日東工器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東工器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東工器は東京証券取引所プライム市場に上場し、迅速流体継手、機械工具、リニア駆動ポンプ、建築機器の開発・製造・販売を主力事業としています。直近の業績では、売上高が微増となる一方で、新工場立ち上げに伴う固定費負担の増加や原材料費の高止まりなどの影響により、営業利益及び経常利益は減益となっています。


※本記事は、日東工器株式会社の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日東工器ってどんな会社?


日東工器は、迅速流体継手や機械工具をはじめとする省力・省人化機器の開発・製造・販売を行うメーカーです。

(1) 会社概要


1956年に東京都大田区で日東工器として設立されました。1969年の米国子会社設立を皮切りに海外展開を本格化させ、1998年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2000年に同市場第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行し、直近では2025年に東北日東工器の新工場を稼働させています。

現在の従業員数は連結で1,032名、単体で471名です。筆頭株主は不動産賃貸業等を行う日器で、第2位は常任代理人として立花証券を通じた海外ファンド(THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.)となっています。

氏名 持株比率
日器 38.77%
THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD. 9.94%
日本マスタートラスト信託銀行(リテール信託口・株式管理) 6.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は小形明誠氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
小形明誠 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1978年三菱商事入社。同社理事CEO補佐等を経て2018年同社代表取締役社長。2020年より現職。
野口浩臣 取締役常務執行役員管理統轄IR担当 1989年同社入社。執行役員総務本部長、常務執行役員管理副統轄IR担当等を経て2025年6月より現職。
高田揚子 取締役 1979年日器取締役。同社監査役を経て2009年日器代表取締役社長。2010年より現職。


社外取締役は、中川康生(中川・山川法律事務所弁護士)、小見山満(小見山公認会計士事務所所長)、山東理二(元千代田化工建設代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「迅速流体継手事業」「機械工具事業」「リニア駆動ポンプ事業」「建築機器事業」を展開しています。

(1) 迅速流体継手事業


産業用の流体配管をワンタッチで着脱できる継手の開発・製造・販売を行っており、半導体製造装置や自動車関連、各種産業機械など幅広い分野の顧客に向けて製品を提供しています。

顧客への製品販売を主な収益源としています。製品の製造は子会社の栃木日東工器およびNITTO KOHKI INDUSTRY (THAILAND)などが行い、国内での販売は同社が、海外での販売は同社および海外の各販売子会社が担当しています。

(2) 機械工具事業


工場環境関連や電機関連などにおいて、作業の省力化や省人化に貢献する各種機械工具の開発・製造・販売を行っています。主に建設業界や建築業界の顧客に向けて製品を提供しています。

顧客への製品販売を主な収益源としています。製造は子会社の東北日東工器やNITTO KOHKI INDUSTRY (THAILAND)などが担い、販売は国内を同社が、海外を同社および各海外販売子会社が担当しています。

(3) リニア駆動ポンプ事業


圧縮空気応用技術を活用し、主に浄化槽用のブロワや、健康機器・医療機器などに組み込まれる小型の省力化ポンプの開発・製造・販売を行っています。

顧客への製品販売を主な収益源としています。製品の製造は子会社の栃木日東工器およびNITTO KOHKI INDUSTRY (THAILAND)が行い、国内での販売は同社が、海外での販売は同社および各海外販売子会社が担当しています。

