タクマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タクマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タクマは東京証券取引所プライム市場に上場する企業で、ごみ処理プラントやボイラの建設・運営を行う環境・エネルギー事業を主力としています。2025年3月期の連結業績は、売上高1,512億円(前期比増)、経常利益141億円(同増)、当期純利益104億円(同増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社タクマ の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月1日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タクマってどんな会社?

環境プラントとボイラのリーディングカンパニーです。再生可能エネルギーの活用や環境保全に貢献しています。

(1) 会社概要

1938年にボイラの製造販売を目的として田熊汽罐製造を設立し、1949年に株式上場を果たしました。1972年に現在の社名に変更しています。2015年にタクマエナジーを設立して電力小売事業へ参入し、2022年にプライム市場へ移行しました。2023年には播磨新工場が稼働を開始するなど、生産体制の強化を進めています。

連結従業員数は4,372名、単体では1,087名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は投資事業などを手掛ける光通信、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっており、主に信託銀行や事業会社が上位株主を構成しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.30%
光通信株式会社 6.05%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.36%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長兼社長執行役員は濵田 州朗氏が務めています。社外取締役は4名で、取締役全体の約36.4%を占めています。

氏名 役職 主な経歴
濵田 州朗 代表取締役社長兼 社長執行役員 1990年入社。経営企画本部長、常務執行役員などを経て2025年4月より現職。
南條 博昭 取締役兼 会長執行役員 1982年入社。エンジニアリング統轄本部長、代表取締役社長などを経て2025年4月より現職。
西山 剛史 取締役兼 副社長執行役員営業統轄本部長兼 事業管理本部長 1985年入社。経営企画本部長、専務執行役員、営業統轄本部長などを経て2025年4月より現職。
竹口 英樹 取締役兼 副社長執行役員エンジニアリング統轄本部長兼 管理センター長 1985年入社。エンジニアリング統轄本部プロジェクトセンター長、専務執行役員などを経て2025年4月より現職。
田中 康二 取締役兼 常務執行役員営業統轄本部国際本部長 1986年入社。コンプライアンス・CSR推進本部長などを経て2021年4月より現職。
大石 裕 取締役兼 常務執行役員コーポレート・サービス本部長兼 コンプライアンス・CSR推進本部長 1988年第一勧業銀行入行。みずほフィナンシャルグループを経て2019年タクマ入社。2023年4月より現職。
真杉 敬蔵 取締役(監査等委員)(常勤) 2001年入社。監査等委員会室参与を経て2021年6月より現職。


社外取締役は、藤田 知美(弁護士)、金子 哲哉(元兼松常務執行役員)、永塚 誠一(元三菱ふそうトラック・バス会長)、遠藤 眞廣(公認会計士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「環境・エネルギー(国内)事業」、「環境・エネルギー(海外)事業」、「民生熱エネルギー事業」、「設備・システム事業」および「その他」事業を展開しています。

環境・エネルギー(国内)事業

自治体向けのごみ処理プラント、下水処理プラントおよび民間事業者向けのバイオマス発電プラント等の建設(EPC)や、それらのメンテナンス、運転管理、運営、新電力事業などのアフターサービスを提供しています。主要顧客は地方自治体や民間企業です。

収益は、プラント建設の請負代金や、長期にわたるメンテナンス・運営業務の委託料から得ています。運営は主にタクマが行い、運転管理等は子会社のタクマテクノスなどが担当しています。

環境・エネルギー(海外)事業

東南アジアを中心に、バイオマス発電プラントや廃棄物発電プラントの建設およびメンテナンスを提供しています。現地の民間事業者などが主な顧客です。

収益は、プラント建設工事やメンテナンスの対価として顧客から受け取ります。タイや台湾の現地法人を拠点に、タクマおよび現地子会社が連携して事業を展開しています。

民生熱エネルギー事業

工場や商業施設などの熱源装置として利用される小型貫流ボイラ、真空式温水発生機など、汎用ボイラの製造、販売、メンテナンスを行っています。

収益は、ボイラ製品の販売代金やメンテナンス料から得ています。運営は主に連結子会社の日本サーモエナーが行っています。

設備・システム事業

オフィスビルや工場の空調・給排水などの建築設備工事と、半導体産業用設備の製造・販売・メンテナンスを行っています。

収益は、設備工事代金や製品販売代金です。建築設備はサンプラントやダン・タクマ、半導体設備はタクマなどが担当しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績は、売上高、利益ともに変動はありますが、全体として拡大傾向にあります。特に直近では大型案件の進捗やアフターサービス事業の貢献により、売上高、利益ともに増加し、安定した収益性を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,467億円 1,341億円 1,427億円 1,492億円 1,512億円
経常利益 110億円 106億円 147億円 112億円 141億円
利益率(%) 7.5% 7.9% 10.3% 7.5% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 62億円 55億円 77億円 64億円 82億円

