岡本工作機械製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡本工作機械製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、工作機械および半導体関連装置の製造・販売を主力とするメーカーです。直近の業績は、売上高が前年比2.8%減の425億円、経常利益が同47.4%減の15億円と減収減益の傾向にありますが、半導体市場等の成長を見据えた設備投資や新製品開発を積極的に継続しています。


※本記事は、株式会社岡本工作機械製作所の有価証券報告書(第127期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡本工作機械製作所ってどんな会社?


工作機械や半導体関連装置を開発・製造する「総合砥粒加工機メーカー」としてグローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1935年に現在の岡本工作機械製作所へと組織および社名変更し、事業を本格化させました。1963年には東京証券取引所市場第二部に上場し、1972年の米国現地法人設立を皮切りにシンガポールやタイ、欧州などへグローバル展開を推進してきました。近年では2023年に大和工機を完全子会社化し、2024年には三井物産との間で資本業務提携を締結するなど、経営基盤の強化と事業拡大を続けています。

従業員数は連結で2,229名、単体で504名です。筆頭株主は資本業務提携先である総合商社の三井物産で、第2位および第3位は金融機関となっています。

氏名 持株比率
三井物産 30.04%
INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人 インタラクティブ・ブローカーズ証券) 3.82%
日本証券金融 1.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は石井常路氏が務めています。社外取締役の比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
石井 常路 代表取締役社長 1979年4月同社入社。タイやシンガポールの現地法人取締役社長を経て、2012年6月常務取締役製造部長。2014年4月より現職。
伊藤 暁 取締役 1981年4月同社入社。シンガポール支店長、海外営業部長、営業統括部長、技術開発本部長等を歴任し、2023年4月より現職。
高橋 正弥 取締役 1982年4月同社入社。経営管理部長、技研代表取締役社長、財務部長等を経て、2015年6月より現職。
渡邊 哲行 取締役 1985年4月同社入社。国内営業部長、欧州現地法人取締役社長、営業本部長等を経て、2023年4月より現職。
佐取 健 取締役 2007年10月三井物産入社。米国法人のモビリティビジネス関連や次世代ソリューション事業部室長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、山下健治(ヤマシタワークス代表取締役)、吉見威志(神戸学院大学経済学部名誉教授)、山本伊佐子(三井物産理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「工作機械事業」および「半導体関連装置事業」を展開しています。

(1) 工作機械


主に平面研削盤を中心とした各種工作機械、精密歯車および鋳物を生産・販売しています。データセンターや半導体関連分野を中心とした設備投資需要をはじめ、産業用ロボットや自動化設備向けなど国内外の幅広い製造業を顧客としています。

収益源は機械本体や精密歯車等の販売、およびメンテナンス・修理等のサービス提供です。運営は同社を中心に、国内子会社の岡本工機、技研、大和工機、および米国、欧州、タイ、シンガポール、中国に展開する各海外現地法人が担っています。

(2) 半導体関連装置


主に半導体製造装置(ポリッシングマシン、グラインディングマシン、スライシングマシン等)の製造・販売およびメンテナンス等のサービス提供を行っています。AIやデータセンター投資を背景とする世界的な半導体市場の成長に伴い、半導体メーカー等が主な顧客となります。

収益源は製造装置の販売およびアフターサービスによる手数料などです。製造は同社および国内子会社の岡本工機、大和工機が担い、販売については同社のほか、米国や欧州の現地法人が直接または代理店を通じてグローバルに展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は増加基調で推移していましたが、直近2期間は市況の変動や大型案件の一服などにより減収減益となっています。しかしながら、半導体市場などの成長を見据えた技術開発や拠点整備への投資を継続しており、中長期的な成長基盤の構築を図っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 375億円 455億円 502億円 437億円 425億円
経常利益 42億円 56億円 63億円 29億円 15億円
利益率(%) 11.2% 12.2% 12.5% 6.7% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 24億円 36億円 14億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、引き続き付加価値の高い製品の販売に取り組んでいます。徹底したコスト削減に努めていますが、売上減少の影響などにより売上総利益および営業利益ともに減少する結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 437億円 425億円
売上総利益 128億円 114億円
売上総利益率(%) 29.3% 26.9%
営業利益 30億円 15億円
営業利益率(%) 6.9% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が34億円(構成比34%)、荷造発送費が9億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


