※本記事は、芝浦機械株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 芝浦機械ってどんな会社?
射出成形機や工作機械などの各種産業機械をグローバルに製造・販売する総合機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1938年に芝浦工作機械として創立し、1949年に株式を上場しました。1961年に東芝機械へと社名変更しましたが、2017年に東芝グループから離脱し、2020年に現在の芝浦機械へと商号を変更しました。近年は欧州統括会社の設立や海外企業の買収を実施するなど、グローバル展開を積極的に推進しています。
従業員数は連結で3,175名、単体で1,536名となっています。大株主の状況としては、第1位の日本マスタートラスト信託銀行をはじめ、第3位までを信託銀行や証券会社などの金融機関が占めており、安定した機関投資家を中心とした株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.58% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.94% |
| 野村證券 | 4.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は坂元繁友氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は58.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂元繁友 | 代表取締役社長社長執行役員最高経営責任者最高執行責任者 | 1983年入社。企画部長、取締役、東京本店長、グローバル戦略室長などを経て、2016年代表取締役専務執行役員に就任。2020年2月より現職。 |
| 大田浩昭 | 代表取締役専務執行役員最高財務責任者 | 三井銀行、大和証券SMBC、フーリハン・ローキー等で要職を歴任後、2020年6月取締役就任。2024年6月より現職。 |
| 小池純 | 取締役専務執行役員 | 1985年入社。射出成形機事業部長、執行役員、取締役常務執行役員などを歴任。2020年成形機カンパニー長となり、2024年6月より現職。 |
| 甲斐義章 | 取締役常務執行役員 | 1997年入社。経営企画部長、経営戦略室長などを経て2020年執行役員経営企画本部長に就任。2022年経営管理本部長を歴任し、2024年6月より現職。 |
| 髙橋宏 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年入社。経理部長、執行役員企画本部副本部長、経営企画本部長などを歴任。2018年常勤監査役に就任し、2019年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤潔(元東京エレクトロン社長)、岩崎清悟(元静岡ガス会長)、寺脇一峰(弁護士)、早川知佐(元カルビー執行役員CFO)、板垣絵里(公認会計士・税理士)、今村昭文(弁護士)、荻茂生(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「成形機事業」「工作機械事業」「制御機械事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 成形機事業
射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機などを製造・販売し、自動車や容器・医療などの幅広い業界の顧客に提供しています。
製品の販売や保守サービスから収益を得ています。主な運営主体は芝浦機械のほか、芝浦機械エンジニアリングやSHIBAURA MACHINE INDIA PRIVATE LIMITEDなど国内外の多数の子会社が担当しています。
■(2) 工作機械事業
大型機、門形機、横中ぐり盤などの工作機械や超精密加工機を製造・販売し、航空・宇宙、エネルギー、光通信分野などの顧客に提供しています。
製品の販売およびメンテナンスサービスにより収益を得ています。運営は芝浦機械のほか、芝浦機械エンジニアリングや米国、アジアなどの海外子会社が展開しています。
■(3) 制御機械事業
産業用ロボット、サーボモータ、CNC装置などの電子制御装置を製造・販売し、生産現場における自動化・省人化を目指す顧客に提供しています。
電子制御装置等の販売とメンテナンスサービスによる収益が中心です。運営は芝浦機械に加え、東栄電機やテクノリンク、海外では中国やベトナムの子会社が担っています。
■(4) その他事業
福利厚生事業の運営、下水道関連ユーザー等への計測機器の販売、環境測定などを展開しています。
用度品の納入や計測機器の販売から収益を得ています。これらの事業は主に子会社である芝浦産業や芝浦セムテックが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、2025年3月期までは順調に売上規模を拡大していましたが、2026年3月期は自動車産業を中心とする設備投資の様子見などが影響し、減収に転じています。利益面でも、過去には経常利益が140億円規模に達していましたが、当期は販売減少やのれん減損等の影響で大幅な減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1078億円 | 1232億円 | 1607億円 | 1682億円 | 1328億円 |
| 経常利益 | 45億円 | 53億円 | 146億円 | 141億円 | 50億円 |
| 利益率(%) | 4.2% | 4.3% | 9.1% | 8.4% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 33億円 | 64億円 | 167億円 | 118億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
減収に伴い売上総利益も減少していますが、売上総利益率は31%台を維持しています。一方で、規模の縮小等により営業利益率は大きく低下しており、収益力の改善が今後の課題となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1682億円 | 1328億円 |
