※本記事は、アルインコ株式会社の有価証券報告書(第55期、自 2024年3月21日 至 2025年3月20日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルインコってどんな会社?
建設用仮設機材の製造・販売・レンタルを主力とし、住宅用アルミ製品や電子機器も手掛ける多角化企業です。
■(1) 会社概要
1970年に井上鉄工として設立され、1993年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。2003年には中国蘇州に製造子会社を設立し海外へ進出、2014年に東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。その後、2022年の市場区分見直しを経て、現在はプライム市場に上場しています。
2025年3月20日現在の連結従業員数は1,425名(単体770名)です。筆頭株主は、同社製品の販売部門として設立された経緯を持つアルメイトで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には取引先持株会などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アルメイト | 15.82% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.56% |
| アルインコ共栄会 | 6.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表者は代表取締役会長の井上雄策氏と、代表取締役社長兼社長執行役員の小林宣夫氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上雄策 | 代表取締役会長 | 1967年井上鉄工所入社。1993年アルインコ社長。関連会社社長等を歴任し、2009年会長、2019年より現職。 |
| 小林宣夫 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1980年大阪銀行(現関西みらい銀行)入社。同行取締役兼執行役員等を経て2010年アルインコ入社。2021年より現職。 |
| 岡本昌敏 | 取締役兼専務執行役員建設機材事業部担当兼仮設リース事業部担当 | 1982年入社。建設機材事業部関東・中部ブロック長、同事業部長等を経て2023年より現職。 |
| 坂口豪志 | 取締役兼常務執行役員海外レンタル事業部長兼経理本部担当 | 1984年入社。財務部長、海外建材事業部長、経理本部長等を経て2024年より現職。 |
| 井上智晶 | 取締役兼上席執行役員建設機材事業部第三営業部長兼生産本部担当 | 1996年阪和興業入社。1999年アルインコ入社。海外子会社代表取締役等を経て2024年より現職。 |
| 吉井敏憲 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年立石電機(現オムロン)入社。日立オムロンターミナルソリューションズ監査部長等を経て2022年より現職。 |
社外取締役は、水野浩児(追手門学院大学教授)、細川明子(公認会計士)、衣目成雄(公認会計士)、野村新平(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設機材関連事業」「レンタル関連事業」「住宅機器関連事業」「電子機器関連事業」事業を展開しています。
■(1) 建設機材関連事業
建設用仮設機材や物流保管設備機器などの製造・販売を行っています。主な顧客は国内の得意先ですが、海外製造子会社を通じて中国や東南アジア等へも販売しています。
収益は、製品の販売代金等から得ています。運営は主にアルインコが行い、子会社の双福鋼器やウエキン、海外子会社の蘇州アルインコ金属製品有限公司やALINCO (THAILAND) CO.,LTD.などが製造や販売を担っています。
■(2) レンタル関連事業
建設用仮設機材のレンタルおよび足場工事の施工を行っています。自社製品の一部を運用資産として活用し、得意先にレンタルサービスを提供しています。
収益は、顧客からのレンタル料や工事代金等から得ています。運営はアルインコをはじめ、子会社のオリエンタル機材や東京仮設ビルト、海外ではタイやインドネシアの子会社が事業を展開しています。
■(3) 住宅機器関連事業
はしご・脚立などの住宅・建築現場用アルミ製品や、フィットネス機器の製造・販売を行っています。また、アルミ型材や樹脂モール材、測量機器、アルミ製ブリッジなども取り扱っています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営はアルインコに加え、子会社の光モール、シィップ、エス・ティ・エス、昭和ブリッジ販売などが各製品の製造・販売や仕入販売を行っています。
■(4) 電子機器関連事業
無線通信機器やプリント配線板の製造・販売を行っています。国内外の得意先向けに製品を提供しており、開発・設計から加工・組立までを手掛けています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営はアルインコが主体となり、子会社のアルインコ富山、東電子工業、モリヤマ茨城などが製造や設計の一部を受託または製造販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は増加傾向にあり、直近では600億円台で推移しています。経常利益は変動が見られ、2023年3月期に高水準となった後、直近2期は減少傾向です。当期純利益も同様の動きを見せています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 533億円 | 553億円 | 607億円 | 579億円 | 616億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 11億円 | 36億円 | 29億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | 2.0% | 5.9% | 5.0% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 5億円 | 15億円 | 20億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販管費も増加しています。売上総利益率は改善傾向にありますが、営業利益率は前期と比べて上昇しています。コスト増を吸収しつつ、本業の収益性は維持・向上していることが伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 579億円 | 616億円 |
