特殊電極 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

特殊電極 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の特殊溶接技術メーカー。溶接材料の開発・製造に加え、その技術を活かした設備メンテナンス等の工事施工を主力事業とします。2025年3月期は、工事施工や環境関連装置の受注増加により、売上高105億円、経常利益6.5億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、特殊電極株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 特殊電極ってどんな会社?


特殊溶接材料のメーカーとして創業し、現在は独自の溶接技術を活かした設備工事施工を主力とする企業です。

(1) 会社概要


1933年に特殊溶接棒製作所として創業し、1950年に特殊電極として設立されました。1955年に溶接工事を開始し、メーカー兼施工業者としての基盤を確立しています。2006年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。

同グループは連結従業員数259名、単体247名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は投資会社のUH Partners 2で、第2位は通信サービスや電力販売等を行う事業会社の光通信です。

氏名 持株比率
UH Partners 2 9.89%
光通信 8.48%
特殊電極従業員持株会 7.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は西川 誉氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
西川 誉 取締役社長(代表取締役) 1993年入社。第二営業本部長等を経て2021年より現職。
島田 宏亮 取締役工事営業本部長 1993年入社。第一営業本部長等を経て2023年より現職。
畑 博康 取締役第二営業本部長 1995年入社。第4営業部長等を経て2021年より現職。
小金丸 明人 取締役第一営業本部長兼第2営業部長 1997年入社。第2営業部長等を経て2023年より現職。
片岡 達哉 取締役管理本部長兼経理部長 1999年入社。経理部長等を経て2024年より現職。
阿比留 宣栄 取締役本社工場本部長兼業務部長 1997年入社。業務部長等を経て2025年より現職。
島田 忠彦 取締役(監査等委員) 1989年入社。第1営業部長、執行役員等を経て2025年より現職。


社外取締役は、河野 裕行(公認会計士・税理士)、濵田 雄久(弁護士・大阪大学法科大学院招聘教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「工事施工」「溶接材料」「環境関連装置」および「その他」事業を展開しています。

(1) 工事施工


鉄鋼・自動車産業を中心とした各種産業設備のメンテナンスや、特殊材料を用いた溶接加工を行っています。特に、摩耗した機械部品の表面に金属を盛り上げて再生する「肉盛溶接」や、耐摩耗用クラッド鋼板「トッププレート」を用いた工事施工を得意としています。

主な収益は、顧客から受け取る工事施工代金です。運営は主に同社が行い、製鉄所やセメント工場などの設備延命・再生ニーズに応えています。

(2) 溶接材料


工事施工で使用される特殊溶接用材料の仕入・製造・販売を行っています。主な製品には、溶接金属の酸化防止等を目的とした「フラックス入りワイヤ」や「被覆アーク溶接棒」、各種溶接用線材などがあります。

収益は、顧客への製品および商品の販売代金です。運営は同社および連結子会社が行い、設備部品の新設や補修・再生用途で利用されています。

(3) 環境関連装置


省エネや作業環境改善を目的とした各種装置の製造・販売を行っています。具体的には、自動車関連の鋳造粗材を冷却する強制冷却装置や、金型加熱装置、自動搬送車(AGV)による搬送ライン装置などを取り扱っています。

