※本記事は、株式会社J-MAX の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. J-MAXってどんな会社?
自動車用車体プレス部品の製造を主力とし、本田技研工業や東プレとの取引を中心にグローバル展開する企業です。
■(1) 会社概要
1960年に丸順精器工業として設立され、1963年に本田技研工業との取引を開始しました。1994年にタイへ進出して以降、中国など海外展開を加速させています。1999年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、2021年には東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場しました。2022年に創業70周年を記念して現社名へ変更し、2025年には岡山工場を新設するなど生産体制の強化を進めています。
同社グループは連結従業員数1,268名、単体296名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は同社の主要な取引先でもある自動車部品メーカーの東プレで、第2位は創業家出身の個人株主、第3位は主要取引先である本田技研工業です。事業会社との資本関係が強く、安定的な取引基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東プレ | 20.50% |
| 今川 喜章 | 8.84% |
| 本田技研工業 | 8.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は山﨑英次氏が務めています。取締役7名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山﨑 英次 | 代表取締役社長執行役員 | 1989年入社。広州丸順汽車配件有限公司総経理、開発・営業本部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 猪熊 篤俊 | 取締役専務執行役員 | 1991年入社。営業本部長、海外事業本部長、日本事業本部長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 棚橋 哲郎 | 取締役常務執行役員 | 2005年入社。経営企画部長、企画管理本部長を経て、現在は中国子会社の董事長を兼務。2025年6月より現職。 |
| 松浦 孝一郎 | 取締役 | 1995年東プレ入社。同社業務本部管理部部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 青山 秀美 | 取締役(監査等委員) | 1986年東海銀行入社。同社管理本部長、日本事業本部長、サステナビリティ推進室長などを歴任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、竹内治彦(岐阜協立大学経営学部教授)、澁谷英司(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「J-MAX」「タイ」「広州」「武漢」および「その他」事業を展開しています。
■(1) J-MAX(日本)
日本国内において、自動車用車体プレス部品、電動化プレス部品、精密プレス部品等の製品のほか、プレス用金型、溶接治具及び検具等の設備を製造しています。主要な顧客は本田技研工業および東プレです。
収益は、自動車メーカーや部品メーカーへの製品および設備の販売から得ています。運営は主に株式会社J-MAXが行っており、自動車メーカーとの共同開発から生産設備の調達、プレス、溶接までの一貫生産を行っています。
■(2) タイ
タイにおいて、自動車用車体プレス部品、自動車用精密プレス部品等の製品を製造しています。主な販売先は本田技研工業の連結子会社であるHONDA AUTOMOBILE (THAILAND) CO.,LTD.および東プレの連結子会社であるTOPRE (THAILAND) CO.,LTD.です。
収益は、現地の日系自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は連結子会社であるタイ・マルジュン社が行っています。
■(3) 広州(中国)
中国広州において、自動車用車体プレス部品、電動化プレス部品等の製品や、プレス用金型、溶接治具等の設備を製造しています。塗装ラインも備えており、主な販売先は広汽本田汽車有限公司です。
収益は、現地の自動車関連企業への製品および設備の販売から得ています。運営は連結子会社である広州丸順汽車配件有限公司および福建丸順新能源汽車科技有限公司が行っています。
■(4) 武漢(中国)
中国武漢において、自動車用車体プレス部品等の製品を製造しています。主な販売先は東風本田汽車有限公司です。
収益は、現地の自動車関連企業への製品販売から得ています。運営は連結子会社である武漢丸順汽車配件有限公司が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は500億円前後で推移していましたが、直近では減少傾向にあります。利益面では、かつては高い利益率を維持していましたが、直近2期間においては損益が悪化し、経常損失および当期純損失を計上しています。特に直近の当期純損失は大きく拡大しており、厳しい業績状況となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 448億円 | 457億円 | 524億円 | 543億円 | 471億円 |
| 経常利益 | 42億円 | 27億円 | 27億円 | 7億円 | -5億円 |
| 利益率(%) | 9.5% | 5.9% | 5.2% | 1.3% | -1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 | 20億円 | 13億円 | -10億円 | -33億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および売上総利益率が低下しています。営業利益はかろうじて黒字を維持していますが、利益率は大幅に低下しており、収益性が圧迫されている状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 543億円 | 471億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 31億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.1% | 6.6% |
| 営業利益 | 10億円 | 0.2億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 0.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運搬費が10億円(構成比33%)、給料及び賞与が6億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントにおいて前期比で売上高が減少しています。特にタイおよび武漢での減少幅が大きくなっています。主要顧客の生産変動や減産の影響等により、全地域で収益環境が厳しさを増していることが伺えます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| J-MAX | 208億円 | 190億円 |
| タイ | 77億円 | 61億円 |
| 広州 | 145億円 | 131億円 |
| 武漢 | 114億円 | 89億円 |
| 連結(合計) | 543億円 | 471億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* パターン:**積極型**(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)
* 企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-17.3%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も32.2%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 39億円 | 13億円 |
| 投資CF | -60億円 | -65億円 |
| 財務CF | 20億円 | 54億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、技術を磨き、顧客が望む優れた製品・部品を提供することで「従業員」「お客様」「地域社会」の満足と幸せを追求することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「共創・努力・謙虚」を社是として掲げています。「J-MAXフィロソフィ」の実践を通じて、グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることを企業経営の基本と認識しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2024年3月期より中長期5か年計画「J-VISION 30」をスタートさせています。「技術で夢を –Make our dreams by Technology-」をビジョンとして掲げ、持続可能な100年企業を目指しています。事業規模拡大による持続的な成長と効率性の高い事業運営を目指し、売上高、営業利益及びROA(総資産営業利益率)を主要な経営指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業の強化」と「新事業の創出」を成長戦略の2本柱としています。既存事業では、日本と中国での新工場展開やAI・IoT活用による生産体質の変革を進めます。新事業では、自動車領域に限定しない社会課題解決につながる開発に挑戦します。また、「電動化・軽量化に集中した電動化サプライヤーへの転換」と「事業構造改革推進による持続可能な企業体質の構築」を注力テーマとしています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個の力」を底上げし、管理職のマネジメント能力向上により強固なチームを作ることを目指しています。グローバル人材・コア人材の管理・育成により最適配置を実現し、企業価値向上を支援することを人材育成方針としています。また、少子高齢化等の環境下において、経営状況の共有、健康経営の推進、キャリア形成、外国人材雇用の推進に努めることを社内環境整備方針としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.2歳 | 19.3年 | 5,363,099円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 62.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 88.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者管理職比率(13.16%)、外国人社員比率(2.36%)、障がい者雇用率(2.68%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車関係市場の変動
同社グループの売上高の大部分は自動車関係市場に依存しています。電動化に伴う技術革新や新興メーカーの台頭による競争激化、景気変動等の影響を受けやすく、これらの市場変動が同社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 価格競争の激化
国内外での競争激化に伴い、価格競争が厳しくなっています。市場シェアの維持・拡大ができず、利益を確保できない可能性があります。同社は電動化需要の取り込みや高付加価値化、生産効率化等により利益体質の向上を図っています。
■(3) 新技術への対応
顧客ニーズに対応した新技術や新製品、代替素材等の普及に対し、同社の技術開発が十分に対応できない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は研究開発活動を加速させ、新商品・新事業の開発を推進しています。
■(4) 特定取引先への依存
売上高の大部分を本田技研工業およびその関係会社に依存しており、当期の当該売上高比率は49.4%です。同社グループの業績はこれら顧客の業績変動の影響を受ける可能性があります。同社は他の完成車メーカー向け取引拡大等によりリスク分散を図っています。



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