アルインコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルインコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルインコは東京証券取引所プライム市場に上場し、建設用仮設機材や住宅・建築用アルミ製品、フィットネス機器、電子製品等の製造・販売・レンタルを展開する企業です。直近の業績は、主力製品の販売増や消防無線の更新需要などを背景に、売上高が前期比増収、為替差益等により経常利益も増益となっています。


※本記事は、アルインコ株式会社の有価証券報告書(第56期、自 2025年3月21日 至 2026年3月20日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルインコってどんな会社?


建設用仮設機材のレンタルとアルミ製品の製造を軸に、多角的な事業を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1970年に井上鉄工として設立され、1983年に現在のアルインコに社名を変更しました。1993年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、その後2006年に東京証券取引所市場第二部へ上場、2014年には同市場第一部銘柄に指定されています。建設用仮設機材のリース・レンタル事業や、海外での製造・販売拠点の設立を通じ、着実に事業領域を拡大してきました。

現在の同社グループは、連結従業員数1,471名、単体従業員数766名の体制で事業運営を行っています。筆頭株主は事業会社のアルメイトで、第2位はアルインコ共栄会、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
アルメイト 15.79%
アルインコ共栄会 6.89%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は小林宣夫氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
井上雄策 代表取締役会長 1967年井上鉄工所入社。同社代表取締役社長等を経て、2019年より現職。
小林宣夫 代表取締役社長兼 社長執行役員 1980年大阪銀行入社。同社常務取締役等を経て、2021年より現職。
岡本昌敏 取締役兼 専務執行役員 1982年同社入社。建設機材事業部等の要職を経て、2026年より現職。
井上智晶 取締役兼 専務執行役員営業本部長兼 生産本部担当兼 技術開発本部担当 1996年阪和興業入社。同社取締役兼上席執行役員等を経て、2026年より現職。
坂口豪志 取締役兼 常務執行役員営業本部副本部長兼 海外レンタル事業部長兼 経理本部担当 1984年同社入社。財務部長、経理本部長等の要職を経て、2026年より現職。
吉井敏憲 取締役(常勤監査等委員) 1986年立石電機入社。日立オムロンターミナルソリューションズ監査部長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、水野浩児(追手門学院大学教授)、細川明子(税理士法人社員)、衣目成雄(公認会計士・税理士)、野村新平(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設機材関連事業」「レンタル関連事業」「住宅機器関連事業」「電子機器関連事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

建設機材関連事業


建設用仮設機材や物流保管設備機器などの開発、製造、および販売を行っています。主に国内の得意先や建設現場向けに製品を供給しており、海外で製造した製品の輸出入機能も担っています。

収益源は、これら建設用仮設機材などの製品の販売代金です。事業の運営は主にアルインコが行い、オリエンタル機材や双福鋼器、海外拠点のタイや中国の子会社などが製造や販売を分担しています。

レンタル関連事業


中高層用および低層用仮設機材、仮設観覧席のレンタル、ならびに足場工事の施工サービスを提供しています。建設現場のニーズに応じた仮設機材の安定供給に強みを持ちます。

収益モデルは、仮設機材のレンタル料金および工事請負代金による収入です。運営は主にアルインコとオリエンタル機材が行い、アルインコビルテクノが足場工事の施工を担っています。また、タイやインドネシアの子会社を通じ海外でもレンタル事業を展開しています。

住宅機器関連事業


はしご・脚立、アルミ型材・樹脂モール材、据置式昇降作業台、各種台車などの住宅・建築用アルミ製品や、フィットネス関連商品の製造および販売を行っています。

収益モデルは、これら住宅機器やフィットネス機器等の販売代金による収入です。アルインコを中心に、光モール、シィップ、エス・ティ・エス、昭和ブリッジ販売などの子会社が製品の製造・販売を担っています。