工作機械事業は国内での受注は堅調に推移しましたが、大型平面研削盤の販売減少や欧州での景気停滞の影響を受け減収減益となりました。一方、半導体関連装置事業は国内外での受注・販売が好調で増収となりましたが、成長投資等の影響で利益は微減となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
工作機械 309億円 289億円 14億円 1億円 0.4%
半導体関連装置 129億円 136億円 30億円 27億円 20.2%
調整額 - - -14億円 -13億円 -
連結(合計) 437億円 425億円 30億円 15億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -21億円 36億円
投資CF -51億円 -33億円
財務CF 105億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創立以来の社是「技術は正しく」をメーカーとしてのバックボーンとし、「常に最先端技術を追求し、お客様にご満足いただける精巧比なき、価値ある製品をつくり、社会に貢献する」ことを経営の基本理念としています。また、人と自然環境の融合を視野に入れた製品づくりに積極的に取り組んでいます。

(2) 企業文化


工作機械と半導体関連装置の両分野における「総合砥粒加工機メーカー」として、技術開発力や生産力、営業力などの経営資源を駆使するだけでなく、発想力や企画力といった創造的なパワーを結集し、同社でなければ成し得ないグローバルな事業展開を積極的に推進する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上および収益率の安定化や資金効率の改善を図り、「景気に左右されることなく利益を上げ得る強固な経営体質」の確立・定着を目指しています。2030年の長期ビジョンでは「平面研削盤・半導体ウェーハ研磨装置でグローバルNo.1」を目標に掲げています。

* 連結売上高:700億円(2028年3月期目標)
* 連結営業利益率:16%
* ROE:17〜18%
* 連結配当性向:45%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「強固な経営体質」の確立に向け、売上の安定化と利益重視の施策、および資金効率の改善を重点課題としています。具体的には、超高精度研削盤の販売事例の世界展開や、汎用研削盤の地区別販売戦略、成長市場に向けた半導体関連装置の新製品開発を進めるとともに、コスト削減や生産拠点の最適化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「技術と技能こそが企業価値の源泉である」との認識のもと、長年培ってきた精密加工技術の継承と高度化を図るため、専門性を有する人材の確保および育成を重要な経営課題と位置付けています。資本提携先との人材交流を通じたグローバル人材育成のほか、多様な人材が活躍できる職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.6歳 15.8年 6,200,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規雇用) 81.8%
男女賃金差異(非正規) 37.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向による市況変動リスク


同社グループが販売する工作機械および半導体関連装置は景気変動の影響を受けやすく、設備投資や個人消費の動向が業績に影響を与える可能性があります。景気の停滞期には需要の冷え込みから業界全体の受注が縮小し、同社の業績を悪化させる要因となる可能性があります。

(2) 財務制限条項に係る資金調達リスク


同社グループは銀行からの借入金やシンジケートローン等の方法により資金調達を行っていますが、一部の契約内容には一定の財務制限条項が付されている場合があります。万が一これらの条項に抵触した場合、同社グループの資金繰りや財務状態に影響を与える可能性があります。

(3) グローバル展開に伴う海外事業リスク


同社グループはタイ、シンガポール、中国に生産拠点を持ち、米国や欧州を含むグローバルな販売網を有しています。そのため、為替動向をはじめ、進出国の政情悪化や予期せぬ法規制の変更などによる経済活動の停滞が、同社グループの業績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自然災害や異常事態の発生リスク


同社グループは国内外に多数の生産拠点および販売拠点を有しています。そのため、大規模な自然災害や未知の感染症の拡大といった異常事態が発生した場合には、各拠点の事業活動やサプライチェーンが停滞し、同社グループの業績および財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。