収益は、装置の製造・販売代金です。運営は主に同社が行っており、工事契約に基づいて顧客に提供されています。

(4) その他


主に自動車産業向けに、アルミダイカストマシーン用部品(プランジャースリーブ、スプルブッシュ、プランジャーチップ等)の仕入・製造・販売を行っています。

収益は、部品の販売代金です。運営は同社および連結子会社のTOKUDEN TOPAL CO., LTD.(タイ)、特電佐鳴(南通)機械製造有限公司(中国)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は90億円台から100億円台へと緩やかに拡大傾向にあります。経常利益は5億円から8億円程度で推移しており、黒字を維持しています。直近の2025年3月期は、工事施工や環境関連装置の受注増により、売上高・利益ともに前期を上回る結果となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 83億円 86億円 97億円 96億円 105億円
経常利益 5.8億円 6.9億円 8.3億円 5.2億円 6.5億円
利益率(%) 7.0% 8.0% 8.5% 5.4% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.0億円 4.8億円 7.0億円 3.8億円 4.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、100億円台に乗せました。売上総利益率は27%前後で安定しており、営業利益率も前期の5.2%から6.0%へと改善しています。増収効果に加え、諸経費の圧縮に努めたことが利益率の向上に寄与しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 96億円 105億円
売上総利益 27億円 28億円
売上総利益率(%) 27.9% 26.6%
営業利益 5.0億円 6.4億円
営業利益率(%) 5.2% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が6.8億円(構成比31%)、賞与引当金繰入額が1.8億円(同8%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注費などが主な構成要素となります。

(3) セグメント収益


主力の工事施工は、鉄鋼関連の保全工事や粉砕ミル工事などの受注が増加し、増収増益となりました。環境関連装置は自動車産業向けの装置受注が増え、大幅な増収増益を達成しました。一方、溶接材料は受注減少により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
工事施工 71億円 80億円 11億円 12億円 14.8%
溶接材料 14億円 13億円 2億円 1億円 10.1%
環境関連装置 4億円 6億円 0.2億円 0.6億円 9.7%
その他 7億円 7億円 0.4億円 0.3億円 4.8%
調整額 -4億円 -6億円 -8億円 -8億円 -
連結(合計) 96億円 105億円 5億円 6億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.1億円 -1.1億円
投資CF -8.9億円 -4.3億円
財務CF 1.0億円 2.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、景気に左右されない経営基盤を構築し、社会への貢献を通じて従業員一人一人が「胸を張って誇れる会社」を実現することを基本方針としています。諸法令・社内規程の遵守、顧客第一主義、新技術の開発と導入、全員の力の結集、地球環境への配慮を掲げ、信頼される品質と豊かな価値の創造を目指しています。

(2) 企業文化


「技術のトクデン」として顧客第一主義を掲げるとともに、「安全は全てに優先する」という安全衛生管理方針を永年の方針としています。また、品質の維持向上を企業の社会的責任と捉える品質方針や、法令遵守と公平な企業活動を行うコンプライアンス方針、地球環境を守る環境方針を定めており、誠実かつ安全を最優先にする企業風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、安定的な利益の継続確保と株主利益の重視、経営効率化の観点から、「売上高」「売上総利益」「営業利益」「経常利益」を重要な経営指標と位置づけています。2025年3月期においては、売上高94.97億円、営業利益2.96億円等の目標に対し、実績はいずれも達成しました。

(4) 成長戦略と重点施策


経営基盤の強化に向け、研究開発の推進による技術的優位性の確保や、顧客密着型営業・直販体制の堅持に取り組んでいます。また、既存分野の見直しや工事施工のコスト削減、海外市場の開拓、新規得意先の獲得などを重点施策として掲げ、循環型社会に対応した「設備の再生・延命」をキーワードに事業拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人一人が問題意識を持ち、改善行動を起こせるよう意識改革と専門知識の習得、技術の伝承を図っています。また、人材の確保と育成を企業継続に不可欠な要素と位置づけ、部門ごとに目標を設定して教育訓練を実施しています。安全衛生面では「安全は全てに優先する」方針のもと、教育や職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 14.9年 6,669,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、溶接技能者資格取得率(70%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事故及び自然災害


主要工場の操業停止リスクに対し、生産拠点の分散や安全対策を実施していますが、事故や地震等の自然災害が発生した場合、生産能力の低下や販売への影響により、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 取引先メーカーの設備投資動向


売上高の上位を鉄鋼・自動車産業が占めており、これらの業界を含む顧客の設備投資動向の影響を強く受けます。設備投資需要の悪化や価格競争の激化が生じた場合、受注減少や価格低下により、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(3) 仕入先への依存


一部の溶接材料の製造やトッププレート原材料の加工を特定の協力会社に委託しており、特定仕入先への依存度が高いものがあります。安定調達の支障や技術流出が生じた場合、代替先の確保の遅れやシェア低下により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。