赤阪鐵工所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 赤阪鐵工所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の舶用ディーゼルエンジンメーカーです。船舶用主機関の製造販売や修理、部品供給を主力事業としています。第127期は、内燃機関の販売台数増の一方で売上高は前期比微減の78億円となりましたが、部分品販売の好調等により経常利益は0.6億円と増益(前期比85.8%増)を確保しました。


※本記事は、株式会社赤阪鐵工所 の有価証券報告書(第127期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 赤阪鐵工所ってどんな会社?


赤阪鐵工所は、100年以上の歴史を持つ舶用ディーゼル機関の専業メーカーであり、漁船や内航商船向けのエンジン製造に強みを持つ企業です。

(1) 会社概要


1910年に創業者が個人経営で船舶用焼玉機関の修理を開始し、1934年に株式会社として設立されました。1960年には三菱重工業と技術提携を行い、1961年に東証市場第二部へ上場しました。その後も拠点の拡大や新工場の建設を進め、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は277名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は同社の共栄会組織であるアカサカ共栄会で、第2位は外国法人の常任代理人である銀行です。第3位にも関連団体である東京アカサカ共栄会が名を連ねており、安定株主が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
アカサカ共栄会 8.89%
DNB BANK ASA CLIENT ACCOUNT 7.12%
東京アカサカ共栄会 5.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は阪口勝彦氏が務めています。なお、取締役8名のうち社外取締役は2名で、比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
阪 口 勝 彦 代表取締役社長 三菱重工業を経て2014年に同社へ移籍。製品本部副本部長、製品本部長、技術本部長、技術製造本部長などを歴任し、2023年4月より現職。
塚 本 義 之 代表取締役専務執行役員管理本部長 静岡銀行を経て2014年に同社へ出向。総務本部長付部長、執行役員総務本部副本部長、総務本部長などを歴任し、2023年7月より現職。
渡 瀬   守 常務取締役執行役員品質保証本部長 1985年同社入社。技術グループ部長、製品本部副本部長、製造本部長などを経て、2023年4月より現職。
斉 藤 隆 夫 取締役執行役員営業本部長 1984年同社入社。営業部部長、執行役員営業本部副本部長を経て、2022年6月より現職。
黒 田 透 取締役執行役員技術本部長 2009年同社入社。執行役員技術副本部長、技術本部長を経て、2024年6月より現職。
赤 阪 治 恒 取締役 2001年同社入社。営業部長、常務取締役を経て2016年に代表取締役社長に就任。2019年7月より現職。駿南鐵工取締役も務める。


社外取締役は、西村やす子(司法書士法人つかさ代表)、野末寿一(弁護士・静岡のぞみ法律特許事務所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「内燃機関関連事業」の単一セグメントで事業を展開しており、舶用ディーゼル機関やその部分品、産業機械等の製造販売を行っています。

内燃機関関連事業


同社は主に内航海運向けの船舶用ディーゼルエンジン(主機関)の製造・販売を行っています。また、エンジンのメンテナンスに必要な交換部品の供給や修理工事、さらには産業・土木機械の製造販売も手掛けています。主要な顧客は国内の造船所や海運会社であり、長年の実績に基づく信頼関係を築いています。

