旭ダイヤモンド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭ダイヤモンド工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭ダイヤモンド工業は、東京証券取引所プライム市場に上場し、主に電子・半導体、輸送機器、機械、建設業界向けにダイヤモンド工具の製造・販売を行っています。直近の業績では、電子・半導体向けの需要回復等により増収となった一方で、営業外収益の増減等の影響で最終利益は減益となりました。


※本記事は、旭ダイヤモンド工業株式会社の有価証券報告書(第107期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 旭ダイヤモンド工業ってどんな会社?


電子・半導体から建設まで幅広い業界向けにダイヤモンド工具を製造・販売する専門メーカーです。

(1) 会社概要


1937年にダイヤモンド工具の製造・販売を目的に設立されました。1952年に本格的な生産を開始し、1972年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1978年に同市場第一部に指定されています。その後は欧米やアジアに製造販売子会社を設立してグローバル展開を進め、2023年にはインドやベトナムにも子会社を設立しています。

従業員数は連結で2,040名、単体で1,016名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は従業員による旭ダイヤモンド社員持株会、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.29%
旭ダイヤモンド社員持株会 4.15%
日本カストディ銀行(信託口) 3.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は片岡和喜氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
片岡和喜 代表取締役社長 1976年4月同社入社。営業本部技術部長、常務取締役経営戦略企画本部長などを経て、2015年6月より現職。
原智彦 代表取締役常務生産本部長兼三重工場長 1980年4月同社入社。海外事業部長、執行役員インドネシア現地法人社長などを経て、2022年6月より現職。
萩原利昌 取締役営業本部長兼東日本統括 1982年4月同社入社。執行役員名古屋支店長、取締役中国・台湾統括などを経て、2022年6月より現職。
阿部英夫 取締役技術本部長兼千葉工場長 1980年4月同社入社。玉川工場長、技術開発センター長などを経て、2021年6月より現職。
松田順一 取締役海外事業本部長兼経営戦略本部長 1986年4月同社入社。技術研究所長、執行役員経営戦略本部長兼海外事業部長などを経て、2024年6月より現職。
川合宏明 取締役中日本統括兼名古屋支店長 1990年4月同社入社。東京営業部長、執行役員営業本部中日本統括兼名古屋支店長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、小山修(元三井物産常務執行役員)、市川祐子(マーケットリバー代表取締役)、川尻恵理子(ハロー法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ダイヤモンド工具事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

ダイヤモンド工具事業


同社グループは、主に電子・半導体業界、輸送機器業界、機械業界、石材・建設業界向けにダイヤモンド工具およびCBN工具・砥石の製造と販売を行っています。電子・半導体向けでは先端半導体加工用工具、輸送機器向けでは航空機や自動車向け工具などを手掛けており、国内外の幅広いモノづくりの現場を支えています。

事業の収益は、顧客である各業界の企業への工具の販売代金から得ています。製品の製造は同社および国内外の製造子会社が行い、販売は日本国内では同社や関係会社が、海外では北米、欧州、アジアなどに展開する各地域の販売子会社が中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は緩やかな増加傾向にあり、直近では420億円に達しています。一方で経常利益は増減を繰り返しており、利益率も6〜9%台で推移しています。当期は増収ながらも最終利益が落ち込む結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 372億円 393億円 387億円 410億円 420億円
経常利益 37億円 33億円 24億円 31億円 33億円
利益率(%) 9.8% 8.3% 6.2% 7.5% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 32億円 22億円 23億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高や売上総利益は順調に拡大しており、売上総利益率は約28%で安定して推移しています。また、営業利益も小幅ながら増加しましたが、営業利益率は5%台で横ばいとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 410億円 420億円
売上総利益 113億円 118億円
売上総利益率(%) 27.6% 28.1%
営業利益 23億円 24億円
営業利益率(%) 5.6% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が37億円(構成比40%)、研究開発費が5億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の電子・半導体業界向けはAI関連やメモリ需要の回復で増収となりました。機械業界向けも軸受やセラミックス業種向けの拡販で大きく伸びています。一方、輸送機器や石材・建設向けは微減となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
電子・半導体業界 167億円 170億円
輸送機器業界 97億円 96億円
機械業界 94億円 104億円
石材・建設業界 40億円 39億円
その他 12億円 11億円
連結(合計) 410億円 420億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 58億円 54億円
投資CF -38億円 -21億円
財務CF -2億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、経営理念として「モノづくりをもっと面白く」を掲げています。テクノロジーの進化が加速するモノづくりの現場において、日々困難な問題に取り組み、顧客とともに「モノづくりをもっと面白く」していくことで、社会の発展に貢献していくことを存在意義としています。

(2) 企業文化


同社は経営理念の実現に向けた「目指す姿」として、「唯一無二」「永続的な成長」「働きがい」を掲げています。また、日々の行動指針として「Challenge(チャレンジ)」「Customer(顧客志向)」「Cooperation(ボーダレスな連携)」「Character(持ち味を活かす)」「Speed(スピード)」の5つの価値観を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2030年までのあるべき姿として「VISION2030“世界のモノづくりを支えるグローバルニッチトップメーカーへ”」を策定しています。これに向け、2030年度を最終年度とする「中期経営計画2030」を推進し、投資の価値効果の最大化や収益を生み出す体質への変革を目指しています。また、次期からの配当については、累進配当を原則としています。

- 1株当たり34円以上の累進配当
- 総還元性向5年累計100%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画における重点施策として、電子・半導体分野を中核とした成長事業の加速、選択と集中による収益構造改革、将来成長を支える開発力・人材・経営基盤の強化を掲げています。不採算事業の整理や価格改定を進めるとともに、AIを活用した開発スピードの向上などにより、持続的な競争力の確立を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きがいのある職場づくりによる組織力の向上」を重要課題に掲げています。多様な人材を獲得するため通年採用やリファラル採用を進めるほか、自己申告制度や各種研修、資格取得支援を通じて、個々の強みを活かせる業務アサインや主体的な学びを促進し、自律的な成長サイクルを生み出すことを方針としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.9歳 21.0年 7,019,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 77.8%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 73.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 76.0%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 77.8%


また、同社は「人的資本に関する取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性比率(30.6%)、離職率(2.5%)、有給休暇取得率(74.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の取引の継続性に関するリスク


同社グループは、主要取引先等に対して納入数量や価格に関する長期的な契約を締結していません。そのため、需要変動や取引先の方針変更等により十分な受注が確保できなくなった場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の調達および価格変動リスク


主な原材料として天然・人工ダイヤモンドや金属、樹脂類などを多数使用しています。供給元の操業停止や供給能力の制約による調達難、あるいは原材料価格の高騰による生産コストの上昇が発生した場合、事業活動に支障をきたし業績に影響を与える可能性があります。

(3) 競合他社との競争激化リスク


日々、競合他社との間で技術や納期、価格における競争が行われています。同社は高品質化や短納期化、技術サービスの充実化に努めていますが、こうした競争に対して迅速かつ適切に対応できず十分な収益性が確保できなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業展開に伴うリスク


国内だけでなく、台湾、中国などのアジア・オセアニア、欧州、北米地区を中心にグローバルに事業を展開しており、連結売上高の約半分は海外向けです。各地域での政情不安や法的規制の変更、急激な為替レートの変動、貿易戦争等の事態が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。