芝浦機械 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

芝浦機械 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する産業機械メーカーです。射出成形機やダイカストマシン、工作機械、産業用ロボットなどを製造・販売しています。2025年3月期の連結業績は、売上高1,682億円(増収)、営業利益141億円(増益)、経常利益141億円(減益)、純利益118億円(減益)でした。


※本記事は、芝浦機械株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 芝浦機械ってどんな会社?


射出成形機やダイカストマシンなどの産業機械を主力とする機械メーカーです。旧東芝機械から独立し、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1938年に芝浦工作機械として創立し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1961年に東芝機械へ社名を変更しましたが、2017年に東芝グループから離脱しました。2020年4月には商号を現在の芝浦機械へ変更し、独立した企業としてのブランド確立を進めています。近年はインドやタイなど海外拠点の強化を図っています。

同社の連結従業員数は2,982名、単体では1,560名です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(16.14%)で、第2位は日本カストディ銀行(3.86%)、第3位は野村證券(2.97%)となっており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.14%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.86%
野村證券株式会社自己振替口 2.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は坂元繁友氏が務めています。社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
坂元 繁友 代表取締役社長社長執行役員最高経営責任者最高執行責任者 1983年入社。経営企画本部長、工作機械ユニット長等を経て2020年社長就任。2021年より最高経営責任者。
大田 浩昭 代表取締役専務執行役員最高財務責任者 三井銀行(現三井住友銀行)、GCAサヴィアン(現フーリハン・ローキー)CFO等を経て2020年入社。2024年より現職。
小池 純 取締役専務執行役員 1985年入社。成形機カンパニー長、グローバル推進本部長等を経て2024年より現職。
甲斐 義章 取締役常務執行役員 1997年入社。経営企画本部経営戦略室長、経営企画本部長、経営管理本部長を経て2024年より現職。
髙橋 宏 取締役(常勤監査等委員) 1985年入社。経理部長、経営企画本部長等を経て2019年より現職。


社外取締役は、佐藤潔(元東京エレクトロン社長)、岩崎清悟(元静岡ガス会長)、寺脇一峰(元大阪高等検察庁検事長・弁護士)、早川知佐(カルビー執行役員)、板垣絵里(公認会計士・税理士)、今村昭文(弁護士)、荻茂生(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「成形機」「工作機械」「制御機械」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 成形機


射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機の製造・販売およびメンテナンスサービスを行っています。自動車部品や家電、容器などの生産に使用される産業機械です。主要な顧客は自動車業界やプラスチック加工業界など多岐にわたります。

製品の販売代金およびメンテナンス料が収益源です。運営は主に芝浦機械が行うほか、芝浦機械エンジニアリングが据付・修理・メンテナンスを担当しています。海外では、上海、タイ、インドの現地法人が製造・販売を行っており、グローバルな体制を構築しています。

(2) 工作機械


大型工作機械や精密加工機の製造・販売およびメンテナンスサービスを提供しています。金属加工に必要なマシニングセンタや中ぐり盤などを取り扱っており、エネルギー関連や産業機械向けの需要に対応しています。

製品の販売代金およびアフターサービス料が収益源です。運営は主に芝浦機械が行い、芝浦機械エンジニアリングがサービス業務を担っています。インドやタイ、アメリカなどの海外現地法人も販売・サービスを行っています。

(3) 制御機械


産業用ロボットや電子制御装置、サーボモータなどの製造・販売を行っています。工場の自動化(FA)や省力化に貢献する製品群です。また、システムエンジニアリング事業として合理化システムの提案も行っています。

製品およびシステムの販売代金が収益源です。運営は主に芝浦機械と東栄電機が行っています。テクノリンクは合理化・省力化システムの企画・設計・製造・販売を担当しており、グループ内で連携してソリューションを提供しています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、福利厚生事業や計測機器の販売などを行っています。下水道関連ユーザー向けの計測機器販売なども含まれます。

製品販売やサービス提供の対価が収益源です。運営は主に芝浦産業が福利厚生事業等を、芝浦セムテックが計測機器の販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は926億円から1,682億円へと大きく拡大し、増収傾向が続いています。利益面では、経常利益が9億円から140億円台へと大幅に増加しました。利益率は0.9%から8%台へと改善しており、収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 926億円 1,078億円 1,232億円 1,607億円 1,682億円
経常利益 9億円 45億円 53億円 146億円 141億円
利益率(%) 0.9% 4.2% 4.3% 9.1% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -37億円 33億円 64億円 167億円 118億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は1,607億円から1,682億円へ増加しました。売上総利益率は31.5%から31.8%へとほぼ横ばいで推移しています。営業利益は136億円から141億円へ増加しましたが、営業利益率は8.5%から8.4%とわずかに低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,607億円 1,682億円
売上総利益 506億円 535億円
売上総利益率(%) 31.5% 31.8%
営業利益 136億円 141億円
営業利益率(%) 8.5% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が144億円(構成比36%)、荷造運搬費が83億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


