赤阪鐵工所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 赤阪鐵工所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

赤阪鐵工所は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、舶用内燃機関や関連部品の製造・販売を主力とするメーカーです。直近の業績では、舶用内燃機関などの売上増加により増収を達成したものの、原材料価格や各種経費の高騰を販売価格へ十分に転嫁できず、経常利益は減益、特別利益の計上により当期純利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社赤阪鐵工所の有価証券報告書(第128期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 赤阪鐵工所ってどんな会社?


同社は舶用内燃機関の製造販売を主力とし、長年にわたり造船業界を支える老舗エンジンメーカーです。

(1) 会社概要


1910年に船舶用焼玉機関の修理業として創業し、1934年に赤阪鐵工所を設立しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、その後スタンダード市場へ移行しています。近年は潤滑油清浄装置やバイオディーゼル燃料製造といった新規事業への展開も進めています。

従業員数は単体で283名です。筆頭株主は従業員持株会等の性質を持つと思われるアカサカ共栄会で、第2位は外国法人のDNB BANK ASA CLIENT ACCOUNT、第3位も東京アカサカ共栄会となっています。

氏名 持株比率
アカサカ共栄会 9.06%
DNB BANK ASA CLIENT ACCOUNT(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 7.12%
東京アカサカ共栄会 5.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は阪口勝彦氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
阪口勝彦 代表取締役社長 1985年三菱重工業入社。2014年赤阪鐵工所に移籍し営業本部長付部長。執行役員製品本部長等を経て2023年4月より現職。
塚本義之 代表取締役専務執行役員管理本部長 1983年静岡銀行入行。2014年赤阪鐵工所に出向し総務本部長付部長。執行役員総務本部長等を経て2023年7月より現職。
渡瀬守 常務取締役執行役員品質保証本部長 1985年赤阪鐵工所入社。2012年技術グループ部長。執行役員製品本部副本部長、製造本部長等を経て2023年4月より現職。
斉藤隆夫 取締役執行役員営業本部長 1984年赤阪鐵工所入社。2016年営業部部長。2018年執行役員営業本部副本部長を経て2022年6月より現職。
黒田透 取締役執行役員技術本部長 2009年赤阪鐵工所入社。2022年執行役員技術副本部長。2023年執行役員技術本部長を経て2024年6月より現職。
赤阪治恒 取締役 2001年赤阪鐵工所入社。取締役営業部長等を経て2016年代表取締役社長。2019年7月より現職。駿南鐵工取締役を兼務。


社外取締役は、西村やす子氏(司法書士法人つかさ設立代表)、野末寿一氏(静岡のぞみ法律特許事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「内燃機関関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 舶用内燃機関

造船会社等の顧客向けに、船舶用ディーゼルエンジンなどの舶用内燃機関の設計、製造、販売を行っています。主に客貨船や漁船の主機関として搭載され、環境規制に対応した次世代燃料エンジンや低燃費型機関の開発にも取り組んでいます。

主に造船会社から舶用内燃機関を受注し、製品の納入時に得られる製品販売代金が主な収益源となります。事業の運営および製造・販売の主体は赤阪鐵工所が担っています。

(2) 部分品及び修理工事・その他関連事業

納入済みの舶用内燃機関に関する交換部品等の部分品の製造・販売や、修理・メンテナンス工事を提供しています。また、他社製品の鋳物部品の製作・機械加工、潤滑油清浄装置やバイオディーゼル燃料関連のプラント事業も手掛けています。

