中央発條 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中央発條 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中央発條は、東証スタンダードおよび名証プレミアに上場する自動車部品メーカーです。トヨタ自動車のグループ企業として、シャシばねや精密ばね、コントロールケーブル等の製造販売を主力事業としています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比増収、経常利益は大幅な増益を達成しました。


※本記事は、中央発條株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中央発條ってどんな会社?


トヨタグループの一員として、自動車用ばねやコントロールケーブル等の開発・製造を手掛けるメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1925年に名古屋市で創業し、自動車用等のばね製造を開始しました。1948年に新会社として設立され、1961年に名証二部、1986年に東証一部および名証一部へ上場しました。その後、米国、タイ、中国、インドネシアなどに現地法人を設立し、グローバル展開を推進しています。2023年には東証スタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結3,017名、単体1,171名です。筆頭株主は事業会社(親会社・提携先)であるトヨタ自動車で、第2位はトヨタグループの愛知製鋼、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。同社はトヨタ自動車を「その他の関係会社」としており、強固な資本関係のもとで事業を展開しています。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 24.41%
愛知製鋼 7.59%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は小出 健太氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
小 出 健 太 代表取締役社長 1983年トヨタ自動車入社。同社工場工務部長、チェコ現地法人社長等を経て、2017年より中央発條顧問、専務取締役、副社長を歴任。2022年6月より現職。
米 倉 浩 司 取締役執行役員(代表取締役)営業本部長、調達本部長 1987年入社。営業部長、執行役員、インドネシア現地法人社長等を歴任。2022年6月より現職。
矢 澤 文 希 取締役執行役員経営管理本部長 1989年トヨタ自動車入社。同社財務部資金管理室GM等を経て、2019年より中央発條総合企画部長。2022年6月より現職。


社外取締役は、安田 加奈(公認会計士・税理士)、山 本 光 子(元パーソルテンプスタッフ取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「中国」「アジア」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


国内において、当社および国内関係会社が自動車部品等の製造販売を行っています。主な製品は、シャシばね(懸架コイルばね、スタビライザ等)、精密ばね(エンジンバルブスプリング等)、コントロールケーブルです。トヨタ自動車をはじめとする国内自動車メーカーへの納入が中心です。

収益は、自動車メーカー等の顧客に対する製品の販売によって得ています。運営は主に中央発條が行い、一部製品の製造加工や輸送等を中発運輸、セプラス、中発精工などの国内子会社が担っています。

(2) 北米


米国において、自動車部品の製造販売を行っています。現地自動車メーカー向けに、シャシばね、精密ばね、コントロールケーブル等の製品を供給しています。

収益は、北米地域の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、米国の子会社であるCHUHATSU NORTH AMERICA,INC.が行っています。

(3) 中国


中国において、自動車部品の製造販売を行っています。現地の自動車メーカー向けに、ケーブル、精密ばね、シャシばね等を製造・供給しています。

収益は、中国国内の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、昆山中発六和機械有限公司、天津中発華冠機械有限公司、昆山中和弾簧有限公司、天津中星汽車零部件有限公司、天津隆星弾簧有限公司、孝感中発六和汽車零部件有限公司などの現地子会社が行っています。

(4) アジア


台湾、タイ、インドネシアにおいて、自動車部品の製造販売を行っています。各地域の自動車メーカー向けに、シャシばね、精密ばね、コントロールケーブル等を供給しています。

