#ダイハツインフィニアース転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、ダイハツインフィニアース株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイハツインフィニアースってどんな会社?
ダイハツ工業のグループ会社として、船舶用や陸用のディーゼル機関等を製造・販売する機械メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1966年、ダイハツ工業から大阪事業部が分離独立する形で設立されました。1977年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年の市場統合を経て、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。2025年5月には、商号を現在のダイハツインフィニアースへ変更しています。
同社の連結従業員数は1,377名(単体891名)です。筆頭株主は同社の親会社的存在である事業会社のダイハツ工業で、第2位は常任代理人を通じた外国法人、第3位は金融機関の三菱UFJ銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダイハツ工業 | 25.34% |
| PERSHING-DIV.OF DLJ SECS.CORP. | 15.52% |
| 三菱UFJ銀行 | 2.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は堀田佳伸氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀田 佳伸 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。守山工場長兼製造部長、取締役常務執行役員、代表取締役副社長などを経て2020年6月より現職。 |
| 森本 国浩 | 代表取締役副社長 | 1988年ダイハツ工業入社。同社執行役員、カスタマーサービス本部長、ダイハツインフィニアース監査役、取締役副社長を経て2024年6月より現職。 |
| 佐長 利記 | 取締役専務執行役員 | 1993年同社入社。営業統括本部長、取締役常務執行役員を経て2024年6月より現職。 |
| 水科 隆志 | 取締役常務執行役員 | 1994年同社入社。管理統括本部長を経て2019年6月より現職。 |
| 早田 陽一 | 取締役常務執行役員 | 1993年同社入社。技術統括本部副本部長、常務執行役員を経て2023年6月より現職。 |
| 浅田 英樹 | 取締役常務執行役員 | 1993年同社入社。生産購買統括本部長、常務執行役員を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、津田多聞(公認会計士事務所代表)、竹田千穂(弁護士)、佐藤宏明(元キヤノン常勤監査役)、酒井田浩之(ストラテジー・アドバイザーズ副社長執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「内燃機関部門(舶用機関関連)」「内燃機関部門(陸用機関関連)」および「その他の部門」事業を展開しています。
■(1) 内燃機関部門(舶用機関関連)
当セグメントでは、主に船舶用ディーゼル機関やその部品の製造および販売を行っています。これらの製品は、大型商船の発電用補機関や内航船の電気推進船用主機関などとして利用されており、世界の海運物流を支える重要な役割を担っています。
収益は、船主や造船所などの顧客に対する製品の販売代金および納入後のメンテナンスサービス料から得ています。運営は、製造を同社やダイハツインフィニアース姫路などが担い、販売やアフターサービスを同社および国内外の連結子会社が行っています。
■(2) 内燃機関部門(陸用機関関連)
当セグメントでは、陸用ディーゼル機関やガスタービン、およびその部品の製造・販売を行っています。これらは、公共施設、病院、データセンターなどの非常用発電設備や、ポンプ駆動用エンジンとして、社会インフラの安定稼働に貢献しています。
収益は、製品の納入および設置工事、メンテナンス契約に基づく対価として顧客から受領しています。運営は、製造を同社などが担い、販売やインフラ整備を含むソリューション提供を同社およびダイハツインフィニアース東日本などの販売会社が行っています。
■(3) その他の部門
当セグメントには、産業機器関連(アルミホイール販売)、不動産賃貸関連(貸事務所業)、売電関連(太陽光発電)、精密部品関連事業が含まれます。大阪・梅田の「梅田スカイビル」などにおける不動産事業もここに含まれます。
収益は、アルミホイールの販売益、テナントからの賃料収入、売電収入、精密部品の販売代金などから構成されています。運営は、同社、ダイハツインフィニアース梅田シティ、日本ノッズル精機などがそれぞれの事業を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、堅調な成長を続けています。利益面においても、経常利益および当期純利益ともに増加傾向にあり、特に直近の第65期では大幅な増益を達成しました。利益率も年々改善しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 567億円 | 576億円 | 721億円 | 818億円 | 888億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 25億円 | 37億円 | 55億円 | 76億円 |
| 利益率(%) | 2.0% | 4.4% | 5.1% | 6.8% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 20億円 | 30億円 | 51億円 | 57億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、利益率も改善しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、売上高の伸びがそれを上回っており、結果として営業利益および営業利益率は大きく向上しています。収益構造の強化が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 818億円 | 888億円 |
