※本記事は、研創の有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 研創ってどんな会社?
建築業界向けのサイン製品の製造・販売に特化し、オーダーメイドの製品提供に強みを持つ企業です。
■(1) 会社概要
1908年にネームプレート製造業として創業し、1971年に前身の広島研創を設立しました。1979年に研創へ商号変更後、建築向けサイン製造を本格化させました。1990年の店頭登録を経て、2004年にジャスダック上場を果たし、2022年に東京証券取引所のスタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は単体で257名です。筆頭株主は創業家が経営に関与する研創エンタープライズで、第2位は従業員の親睦団体である研創親和会、第3位には研創社員持株会が名を連ねており、関係者や従業員を中心とした安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 研創エンタープライズ | 20.50% |
| 研創親和会 | 6.10% |
| 研創社員持株会 | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は林大一郎氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 林大一郎 | 代表取締役社長 | 2017年同社入社。同年取締役社長室長、2018年取締役副社長、2019年代表取締役副社長を経て、2020年より現職。 |
| 松村浩二 | 取締役製造部長 | 1983年同社入社。2008年生産管理部長、2009年執行役員生産管理部長、2013年執行役員製造部長を経て、2018年より現職。 |
| 浦上忠久 | 取締役経営管理部長 | 1988年同社入社。経営企画部長、総務部長、執行役員総務部長、取締役総務部長を経て、2023年より現職。 |
| 島本勝利 | 取締役品質保証部長 | 1992年同社入社。2020年品質保証部長、2023年執行役員品質保証部長を経て、2025年より現職。 |
| 林誠二 | 取締役常勤監査等委員 | 1996年同社入社。研創エンタープライズ取締役副社長を経て、2007年同社取締役に就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、村上賢一(村上賢一法律事務所所長)、篠原敦子(合同総研代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、サイン製品の製造・販売の単一セグメントで事業を展開しています。
■サイン製品事業
建築物の内外に用いられる金属製を中心としたサイン製品(案内板や看板など)の製造と販売を行っています。顧客の要望に合わせて一品一品製作する個別受注生産を強みとしており、都市再開発や既存建築物の建替需要を背景に、民間非住宅建築投資の動向に合わせた製品提供を行っています。
収益源は、建築主や建設会社などからのサイン製品の販売代金です。顧客との契約に基づいて製造した製品を納品することで収益を獲得しています。事業の運営は同社が単独で行っており、広島市及びその周辺地域に複数の製造拠点を構えて機動的かつ効率的な生産体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、建築市場の活況を背景に売上高が概ね増加傾向で推移しています。一方で、インフレ圧力による材料費や人件費の高騰が影響し、利益率は緩やかな低下傾向にあります。しかし、安定した黒字を継続しており、強固な事業基盤を維持していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 54.0億円 | 60.2億円 | 58.9億円 | 58.7億円 | 64.1億円 |
| 経常利益 | 3.0億円 | 3.1億円 | 2.6億円 | 2.6億円 | 2.5億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 5.2% | 4.4% | 4.4% | 3.9% |
| 当期利益 | 1.9億円 | 2.5億円 | 1.8億円 | 1.8億円 | 2.1億円 |
■(2) 損益計算書
堅調な建築需要を取り込んで増収を達成したものの、原材料価格や加工費の上昇により、売上総利益率および営業利益率は低下しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 58.7億円 | 64.1億円 |
| 売上総利益 | 17.4億円 | 18.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.6% | 29.0% |
| 営業利益 | 2.6億円 | 2.6億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.0億円(構成比31%)、運賃荷造費が3.7億円(同23%)を占めています。売上原価については、経費が22.9億円(構成比50%)、労務費が11.7億円(同26%)、材料費が11.1億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はサイン製品事業の単一セグメントですが、売上高は建築関係の製品売上が大半を占めており、直近では同分野の販売が好調に推移したことで全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 製品売上(建築関係) | 56.0億円 | 61.6億円 |
| 製品売上(その他) | 1.5億円 | 1.5億円 |
| 材料売上 | 1.1億円 | 1.0億円 |
| 合計 | 58.7億円 | 64.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得た資金をもとに借入金の返済を進め、手元資金の範囲内で設備投資を賄う健全型のキャッシュ・フロー構造となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.9億円 | 2.8億円 |
| 投資CF | -1.2億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | -4.1億円 | -2.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社名に謳う「常に学び 研究し 創造する」の精神を経営の基本理念として掲げています。この理念のもと、得意先の繁栄と社会の発展に貢献するとともに、品質・価格・環境等あらゆる面で社会に有用かつ優良な製品を提供し、共存共栄を図ることを使命として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
企業活動に関する法律を遵守し、社会の倫理規範に従い、良識ある企業活動を実践することを基本方針としています。また、人間性を尊重した自由闊達な社風を醸成し、社員の健康と安全を確保することを重視するなど、コンプライアンスと働きやすい環境づくりを大切にする組織風土を有しています。
■(3) 経営計画・目標
トップクラスの金属製サインメーカーとして培ってきた技能と先端技術を融合させ、既存事業の領域拡大と新たな事業分野への挑戦により、長期ビジョンとして売上高100億円の企業になることを目標に掲げています。また、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。
* 売上高:100億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、発展分野への経営資源の投入と生産プロセスの革新に取り組んでいます。特に少子高齢化に伴う人材不足への対応として、属人的な生産工程の機械化・自動化を重点課題として推進しています。併せて、製品品質の向上、営業体制の見直しによる収益基盤の再構築、材料費や加工費の低減による経営効率化を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業における価値創造の基盤である人的資本を重視し、「常に学び、研究し、創造する人材育成」を基本方針としています。性別や年齢、働き方などの背景が異なる多様な人材を持続的に採用・育成し、能力向上を促進する環境整備に努めています。また、所得水準の向上や年間休日の増加など、人材の定着を支える基盤づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.5歳 | 15.3年 | 4,897,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.1% |
※同社は「管理職に占める女性労働者の割合」の公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(7.3%)、労働者に占める女性労働者の割合(30.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建築投資動向による影響
建築物の内外に用いるサイン製品を主力としているため、民間非住宅建築投資動向の影響を強く受けます。需要予測に基づく在庫確保が難しい個別受注生産であるため、建築投資動向の変化によって売上高が急減した場合、固定費の負担増により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 材料・原材料等の価格変動と調達
主要材料であるステンレスの価格は、クロムやニッケルなどの世界市況や為替、需給動向の影響を受けます。仕入価格の高騰を製品価格へ十分に転嫁できない場合や、必要な数量を調達できない事態が生じた場合、利益率の低下など業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 属人的な生産体制と人材不足リスク
機械化が困難な個別受注生産を主軸とするため、生産工程の多くを熟練技能者の技術に依存しています。人口減少や少子高齢化などによる雇用環境の変化により、事業継続に必要な人員を確保できない場合、労働コストの上昇や生産能力の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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