収益は、アジア地域の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、台湾の中發工業股フン有限公司、タイのCHUHATSU (THAILAND) CO.,LTD.、インドネシアのP.T.CHUHATSU INDONESIAなどの現地子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、経常利益が変動しながらも直近で大きく伸長しており、利益率も改善傾向にあります。当期純利益についても、変動はあるものの黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 747億円 821億円 928億円 1,010億円 1,102億円
経常利益 23億円 34億円 16億円 31億円 51億円
利益率(%) 3.0% 4.2% 1.7% 3.1% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 16億円 6億円 13億円 16億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上総利益率も改善しており、収益性が向上しています。営業利益は前年から大幅に増加し、営業利益率も上昇しています。増収効果に加え、採算性の向上が利益拡大に寄与していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,010億円 1,102億円
売上総利益 102億円 141億円
売上総利益率(%) 10.1% 12.8%
営業利益 11億円 44億円
営業利益率(%) 1.1% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、報酬・給与・手当が32億円(構成比34%)、荷造発送費が22億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて売上高が増加しました。特に日本セグメントは増収とともに利益も大幅に増加し、全体の業績を牽引しました。北米、アジアも増益を確保しましたが、中国セグメントは増収ながらも減益となりました。全体として、日本市場での好調が業績拡大の主要因となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 684億円 798億円 12億円 49億円 6.2%
北米 99億円 91億円 2億円 3億円 3.6%
中国 83億円 72億円 7億円 3億円 3.6%
アジア 144億円 140億円 8億円 10億円 7.2%
連結(合計) 1,010億円 1,102億円 11億円 44億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

中央発條は、営業活動により大幅に資金を創出し、事業の成長を支えています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資を積極的に行いました。財務活動では、配当金の支払い等により資金を使用しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 57億円 95億円
投資CF -67億円 -81億円
財務CF 117億円 -9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、優れたモノづくり・価値ある商品の創造を基本に、社会への貢献を企業経営の使命と考えています。「創る技術を社会に活かす」「人の英知で未来を拓く」「夢に向かって挑戦し進歩する」という企業理念を掲げ、グローバルな経営活動を続けています。

(2) 企業文化


同社は、「企業理念」および「企業行動指針」を、従業員が法令・定款および社会規範を遵守した行動をとるための行動規範としています。また、安全最優先の意識を全従業員に浸透させる企業文化づくりや、疑問や不安がある場合には本音で語れるコミュニケーションづくりを強化することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2027年度までの中長期経営計画を策定しています。商品力の強化、新規分野への進出、画期的な原価低減を通じて、信頼され続ける製品づくりに努める方針です。数値目標として以下を設定しています。

* 連結売上高:1,100億円
* 営業利益:55億円(営業利益率5%)
* ROE:5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中長期経営計画の達成に向け、高性能・高機能製品やEV対応などの「商品力の強化」、インド市場や非自動車分野などへの「新規分野への進出」、直材費のボーダレス調達などによる「画期的な原価低減」を重点施策としています。また、カーボンニュートラルの推進や、安全最優先の取り組み、コンプライアンス体制の強化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりが自らの成長を実感し、持てる能力を最大限に発揮することが持続的成長の原動力と考えています。「活力に満ちた安全で働きやすい職場づくり」を基盤とし、当事者意識・発信型人財、マルチスキル人財、グローバル人財の育成に取り組んでいます。また、ダイバーシティの推進やエンゲージメント向上にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.3歳 21.7年 6,905,656円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.0%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.6%
男女賃金差異(正規雇用) 71.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 78.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均残業時間(24時間/月)、年休取得日数(17日/年)、新卒総合職採用における女性比率(33%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク


同社グループの生産・販売活動の一部は海外で行われています。政治・経済の混乱、法規制の変更、為替変動などが業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。特に為替相場の変動は、製品販売価格や調達コストに影響を与えるリスクがあります。

(2) 災害や停電等による影響


生産設備での災害、停電、その他の中断事象による影響を完全に防止できる保証はありません。特に大規模な地震などにより操業が中断した場合、生産能力が低下する可能性があります。南海トラフ大地震などへの対策は講じていますが、リスクは残存します。

(3) リコール発生などの品質問題が及ぼす影響


品質保証体制の強化に努めていますが、将来的なリコール発生を完全に否定することはできません。大規模なリコールや製造物責任賠償が発生した場合、多額のコスト発生や社会的信用の低下を招き、業績や財務状況に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。