岡本工作機械製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡本工作機械製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の工作機械メーカーです。平面研削盤や半導体ウェーハ研磨装置などの製造・販売を主力事業としています。当期の業績は、半導体関連装置の売上が減少したことなどにより、前期比で減収減益となりました。


※本記事は、株式会社岡本工作機械製作所 の有価証券報告書(第126期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡本工作機械製作所ってどんな会社?


平面研削盤などの工作機械や半導体関連装置を手掛ける「総合砥粒加工機メーカー」です。

(1) 会社概要


1926年に創業し、1935年に法人化されました。1953年に平面研削盤の製作を開始し、1963年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。1972年には米国に現地法人を設立するなど海外展開を進め、2024年には三井物産と資本業務提携を行いました。

連結従業員数は2,259名、単体では484名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は総合商社の三井物産で、第2位は証券会社の立花証券、第3位は金融機関の日本証券金融となっています。

氏名 持株比率
三井物産 30.04%
立花証券 3.53%
日本証券金融 3.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は石井常路氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
石井 常路 代表取締役社長 1979年入社。タイ現地法人社長や製造部長を経て、2014年より現職。
渡邊 哲行 取締役 1985年入社。欧州現地法人社長や営業本部長を経て、2023年より常務執行役員として製造部門を管掌。
伊藤 暁 取締役 1981年入社。シンガポール支店長や技術開発本部長を経て、2023年より常務執行役員として技術開発および営業本部を管掌。
高橋 正弥 取締役 1982年入社。経営管理部長や財務部長を経て、2015年より常務執行役員として管理本部および子会社関係を管掌。
佐取 健 取締役 2007年三井物産入社。同社モビリティ第一本部室長などを経て、2024年より同社執行役員事業開発部長。


社外取締役は、山下健治(ヤマシタワークス代表取締役)、吉見威志(神戸学院大学名誉教授)、山本伊佐子(三井物産理事モビリティ第一本部事業部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「工作機械」および「半導体関連装置」事業を展開しています。

工作機械


平面研削盤、成形研削盤などの工作機械製品、精密歯車および鋳物の製造・販売を行っています。また、これらの製品に関するメンテナンスや修理等のサービスも提供しています。主な顧客は、自動車、電機、精密機械などの製造業です。

製品の販売やサービスの提供による対価を収益源としています。運営は、同社を中心に、岡本工機、技研、大和工機などの国内子会社および、米国、シンガポール、タイ、ドイツ、中国の海外現地法人が製造や販売を行っています。

半導体関連装置


半導体ウェーハの薄型化や平坦化を行うポリッシングマシン(研磨装置)、グラインディングマシン(研削装置)、スライシングマシンなどの製造・販売を行っています。半導体デバイスメーカーやシリコンウェーハメーカーなどが主な顧客です。

装置の販売やメンテナンスサービスによる対価を主な収益源としています。運営は、同社が主体となり、岡本工機、大和工機などの国内子会社や、シンガポール、米国の海外現地法人などが製造や販売を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績推移です。売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、当期は減少しました。利益面でも、経常利益は2024年3月期まで拡大していましたが、当期は減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 304億円 375億円 455億円 502億円 437億円
経常利益 19億円 42億円 56億円 63億円 29億円
利益率(%) 6.2% 11.2% 12.2% 12.5% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 21億円 24億円 36億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減収となりました。利益面では、売上総利益、営業利益ともに減少しています。売上総利益率は前期の30.9%から29.3%へ低下し、営業利益率は前期の12.2%から6.9%へと低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 502億円 437億円
売上総利益 155億円 128億円
売上総利益率(%) 30.9% 29.3%
営業利益 61億円 30億円
営業利益率(%) 12.2% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が32億円(構成比33%)、荷造発送費が11億円(同11%)を占めています。売上原価については、前期と比較して減少しています。

(3) セグメント収益


半導体関連装置事業は、パソコンやスマートフォン向けの設備投資需要低迷などにより、売上高、利益ともに大きく減少しました。工作機械事業は、国内需要の低迷や中国景気の減速などを受け、売上高は微減、利益は減少となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
工作機械 316億円 309億円 20億円 14億円 4.5%
半導体関連装置 186億円 129億円 54億円 30億円 23.3%
連結(合計) 502億円 437億円 61億円 30億円 6.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の収益性は確保されていますが、運転資本の変動や税金の支払い等により営業CFがマイナスとなりました。一方で、将来の成長に向けた投資を継続しつつ、株式発行による資金調達を行ったため財務CFは大幅なプラスとなっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 9億円 -21億円
投資CF -36億円 -51億円
財務CF 12億円 105億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来の社是「技術は正しく」をメーカーとしての精神的支柱としています。「常に最先端技術を追求し、お客様にご満足いただける精巧比なき、価値ある製品をつくり、社会に貢献する」ことを基本理念とし、人と自然環境の融合を視野に入れた製品づくりに取り組んでいます。

(2) 企業文化


工作機械と半導体関連装置の両分野における「総合砥粒加工機メーカー」として、技術開発力、生産力、営業力などの経営資源を駆使するだけでなく、発想力や企画力といった創造的な力を結集することを重視しています。同社ならではのグローバルな事業展開を推進する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた長期ビジョンとして、「世界に類のない「総合砥粒加工機メーカー」として、平面研削盤・半導体ウェーハ研磨装置でグローバルNo.1を目指す」を掲げています。中期経営計画では以下の数値を目標としています。

* 2028年3月期 連結売上高:700億円
* 連結営業利益率:16%
* ROE:17~18%
* 連結配当性向:45%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「景気に左右されることなく利益を上げ得る強固な経営体質」の確立を目指しています。三井物産との資本業務提携を活用し、両事業での成長加速や新たな収益の柱の構築を図ります。

* 超高精度研削盤の販売事例の世界展開
* 半導体関連装置における成長市場向け新製品の開発
* 外部支出費の削減や全社的な品質管理システムの確立
* 三井物産グループの事業基盤や知見を活用した企業価値向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「総合砥粒加工機メーカー」として成長を続けるため、人事制度の再構築、計画的な人材育成、採用力の強化を主要テーマとしています。特に、三井物産との資本業務提携を通じ、同社グループへの人材受け入れや派遣などの人材交流を行うことで、グローバルに活躍できる人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 16.1年 6,100,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 55.6%
男女賃金差異(全労働者) 64.6%
男女賃金差異(正規) 81.5%
男女賃金差異(非正規) 34.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市況変動による業績への影響


工作機械や半導体関連装置業界は景気変動の影響を受けやすく、設備投資や個人消費の低迷により受注が縮小する可能性があります。同社は「総合砥粒加工機メーカー」としてグローバルNo.1を目指す長期ビジョンや各種施策により、安定的な売上と粗利の確保に取り組んでいます。

(2) 有利子負債への依存


有利子負債残高の総資産に占める割合は17.7%となっており、市場金利の変動が業績に影響を与える可能性があります。営業キャッシュ・フローによる返済を第一としつつ、資金調達方法の多様化を図ることで、有利子負債残高の圧縮に努めています。

(3) 海外事業展開に伴うリスク


タイ、シンガポール、中国等の海外に生産・販売拠点を展開しており、為替変動、政情不安、法規制の変更などが業績に影響を及ぼす可能性があります。原材料調達や取引通貨、生産拠点の決定を慎重に行うとともに、各拠点と円滑な情報共有ができる人材の確保・育成を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。