| 売上総利益 | 535億円 | 414億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.8% | 31.2% |
| 営業利益 | 141億円 | 44億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、当事業年度は給料手当が58億円、荷造運賃諸掛費が40億円を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上動向を見ると、主力である成形機事業と制御機械事業が市場環境の影響を受けて減収となりました。一方で、工作機械事業はAIの普及拡大に伴う需要増やエネルギー関連の好調により、売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 成形機 | 1371億円 | 989億円 |
| 工作機械 | 213億円 | 253億円 |
| 制御機械 | 81億円 | 65億円 |
| その他 | 17億円 | 22億円 |
| 連結(合計) | 1682億円 | 1328億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
資金の流出入を示すキャッシュ・フローの状況を見ると、営業CF、投資CF、財務CFのいずれもマイナスとなっており、資金繰りが厳しくなっている末期型のパターンに分類されます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 83億円 | -87億円 |
| 投資CF | 9億円 | -16億円 |
| 財務CF | -65億円 | -35億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「わたしたちは、世界中でお客様の価値最大化に貢献していきます。」という企業理念を掲げています。社会規範や企業倫理に従って行動するという観点から具体的な「行動基準」を定め、地球環境保全や社会貢献、人権尊重など企業の社会的責任を果たしつつ、顧客満足を基盤とした企業価値の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
法令を遵守し、社会規範・企業倫理に従って行動するコンプライアンス意識を重視する文化があります。グループ共通の尺度として具体的な「行動基準」を周知徹底し、すべてのステークホルダーの期待に応える誠実な事業運営を根付かせています。また、卓越した技術力で社会課題の解決を目指す姿勢も同社の特徴です。
■(3) 経営計画・目標
2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「中計2026」において、攻めと守りのメリハリを効かせた高収益企業へのステップアップを図っています。長期的には2030年度に「売上高3,000億円企業」を見据えつつ、足元では以下の数値目標を掲げています。
- 定常的に売上高2,000億円を出せる企業
■(4) 成長戦略と重点施策
今後のメガトレンドに技術力で応えるため、エネルギー関連と生産性の向上を軸に事業ポートフォリオを再編する戦略を掲げています。射出成形機ではインド等の成長市場での増産や欧州での販売拡大を進め、押出成形機では次世代電池向け技術の開発に注力するなど、各事業で以下の重点施策に取り組んでいます。
- インド市場での増産とテクニカルセンターの開設
- ドイツ企業の買収による欧州市場への再進出
- 次世代電池市場やギガキャスト等の新領域への参入
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「長期ビジョン2030」を見据え、変わりゆく外部環境に対応するため、新規分野(IT・エネルギー等)の知見を有する人材の増強に取り組んでいます。人材を「企業価値の源泉」と捉え、事業戦略と連動した人材ポートフォリオの構築、タレントマネジメントの深化、キャリア自律による変革を成し遂げる人材の育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.8歳 | 19.6年 | 7,061,483円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 89.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 58.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100.0%)、育児休業復職率(100.0%)、有給休暇取得率(77.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合等の影響
同社グループは射出成形機や工作機械などの生産財を製造・販売していますが、同業他社との間に品質や価格、サービス面での競合が生じています。今後、市場の需要低下や過剰供給などにより販売競争がさらに激化した場合、利益率の低下など同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外依存とサプライチェーンのリスク
同社グループの海外売上高比率は高く、各地域の政治経済情勢や為替レートの変動、海上運賃の上昇といった外部要因が業績に影響するリスクがあります。さらに、半導体や部材の調達において国際的な需給バランスの崩れから納入遅延や価格高騰が発生した場合、長納期の製品特性上、見積原価の悪化を招く懸念があります。
■(3) 情報セキュリティに関するリスク
事業活動において個人情報や重要な営業機密情報を保有しているため、サイバー攻撃等による不正アクセス、データの改ざん、情報漏洩や紛失を防ぐ適切な管理体制を講じています。しかし、万が一不測の事態により重大な情報漏洩などが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償を通じて業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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