※本記事は、宮地エンジニアリンググループ株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 宮地エンジニアリンググループってどんな会社?
橋梁等の社会インフラ建設、保全・更新事業を通じ豊かな国土創りに貢献する企業グループです。
■(1) 会社概要
1908年9月に創業し、ボルト、鉄扉等の製作及び建築鉄骨組立工事請負を開始しました。1949年3月に宮地建設工業を創設して土木部門を分離し、2003年9月に宮地鐵工所と宮地建設工業の株式移転により宮地エンジニアリンググループを設立し上場を果たしました。2011年3月に両社は合併して宮地エンジニアリングとなり、2015年4月にはエム・エム ブリッジ(旧三菱重工鉄構エンジニアリング)を子会社化しています。
従業員数は連結で814名、単体で25名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位には金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.25% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.29% |
| 明治安田生命保険 | 4.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は池浦正裕氏が務めており、社外取締役の比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池浦正裕 | 代表取締役社長 | 1982年4月三菱重工業入社。三菱重工鉄構エンジニアリング(現エム・エム ブリッジ)にて代表取締役社長などを経て、2025年4月に同社代表取締役社長に就任。 |
| 奥村恭司 | 取締役専務執行役員グループ企画管理本部長 | 1986年4月宮地鐵工所(現宮地エンジニアリング)入社。同社代表取締役社長などを歴任し、2026年4月に同社取締役専務執行役員グループ企画管理本部長に就任。 |
| 平島崇嗣 | 取締役 | 1985年4月宮地建設工業(現宮地エンジニアリング)入社。同社取締役副社長執行役員民間営業・工事本部・計画本部管掌等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、平瀬真由美(日本サッカー協会JFAこころのプロジェクト社会貢献夢先生講師)、太田英美(日之出水道機器取締役)、樋口眞人(樋口コンプライアンス法律事務所弁護士)、植村淳子(関西法律特許事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「宮地エンジニアリング」および「エム・エム ブリッジ」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 宮地エンジニアリング
新設橋梁の設計・製作・現場施工、既設橋梁の維持・補修・補強をはじめ、橋梁周辺鋼構造物や複合構造物、大空間・超高層建築物、鉄塔などの設計・製作・現場施工等を提供しています。国や地方公共団体、各高速道路会社、鉄道会社などの幅広い社会インフラの建設および保全ニーズに対応しています。
収益源はこれらの社会インフラ建設・保全工事の請負代金です。本事業は、中核事業会社である宮地エンジニアリングが運営を行っており、独自の技術力と施工対応力で事業を展開しています。
■(2) エム・エム ブリッジ
橋梁や沿岸構造物等の設計・製造、据付、販売および修理を提供しています。インフラ老朽化に伴う床版の取り替えや架け替え、拡幅工事などの需要に応えるため、高性能鋼床版の開発や独自の架設・更新技術を用いた製品・サービスを提供しています。
収益源は、橋梁・沿岸構造物工事等の請負代金および製品販売代金です。事業はエム・エム ブリッジが運営しており、浮桟橋の設計や独自の制振技術等の環境・沿岸技術にも強みを持っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にありましたが、直近の期では新設橋梁や大規模更新関連の案件減少により大幅な減収となりました。利益面でも、売上高の減少に伴い経常利益および当期利益ともに大幅な減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 580億円 | 603億円 | 694億円 | 747億円 | 567億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 54億円 | 79億円 | 95億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 10.3% | 8.9% | 11.4% | 12.7% | 8.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 15億円 | 38億円 | 45億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益ともに減少しています。また、利益率についても、売上高の減少等の影響を受けて低下傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 747億円 | 567億円 |
| 売上総利益 | 142億円 | 99億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.0% | 17.4% |
| 営業利益 | 92億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 12.3% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当及び賞与が17億円(構成比31.8%)、旅費交通費が2億円(同4.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の宮地エンジニアリング事業では、新設関連の大型案件の減少などの影響により減収となりました。また、エム・エム ブリッジ事業においても、前期に見られた大規模更新関連の集中工事の反動減等により大幅な減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 宮地エンジニアリング | 444億円 | 388億円 |
| エム・エム ブリッジ | 303億円 | 178億円 |
| 調整額 | 0.1億円 | 0.7億円 |
| 連結(合計) | 747億円 | 567億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を借入金の返済や投資に充てる「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -27億円 | 109億円 |
| 投資CF | -25億円 | -41億円 |
| 財務CF | 25億円 | -110億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「橋梁、建築、沿岸構造物等の社会インフラの建設、保全・更新の事業を通じ、豊かな国土と明るい社会創りに貢献する」ことを経営理念として掲げています。この理念に基づき、安全で優れた製品・施工・サービスを提供し、社会や顧客のニーズに応えることで、グループの持続的な成長と社会的責任を全うすることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、コンプライアンス・リスク管理体制を整備・適切に運用し、公正な競争を通じて社会に貢献する価値観を重視しています。「企業行動憲章」および「行動規範」を定め、すべての役員および社員に対して十分な教育を行い、社会一般のルールや倫理観を重んじる誠実な組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な飛躍を見据え、激変する事業環境下においても安定した黒字体質を確固たるものとする経営を目指しています。次期中期経営計画(2027~2031年度)に向け、国内鋼橋市場の変化を踏まえた最適経営を推進し、以下の2027年3月期連結業績目標を掲げています。
・売上高550億円
・営業利益23億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、持てる経営資源を新設関連工事、大規模更新・保全関連工事、ならびに民間工事に適切に配分した最適経営を推進しています。また、技術開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用に基づく生産性の向上を図り、高度専門人材の育成や女性活躍推進、働き方改革を重点施策として持続的な成長基盤の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的成長を続けるために人材を重要な経営資本と位置付け、新たな価値を創造できる人材の育成と計画的な人材確保に取り組んでいます。性別や国籍を問わないダイバーシティを推進し、若手社員の定着率向上や技術・技能の伝承を図るとともに、ワークライフバランスを支援する制度を整え、すべての従業員がいきいきと活躍できる職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 51.8歳 | 22.8年 | 11,235,252円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 46.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 42.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※パート・有期労働者の男女賃金差異は該当データがないため省略されています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結の女性管理職比率(1.8%)、連結の男性育児休業取得率(72.7%)、連結の男女賃金差異全労働者(62.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要原材料の価格変動・調達リスク
同社グループの主力である橋梁等鋼構造物工事では、鋼材を主要原材料として使用しています。原材料価格の動向や中東情勢の不安定化に伴う塗料・シンナーの供給支障等により、調達コストの増加や必要数量の確保遅延が発生した場合、製造工程の遅れや採算悪化を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 工場の操業に伴うリスク
千葉工場や市原工場などの主たる生産拠点が、大規模な自然災害や重大な事故により損壊・損傷した場合、工場の操業に重大な影響を及ぼすリスクがあります。また、新設関連橋梁の発注量減少や案件の大型化等により工場操業度の平準化が難しくなっており、操業の不安定化が損益に影響を与える可能性があります。
■(3) 事故などの安全上のリスク
橋梁等の鋼構造物工事では非常に大きな重量物を扱い、市街地や鉄道・道路の営業線近接での施工となるため、重大事故につながるリスクをはらんでいます。安全衛生大会の実施や緊急連絡体制の整備等に努めていますが、万が一事故が発生した場合、社会的信用の失墜や指名停止措置などの行政処分を受ける可能性があります。



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