旭ダイヤモンド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭ダイヤモンド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するダイヤモンド工具の専業メーカー。電子・半導体、輸送機器、機械、建設業界向けに製造・販売を行っています。第106期の連結業績は、電子・半導体業界向けの需要回復や航空機関連の好調などにより増収増益となりました。


※本記事は、旭ダイヤモンド工業株式会社 の有価証券報告書(第106期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 旭ダイヤモンド工業ってどんな会社?


電子・半導体や自動車産業などのモノづくりを支える、ダイヤモンド工具の総合メーカーです。

(1) 会社概要


1937年に設立され、1978年に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)に指定されました。グローバル展開を積極的に進めており、1993年にフランスやオーストラリアの現地法人を完全子会社化、2002年にはインドネシアや米国、中国にも拠点を設立しました。近年では2023年にベトナムに販売子会社を設立し、インドの現地法人を完全子会社化するなど、海外事業の強化を継続しています。

連結従業員数は2064名、単体では999名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位には旭ダイヤモンド社員持株会が名を連ねており、従業員による持株比率が比較的高くなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.96%
日本カストディ銀行(信託口) 5.02%
旭ダイヤモンド社員持株会 4.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は片岡和喜氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
片 岡 和 喜 代表取締役社長 1976年同社入社。営業本部技術部長、常務取締役経営戦略企画本部長などを経て、2015年6月より現職。
原 智 彦 代表取締役常務生産本部長兼三重工場長 1980年同社入社。P.T.旭ダイヤモンドインダストリアルインドネシア社長、取締役三重工場長などを経て、2022年6月より現職。
藍 敏 雄 常務取締役 1994年同社入社。台湾鑽石工業股份有限公司董事長、常務取締役グローバル事業統括本部長などを経て、2022年6月より現職。
萩 原 利 昌 取締役営業本部長兼東日本統括 1982年同社入社。上海旭匯金剛石工業有限公司董事長、取締役営業本部副本部長などを経て、2022年6月より現職。
阿 部 英 夫 取締役技術本部長兼千葉工場長 1980年同社入社。執行役員玉川工場長、取締役玉川工場長兼技術開発センター長を経て、2021年6月より現職。
松 田 順 一 取締役海外事業本部長兼経営戦略本部長 1986年同社入社。技術研究所長、執行役員経営戦略本部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小山修(元三井物産常務執行役員)、市川祐子(マーケットリバー代表取締役)、川尻恵理子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ダイヤモンド工具事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電子・半導体業界向け


半導体ウエハーの切断や研磨、電子部品の加工などに使用される精密なダイヤモンド工具を提供しています。主な顧客は半導体メーカーや電子部品メーカーです。特にSiCやGaNなどの難削材加工用工具や、生成AI向け需要に対応する先端半導体加工用工具に注力しています。

収益は、これらの工具製品の販売代金です。同社および山梨旭ダイヤモンド工業などの国内製造子会社、台湾鑽石工業股份有限公司などの海外製造子会社が製造し、国内外の販売拠点が顧客へ供給しています。

(2) 輸送機器業界向け


自動車や航空機のエンジン、駆動部品、ガラスなどの加工に使われる切削・研削工具を提供しています。自動車メーカーや部品メーカーが主な顧客です。EV化に伴うモーターやバッテリー関連の加工ニーズにも対応を進めています。

収益は、工具製品の販売によるものです。日本国内だけでなく、北米やアジアなどの自動車生産拠点に向けて、同社グループの各拠点が製造・販売を行っています。

(3) 機械業界向け


工作機械、ベアリング、工具メーカーなどで使用される耐摩耗部品や加工用工具を提供しています。精密加工が求められる幅広い機械産業が顧客となります。

収益は、工具および部品の販売代金です。同社および国内外のグループ会社が製造・販売を担っています。

(4) 石材・建設業界向け


道路や滑走路の切断、ビルの解体・改修、石材の採掘・加工などに使用されるダイヤモンドブレードやワイヤソーなどを提供しています。建設会社や石材加工業者が主な顧客です。

