※本記事は、中央発條株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中央発條ってどんな会社?
自動車部品であるばねやコントロールケーブルを中心に製造販売するグローバルメーカーです。
■(1) 会社概要
1925年に鋼製ばねの製造工場として創設され、1936年に中央発條へ社名を変更しました。1961年に名古屋証券取引所に上場後、東京証券取引所への上場を果たし、台湾、米国、中国、タイなど海外市場への積極的な進出を進めました。2023年には東証スタンダード市場へ移行し、事業基盤の再構築を図っています。
従業員数はグループ全体で3,017名、単体で1,218名体制です。筆頭株主は主要顧客でもあるトヨタ自動車で、第3位にも関連企業の愛知製鋼が名を連ねており、安定した資本・取引関係を構築しています。第2位は個人投資家およびその資産管理会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 24.41% |
| 植島勘九郎(常任代理人 DOE5パーセント) | 13.94% |
| 愛知製鋼 | 7.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は北浦啓一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北浦 啓一 | 代表取締役社長品質機能本部長 | 1990年入社。2012年昆山中和弾簧有限公司総経理などを経て、2018年調達部長、2020年執行役員。2025年6月より現職。 |
| 脇坂 一行 | 取締役執行役員(代表取締役)営業機能本部長調達機能本部長 | 1999年トヨタ自動車入社。同社ボデー部品調達部長等を経て、2024年同社社外監査役。2025年6月より現職。 |
| 矢澤 文希 | 取締役執行役員経営管理機能本部長 | 1989年トヨタ自動車入社。同社財務部資金管理室GMなどを経て、2019年同社総合企画部長、2021年執行役員。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、安田加奈(安田会計事務所所長)、山本光子(パーソルテンプスタッフ相談役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「中国」「アジア」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■日本
日本国内において、自動車用シャシばね、精密ばね、ケーブルなどの製造・販売を展開しています。また、自動車用品や建築用資材機器の加工・販売も行っており、主要顧客であるトヨタ自動車などの国内自動車メーカーに対して幅広い製品を供給しています。
製品の販売による収益が主な収入源となっています。事業の運営は同社を中心に、中発運輸、中発販売、中発精工、長崎中発などの各種国内子会社が専門的な機能と生産体制を分担しながら担っています。
■北米
北米市場において、シャシばね、精密ばね、ケーブルの製造・販売を展開しています。現地の自動車メーカーや、北米に進出している日系自動車メーカーの生産拠点に向けて、高品質な製品の供給を行っています。
製品販売による収益を事業の柱としており、現地の顧客ニーズに対応するための運営は、米国の連結子会社であるCHUHATSU NORTH AMERICA,INC.が一貫して担っています。
■中国
中国市場において、急速に拡大・変化する現地の自動車産業を主な顧客とし、ケーブル、精密ばね、シャシばね等の製造・販売を行っています。グローバルな供給網の一角として、重要な役割を果たしています。
自動車部品等の製品販売収益で構成されています。事業運営は、昆山中発六和機械有限公司、天津中星汽車零部件有限公司、天津隆星弾簧有限公司など複数の現地子会社が連携して行っています。
■アジア
台湾、タイ、インドネシア、インド等の成長著しいアジア地域において、シャシばね、ケーブル、精密ばね等の製造・販売を行っています。アジア域内の幅広い自動車メーカー等に向けて事業を展開しています。
製品販売による収益を主としており、運営は台湾の中發工業股フン有限公司やタイのCHUHATSU (THAILAND) CO.,LTD.をはじめとする各地域の連結子会社が担い、現地に根差した供給体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加傾向にあり、堅調に規模を拡大しています。一方、経常利益は原材料価格の高騰や固定費の増加といった影響を受け増減を繰り返していますが、直近では一定の利益水準を維持し、安定した収益基盤を保っています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 821億円 | 928億円 | 1010億円 | 1102億円 | 1109億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 16億円 | 31億円 | 51億円 | 45億円 |
| 利益率(%) | 4.2% | 1.7% | 3.1% | 4.7% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 6億円 | 13億円 | 16億円 | 112億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益および営業利益は減少しています。これは労務費の上昇に対する売価反映や合理化改善を進めたものの、計画的な固定費の増加などが影響したためです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1102億円 | 1109億円 |
