※本記事は、株式会社FUJIの有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. FUJIってどんな会社?
電子部品実装ロボットや工作機械の製造販売を主力事業とし、グローバルに展開する機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1959年に富士機械製造として設立され、1964年に名古屋証券取引所市場第二部に上場しました。1978年に電子部品自動挿入機を完成させ、以降自動化技術を発展させてきました。2018年に現在のFUJIへ社名変更し、同年ファスフォードテクノロジを買収して半導体製造装置分野も強化しています。
現在の体制として、従業員数は連結で3,132名、単体で1,771名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主をはじめ上位には資産管理業務などを行う信託銀行や外資系金融機関が名を連ねており、機関投資家からの保有比率が高いことが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.00% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.27% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 常任代理人 みずほ銀行 | 6.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長を五十棲丈二氏が務め、社外取締役比率は22.2%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 五十棲 丈二 | 代表取締役社長 | 1996年同社入社。事業企画部部長代理、フジ アメリカ コーポレイション出向を経て、ロボットソリューション事業本部技術開発部部長などに就任。2024年4月より現職。 |
| 加納 淳一 | 取締役専務執行役員コーポレート本部本部長 | 1987年同社入社。ハイテック事業本部営業統括部第二営業部部長などを歴任。2020年取締役執行役員に就任し、2024年6月より現職。 |
| 佐藤 武 | 取締役執行役員ロボットソリューション事業本部本部長 | 1997年同社入社。ロボットソリューション事業本部技術開発部部長等を経て2024年に取締役執行役員に就任。2025年4月より現職。 |
| 須原 信介 | 取締役会長 | 1981年同社入社。精機事業本部第一開発部部長、執行役員等を経て2013年より取締役。2019年代表取締役社長に就任し、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、水野象司(元丸文社長)、上野千晴(名古屋大学法科大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ロボットソリューション」「マシンツール」および「その他」事業を展開しています。
■ロボットソリューション
電子部品実装ロボットや半導体製造装置などを提供しています。主要製品にはモジュール型電子部品装着機「NXTR」やスマートロッカーシステム「Quist」、移乗サポートロボット「Hug」などがあり、スマートフォンや自動車の電動化など幅広い分野のメーカーを顧客としています。
収益モデルは、機器の販売対価や保守・アフターサービスによる手数料などから構成されています。事業の運営は同社のほか、半導体製造装置を手掛けるファスフォードテクノロジや、海外各地域の販売・保守を担う各現地法人など複数のグループ会社が連携して行っています。
■マシンツール
自動車業界などを主要顧客として、多様な生産形態や部品加工ニーズに対応する工作機械を提供しています。自動化技術を活用した複合加工旋盤などを主力とし、生産効率や提案営業力の向上によるターンキービジネスを展開しています。
収益モデルは、工作機械本体の販売や関連するソリューション提供による売上から構成されています。事業の運営は主に同社が担うほか、アドテック富士、フジ マシン アメリカ コーポレイション、昆山之富士機械製造などの子会社が製造・販売・サポート活動を行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、制御機器製造、電子機器製造、画像処理開発などを展開しています。
収益モデルは、各種機器の製造・販売および開発に伴う対価から構成されています。事業の運営はアドテック富士、エデックリンセイシステム、FUJIリニアなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上・利益ともに一時的な落ち込みを経て、直近期に過去最高水準へと急回復していることが分かります。特に直近期は、アジア地域を中心とするAIサーバー関連の設備需要増加や半導体関連需要の伸長が大きく寄与し、大幅な増収増益を記録しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1481億円 | 1533億円 | 1271億円 | 1274億円 | 1806億円 |
| 経常利益 | 299億円 | 290億円 | 150億円 | 153億円 | 313億円 |
| 利益率(%) | 20.2% | 18.9% | 11.8% | 12.0% | 17.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 231億円 | 201億円 | 73億円 | 8億円 | 289億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構造を見ると、増収効果により売上総利益が大きく増加し、粗利率も安定して推移しています。販管費の増加を吸収して営業利益率は大幅に改善しており、収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1274億円 | 1806億円 |
| 売上総利益 | 466億円 | 663億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.6% | 36.7% |
| 営業利益 | 138億円 | 293億円 |
| 営業利益率(%) | 10.8% | 16.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が105億円(構成比28%)、研究開発費が85億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の業績を見ると、主力であるロボットソリューション事業がAIサーバー関連の需要増を取り込み大幅な増収増益を牽引しました。一方、マシンツール事業は自動車関連の設備投資低迷により減収となり、営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ロボットソリューション | 1142億円 | 1687億円 | 163億円 | 336億円 | 19.9% |
| マシンツール | 111億円 | 97億円 | 7億円 | -1億円 | -1.1% |
| その他 | 21億円 | 22億円 | -1億円 | 1億円 | 3.9% |
| 連結(合計) | 1274億円 | 1806億円 | 138億円 | 293億円 | 16.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金で投資と借入金返済等を行う「健全型」です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 234億円 | 92億円 |
| 投資CF | -114億円 | -70億円 |
| 財務CF | -162億円 | -90億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人々の 心豊かな 暮らしのために」をパーパスに掲げています。ロボティクスと自動化技術を礎に、製造・介護・物流などの分野において驚きと感動を与える商品やサービスを届け、社会に新しい価値を創造し、サステナブルで心豊かな社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社はフィロソフィーとして、社会価値と経済価値の双方の追求を掲げています。地球環境や人々の幸福に資する商品を提供するとともに、事業成長を通じてステークホルダーへ適切に還元し、法令遵守を超えた道徳心の高い企業であり続けることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
ビジョンとして「半導体後工程チェーンにおけるFAブランドとして業界No.1へ」を掲げています。また、中期経営計画において2027年3月期の目標数値を設定しています。
* 売上高:2,110億円
* 営業利益:436億円
* ROE:11%以上
* 配当性向:50%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の拡大と収益力強化、次世代ビジネスの創出と事業化、ESGに基づく事業基盤の向上を軸に成長を図ります。モジュール型電子部品装着機「NXTR」などの最新機種を拡販し新規市場を開拓するとともに、スマートロッカーシステムや移乗サポートロボット等の新規事業化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ダイバーシティ、人材育成、健康経営、労働環境・安全衛生の4本柱で人的資本の最大化を図ります。イノベーションを起こせる自律型社員の育成やキャリア採用の強化、柔軟な人事制度の導入を進め、従業員が能力を存分に発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.2歳 | 19.8年 | 8,326,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.4% |
| 男性育児休業取得率 | 85.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 39.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(43.9%)、障がい者雇用率(2.7%)、有休取得率(89.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変動
同社の主力である電子部品実装ロボット等は、通信機器関連や自動車等の分野向けに販売されており、景気変動に伴う電子機器の販売動向や顧客の設備投資動向に大きく影響を受けます。急激な需要の変化があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 部材等の調達遅延・価格高騰
製品を構成する鋼材や電子部品等について、市場価格の高騰や、自然災害、地政学リスクの高まり等による調達遅延が発生するリスクがあります。複数供給者からの購入体制構築などに努めていますが、供給制約が長期化した場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。
■(3) 価格競争の激化
事業を展開する市場において競合他社との厳しい競争にさらされています。顧客からの設備調達コスト低減要求や競合との価格競争により、有利な価格決定が困難になる場合があり、販売台数の減少や価格下落が長期化した際は収益に影響を及ぼす可能性があります。



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