牧野フライス製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 牧野フライス製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

牧野フライス製作所は東京証券取引所プライム市場に上場し、工作機械ならびに関連製品の製造、販売、サービスをグローバルに展開する企業です。直近の業績は、アジアやアメリカにおける堅調な受注を背景に売上高2612億円、当期利益115億円を記録しており、前年比で増収増益と好調なトレンドを維持しています。


※本記事は、株式会社牧野フライス製作所 の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 牧野フライス製作所ってどんな会社?


工作機械の専門メーカーとして、高品質な製品と加工技術を世界中の製造業に提供しています。

(1) 会社概要


1937年に牧野商店製作部として創業し、1958年に日本初となる数値制御立フライス盤を開発しました。1961年に現在の牧野フライス製作所に商号変更しています。1964年に東証二部、1971年に東証一部(現在はプライム市場)へ上場を果たしました。1975年のアメリカ進出を皮切りに、ヨーロッパやアジアなど世界各地に拠点を設け、グローバルな生産・販売体制を構築しています。

従業員数は連結で4,777名、単体で1,405名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も信託口座等の管理を行う常任代理人、第3位は公益財団法人工作機械技術振興財団となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.12%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) 7.97%
公益財団法人工作機械技術振興財団 3.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役社長は宮崎正太郎氏が務めています。取締役10名のうち、社外取締役の比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮崎正太郎 代表取締役社長 同社入社より現職。
永野敏之 代表取締役専務取締役管理本部長 同社入社より現職。
白石治幸 常務取締役開発本部長 同社入社より現職。
金谷潤 取締役 同社入社より現職。
牧野裕之 取締役 同社入社より現職。
Neo Eng Chong 取締役 牧野机床(中国)有限公司入社より現職。


社外取締役は、増田直史(元トヨタ自動車常務役員)、山崎広道(元熊本大学法学部長)、髙橋一夫(元大和証券グループ本社執行役副社長)、高井文子(横浜国立大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、販売体制の所在地に基づく4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) セグメントⅠ(日本およびその他地域)


日本、韓国、大洋州、ノルウェイ、イギリスなどの市場に向け、マシニングセンタや放電加工機などの工作機械を提供しています。自動車部品、半導体製造装置、各種産業機械の部品加工を行うメーカーが主な顧客です。

収益源は、工作機械の本体販売代金や周辺機器の販売、据付・アフターサービス、修理部品の販売による代金です。運営は主に牧野フライス製作所が行い、牧野技術サービスなどの国内子会社と連携して事業を展開しています。

(2) セグメントⅡ(アジア)


中国、ASEAN諸国、インドなどの市場を対象に工作機械の製造・販売および修理サービスを提供しています。新エネルギー車関連や電気電子部品、自動車部品などの加工・金型向けが中心です。

工作機械の販売や修理代金が主な収益源となっています。運営はシンガポールに拠点を置くMAKINO ASIA PTE LTDが統括し、現地の販売会社や製造子会社と連携して事業を進めています。

(3) セグメントⅢ(アメリカ)


南北アメリカ全域を対象に、航空宇宙向けや自動車をはじめとした部品加工向けの工作機械を販売し、現地でのサービス対応を行っています。

収益源は工作機械および関連機器の販売代金や修理サービスによる手数料です。事業の運営はアメリカのオハイオ州に拠点を構えるMAKINO INC.が行っています。

(4) セグメントⅣ(ヨーロッパ)


