FUJI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

FUJI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミアに上場する産業用ロボットメーカーです。主力事業は電子部品実装ロボットや工作機械の製造販売で、世界的に高いシェアを持ちます。直近の決算では、半導体関連の設備投資需要を取り込み、売上高は1,274億円と微増収、経常利益は153億円と増益を確保しました。


※本記事は、FUJI の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. FUJIってどんな会社?


電子部品実装ロボットと工作機械を主力とする産業用機械メーカーです。愛知県に本社を置き、世界トップクラスのシェアを持つ製品を展開しています。

(1) 会社概要


1959年に工作機械の製造を目的に設立され、1981年には電子部品自動装着機を完成させました。2013年に東証一部へ上場し、2018年には現在の社名へ変更しています。近年では、2018年にファスフォードテクノロジを買収して半導体製造装置分野を強化し、2024年には主力工場である岡崎工場の新棟建設を行うなど、生産能力の増強と事業領域の拡大を積極的に進めています。

連結従業員数は2,976名、単体では1,765名が在籍しています。大株主構成については、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第2位は日本カストディ銀行、第3位は米国系のステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニーとなっており、国内外の機関投資家が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.43%
日本カストディ銀行(信託口) 5.96%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 5.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は五十棲 丈二氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
五十棲 丈二 代表取締役社長 1996年同社入社。事業企画部部長代理、フジ アメリカ コーポレイション出向等を経て、ロボットソリューション事業本部本部長などを歴任。2024年4月より現職。
須原 信介 取締役会長 1981年同社入社。精機事業本部第一開発部部長、取締役常務執行役員などを経て、2019年に代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
加納 淳一 取締役専務執行役員コーポレート本部本部長 1987年同社入社。秘書部部長、経営企画部部長・経理部部長などを歴任し、コーポレート本部を統括。2024年6月より現職。
佐藤 武 取締役執行役員ロボットソリューション事業本部本部長 1997年同社入社。技術開発部部長、イノベーション推進部部長などを経て、ロボットソリューション事業本部を統括。2025年4月より現職。


社外取締役は、水野 象司(元丸文社長)、岩崎 誠(名古屋工業大学大学院教授・副学長)、上野 千晴(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ロボットソリューション」「マシンツール」および「その他」事業を展開しています。

(1) ロボットソリューション


スマートフォンやパソコン、自動車などに使用される電子基板に電子部品を装着する「電子部品実装ロボット」や、半導体製造装置などを提供しています。主要顧客は国内外の電子機器メーカーや半導体メーカーです。

収益は、主に顧客への製品販売およびアフターサービスから得ています。運営は主にFUJIが行っており、半導体製造装置分野ではファスフォードテクノロジが事業を展開しています。また、米国、欧州、中国、アジア各国の現地法人が販売・サービスを担っています。

(2) マシンツール


自動車部品などの金属加工を行う「工作機械」を提供しています。専用機並みの生産性と汎用機の柔軟性を兼ね備えた自動旋盤などを主力製品とし、自動車業界をはじめとする製造業の顧客へ省人化・自動化ソリューションを提供しています。

収益は、工作機械の販売およびメンテナンスサービス等から得ています。運営は主にFUJIが行い、米国や中国の現地法人も販売活動を行っています。近年はターンキービジネス(完成引き渡し)の強化により、付加価値の向上を図っています。

(3) その他


制御機器や電子機器の受託製造、画像処理技術の開発などを行っています。また、リニアモータの開発・製造なども手掛けています。

収益は、製品の製造販売や開発業務から得ています。運営は、アドテック富士、エデックリンセイシステム、FUJIリニアなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績は以下の通りです。売上高は2023年3月期まで順調に拡大しましたが、2024年3月期に一時的な調整局面を迎えました。直近の2025年3月期は売上高が横ばいながらも利益面での改善が見られます。利益率は10%台後半から低下傾向にありましたが、底堅く推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,362億円 1,481億円 1,533億円 1,271億円 1,274億円
経常利益 232億円 299億円 290億円 150億円 153億円
利益率(%) 17.1% 20.2% 18.9% 11.8% 12.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 172億円 212億円 205億円 104億円 109億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、売上高はほぼ横ばいで推移しており、売上総利益率も安定しています。営業利益および営業利益率は前年度からわずかに改善しており、コストコントロールが機能していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,271億円 1,274億円
売上総利益 462億円 466億円
売上総利益率(%) 36.4% 36.6%
営業利益 134億円 138億円
営業利益率(%) 10.6% 10.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が94億円(構成比28%)、研究開発費が77億円(同24%)を占めています。技術開発型企業として研究開発への投資を継続していることが特徴です。

