阪神内燃機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阪神内燃機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阪神内燃機工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、船舶用ディーゼル機関などの製造販売を主力とする企業です。直近の業績では、主機関の大型化や海外向け部分品・修理工事の増加、資材価格高騰分の価格転嫁が進んだことなどにより、堅調に推移し増収増益を達成しています。


※本記事は、阪神内燃機工業株式会社の有価証券報告書(第161期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 阪神内燃機工業ってどんな会社?


船舶用ディーゼル機関および関連部品の製造・販売と修理サービスを展開する老舗メーカーです。

(1) 会社概要


1918年1月に阪神鐵工所として設立され石油発動機の製造を開始し、1929年に初のディーゼル機関を完成しました。1944年に現在の社名へ変更し、1955年には大阪証券取引所に上場しました。その後、電子制御システムやガスエンジン、メタノール燃料エンジンなど、世界初を含む先進技術の開発を続けています。

従業員数は単体で302名です。筆頭株主はGOLDMAN SACHS INTERNATIONALで、第2位は阪神ディーゼル取引先持株会、第3位はオゾネです。

氏名 持株比率
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 8.32%
阪神ディーゼル取引先持株会 6.95%
オゾネ 6.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は木下和彦氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
木下和彦 代表取締役社長社長執行役員 1983年大丸入社。1992年同社入社。1995年取締役営業統括部長などを経て、2007年代表取締役社長に就任。2015年より現職。
川元克幸 代表取締役専務執行役員技術統括本部長 1982年同社入社。2012年明石・播磨工場長などを歴任。2019年代表取締役専務執行役員に就任し、2023年より現職。
藤村欣則 取締役常務執行役員営業統括本部長 1986年同社入社。2012年営業部長、2015年執行役員を経て、2020年取締役常務執行役員営業統括本部長に就任。2024年より現職。
中川智 取締役常務執行役員経営統括本部長 1984年松下電器産業入社。2009年同社入社。総務部長等を経て2020年取締役上席執行役員管理統括本部長に就任。2024年より現職。
山本幸二 取締役(監査等委員) 1975年同社入社。生産管理部長、常務取締役などを歴任。2015年監査役を経て、2020年より現職。


社外取締役は、小曽根佳生(オゾネ代表取締役社長)、羽田由可(H&S法律事務所開設)、前田晴秀(元京阪神興業代表取締役社長)、塩入みか(芦屋国際特許事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、「主機関」および「部分品・修理工事」の区分で事業を展開しています。

(1) 主機関


主要な製品として船舶用ディーゼル機関をはじめ、可変ピッチプロペラ、サイドスラスタ、潤滑油・燃料油清浄装置、遠隔機関監視システムなどを製造・販売しています。主に国内外の海運業者や造船所を顧客としています。

製品の販売による収益を柱としており、顧客への製品引き渡し時点で売上を計上しています。また、据付工事の立会による役務提供対価も収益源となります。事業の運営は主に阪神内燃機工業が行っています。

(2) 部分品・修理工事


販売した主機関に関連する部分品の販売や修理工事、保守管理サービスの提供を行っています。また、鋳造技術を活用した各種鋳物製作や機械加工などのCMR(鋳造・金属機械加工)事業も展開し顧客ニーズに対応しています。

部分品の販売や短期間の修理工事等を通じた役務提供のほか、契約期間にわたる保守管理サービスの提供によって収益を得ています。事業の運営は主に阪神内燃機工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、前半は売上高が一時減少したものの、その後は回復から拡大基調へと転じています。特に直近2期は主機関の販売が好調に推移し、大幅な増収を記録しました。利益面でも、資材価格高騰への対応として適正な価格転嫁を進めたことで、着実な増益傾向を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 101億円 91億円 96億円 133億円 140億円
経常利益 6億円 6億円 6億円 7億円 10億円
利益率(%) 5.9% 6.6% 6.7% 5.1% 6.8%
当期純利益 4億円 4億円 5億円 5億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益が改善し、利益率も上昇しています。増収効果と原価管理の徹底により、営業利益も堅調に伸びており、本業の収益力が着実に向上していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 133億円 140億円
売上総利益 24億円 29億円
売上総利益率(%) 18.2% 20.9%
営業利益 6億円 8億円
営業利益率(%) 4.6% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料・報酬等が7億円(構成比32%)、荷造費及び運賃が3億円(同16%)を占めています。また、当期製造費用の内訳としては、材料費が71億円(構成比60%)、経費が27億円(同22%)となっています。