海運会社や造船会社等から、部品の販売代金やメンテナンス工事の役務提供に対する対価を受け取ります。また、他社からの委託加工代金も収益に含まれます。これらの事業運営もすべて赤阪鐵工所が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は60億円台から80億円台へと増加傾向にあり、事業規模の拡大が見られます。一方で経常利益は2023年3月期をピークに減少しており、利益率も直近では0.1%まで低下しています。当期純利益については特別利益の計上などにより変動しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 64.0億円 65.9億円 79.3億円 78.5億円 83.3億円
経常利益 2.0億円 3.2億円 0.3億円 0.6億円 0.1億円
利益率(%) 3.1% 4.8% 0.4% 0.7% 0.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 2.5億円 0.4億円 0.4億円 1.9億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、原材料価格や購入品価格の上昇、各種経費の値上がりを販売価格へ十分に転嫁できなかった影響が大きく、売上総利益および営業利益は前年を下回りました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 78.5億円 83.3億円
売上総利益 15.2億円 13.3億円
売上総利益率(%) 19.4% 15.9%
営業利益 0.2億円 -1.9億円
営業利益率(%) 0.2% -2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4億円(構成比28%)、発送費が2億円(同11%)を占めています。売上原価については、材料費が48億円(構成比58%)、経費が21億円(同26%)、労務費が13億円(同16%)となっています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5.3億円 3.1億円
投資CF -3.1億円 -1.4億円
財務CF 0.4億円 1.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念「顧客第一主義」を掲げ、高度な品質管理とスピーディなサービスをモットーに信頼される製品づくりにより社会貢献を果たすことを使命としています。また、経営ビジョンとして「人と地球環境に優しいエンジンシステムの提供」「事業の多柱化による成長分野での躍進」「社員の笑顔を育む次の100年」を掲げています。

(2) 企業文化


社是として「誠意・親切・感謝・和合・努力」を重んじています。また、創業者遺訓である「決して、船主や乗組員に迷惑をかけるような機械を造ってはならない」という精神を受け継ぎ、キーワード「挑みやり切り未来を創造」を常に念頭に置いて、原点に立ち戻りながら業務を遂行する行動様式を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


株主重視の考え方に基づき、収益性の向上と安定的な利益確保を目指しています。具体的な経営指標としては、以下の数値を目標として掲げています。

* ROE(株主資本利益率)3.0%以上
* 来期売上高 90億円
* 来期営業利益 0.2億円
* 来期経常利益 1.4億円
* 来期当期純利益 0.9億円

(4) 成長戦略と重点施策


環境規制の強化や脱炭素社会への移行などに対応するため、主機関分野における競争力強化と販売領域の拡大を進めます。また、次世代燃料エンジンや省力化システムの開発を推進し、環境負荷低減を図ります。さらに、各種プラント事業等の新規事業育成による収益基盤の安定化も重要な戦略として位置付けています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な個性を活かし、さまざまな事業環境の変化に対応できる人材の育成を目指しています。採用ではリファラル採用などの新手法を導入し、外国籍社員や障がい者の雇用機会も提供しています。また、階層別教育や部門内での技術伝承を通じて人材育成を図り、残業時間削減や有給休暇取得推進など労働環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.2歳 18.0年 5,243,709円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 77.2%
男女賃金差異(正規雇用) 82.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.8%


※男性育児休業取得率は、当事業年度において育児休業の対象となる従業員がいなかったため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(8.3%)、女性社員比率(13.6%)、年次有給休暇取得率(68.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の受注状況の変動

同社は舶用内燃機関を中心とした事業を展開しており、造船会社の船舶受注動向に大きく依存しています。世界的な経済動向によって船舶の受注量が大幅に変動した場合や、採算性の低い製品を想定以上に受注した場合には、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料・資材等の調達価格高騰

製品製造に使用する原材料や部品の一部について、特定の取引先に依存しています。コントロールできない要因で供給が困難になる場合や、価格急変によるコスト増を販売価格に適切に転嫁できない場合には、同社の業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 気候変動に伴う環境規制の強化

船舶に関する環境規制は国際海事機関(IMO)によって定められています。同社は規制に対応した製品開発を進めていますが、規制内容によって既存製品の販売が制限される場合や、炭素税等の導入によるコスト増を価格に反映できない場合、業績に影響する可能性があります。

(4) 人的資源の確保と技術伝承

事業運営には各種の資格や技能を有する人材の確保が不可欠です。近年の少子高齢化に伴う労働人口の減少や従業員の離職等により、想定する人員体制が維持できない場合や技術伝承が滞る場合には、同社の業績や事業継続に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。