電子機器関連事業


消防無線等の無線通信機器やプリント配線板の開発、設計、製造、および販売を行っています。

収益モデルは、電子製品等の販売代金による収入です。アルインコが国内外の得意先へ製造販売を行うほか、アルインコ富山やアルインコイーテックが製造プロセスや設計を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は建設投資の堅調な推移を背景に増加傾向にあり、直近では626億円規模に達しています。経常利益も概ね安定して推移しており、一定の収益水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 553億円 607億円 579億円 616億円 626億円
経常利益 11億円 36億円 29億円 27億円 28億円
利益率(%) 2.0% 5.9% 5.0% 4.3% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 17億円 24億円 20億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約26%台で安定しており、営業利益率も同水準を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 616億円 626億円
売上総利益 160億円 164億円
売上総利益率(%) 26.0% 26.2%
営業利益 22億円 22億円
営業利益率(%) 3.6% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が66億円(構成比46.5%)、運送費及び保管費が19億円(同13.4%)を占めています。売上原価については、商品及び製品売上原価が337億円(構成比72.8%)、レンタル原価が126億円(同27.2%)となっています。

(3) セグメント収益


建設機材関連事業とレンタル関連事業が同社の主力であり、安定した売上を構成しています。電子機器関連事業は消防無線の更新需要等により売上が増加しましたが、利益面では先行投資等の影響もあり損失となっています。住宅機器関連事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設機材関連事業 246億円 247億円 22億円 20億円 8.0%
レンタル関連事業 180億円 179億円 14億円 13億円 7.1%
住宅機器関連事業 140億円 145億円 -5億円 -4億円 -2.5%
電子機器関連事業 51億円 56億円 -5億円 -4億円 -7.9%
連結(合計) 616億円 626億円 27億円 28億円 4.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは積極型に分類されます。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 54億円 34億円
投資CF -56億円 -36億円
財務CF -1億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.8%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会に貢献」「会社の発展」「社員の成長」を経営の基本理念として掲げています。この理念に基づき良質な製品・サービスを幅広く社会に提供し、コンプライアンスに沿った企業活動を通じ適正な利益を確保することを目指しています。また、株主や関係各位の期待に応え、社会的責任を果たすことで永続的な発展を図ります。

(2) 企業文化


経営の基本理念である「社員の成長」に基づき、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮することを目指し、多様な働き方の実現や継続的な育成に取り組む文化があります。また、「安心と豊かさを創る」というブランドステートメントを制定しており、顧客に安全と安心を提供する姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年3月期から2027年3月期までの3カ年を実行期間とする「中期経営計画2027」を推進しています。「資本コストや株価を意識した経営の実現」を目指しており、利益還元にも力を入れています。

* 連結配当性向目標40%に加え累進配当を実施

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2027」に基づき、「コア事業の進化と事業ポートフォリオの再構築」を成長戦略のポイントとしています。具体的には、コア事業である仮設機材において、販売とレンタルの連携を強化することで新型足場の市場シェア拡大を進め、あわせて付加価値の高い製品群への注力やM&Aを通じた企業価値の向上に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「社員の成長」を経営理念に掲げ、サステナビリティへの取り組みを加速するための重要課題として人材育成を位置付けています。目指すべき人材像として共有すべき6つの価値観を定め、多様な働き方の実現や、研修・OJTによる継続的な育成を通じて、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出す環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 13.3年 6,993,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全) 65.8%
男女賃金差異(正規) 72.3%
男女賃金差異(非正規) 28.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(10.2日)、研修費用(一人当たり)(17,468円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設動向や市場環境によるリスク

主力事業である建設用仮設機材の製造・販売およびレンタル事業は、建設投資や新設住宅着工戸数の動向に影響を受けやすくなっています。需要の減少や関連価格の大幅な変動が生じた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外進出と生産拠点依存リスク

中国や東南アジアでの製造・販売・レンタル事業の展開や、海外委託生産への依存に関するリスクがあります。各国の政治経済情勢の悪化や予期せぬ法規制の変更により、事業活動が縮小・停止する懸念があります。

(3) 原材料価格や為替の変動リスク

主力製品の主な原材料である鋼材やアルミニウムの価格高騰、エネルギー価格の上昇が発生した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。また、海外委託生産において外貨建ての取引が多く、急激な為替の変動もリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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