※本記事は、株式会社パイオラックス の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パイオラックスってどんな会社?
自動車向け工業用ファスナーや精密ばねの大手メーカーであり、独自の弾性技術を応用して医療機器分野にも展開する企業です。
■(1) 会社概要
1933年に「加藤発條製作所」として創業し、1939年に設立されました。1998年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2004年に同第一部銘柄に指定されました。1999年には医療機器事業を行う子会社パイオラックス メディカル デバイスを設立。米国、英国、アジア各国に拠点を展開し、グローバル体制を構築しています。
連結従業員数は2,895人、単体では607人です。筆頭株主は業務提携先である株式会社佐賀鉄工所で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社です。佐賀鉄工所とはグローバルな協力関係構築を目指した包括的な業務提携契約を締結しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社佐賀鉄工所 | 14.09% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.28% |
| 株式会社レノ | 7.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は山田聡氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田 聡 | 代表取締役社長 | 1987年入社。米国子会社の設計開発担当やメキシコ子会社社長を経て、執行役員として設計やe商品開発を統括。2024年6月より現職。 |
| 島津 幸彦 | 取締役会長 | 1981年入社。海外営業部長や米国子会社社長を経て、2010年に代表取締役社長に就任。中国子会社の董事長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 梶 雅昭 | 常務取締役 | 日本政策投資銀行出身。2014年に入社し、人事部長や中国統括会社の総裁などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 増田 茂 | 常務取締役 | 1987年入社。生産技術部門や各SBU長を歴任し、子会社社長などを経て2025年6月より現職。中国子会社の董事長も兼務。 |
| 石川 元一 | 取締役(監査等委員) | 日本興業銀行(現みずほ銀行)出身。2014年に入社し、米国子会社社長や人事部長などを歴任。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、落合宏行(元トヨタ自動車常務役員)、赤羽真紀子(CSRアジア代表取締役)、小宮山榮(公認会計士)、廣渡鉄(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車関連等」および「医療機器」事業を展開しています。
■(1) 自動車関連等
工業用ファスナー(内外装の結束具)や精密ばね、燃料系部品、開閉機構部品などを製造・販売しています。主な顧客は日産自動車をはじめとする国内外の自動車メーカーおよび関連会社です。独自の技術力を活かし、EV(電気自動車)向けのバスバーやADAS(先進運転支援システム)関連製品の開発にも注力しています。
収益は、自動車メーカー等への製品販売による代金が主な源泉です。運営は、同社が製造販売を行うほか、国内ではパイオラックス エイチエフエスやパイオラックス九州などが製造を担当し、海外では米国、英国、中国、タイ、インドなどの現地子会社が製造・販売を行っています。
■(2) 医療機器
IVR(血管内治療)用カテーテル、内視鏡処置具、整形外科関連製品などを製造・販売しています。「弾性」技術を応用し、患者への身体的負担が少ない低侵襲治療に貢献する製品を提供しています。
収益は、医療機関や代理店への製品販売による代金となります。運営は、連結子会社の株式会社パイオラックス メディカル デバイスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は500億円台から600億円台で推移していますが、利益面では変動が見られます。特に当期は経常利益率が低下しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 502億円 | 551億円 | 584億円 | 646億円 | 634億円 |
| 経常利益 | 54億円 | 58億円 | 49億円 | 57億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 10.9% | 10.5% | 8.3% | 8.8% | 5.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 33億円 | 24億円 | 24億円 | 29億円 | 95億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 646億円 | 634億円 |
| 売上総利益 | 163億円 | 143億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.2% | 22.5% |
| 営業利益 | 48億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が37億円(構成比31%)、荷造発送費が21億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
自動車関連等は主要取引先の減産影響などで減収減益となりました。一方、医療機器は拡販により増収となり、利益も大幅に増加しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車関連等 | 598億円 | 582億円 |
| 医療機器 | 47億円 | 52億円 |
| 連結(合計) | 646億円 | 634億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 84億円 | 81億円 |
| 投資CF | -86億円 | 33億円 |
| 財務CF | -47億円 | -65億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業90周年を機に策定された「パイオラックス ウェイ」において、パーパスとして「人と社会を技術でつなぎ、心弾む未来を実現する」を掲げています。また、ビジョンとして「新しい価値の創造 -弾性を創造するパイオニアからその先へ-」を掲げ、コアコンピテンスである技術の力で豊かで安全快適な未来の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
バリューとして「パイオニアを志し、挑戦と変化を続ける」「最良を目指し、熱意と信頼を以て協調する」「創造性を尊び、自由にしなやかに発想する」の3つを定めています。また、社是として「至誠・協力・奉仕」を掲げ、これらに基づく行動を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
自動車生産台数に頼らない経営方針へのシフトを掲げています。資本効率の改善と企業価値向上を目指し、2027年3月期までの3ヵ年で累計自己株式取得300億円、年間配当金92円以上、連結配当性向100%の継続を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「商品戦略」「地域・顧客戦略」「組織改革」を重点施策としています。商品面では、ADAS(先進運転支援システム)関連製品や電動化対応部品(バスバー等)などの高付加価値製品の創出に注力します。地域面では、インドでの第2工場建設や、海外における非日系自動車メーカーへの拡販を推進します。組織面では、従来のSBU制を廃止し、2025年4月から機能別体制へ移行することで意思決定の迅速化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社員を「人財」と捉え、「働きがいのある会社」と「働きやすい会社」の実現を目指しています。人材の多様性を確保するため、性別や国籍等を問わない採用と登用を進めています。また、グローバルな視野を持つ変革型人材や高い専門性を持つ人材の育成に注力し、階層別教育や語学教育などを実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 15.8年 | 6,275,382円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.3% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 46.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した従業員に占める女性の割合(27.3%)、役員に占める女性の割合(22.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車産業の動向
売上の90%超が自動車産業向けであり、日系自動車メーカーの生産販売動向の影響を強く受けます。EV化の加速や中国市場での日系メーカーの苦戦、原材料費やエネルギーコストの高騰などが業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 特定取引先への依存
日産自動車グループへの売上比率が高く、同グループの動向が業績に大きく影響します。これに対し、機能別組織への改編や非日系メーカーへの拡販により、特定の自動車生産台数に過度に依存しない経営構造への転換を進めています。
■(3) 品質関連
製品の欠陥によるリコール等は多額のコスト負担や信用の低下を招くリスクがあります。「品質保証本部」を新設し、品質マネジメントシステムに沿った保証体制を構築することで、不具合の未然防止に努めています。
■(4) 海外事業に潜在するリスク
北米・欧州・アジアなどで事業展開しており、各国の法規制変更、政治・経済情勢の変化、貿易摩擦、為替変動などが業績に影響を与える可能性があります。特に米国の追加関税政策などの地政学リスクを注視しています。



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