兼房 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

兼房 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証メインに上場する工業用機械刃物の総合メーカーです。チップソー(丸鋸)やカッターなどの製造・販売を主力とし、木材加工から金属加工まで幅広い産業を支えています。直近の業績は、海外市場での販売動向に地域差が見られるものの、売上高は微増、純利益は固定資産売却益等の計上により増益となりました。


※本記事は、兼房株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 兼房ってどんな会社?


工業用機械刃物の総合メーカーとして、木材や金属、紙などの切削加工に不可欠なチップソーやカッター等をグローバルに提供しています。

(1) 会社概要


1948年に設立され、1967年にはチップソーの生産を開始し丸鋸分野へ進出しました。1986年にはインドネシアに合弁会社を設立し海外生産を開始しています。1995年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、2006年には東京証券取引所市場第二部にも上場を果たしました。

同グループの連結従業員数は1,167名、単体では608名です。筆頭株主は法人株主の大口興産、第2位は個人の渡邉裕子氏、第3位は個人の太田万佐子氏です。

氏名 持株比率
大口興産 16.55%
渡邉裕子 9.83%
太田万佐子 9.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は磯谷岳摩氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
磯谷岳摩 代表取締役社長執行役員 1984年入社。平刃事業部長、PT.カネフサインドネシア社長、本社工場長などを経て2023年6月より現職。
渡邉將人 代表取締役会長 1979年日本電装(現デンソー)入社。1985年同社入社。営業部長、専務取締役などを経て2000年社長就任。2023年6月より現職。
佐築賢治 取締役常務執行役員 1990年協和銀行(現りそな銀行)入行。2016年同社入社。経営管理部長、総務部長を経て2024年4月より管理本部長兼人財開発室長。
今泉宏一 取締役常務執行役員 1988年入社。カネフサヨーロッパ社長、PT.カネフサインドネシア社長などを経て2024年4月より営業本部長。
中島康貴 取締役常務執行役員 1997年入社。丸鋸事業部長、カネフサベトナムマニュファクチャリング社長、本社工場長などを経て2023年6月より事業部門担当兼研究開発部担当。
山内敏男 取締役(監査等委員) 1986年入社。海外部長、カネフサUSA社長などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、小池徹(伴野・小池法律事務所所長)、山崎裕司(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「インドネシア」「米国」「欧州」「中国」「ブラジル」「ベトナム」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本

国内および海外向けの工業用機械刃物(チップソー、カッター、ナイフ等)の生産・販売を行っています。顧客は木材加工、金属加工、窯業などの製造業者です。マザー工場としての役割も担い、高付加価値製品の開発・製造を行っています。
収益は、国内外の顧客およびグループ会社への製品販売による代金です。運営は兼房が行っています。

インドネシア

インドネシアおよびマレーシアを中心とした東南アジア向けの製品生産・販売を行っています。また、同社グループへの製品供給拠点としての役割も担っています。
収益は、現地およびグループ会社への製品販売による代金です。運営はPT.カネフサインドネシアが行っています。

米国

北米市場における工業用機械刃物の販売および再研磨サービスを行っています。木材加工や金属加工などの顧客ニーズに対応したサービスを提供しています。
収益は、北米の顧客からの製品販売代金および再研磨サービス料です。運営はカネフサUSAが行っています。

欧州

欧州市場における工業用機械刃物の販売を行っています。現地の需要に合わせた製品の提案・販売を展開しています。
収益は、欧州の顧客からの製品販売代金です。運営はカネフサヨーロッパが行っています。

中国

中国国内向けの製品生産・販売を行っています。また、同社グループへの製品供給も行っています。現地の製造業向けに刃物を供給しています。
収益は、中国国内およびグループ会社への製品販売による代金です。運営は昆山兼房高科技刀具有限公司が行っています。

ブラジル

南米市場における工業用機械刃物の販売および再研磨サービスを行っています。
収益は、南米の顧客からの製品販売代金および再研磨サービス料です。運営はカネフサ ド ブラジルが行っています。

ベトナム

ベトナム国内向けの販売および再研磨サービスを行うほか、同社グループへの製品供給拠点として生産を行っています。
収益は、ベトナム国内顧客およびグループ会社への製品販売代金、再研磨サービス料です。運営はカネフサベトナム マニュファクチャリングおよびカネフサベトナムが行っています。

その他

上記報告セグメントに含まれない事業として、インドやメキシコでの販売・再研磨サービス、国内での損害保険代理店業務などを行っています。
収益は、製品販売代金、サービス料、保険代理店手数料などです。運営は大口サービス、カネフサインディア、カネフサメキシコが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は200億円前後で推移しています。2023年3月期に売上高211億円を記録した後、翌期はやや減少しましたが、当期は202億円と微増しました。経常利益率は一時9.8%まで上昇しましたが、直近では3.5%となっています。当期利益は10億円前後で安定的に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 160億円 197億円 211億円 201億円 202億円
経常利益 6億円 19億円 17億円 14億円 7億円
利益率(%) 3.9% 9.8% 7.9% 7.2% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 13億円 14億円 9億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は202億円と前期比で微増となりましたが、売上原価の増加などにより売上総利益は59.5億円に減少しました。販売費及び一般管理費が増加した影響もあり、営業利益は7億円(営業利益率3.7%)となり、前期の11億円(同5.3%)から低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 201億円 202億円
売上総利益 60億円 60億円
売上総利益率(%) 29.9% 29.4%
営業利益 11億円 7億円
営業利益率(%) 5.3% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が21億円(構成比41%)、従業員給料が16億円(同30%)を占めています。売上原価は143億円で、売上高に対する比率は70.6%です。