(4) 建築機器事業


主にアームレスのドアクローザをはじめとする建築機器の開発・製造・販売を行っており、建設業界や建築業界の顧客に向けて製品を提供しています。

顧客への製品販売を主な収益源としています。製品の製造は子会社の東北日東工器が担当し、国内の販売は同社が、海外の販売は同社および各海外販売子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で概ね250億円から280億円の範囲で安定して推移しており、堅調な水準を維持しています。一方、経常利益は原材料費の高止まりや新工場稼働に伴う固定費負担の増加などの影響を受け、減少傾向が続いています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 253億円 281億円 271億円 273億円 273億円
経常利益 34億円 36億円 28億円 25億円 15億円
利益率(%) 13.5% 12.9% 10.4% 9.2% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 19億円 20億円 18億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は横ばいで推移していますが、売上総利益は減少しています。これに伴い、営業利益および営業利益率も低下しており、収益性の面でコスト増加による圧迫が見受けられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 273億円 273億円
売上総利益 121億円 115億円
売上総利益率(%) 44.5% 42.0%
営業利益 23億円 12億円
営業利益率(%) 8.6% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が29億円(構成比28%)、研究開発費が9億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である迅速流体継手事業は堅調に売上を伸ばし、安定した利益水準を維持しています。一方で、機械工具事業や建築機器事業は建設関連の需要減少等により減収となり、固定費比率の上昇などで営業赤字に転落しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
迅速流体継手 120億円 124億円 21億円 20億円 15.8%
機械工具 86億円 83億円 4億円 -6億円 -7.3%
リニア駆動ポンプ 44億円 45億円 -1億円 -1億円 -2.7%
建築機器 23億円 21億円 0.0億円 -0.6億円 -2.8%
連結(合計) 273億円 273億円 23億円 12億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ利益を元に投資を行い、さらに借入金の返済なども進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27億円 42億円
投資CF -69億円 -48億円
財務CF -14億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会への貢献」「従業員の幸福」「会社の発展」という経営方針を掲げ、創立以来「開発は企業の保険なり」の社是のもと、事業活動を通じて産業界の省力・省人化や作業環境の改善に貢献することを目指しています。高機能・高品質・高信頼性の製品づくりに努め、ブランドを浸透させることで企業価値を高めることを使命としています。

(2) 企業文化


「開発は企業の保険なり」という社是に表れているように、独創的で高品質な製品の開発に挑戦し続ける文化があります。各自が自己啓発目標と他者育成目標を定める独自の目標管理制度を導入し、自らの自己啓発とともに従業員同士で育成を促す風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2026」を実行しており、収益力の強化、生産体制の最適化とコスト競争力の強化、持続的成長実現に向けた経営基盤構築を主要課題として掲げています。

* 売上高:291.9億円(2027年3月期目標)
* 営業利益:17.5億円(2027年3月期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


研究開発面では水素などの脱炭素社会に貢献する製品や、ロボット・FA分野、先端技術分野に向けた製品開発に注力します。生産面では新工場をモデル工場と位置づけ、自動化・IT化を推進して品質向上やコスト低減を図ります。また、販売面では欧米市場の深掘りや新興市場での販売基盤拡充を進め、中長期的な企業価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業価値向上を支える重要な経営資源と位置づけ、製造ノウハウの継承と中核人材の計画的育成を重要課題としています。新卒採用を基軸としつつ、事業運営に必要な専門性や経験を持つキャリア採用も組み合わせ、OJTや階層別教育による能力開発を推進し、多様な人材が働きがいを持って活躍できる環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.7歳 16.3年 6,890,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.8%
男女賃金差異(正規) 76.3%
男女賃金差異(非正規) 102.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者の割合(58.2%)、離職率(8.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 素材の供給に関するリスク


鉄、ステンレス、真鍮、アルミなどの各種素材を使用しており、原油価格上昇による素材価格の高騰や資源国からの輸入コストの変動などの影響を受けます。価格転嫁の取り組みを行っていますが、素材価格の上昇が利益を押し下げるリスクがあります。

(2) 海外製造拠点における製造不能リスク


タイに製造子会社を有し、製品の一部を製造委託しています。同国において予期しない法律・規制の変更や政情不安、自然災害等の不可抗力が発生した場合、製品供給が一時的に滞り、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 協力会社の確保リスク


製造工程の一部を外部の協力会社に委託して事業を展開しています。今後も協力会社を活用する方針ですが、必要な技術を保有する協力会社を安定して確保できなくなった場合、製品の生産に支障をきたし、業績に影響を与えるリスクがあります。

(4) 為替変動リスク


海外の販売拠点や製造拠点との取引において為替変動の影響を受けます。海外販売子会社向けの売上と海外製造子会社からの仕入れによる影響は相殺される傾向にありますが、各通貨の動向によっては利益に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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