(2) 損益計算書

売上高は増加し、利益率も改善しています。売上総利益率の向上や営業外収益の計上などが寄与し、各段階利益で増益となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,492億円 1,512億円
売上総利益 295億円 337億円
売上総利益率(%) 19.8% 22.3%
営業利益 102億円 135億円
営業利益率(%) 6.9% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が65億円(構成比32%)、その他が28億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益

環境・エネルギー(国内)事業は売上が減少したものの利益は増加しました。海外事業や民生熱エネルギー事業、設備・システム事業はいずれも増収増益となり、全セグメントで利益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
環境・エネルギー(国内)事業 1,189億円 1,133億円 112億円 131億円 11.6%
環境・エネルギー(海外)事業 24億円 55億円 2億円 11億円 20.0%
民生熱エネルギー事業 184億円 198億円 12億円 14億円 7.1%
設備・システム事業 94億円 126億円 3億円 9億円 7.1%
調整額 -4億円 -4億円 -27億円 -29億円 -
連結(合計) 1,492億円 1,512億円 102億円 135億円 8.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、運転資金や将来の事業展開に備えた設備投資、研究開発にかかる資金について、自己資金や金融機関からの借入金で調達しており、流動性を補完するため複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益はあったものの、仕入債務や売上債権の変動、法人税等の支払により資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出はあったものの、定期預金の増加により資金が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いがあったものの、短期借入金の増加により資金が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -122億円 -41億円
投資CF -84億円 13億円
財務CF -34億円 9億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「技術を大切に 人を大切に 地球を大切に」を社是とし、世の中が必要とする価値を生み出すことで社会に貢献し、企業価値を高め、長期的な発展とすべてのステークホルダーの満足を目指すことを経営理念としています。また、ESG経営の推進により、2030年には再生可能エネルギーと環境保全のリーディングカンパニーとして社会に必須の存在であり続けることを目指しています。

(2) 企業文化

創業者が掲げた「汽罐報国」(ボイラを通じて社会へ貢献する)の精神を継承し、事業活動を通じて社会の長期的、持続的な発展に貢献することを変わらぬ価値観としています。また、不屈の発明家精神を受け継いだ「イノベーション」によって有益な技術・サービスを生み出し、顧客や社会の課題解決に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標

「第14次中期経営計画(2024~2026年度)」において、Vision 2030実現に向けたセカンドステップとして以下の数値目標を掲げています。
* 計画期間(3か年)累計の連結経常利益:450億円
* 連結受注高累計:7,000億円以上
* 2027年3月期ROE:11.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策

Vision 2030実現に向け、一般廃棄物処理プラントの受注(更新、基幹改良)とストックを最大限活用した収益モデルの確立に経営資源を優先的に投入します。
* 経営基盤の強化(人材確保・育成、DX、ナレッジマネジメント推進)
* 従来ビジネスの一層の強化
* 将来の環境変化への対応(新事業創出など)

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

市場環境の変化に対応し社会貢献を果たすため、多様な価値観を持つ人材の確保と能力発揮の機会提供を重視しています。具体的には、新卒・キャリア採用の推進、女性管理職拡充に向けた採用強化、社員の能力向上研修やキャリア形成支援などに取り組んでいます。また、働き甲斐と働きやすさを高める人事制度や職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 14.3年 8,906,379円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 68.4%
男女賃金差異(正規雇用) 68.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職・基幹職確保数(40名)、育児支援制度利用率(49%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資機材及び工事価格の高騰

プラント建設などのEPC事業は受注から納入まで長期間を要するため、経済情勢の変動により資機材や工事価格が上昇し、請負金額への転嫁が困難な場合、採算が悪化する可能性があります。同社は調達先の多様化や協力企業との早期連携強化によりコストアップリスクの排除に努めています。

(2) 製品・サービスの瑕疵等

提供する製品・サービスの瑕疵や設計・施工の問題により、性能未達や納期遅延、事故等が発生した場合、多額の費用負担や損害賠償責任が生じ、社会的評価が低下する可能性があります。同社はデザインレビューの実施やプロジェクトリスク管理規程に基づくモニタリング等によりリスクの発現抑制に努めています。

(3) 事業環境の変化

国の政策変更による助成制度の縮小や景気後退による設備投資の減少が生じた場合、プラントの新設・更新需要が減退し、価格競争の激化などにより経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社はEPC事業の強化に加え、安定的な需要が見込まれるアフターサービス事業(ストック型ビジネス)の拡大に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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