| 売上総利益 | 141億円 | 130億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.8% | 11.7% |
| 営業利益 | 44億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 2.5% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬・給与・手当が33億円(構成比33%)、荷造発送費が21億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは労務費上昇に対する売価反映等で増収となったものの、固定費の増加等により減益となりました。一方、中国およびアジアセグメントでは、主要取引先の自動車生産台数の増加や合理化改善などが寄与し、堅調な増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 833億円 | 845億円 | 49億円 | 29億円 | 3.4% |
| 北米 | 91億円 | 91億円 | 3億円 | 3億円 | 3.0% |
| 中国 | 106億円 | 107億円 | 3億円 | 5億円 | 4.8% |
| アジア | 167億円 | 177億円 | 10億円 | 14億円 | 8.0% |
| 連結(合計) | 1102億円 | 1109億円 | 44億円 | 28億円 | 2.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 95億円 | 69億円 |
| 投資CF | -81億円 | 49億円 |
| 財務CF | -9億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「創る技術を社会に活かす」「人の英知で未来を拓く」「夢に向かって挑戦し進歩する」という企業理念を掲げています。優れたモノづくり・価値ある商品の創造を基本とし、社会への貢献を企業経営の使命と考え、グローバルな経営活動を続けています。
■(2) 企業文化
安全をすべての事業活動に優先する最重要課題と位置付けています。また、従業員一人ひとりが自らの成長を実感し、持てる能力を最大限に発揮できる「活力に満ちた安全で働きやすい職場づくり」を基盤として、多様な人材が活躍できる組織文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
「中長期経営計画2030」を策定しており、持続的な企業価値の向上を目指しています。2030年度(2031年3月期)を最終年とする具体的な数値目標は以下の通りです。
* 連結売上高 1,300億円
* 営業利益 91億円
* 営業利益率 7%
* ROE 8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
ばねやコントロールケーブルで培ってきたコアコンピタンスを基盤に技術を高度化し、高付加価値製品の開発を推進しています。電動化への対応や北米・グローバルサウス市場での取引拡大、非自動車分野への進出を図り、従来の量産受注型から顧客に新たな価値を提案する「プロポーザブルカンパニー」への変革を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を重要な経営資源と位置付け、ウェルビーイングの実現を基盤にエンゲージメント向上やダイバーシティの推進に取り組んでいます。「当事者意識・発信型人財」「マルチスキル人財」「グローバル人財」の育成を基本方針とし、キャリアに応じた能力開発を計画的に進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 20.4年 | 7,415,932円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.2% |
| 男性育児休業取得率 | 65.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 85.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均残業時間(24時間/月)、年休取得日数(17.8日/年)、持株会加入率(68%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国際的活動および海外進出のリスク
北米や中国、アジアなどの海外市場で生産・販売活動を行っており、進出先の政治的・経済的な混乱や法規制の変更が事業に悪影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動により、調達価格や製品の販売収益が影響を受けるリスクも存在します。
■(2) リコール等による品質問題のリスク
自動車部品等の製造において品質保証体制を強化していますが、万一リコールや製造物責任賠償が発生した場合、多額の対策コストが生じる可能性があります。また、同社のブランド評価の低下を招き、業績や財務状況に多大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 災害や停電等による操業中断リスク
定期的な設備点検や大規模地震に対する対策を講じていますが、生産設備での火災、停電、自然災害などによる操業中断を完全に防ぐ保証はありません。これらにより生産能力が低下した場合、供給遅延や売上の減少を招くリスクが想定されます。



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