※本記事は、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション の有価証券報告書(第128期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジャパンエンジンコーポレーションってどんな会社?
同社は、大型船舶の心臓部となる舶用内燃機関(ディーゼルエンジン)の製造・販売を主力事業とする企業です。技術開発から製造、販売、アフターサービスまでを一貫して手掛けています。
■(1) 会社概要
1910年に神戸発動機製造所として創立され、1957年に三菱重工業と技術提携を結びUE機関の製造販売権を獲得しました。その後、2017年に三菱重工マリンマシナリから舶用エンジン事業を承継し、現在のジャパンエンジンコーポレーションに商号を変更しました。近年では、2021年に水素燃料エンジンの開発を行う合弁会社HyEngを設立するなど、次世代燃料への対応を進めています。
同社の従業員数は382名(単体)です。筆頭株主は事業提携先である三菱重工業で、第2位は主要な取引先である名村造船所、第3位は自動車部品等の輸出入を行うシーケービーです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱重工業 | 14.83% |
| 名村造船所 | 10.01% |
| シーケービー | 5.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は川島健氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川島 健 | 取締役社長(代表取締役) | 1993年三菱重工業入社。同社舶用ディーゼル事業ユニット営業課長などを経て、2018年より現職。 |
| 進藤 誠二 | 常務取締役(代表取締役) | 1986年三菱重工業入社。同社ディーゼル部次長、ジャパンエンジンコーポレーション設計統括部長などを経て、2023年より現職。 |
| 柴田 健 | 常務取締役 | 1992年三菱重工業入社。同社パワードメイン経営管理統括部企画管理部次長などを経て、2023年より現職。 |
| 寺田 明史 | 取締役執行役員製造統括部長 | 1985年三菱重工業入社。同社防衛・宇宙セグメント艦艇・特殊機械事業部副事業部長などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、竹内郁夫(赤阪鐵工所顧問)、黒瀬久敏(元JALエービーシー社長)、鈴木純(神戸大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「舶用内燃機関及び付随業務」事業を展開しています。
■(1) 舶用内燃機関(主機関)
大型船舶の推進用動力となる舶用ディーゼルエンジンの製造および販売を行っています。主な顧客は国内外の造船所であり、新造船に搭載される主機関を提供しています。
収益は、造船所等への製品販売代金として受け取ります。運営は主にジャパンエンジンコーポレーションが行っています。
■(2) 修理・部品等
就航後の船舶向けにエンジンのメンテナンス、修理、部品供給を行うほか、技術供与先のライセンシーに対するロイヤリティー事業を展開しています。中国などの海外ライセンシーへの技術供与も強化しています。
収益は、船主や管理会社からの部品代・修理代、およびライセンシーからのロイヤリティー収入として受け取ります。運営は主にジャパンエンジンコーポレーションが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で一貫して増加傾向にあり、特に直近2期は新造船市場の好況を受けて急伸しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに大幅な増益基調が続いており、利益率も大きく改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 117億円 | 132億円 | 153億円 | 210億円 | 289億円 |
| 経常利益 | 4.0億円 | 6.1億円 | 6.8億円 | 35億円 | 54億円 |
| 利益率(%) | 3.4% | 4.7% | 4.5% | 16.8% | 18.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 5.4億円 | 8.1億円 | 25億円 | 43億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。増収効果に加え、生産効率の向上や製品価格の改善などが寄与し、利益率も高水準を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 210億円 | 289億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 82億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.2% | 28.5% |
| 営業利益 | 22億円 | 51億円 |
| 営業利益率(%) | 10.4% | 17.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が10億円(構成比32%)、報酬・給料手当が7億円(同21%)を占めています。売上原価では、材料費が177億円(売上原価に対する構成比86%)と大半を占めています。
■(3) セグメント収益
舶用内燃機関は、新造船市場の好況や環境対応エンジンの受注増により大幅な増収となりました。修理・部品等は、船舶の高稼働やライセンス事業の好調により堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 舶用内燃機関 | 95億円 | 168億円 |
| 修理・部品等 | 115億円 | 121億円 |
| 合計 | 210億円 | 289億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の儲けを示す営業CFはプラスを維持し、借入等による資金調達を行いつつ積極的な投資を実施している「積極型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 68億円 |
| 投資CF | -8億円 | -47億円 |
| 財務CF | 4億円 | 11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は36.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「伝統と革新スピリットを融合」させ、「社会と業界の発展に貢献」することを経営理念としています。また、「総合力を発揮し、世界へ飛躍」することを目指し、開発からサービスまでの一貫体制で世界に伍していく姿勢を示しています。さらに「日の丸舶用エンジンをお客様とともに育て、次代を拓く」ことを経営ビジョンとして掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「無災害職場の確立」を掲げ、危険予知の徹底とコミュニケーションにより災害ゼロを目指す安全第一の文化を持っています。また、環境対応と経済性を両立した技術と品質向上への「飽くなき挑戦」を重視し、社員の力を結集して機動的かつ柔軟な経営を推進する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は「第2次中期事業計画」を策定しており、持続的な事業成長と企業価値の向上を目指しています。経営上の目標達成状況を判断する指標として「経常利益」を重視し、安定した収益体質の確立を目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「新たな成長ステージ」において、環境対応への取り組み深化を重点施策としています。具体的には、脱炭素社会の実現に向け、アンモニアや水素を燃料とする次世代エンジンの開発・社会実装を推進しています。また、中国を中心とした海外ライセンスビジネスの強化により、UEエンジンの世界シェア拡大とアフターサービス事業の伸長を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を重要な経営資源と捉え、投資拡大を進めています。教育制度の拡充やリスキリングによる人材育成、社員評価制度の運用による組織風土改革を推進しています。また、健康経営の推進や多様な人材の活躍支援、エンゲージメント向上のための施策を展開し、社員が活き活きと働き続けられる職場環境の整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 9.3年 | 6,572,324円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 54.0% |
| 女性管理職比率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | -% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規) | -% |
※同社は公表義務の対象ではないため、一部項目の記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(15.2%)、外国籍社員比率(4.7%)、有給休暇取得率(69.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 受注環境の変動リスク
新造船需要やアフターサービス需要は、世界景気や船腹需給、海運市況の動向に左右される傾向があります。これらの市場環境が変動した場合、同社の受注や販売、ひいては経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 特定取引先への調達依存
主力製品である主機関の構成部品の多くを社外から調達しており、一部の主要部品については特定の供給元に依存しています。供給元の状況によって調達が不安定になった場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。
■(3) 原材料・購入部品価格の変動
製品の製造原価において原材料費や購入部品費の比率が高くなっています。調達コストの低減に取り組んでいますが、市況変動により原材料や部品の価格が高騰した場合、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。