収益は、製品の販売代金です。同社および是村旭ダイヤモンド工業などが製造し、国内外へ販売しています。

(5) その他事業


上記報告区分に含まれない事業として、宝飾用ダイヤモンドや、大学・研究機関向けの製品などを取り扱っています。

収益は製品販売によるものです。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復傾向にあり、第106期には400億円台に乗せました。利益面では、第103期以降安定して黒字を確保しており、直近の第106期は増益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 301億円 372億円 393億円 387億円 410億円
経常利益 -3.4億円 37億円 33億円 24億円 31億円
利益率(%) -1.1% 9.8% 8.3% 6.2% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 19億円 32億円 22億円 23億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。特に営業利益率は改善傾向にあり、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 387億円 410億円
売上総利益 100億円 113億円
売上総利益率(%) 25.9% 27.6%
営業利益 15億円 23億円
営業利益率(%) 3.9% 5.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が37億円(構成比41.1%)、研究開発費が5億円(同5.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


電子・半導体業界向けは、生成AI需要や電子部品向けの回復により増収となりました。輸送機器業界向けも、航空機需要の回復等により堅調です。一方、石材・建設業界向けは需要停滞により減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
電子・半導体 147億円 167億円
輸送機器 92億円 97億円
機械 94億円 94億円
石材・建設 42億円 40億円
その他 11億円 12億円
連結(合計) 387億円 410億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

旭ダイヤモンド工業は、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、事業活動から潤沢な資金を生み出しています。投資活動では、設備投資等で資金支出がありましたが、有価証券の売却収入等で一部賄われました。財務活動では、借入金の活用や自己株式の取得、配当金の支払い等が行われました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 28億円 58億円
投資CF -35億円 -38億円
財務CF -31億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「モノづくりをもっと面白く」を経営理念として掲げています。日々困難な問題に取り組むモノづくりの現場に対し、顧客とともにモノづくりを面白くすることで、社会の発展に貢献することを目指しています。この理念において、「唯一無二」「永続的な成長」「働きがい」を目・指す姿としています。

(2) 企業文化


経営理念を実現するための行動指針として、「Challenge(チャレンジ)」「Customer(顧客志向)」「Cooperation(ボーダレスな連携)」「Character(持ち味を活かす)」「Speed(スピード)」の5つを掲げています。これらを実践することで、顧客や社会への貢献を目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


2025年度を最終年度とする「中期経営計画2025」を策定しています。持続的な成長とステークホルダーの利益増大のため、連結売上高、連結営業利益、ROEなどを重要な経営指標として位置付けています。

(4) 成長戦略と重点施策


「世界のモノづくりを支えるグローバルニッチトップメーカーへ」を目指す姿として掲げ、以下の3つの重点テーマを推進しています。

1. **電子・半導体業界向け工具への注力**:EV化や生成AI向けの需要拡大を見据え、SiCや化合物半導体向け製品の開発・拡販を強化します。
2. **経営基盤強化**:業務効率化システムの導入や人材投資を行い、組織力の向上と高品質な「旭ブランド」の確立を目指します。
3. **リソースの最適化**:グループ内の事業領域整理や拠点の再編を進めるとともに、外部リソースも活用して最適な連携を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きがいのある職場づくりによる組織力の向上」を目指し、人事制度を改定しています。多様な業務経験を通じて自律的な成長を促すため、上司と部下の対話を重視し、自己申告制度によって個々のキャリア希望を汲み上げる仕組みを導入しています。また、階層別教育に加え、グローバル人材や技術者を育成するための専門研修を実施し、社員のスキルアップを支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 21.0年 6,870,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.4%
男性育児休業取得率 72.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.3%
男女賃金差異(正規) 76.9%
男女賃金差異(非正規) 74.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2.3%)、有給休暇取得率(71.5%)、採用者に占める女性比率(27.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達について


同社製品の主な原材料である天然・人工ダイヤモンド、金属、樹脂類に関して、供給元の操業停止や供給能力の制約により調達が困難になるリスクがあります。また、これらの原材料価格が高騰した場合、生産コストが上昇し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 景気動向について


同社グループは、電子・半導体、輸送機器、機械、建設など幅広い業界に製品を供給しています。そのため、景気変動によってこれらの業界の生産活動や設備投資が低迷した場合、工具需要が減少し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業について


連結売上高の約半分を海外が占めており、グローバルに事業を展開しています。そのため、各国の政情不安、法規制の変更、急激な為替変動、貿易摩擦、テロ・戦争などのカントリーリスクが顕在化した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。