収益は、造船会社や船主などの顧客から受け取る製品の販売代金や修理・工事代金によって構成されています。製品販売においては、出荷時または船積時に収益を認識します。事業の運営は主に赤阪鐵工所が行っており、国内外の顧客に対して製品とサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は60億円台から80億円弱の間で推移しており、増減を繰り返しています。利益面では、2021年3月期に赤字を計上しましたが、その後は黒字を維持しています。直近の2025年3月期は、経常利益率が0.7%と低水準ながらも黒字を確保しており、安定的な収益確保が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 80億円 64億円 66億円 79億円 78億円
経常利益 -1.5億円 2.0億円 3.2億円 0.3億円 0.6億円
利益率(%) -1.8% 3.1% 4.8% 0.4% 0.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.3億円 1.7億円 2.5億円 0.4億円 0.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上原価率が約80%〜82%と高い水準で推移しており、製造コストの管理が重要であることがわかります。2025年3月期は売上高が微減となりましたが、売上総利益が増加し、営業利益は黒字転換しました。営業外収益として受取配当金などが計上され、経常利益は営業利益を上回る水準となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 79億円 78億円
売上総利益 14億円 15億円
売上総利益率(%) 17.6% 19.4%
営業利益 -0.1億円 0.2億円
営業利益率(%) -0.2% 0.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4.2億円(構成比28%)、発送費が1.6億円(同11%)を占めています。また、売上原価のうち材料費が37億円(構成比55%)と過半を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品・サービス別の売上状況を見ると、主力の「舶用内燃機関」が減少した一方、「部分品及び修理工事」が増加しています。「その他」には不動産賃貸収入などが含まれますが、前期比で減少しています。全体として、新造船向けエンジンの減少をアフターサービス事業が補う構造となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
舶用内燃機関 19億円 18億円
部分品及び修理工事 41億円 45億円
その他 18億円 14億円
連結(合計) 79億円 78億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF・投資CF・財務CFの構成は「勝負型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.8億円 -5.3億円
投資CF -7.4億円 -3.1億円
財務CF -1.5億円 0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.4%で市場平均(スタンダード7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.8%で市場平均(スタンダード製造業57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として「顧客第一主義」を掲げ、高度な品質管理とスピーディなサービスをモットーに、信頼される製品づくりを通じて社会貢献を果たすことを目指しています。原点に立ち戻り、顧客からの信頼を第一に考えた業務遂行に努めています。

(2) 企業文化


社是として「誠意・親切・感謝・和合・努力」を掲げています。また、創業者遺訓である「決して、船主や乗組員に迷惑をかけるような機械を造ってはならない」という精神を受け継ぎ、「人と地球環境に優しいエンジンシステムの提供」「社員の笑顔を育む次の100年」といった経営ビジョンのもと、未来創造に挑む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は株主重視の考え方から、ROE(株主資本利益率)3.0%以上を経営指標としています。次期(2026年3月期)の経営計画として、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:81億円
* 営業利益:0.1億円
* 経常利益:1億円
* 当期純利益:0.7億円

(4) 成長戦略


同社は、海運業界における脱炭素化や自動運航といった環境変化に対応するため、次世代燃料エンジンや低燃費型新機関の開発、自動運航船の実用化に向けたシステム開発を加速させています。また、主機関の国内シェア奪還と販売領域の拡大、海外販路の開拓にも注力し、部分品・修理工事の売上拡大を図ることで、資機材高騰の影響を補い収益性の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の安定的な確保のため、リファラル採用などの新手法導入や、外国籍社員・障がい者の雇用促進を進めています。人材育成においては、階層別教育に加え、各職場での教育訓練(部門PU塾)を通じて技術継承を図っています。また、女性社員の雇用促進やキャリアアップ支援により、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 17.6年 5,096,650円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.8%
男女賃金差異(正規) 82.6%
男女賃金差異(非正規) 88.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(23.0%)、女性社員比率(12.9%)、有給休暇取得率(65.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の受注状況に関するリスク


同社の事業は造船会社への船舶受注に依存しており、世界的な経済動向による船舶受注量の変動が業績に影響を与える可能性があります。また、採算性の低い製品を想定以上に受注した場合、収益性が低下する恐れがあります。

(2) 原材料・資材等の調達リスク


製品製造に必要な原材料や部分品の一部は特定の取引先に依存しており、供給困難な状況や価格の急激な変動が発生した場合、製品の製造やコスト管理に影響を及ぼし、業績が悪化する可能性があります。

(3) 環境規制への対応リスク


IMO(国際海事機関)による環境規制やカーボンプライシングの導入が進む中、規制内容によって製品の販売活動が制限されたり、コスト増を販売価格に転嫁できない場合、業績に影響を与える可能性があります。脱炭素化に向けた製品開発が急務となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。