| 売上総利益 | 145億円 | 160億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.0% | 26.0% |
| 営業利益 | 18億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が64億円(構成比46%)、運送費及び保管費が18億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設機材関連事業とレンタル関連事業が増収に寄与しました。特にレンタル関連事業は大幅な増益となり、利益率も高水準です。一方、住宅機器関連事業と電子機器関連事業はセグメント損失を計上しており、収益性の改善が課題となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設機材関連事業 | 218億円 | 246億円 | 25億円 | 22億円 | 9.0% |
| レンタル関連事業 | 176億円 | 180億円 | 4億円 | 14億円 | 7.8% |
| 住宅機器関連事業 | 133億円 | 140億円 | -5億円 | -5億円 | -3.7% |
| 電子機器関連事業 | 52億円 | 51億円 | -1億円 | -5億円 | -10.6% |
| 調整額 | -29億円 | -28億円 | 5億円 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 579億円 | 616億円 | 29億円 | 27億円 | 4.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アルインコは、建設機材関連事業における棚卸資産の計画的減少が寄与し、営業活動によるキャッシュ・フローは大幅な収入増となりました。一方で、レンタル資産への積極的な投資などにより、投資活動によるキャッシュ・フローは支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済などにより支出に転じています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 54億円 |
| 投資CF | -53億円 | -56億円 |
| 財務CF | 37億円 | -1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「社会に貢献」「会社の発展」「社員の成長」を経営の基本理念として掲げています。この理念に基づき、良質な製品・サービスを提供し、コンプライアンスを遵守した企業活動を通じて適正な利益を確保することを目指しています。また、株主への利益還元を重視し、関係各所の信頼に応えることで永続的な発展を図るとしています。
■(2) 企業文化
同グループは、コンプライアンスに沿った企業活動や、株主・取引先・社員・地域住民等への社会的責任を果たすことを重視しています。また、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮できるよう、多様な働き方の実現や人材育成に取り組むとともに、中核人材の多様性を確保することを重要な価値観としています。
■(3) 経営計画・目標
同グループは、2025年3月期から2027年3月期までを期間とする「中期経営計画2027」を策定しています。具体的な数値目標は記載されていませんが、配当政策において「連結配当性向目標40%」および「累進配当」を実施することを目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2027」において、「コア事業の進化と事業ポートフォリオの再構築」「資本コストや株価を意識した経営の実現」「連結配当性向目標40%に加え累進配当を実施」をポイントとした取り組みを進めています。建設用仮設機材の販売とレンタルの連携強化や、物流関連分野など成長が見込める分野への注力により、中長期的な飛躍を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員の成長」を経営理念に掲げ、多様な働き方の実現や研修、OJTによる継続的な育成を通じて、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境を目指しています。また、管理職層に女性、中途採用者、外国人等の人材を登用し、中核人材の多様性を確保することで持続的な成長を図る方針です。特に女性活躍の土壌醸成や家庭生活との両立支援に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 13.0年 | 6,655,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.6% |
| 男性育児休業取得率 | 82.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 71.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 31.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修費用(一人当たり)(4.4万円)、有給休暇取得日数(12.3日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設動向に関するリスク
建設機材関連事業およびレンタル関連事業は、建設投資動向の影響を強く受けます。建設需要の減少や関連価格の大幅な変動が発生した場合、同グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、関連事業の深耕や他事業の拡大による事業基盤の安定化を図っています。
■(2) 新設住宅着工戸数の動向に関するリスク
低層用仮設機材レンタルは主に住宅建築で使用されるため、新設住宅着工戸数の増減が業績に影響します。一般経済情勢や金利、地価、法規制等の要因により着工戸数が変動した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。関連事業の深耕等により事業基盤の構築を進めています。
■(3) 海外進出に関するリスク
中国や東南アジアでの製造・販売・レンタル活動において、各国の政治・経済情勢の変動、テロ、紛争、法規制の変更等により事業活動が縮小・停止した場合、業績に影響が出る可能性があります。国際情勢の注視や現地とのコミュニケーション強化により対応しています。
■(4) 海外生産拠点への依存に関するリスク
住宅機器関連事業等は中国などの海外生産拠点に依存しており、各国の情勢変化等により業績への影響が懸念されます。生産拠点の分散化や仕入先との関係強化、生産管理体制の強化等により、リスクの最小化に努めています。



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