(3) セグメント収益


日本セグメントは増収ですが利益は横ばいでした。インドネシアやベトナムなどのアジア地域は増収増益となり好調を示しました。一方、中国セグメントは増収ながら赤字を計上しています。欧米地域は為替の影響もあり円換算では売上を維持していますが、現地通貨ベースでの販売状況には厳しさが見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 106億円 106億円 5億円 5億円 4.5%
インドネシア 22億円 24億円 2億円 3億円 13.9%
米国 23億円 24億円 2億円 2億円 6.6%
欧州 22億円 20億円 -0.1億円 0.3億円 1.3%
中国 8億円 9億円 -3億円 -3億円 -35.4%
ブラジル 7億円 7億円 1億円 0.6億円 9.2%
ベトナム 2億円 1億円 -0.7億円 1億円 76.1%
その他 12億円 12億円 0.4億円 0.4億円 3.3%
調整額 -億円 -億円 4億円 -2億円 -
連結(合計) 201億円 202億円 11億円 7億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、その範囲内で投資活動を行いつつ、財務活動で資金調達を行っていることから「積極型」と言えます。当期は長期借入金の増加により財務CFがプラスに転じました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14億円 26億円
投資CF -25億円 -18億円
財務CF -5億円 14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「一人一人がプロフェッショナルとして、刃物の先を見つめ、新しい価値を創造し、世界のものづくりに貢献します」という企業理念を掲げています。お客様視点での技術・サービス提供、世界に通用する仕事への挑戦、そして共に働く仲間を尊重し誇りを持てる会社を目指すことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループは「行動規範」を定め、法令遵守や公正・誠実な企業活動を重視しています。人権尊重や社会との調和、地球環境保護に加え、働きがいのある職場づくりを掲げ、労働安全衛生や人材育成、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組む文化を持っています。また、プロフェッショナルとしての自覚を持ち、技術の向上や技能継承に努める姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、収益性を重視した経営を行っています。具体的な数値目標として、連結売上高営業利益率8.0%以上の継続的な実現を掲げています。また、「Time is Money(攻め),Time is Cost(守り)」をスローガンとした中期経営計画を策定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「スピード経営体質への脱皮」と「ものづくりを支える『エッセンシャルカンパニー』としての自覚と責任と挑戦」を中期ビジョンとし、以下の重点戦略に取り組んでいます。

* グローバル市場におけるプレゼンス強化(高付加価値製品の提供、海外マンパワー強化)
* ものづくり力とDXの強化(ベトナム生産子会社の増強、省人化・無人化、新技術開発、システム再構築)
* 経営基盤の強化(人財育成制度の再構築、組織変革、SDGs・カーボンニュートラル対応)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「世界のものづくりに貢献するプロフェッショナル集団」を目指し、職能・役割・業績に応じた公正な処遇と、自由闊達な職場づくりを掲げています。能力開発のため、OJTに加え、社内技能認定試験や改善伝道師塾、海外拠点での技術者育成プログラム(GTE)などを実施し、グローバル人材の確保・育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.0歳 17.0年 5,789,640円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 69.2%
男女賃金差異(全労働者) 61.6%
男女賃金差異(正規) 68.4%
男女賃金差異(非正規) 59.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用比率(2.4%)、有給休暇取得率「70%以上」の割合(92.1%)、社内技能認定試験合格率(営業・学科)(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) カントリーリスク


インドネシア、中国、ベトナム等の海外諸国で事業を展開しているため、各国の政治・経済情勢の変化、法的規制の変更、社会的混乱などが業績に影響を与える可能性があります。また、移転価格税制等の国際税務リスクも存在します。

(2) 為替相場の変動によるリスク


グローバルに事業を展開しているため、為替変動の影響を受けます。特に円高が進行した場合、外貨建売上高の円換算額減少や、価格競争力の低下を通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建資産・負債の評価額も変動します。

(3) 原材料価格の変動による影響


製品の主原料である鋼材や超硬合金等の価格は市況により変動します。需給バランスの変化等により原材料価格が高騰し、製品価格への転嫁が困難な場合、利益率が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自然災害、感染症の流行によるリスク


国内生産拠点が愛知県丹羽郡大口町の本社工場1ヵ所に集中しており、地震等の大規模災害が発生した場合、生産活動に甚大な影響が出る可能性があります。また、世界的な感染症の流行によりサプライチェーンが寸断されるリスクもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。