一郎氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
林 大一郎 代表取締役社長 2017年同社入社。取締役社長室長、副社長を経て、2020年4月より現職。研創エンタープライズ代表取締役を兼任。
林 誠二 取締役 1996年同社入社。2004年研創エンタープライズ取締役副社長就任。2007年6月より現職。
松村 浩二 取締役製造部長 1983年同社入社。生産管理部長、執行役員製造部長等を経て、2018年6月より現職。
浦上 忠久 取締役経営管理部長 1988年同社入社。経営企画部長、総務部長、執行役員総務部長等を経て、2023年4月より現職。


社外取締役は、村上賢一(村上賢一法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社は、「サイン製品」事業を展開しています。

(1) サイン製品事業


商業施設や公共施設などの建築物の内外に設置される金属製・樹脂製のサイン製品(看板、案内板、ネームプレート等)の製造および販売を行っています。主な顧客は建設業界や施主であり、一品一様のオーダーメイド製品を主力としています。

収益は、顧客に対する製品の販売代金および設置工事等の対価として得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期に60億円台に達しましたが、その後は59億円前後で推移しています。経常利益は3億円前後で安定的に推移していますが、原材料価格や人件費の高騰等の影響を受け、利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 51.2億円 54.0億円 60.2億円 58.9億円 58.7億円
経常利益 2.0億円 3.0億円 3.1億円 2.6億円 2.6億円
利益率(%) 3.9% 5.5% 5.2% 4.4% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.2億円 1.9億円 2.5億円 1.8億円 1.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で横ばいとなり、売上総利益率も同水準を維持しています。営業利益については、販売費及び一般管理費のコントロールにより、前期比で微増となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 58.9億円 58.7億円
売上総利益 17.4億円 17.4億円
売上総利益率(%) 29.6% 29.6%
営業利益 2.6億円 2.6億円
営業利益率(%) 4.4% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5億円(構成比31%)、運賃荷造費が3億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はサイン製品事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略します。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
サイン製品 58.9億円 58.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

研創は、営業活動により資金を創出し、設備投資を行い、借入金の返済を進めることで財務基盤の強化を図っています。

営業活動では、売上債権の減少により、前事業年度の支出から一転して資金収入を得ることができました。投資活動では、固定資産の取得を中心に資金支出がありました。財務活動では、短期借入金の返済等により、有利子負債の減少に伴い資金支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -2.2億円 4.9億円
投資CF -1.4億円 -1.2億円
財務CF 3.4億円 -4.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社名に謳う「常に学び 研究し 創造する」の精神を基本理念とし、得意先の繁栄と社会の発展に貢献することを目指しています。また、法令遵守や社会倫理に従った良識ある企業活動の実践、有用・優良な製品の提供、ステークホルダーとの共存共栄を掲げています。

(2) 企業文化


「人間性を尊重した自由闊達な社風」を醸成し、社員の健康と安全の確保を重視しています。また、一品一様のオーダー製品を製造するため、技術者や技能者が中心となって機械化・自動化を進めるなど、現場の創意工夫を尊重する風土があります。

(3) 経営計画・目標


2023年3月期から2027年3月期までの中期経営計画を策定し、長期ビジョンとして売上高100億円企業を目指しています。最終年度である2027年3月期の数値目標として、以下の指標を掲げています。

* 売上高:66億円
* 営業利益:3億円
* 経常利益:3億円

(4) 成長戦略と重点施策


「成長への種まきと対応の基盤づくり」をテーマに、生産工程の機械化・自動化による労働力不足への対応や、製品品質の向上に取り組んでいます。また、営業体制の再構築や樹脂製サインの競争力強化による収益基盤の再構築、経営効率化と人材育成を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「常に学び、研究し、創造する人材育成」を基本方針とし、管理職・監督職の資質向上や部門の現状に即した育成、次世代経営層の育成に取り組んでいます。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、社員の定着率向上に向けた処遇改善も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.1歳 15.1年 4,621,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全) 74.5%
男女賃金差異(正規) 78.7%
男女賃金差異(非正規) 74.1%


※同社は公表対象としていないため、女性管理職比率の記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(3.4%)、男女の平均勤続年数の差異(79.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建築投資動向による影響


民間非住宅建築投資の動向に業績が左右される傾向にあります。建築コストの高騰や金利・為替動向により投資が慎重になった場合、あるいは需要予測が困難な個別受注生産の特性上、需要変動が固定費負担に影響し、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 材料・原材料等の価格変動


主要材料であるステンレスの価格は、クロム・ニッケルの世界市況や為替変動の影響を受けます。仕入価格の高騰を製品価格に転嫁できない場合や、必要な量の材料を調達できない場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) システム障害および情報漏洩


2025年1月にサーバーへの不正アクセスによる個人情報漏洩が発生しました。同社は管理体制強化に取り組んでいますが、サイバー攻撃やシステム障害により事業活動の停止や社会的信用の失墜、損害賠償等が発生した場合、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。