ノルウェイを除くヨーロッパ大陸のすべての国を対象に、航空機関連や産業機械関連の部品加工向けに工作機械の販売と修理サービスを提供しています。

工作機械の販売代金やアフターサービスの手数料が主な収益源です。運営はドイツに拠点を置くMAKINO Europe GmbHが統括し、欧州全域での営業活動を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、市場環境の変動を受けながらも着実な成長を遂げています。売上高は1800億円台から2600億円規模へと拡大し、経常利益や当期利益も底堅く推移して利益率の向上が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1866億円 2280億円 2254億円 2342億円 2612億円
経常利益 143億円 199億円 189億円 201億円 273億円
利益率(%) 7.6% 8.7% 8.4% 8.6% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 67億円 97億円 91億円 115億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益や営業利益が大きく拡大しています。原材料の調達コスト等が影響するなかでも、付加価値の高い製品の販売によって利益率の改善を実現しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2342億円 2612億円
売上総利益 724億円 823億円
売上総利益率(%) 30.9% 31.5%
営業利益 185億円 250億円
営業利益率(%) 7.9% 9.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が238億円(構成比42%)、運賃荷造費が86億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


アジアおよびアメリカ市場での売上伸長が全体の業績を牽引しています。特にアジアは中国やインドでの需要が堅調に推移し、売上・利益ともに大きく貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
511億円 467億円 120億円 121億円 25.9%
949億円 1214億円 44億円 87億円 7.2%
695億円 751億円 27億円 33億円 4.4%
187億円 180億円 3億円 1億円 0.5%
連結(合計) 2342億円 2612億円 185億円 250億円 9.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスであり、本業で稼いだ資金を使って投資を継続しながら借入金の返済も進める、健全な資金繰りの状態と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 136億円 332億円
投資CF -139億円 -162億円
財務CF -67億円 -92億円


企業の収益力を測るROEは8.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来一貫して工作機械の専門メーカーとしての自負を持ち、「クオリティ・ファースト」の追求を経営理念として掲げています。より良い工業製品を効率的に生産したいと願う顧客に対して、常に最適な工作機械と加工技術を提供することを使命としています。

(2) 企業文化


「信頼こそ企業の存立基盤です」という考えのもと、使う人、売る人、造る人、すべての関係者が信頼し合える環境を重視しています。製品やサービスだけでなく、組織と社員のあり方においても真の品質を追求する文化が定着しています。

(3) 経営計画・目標


工作機械産業は収益変動が極めて大きい特徴があるため、短期間に変化する事業環境へ適切に対応できる強固な企業体質の確立を目指しています。厳しい環境下においても継続的な収益を確保し、中長期的な企業価値の向上を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


市場が求める高品位・高精度な工作機械をいち早く投入するための開発体制を強化しています。また、需要の変化に柔軟に対応できる効率的な生産体制の確立を進めるとともに、顧客の生産拠点の世界的な広がりに合わせ、海外グループ各社と連携して営業・サービス拠点の拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財は会社の財産である」という考えのもと、社員一人ひとりの自律的なキャリア形成やスキルアップの機会を提供しています。多様な価値観を受け入れる環境を整備し、顧客の多岐にわたる課題を解決できる革新的な製品やサービスを生み出すための人材育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.6歳 19.0年 7,431,567円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 57.9%
男女賃金差異(全労働者) 75.3%
男女賃金差異(正規労働者) 79.7%
男女賃金差異(非正規労働者) 48.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職候補である係長級の女性社員の割合(11%)、従業員全体に占める中途採用者の割合(25%)、管理職層である課長以上の外国人の割合(1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際経済の景気変動


売上が日本、アジア、アメリカの製造業の設備投資に大きく依存しているため、景気後退や企業の投資意欲の減退が発生した場合、生産財の受注・売上が大きく減少するリスクがあります。

(2) 自動車等の個別産業の動向


同社の製品は自動車関連企業に多く利用されています。同分野の設備投資動向は相対的に安定していますが、規模が大きく需給環境に与える影響が強いため、設備投資の減少が売上に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替相場の変動


製品の半分以上を海外に販売しており、グローバルな事業展開を行っているため、為替相場の変動が売上および利益に直接的な影響を与えるリスクがあります。為替予約等の対策を行っていますが、急激な変動には注意が必要です。

(4) 部品・原材料需給の変動


工作機械は多様な部品や原材料で構成されているため、需給環境が逼迫した場合に価格の上昇を招き、利益を圧迫する恐れがあります。また、必要な品質や量を確保できない場合は、生産活動や納期遅延に繋がる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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