成形機事業は売上高が増加し、利益も拡大して全体の業績を牽引しました。一方、工作機械事業と制御機械事業は減収となり、利益も減少しました。特に工作機械事業の売上減少が目立ちますが、成形機事業の好調が全社の増収増益を支えています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
成形機 1,235億円 1,371億円 130億円 141億円 10.3%
工作機械 260億円 213億円 5億円 6億円 2.7%
制御機械 99億円 81億円 3億円 1億円 1.3%
その他 16億円 20億円 -2億円 -7億円 -35.8%
調整額 -23億円 -22億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 1,607億円 1,682億円 136億円 141億円 8.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益と資産売却等によって資金を獲得し、借入金の返済や株主還元を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 93億円 83億円
投資CF -38億円 9億円
財務CF -67億円 -65億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「わたしたちは、世界中でお客様の価値最大化に貢献していきます。」という企業理念を掲げています。この理念のもと、法令遵守や社会規範・企業倫理に従った事業活動を展開し、地球環境保全や社会貢献、人権尊重等の社会的責任を果たすとともに、顧客満足を基盤として企業価値の最大化を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念を実際に展開するにあたり、具体的な「行動基準」を定め、グループ共通の尺度として周知徹底を図っています。CS(顧客満足)を基盤とし、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など全てのステークホルダーの期待に応えることを重視する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「中計2026」を推進しており、攻めと守りの戦略により高収益企業へのステップアップを図っています。2030年度に「売上高3,000億円企業」となるためのマイルストーンとして、以下の目標を掲げています。

* 2027年3月期までに定常的に売上高2,000億円を出せる企業を目指す

(4) 成長戦略と重点施策


「中計2026」に基づき、事業ポートフォリオの組み替えやシステムエンジニアリング装置販売・直販へのシフト、ESG経営の推進などに取り組んでいます。成長著しいインド市場での工場増設や、北米での超精密加工機の拡販、自動車業界のギガキャスト対応など、成長分野への投資を強化しています。

* 成長著しいインド市場での生産能力増強(油圧式・電動式射出成形機)
* 射出成形機の中国事業におけるOEM生産移行と収益性改善
* 北米における超精密加工機のターゲットドメイン選定と営業体制強化
* 自動車業界のギガキャスト対応および超大型ダイカストマシンの受注拡大
* 次世代電池市場(ドライ電極など)への参入と技術開発

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「長期ビジョン2030」の実現に向け、変わりゆく外部環境に対応するため、特に新規分野(IT・エネルギーなど)の知見を有する人材の増強に取り組んでいます。ジョブ型雇用を基本としたキャリア採用を進めるとともに、「自ら考え自ら行動」し、キャリア自律によって変革と革新を成し遂げる人材の育成を基本方針としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 19.5年 7,185,817円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 72.7%
男女賃金差異(全労働者) 77.6%
男女賃金差異(正規雇用) 81.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業復職率(100.0%)、有給休暇取得率(77.1%)、高ストレス者の割合(11.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 期末経営成績の変動


同社グループが取り扱う商品は生産財であるという特性上、売上高や営業損益が期末に偏る傾向があります。そのため、検収の遅れなどにより売上高および利益の一部が翌期にずれ込んだ場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 競合等の影響


射出成形機や工作機械などの生産財を製造・販売しており、同業他社との間で品質、価格、サービス等における競争が生じています。今後、市場での需要低下や過剰供給などにより販売競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外依存リスク


海外売上高比率が77.1%と高いため、各地域の政治・経済情勢の変化、為替変動などが業績に影響を与える可能性があります。また、国際的な海上物流の需給バランスによる海上運賃の上昇や船舶確保の困難化なども、業績への影響要因となり得ます。

(4) 調達品の納入遅延・価格上昇


製品に使用される半導体や電気品、部材などの調達品において、国際的な需給バランスやエネルギー価格、為替の影響による納入遅延や価格上昇のリスクがあります。代替品の検討などでリスク軽減を図っていますが、見積原価の変動が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

芝浦機械の転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

芝浦機械の2026年3月期3Q決算は、中国でのEV用装置需要減により大幅減益。一方でドイツ企業買収やインド市場の急成長、工作機械の利益率改善など構造改革が加速しています。「中計2026」の目標未達に伴う緊急対応策など、変革期にある同社で転職希望者が担える新たな役割を整理します。


【面接対策】芝浦機械の中途採用面接では何を聞かれるのか

長きにわたり、世界における工作機械業界の一翼を担っている芝浦機械。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策をすすめましょう。