(3) セグメント収益


主機関は大型機関の販売増加などにより着実に成長しています。部分品・修理工事も海外向けの案件増や価格改定前の需要などが寄与し、両部門とも前年を上回る売上を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
主機関 80億円 84億円
部分品・修理工事 54億円 56億円
連結(合計) 133億円 140億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動による収入で投資や財務活動の支出を賄う健全型のパターンを示しています。安定した本業の利益をベースに、必要な設備投資や株主還元を自己資金で行う堅実な資金管理が行われています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 16億円 4億円
投資CF -0.1億円 -7億円
財務CF -2億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「100年を超える経験と知識をもとにさらなる発展を求めて、事業分野の制約をはずし、根幹のモットーは継承しながら社会課題の解決を第一に認識し、その解決に尽力する」ことを基本理念として掲げています。この理念を通じて顧客満足度を向上させ、経済価値を高めることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「鉄と工(たくみ)の創造力で掴むWIN-NOVATION(WIN+INNOVATION)」をスローガンに掲げています。また、「良品主義」「親切第一」「人格の修養と技術の練磨」をモットーとし、法令順守や企業倫理の徹底に取り組みながら、地球と人を大切にする企業活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、3ヵ年の中期経営計画「Go for it ! やってみなはれ ! !」を推進しています。直近の業績動向を踏まえて目標を上方修正し、持続的な成長と企業価値の向上を図るため、最終年度において以下の数値目標の達成を目指しています。

・売上高185億円
・売上高営業利益率8%
・ROE7.4%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、脱炭素社会に向けた環境対応型エンジンの研究開発と製品化を重点施策として推進しています。メタノール燃料や次世代燃料(アンモニア・水素等)への対応を進めるとともに、鋳物・金属機械加工といったCMR事業の拡大や新規事業創出プロジェクトにも注力し、中長期的な市場機会の獲得を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、中期経営計画において「未来を担う人材開発」を目標に掲げ、「部下育成能力養成」「人権尊重」「起業家精神の育成」の3つを人材育成の柱としています。事業環境の変化に柔軟に対応し、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出すため、グループ・チーム制への移行や人事評価制度の透明性向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.9歳 19.3年 6,637,704円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 83.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 82.7%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 44.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 内航船業界への依存と競争激化


同社は国内の内航海運業界向け主機関で高いシェアを持ちますが、船の大型化や船員不足により内航船の稼働隻数は緩やかな減少傾向にあります。限られた新造船市場において競合他社との受注競争が激化しており、新規技術の付加価値提案や海外市場の開拓が進まない場合、主機関の受注が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 低速4サイクル機関への偏重リスク


同社の主力製品は熱効率や耐久性に優れる低速4サイクルディーゼルエンジンですが、環境規制の強化に伴い電気推進船やバッテリー推進船の建造が増加した場合、既存エンジンの優位性が低下するリスクがあります。対策として、現有エンジンの性能改善やシステム面のサポート強化に加え、次世代燃料への対応を進めています。

(3) 新卒人材採用の困難と技術伝承


少子高齢化の影響により新卒人材の採用が困難な状況が続いており、採用計画の未達が継続すれば、社内の技術やノウハウの伝承が進まず事業機会を逸失するリスクがあります。同社は対策として、大学との連携や通年採用・経験者採用の拡大、初任給の引き上げ、リファラル採用などの多様な採用活動に積極的に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。