(3) セグメント収益


ロボットソリューション事業は欧米地域の需要伸び悩みにより微減収減益となりましたが、マシンツール事業は北米自動車市場の需要増により増収となり、営業黒字に転換しました。その他事業も増収となりましたが、営業損失が継続しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ロボットソリューション 1,146億円 1,142億円 183億円 163億円 14.3%
マシンツール 105億円 111億円 -8億円 7億円 6.7%
その他 20億円 21億円 -1億円 -1億円 -5.1%
調整額 0億円 1億円 9億円 9億円 -
連結(合計) 1,271億円 1,274億円 134億円 138億円 10.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 302億円 234億円
投資CF -124億円 -114億円
財務CF -171億円 -162億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人々の 心豊かな 暮らしのために」をパーパスとして掲げています。ロボティクスと自動化技術を基盤に、製造・介護・物流分野などで驚きと感動を与える商品・サービスを提供し、サステナブルで心豊かな社会の実現を目指しています。また、ビジョンとして「半導体後工程チェーンにおけるFAブランドとして業界No.1へ」を掲げています。

(2) 企業文化


同社はフィロソフィーとして、地球環境と人々の幸福に貢献する商品・サービスの提供、事業成長とステークホルダーへの還元、法令遵守を超えた高い道徳心の保持を掲げています。これらを通じて、社会価値と経済価値の双方を追求する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2035年のありたい姿「FUJI2035」の実現に向け、2024年度からの中期経営計画を推進しています。最終年度である2027年3月期には以下の数値目標を掲げ、事業ポートフォリオの再構築と社会的企業価値の向上を目指しています。

* 売上高:1,800億円
* 営業利益:330億円
* ROE:10%以上
* PBR:1.1倍以上
* 配当性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の拡大と次世代ビジネスの創出を柱とする成長戦略を掲げています。ロボットソリューション事業では最新機種「NXTR」等を軸に新規市場を開拓し、シェアNo.1を目指します。また、スマートロッカーシステムや移乗サポートロボットなどの新規事業化も推進します。マシンツール事業ではターンキービジネスでの優位性確立を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ダイバーシティ、人材育成、健康経営、労働環境・安全衛生の4つの観点から人材戦略を進めています。多様な人材が活躍できる柔軟な人事制度の構築や、自律型社員の育成に向けた研修プログラムの充実に注力しています。また、健康経営宣言に基づき、社員の健康維持・向上とエンゲージメントを高める職場づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.9歳 19.2年 7,442,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 60.6%
男女賃金差異(正規) 67.1%
男女賃金差異(非正規) 45.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、生活習慣改善の意識がある社員の割合(65.5%)、プレゼンティーイズムによる生産性損失割合(36.6%)、高ストレス者の割合(17.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動


製品の需要は、スマートフォンの通信機器や自動車関連などの最終製品市場の動向、顧客企業の設備投資意欲に大きく左右されます。景気変動や主要顧客の投資抑制などにより、想定を超える急激な需要変化が生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 競争激化による影響


グローバル市場において価格や機能面での競争が激化しており、顧客からのコストダウン要求や競合他社との価格競争に晒されています。これらにより有利な価格決定が困難となり、販売台数の減少や価格下落が想定以上に長期化した場合、収益性に悪影響を与える可能性があります。

(3) 部材等の調達リスク


主要部材である鋼材、鋳物、電気材料や半導体などの供給不足や価格高騰のリスクがあります。需要集中や供給元の被災等により部材調達が困難となった場合、生産活動が不安定になり、製品供給の遅延やコスト増加を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。