| 売上総利益 | 170億円 | 209億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.8% | 23.5% |
| 営業利益 | 52億円 | 76億円 |
| 営業利益率(%) | 6.4% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・賃金・賞与が43億円(構成比33%)、荷造運送費が12億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
舶用機関関連事業は、機関売上およびメンテナンス関連売上の増加により増収となり、利益も大幅に増加しました。陸用機関関連事業は、機関売上は増加しましたが一部物件の採算性悪化等により増収減益となりました。その他の部門は、アルミホイール等の販売増により増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 舶用機関関連 | 683億円 | 730億円 | 62億円 | 92億円 | 12.6% |
| 陸用機関関連 | 100億円 | 115億円 | 18億円 | 17億円 | 14.8% |
| その他 | 35億円 | 43億円 | 4億円 | 5億円 | 11.1% |
| 調整額 | - | - | -32億円 | -38億円 | - |
| 連結(合計) | 818億円 | 888億円 | 52億円 | 76億円 | 8.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCFパターンは「健全型」です。本業で得た現金を、将来のための投資や株主還元、借入返済に充当しており、財務基盤は安定的です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 47億円 | 94億円 |
| 投資CF | 5億円 | -65億円 |
| 財務CF | -21億円 | -108億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「たくましい創造性とすぐれた技術を磨きあげ、社会を豊かにする価値を提供し、人々との共生を願い、限りなく前進する」ことを企業理念として掲げています。この理念のもと、グループ各社が一体となり、顧客や株主などのステークホルダーにとって大きな存在価値を認められる企業グループとして発展を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、①顧客に満足される新商品・サービスの提供、②地球環境と調和したグローバルな事業展開、③変化に迅速に対応し適正利益を確保できる強靱で柔軟な企業体質と活力ある明るい企業風土の確立、を経営方針としています。これらを実践し、社会インフラを支える使命感を持って事業活動を展開しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期ビジョン『POWER! FOR ALL beyond 2030』を掲げ、2031年3月期に向けた財務目標を設定しています。収益性と資本効率を重視し、売上高営業利益率とROEを経営数値目標としています。
* 売上高1,200億円
* 営業利益90億円
* ROE9.5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、カーボンニュートラルへの対応、収益体質の強化、マネジメント改革を最優先課題としています。造船・海運業界の脱炭素化に貢献するため、メタノールやアンモニア等の次世代燃料対応エンジンの開発に注力し、姫路工場の拡張投資を実施しています。また、メンテナンス分野ではAIやIoTを活用してサービタイゼーション事業を強化します。
* 2028年3月期までに営業利益74億円、ROE8.5%以上の達成
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境づくりを重視し、女性や外国人の採用・登用を積極的に進めています。また、次世代リーダー育成やグローバル人材育成を重要視し、評価制度の見直しや教育体系の再構築を行っています。社員の自律的な行動を促す組織文化の醸成や、健康経営の推進による働きやすい環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.5歳 | 15.7年 | 6,000,000円 |
※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 16.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 80.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 66.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) カーボンニュートラルに向けた開発リスク
海運業界での脱炭素化に伴い、次世代燃料(メタノール、アンモニア等)への対応が急務となっています。技術開発には多額の投資が必要ですが、どの燃料が主流になるかは不透明であり、開発の遅延や失敗、市場動向の読み違いが生じた場合、競争力の低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。
■(2) 中国市場リスク
中国の造船所が世界シェアを拡大する中、同社は中国市場での機関納入を伸ばしています。しかし、市況の急変による需要減退や、長年提携関係にある中国ライセンシーの生産量が想定外に急減した場合、同社の成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 調達リスク
製品の開発・生産は外部からの部材やサービス供給に依存しています。自然災害、事故、仕入先の経営悪化などの要因で供給の遅滞や停止、コスト上昇が発生した場合、生産活動に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は調達先の複数確保や内製化の検討等で対策を講じています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。