ダイハツインフィニアース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイハツインフィニアース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイハツインフィニアースは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、船舶用や陸上用ディーゼル機関の開発・製造・販売をグローバルに展開するメーカーです。直近の業績は、中小型機関の構成比率上昇等で前年比微減収となったものの、物件の収益性改善等が寄与し経常利益は増益を確保する堅調な推移を見せています。


※本記事は、ダイハツインフィニアース株式会社の有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイハツインフィニアースってどんな会社?


船舶用および陸上用ディーゼル機関の開発・製造・販売を主力事業とし、グローバルに展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1966年にダイハツ工業の大阪事業部を分離しダイハツディーゼルとして設立されました。1977年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。2025年5月に現在のダイハツインフィニアースへと社名を変更し、新たなスタートを切りました。

同社グループの従業員数は連結で1,476名、単体で940名です。筆頭株主は造船業を営む事業会社の今治造船で、第2位は金融機関のPERSHING-DIV. OF DLJ SECS. CORP.(常任代理人 シティバンクエヌ・エイ東京支店)となっています。

氏名 持株比率
今治造船 19.66%
PERSHING-DIV. OF DLJ SECS. CORP.(常任代理人 シティバンクエヌ・エイ東京支店) 10.50%
三菱UFJ銀行 2.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は堀田佳伸氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
堀田佳伸 代表取締役社長 1988年同社入社。守山工場長兼製造部長、取締役常務執行役員、代表取締役副社長を経て、2020年6月より現職。
森本国浩 代表取締役副社長 1988年ダイハツ工業入社。同社海外事業本部長等を経て、2021年同社監査役。2023年取締役副社長となり、2024年6月より現職。
佐長利記 取締役専務執行役員 1993年同社入社。営業統括本部長、取締役常務執行役員を経て、2024年6月より現職。
浅田英樹 取締役専務執行役員 1993年同社入社。生産購買統括本部長、取締役常務執行役員を経て、2026年4月より現職。
水科隆志 取締役常務執行役員 1994年同社入社。管理統括本部長を経て、2019年6月より現職。ダイハツインフィニアース梅田シティ代表取締役社長を兼務。
早田陽一 取締役常務執行役員 1993年同社入社。技術統括本部副本部長を経て、2023年6月より現職。ダイハツインフィニアース姫路代表取締役社長等を兼務。


社外取締役は、竹田千穂(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)、佐藤宏明(元キヤノン常勤監査役)、酒井田浩之(ストラテジー・アドバイザーズ副社長執行役員)、菅野秀夫(元南海化学代表取締役社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「舶用機関関連」「陸用機関関連」および「その他」事業を展開しています。

(1) 舶用機関関連


船舶用ディーゼル機関やデュアルフューエル機関、および関連部品の開発・製造を展開しています。国内外の造船所や海運会社を主な顧客とし、コンテナ船やタンカーなどの大型船から中小型船まで、幅広い船舶の主機関や発電用補機関として製品を提供しています。

収益は、造船所への新造船向け機関の販売代金や、就航後の船舶に対する保守点検・交換部品の提供によるメンテナンス費用から得ています。製品の製造は同社およびダイハツインフィニアース姫路が担い、販売やアフターサービスは同社および国内外の販売子会社が連携して行っています。

(2) 陸用機関関連


常用・非常用の電力確保に用いられる陸上用ディーゼル機関やガスタービン機関、および関連部品の提供を行っています。オフィスビル、病院、データセンター、工場などの施設を運営する企業や事業者を顧客とし、人々の安心・安全な暮らしを支えるインフラ設備を供給しています。

収益は、施設等への機関・発電設備の販売代金や、設置後の定期的なメンテナンス・部品交換によるサービス収入から構成されています。事業の運営は、舶用機関と同様に同社およびダイハツインフィニアース姫路が製造を担当し、同社を中心とする販売網を通じて展開しています。

(3) その他事業


産業機器関連(アルミホイールの販売)、不動産賃貸関連(貸事務所業)、売電関連(太陽光発電事業)、および精密部品関連などの事業を展開しています。機関製造で培った技術の応用や、自社保有資産の有効活用を通じて、主力事業以外の領域でも安定的な収益確保を目指しています。

収益は、アルミホイールや精密部品の販売代金、オフィスビルの賃貸収入、太陽光発電による売電収入などから得ています。運営は、同社がアルミホイール販売や売電事業を手がけるほか、ダイハツインフィニアース梅田シティが不動産賃貸を、日本ノッズル精機が精密部品の製造販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、順調な拡大基調で推移しています。環境対応型新造船の需要増などを背景に機関の販売が好調に推移し、売上高は継続的な成長を遂げています。それに伴い経常利益も拡大しており、利益率も着実に向上するなど、堅調な業績拡大を実現しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 576億円 721億円 818億円 888億円 881億円
経常利益 25億円 37億円 55億円 76億円 80億円
利益率(%) 4.4% 5.1% 6.8% 8.6% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 28億円 43億円 47億円 56億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、売上原価の減少により売上総利益は増加しています。販売費及び一般管理費は増加しましたが、総じて安定した収益性を維持しており、営業利益率は前期と同水準を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 888億円 881億円
売上総利益 209億円 213億円
売上総利益率(%) 23.5% 24.2%
営業利益 76億円 76億円
営業利益率(%) 8.6% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料・賃金・賞与が45億円(構成比33%)、荷造運送費が12億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である舶用機関関連は、中小型機関の構成比率上昇等で売上高が微減となったものの、メンテナンス関連売上の増加等により増益となりました。陸用機関関連は、売上高が横ばいで推移しつつも物件の収益性が改善したことにより増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
舶用機関関連 730億円 718億円 92億円 97億円 13.5%
陸用機関関連 115億円 115億円 17億円 18億円 15.3%
その他 43億円 47億円 5億円 4億円 8.8%
調整額 -億円 -億円 -38億円 -42億円 -%
連結(合計) 888億円 881億円 76億円 76億円 8.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得たキャッシュを上回る規模の投資を行い、不足分を借入等で調達している「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 94億円 91億円
投資CF -65億円 -135億円
財務CF -108億円 35億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「たくましい創造性とすぐれた技術を磨きあげ、社会を豊かにする価値を提供し、人々との共生を願い、限りなく前進する」ことを企業理念に掲げています。社会インフラの一端を担うという使命感を持ち、技術を通じて地球環境との調和を図りながら、サステナブルな社会の実現に貢献する「パワーソリューションカンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


「TECHNOLOGY FOR THE EARTH -技術は地球を守るために-」をコーポレートステートメントとして掲げ、環境保全と技術革新の両立を重視しています。安全・品質の徹底を最優先としつつ、多様な人材を受け入れ個々の能力を最大限に発揮できるダイバーシティ&インクルージョンや、デジタル技術を駆使して自律的に業務改善へ挑戦する風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


収益性と資本効率を重視する観点から、売上高営業利益率と自己資本利益率(ROE)を経営数値目標として設定しています。現状の課題を踏まえ、中長期ビジョン「POWER! FOR ALL beyond 2030」のもと、以下の具体的な数値目標の達成を目指して企業経営に取り組んでいます。

・営業利益90億円
・営業利益120億円

(4) 成長戦略と重点施策


「安全・品質・生産性の向上による事業基盤の強化」「成長領域への対応と収益体質の改善」「DX・人材・ガバナンスを通じた経営基盤の強化」の3つを重点課題としています。カーボンニュートラル社会に向けた次世代燃料(メタノールやアンモニア等)対応機関の開発や、AI・IoTを活用した包括メンテナンス等のサービタイゼーション事業を推進し、持続的な企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社会インフラの一端を担う」使命と経営戦略を支えるため、人的資本への投資強化を重視しています。人事情報基盤を活用して求める人材の選抜・育成を進めるほか、社員のリスキリングやデジタル技術に精通した人材育成を推進します。また、目標連動型の人事制度改定や多様な働き方の整備を通じて、自律的成長とやりがいを促進する環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.3歳 13.6年 7,000,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 51.3%
男女賃金差異(全労働者) 80.7%
男女賃金差異(正規雇用) 80.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 88.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) カーボンニュートラルに向けた開発リスク
海運業界における温室効果ガス排出ゼロ目標の前倒しに伴い、次世代燃料(メタノール、アンモニア等)対応機関の開発が求められています。動向を見ながら研究開発を進めていますが、実用化の遅延や技術開発の方向性の相違が生じた場合、製品の競争力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 中国市場リスク
中国の造船所が世界シェアを急拡大させており、同社機関の納入も増加しています。同社は中国ライセンシーと技術提携し拡販を進めていますが、市況の急激な変化や想定外の事情により中国市場が縮小し、ライセンシーのエンジン生産量が急減した場合、同社の成長戦略に齟齬が生じる可能性があります。

(3) 調達リスク
製品の開発・生産は仕入先からの部材供給に依存しています。自然災害や事故、仕入先の経営悪化・廃業などにより、供給の遅滞・停止やコスト上昇が発生した場合、生産活動に支障をきたす恐れがあります。複数購買や在庫確保、内製化の検討等を進め、調達の安定化に努めています。

(4) 情報セキュリティー面のリスク
事業活動において顧客や取引先の機密情報・個人情報を保有しています。サイバー攻撃や不正アクセス、過失等により情報の流出や改竄が発生し、システムの停止などに陥った場合、インシデント対応費用の発生や社会的信用の毀損を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。