※本記事は、豊和工業株式会社 の有価証券報告書(第187期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 豊和工業ってどんな会社?
豊田式織機の製造を起源とし、現在は工作機械や防衛用火器、特装車両など多角的なものづくりを展開しています。
■(1) 会社概要
1907年に豊田式織機として設立され、1936年に兵器や工作機械を手掛ける昭和重工業を設立しました。1941年に両社が合併して豊和重工業となり、1945年に現在の豊和工業へ改称しました。1949年には東京・大阪・名古屋の各証券取引所に上場し、長きにわたり日本の製造業を支えています。
同グループは連結子会社5社および関連会社1社で構成され、連結従業員数は739名(単体618名)です。大株主は、筆頭株主が生命保険会社、第2位が常任代理人を立てている外国法人等、第3位が取引先持株会となっており、金融機関や関連団体が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本生命保険相互会社 | 4.29% |
| BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) | 4.02% |
| 豊和工業協力グループ持株会 | 3.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長事業部門長は塚本高広氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 塚本高広 | 代表取締役社長事業部門長 | 1978年入社。機械事業部長、専務取締役事業部門長等を経て、2016年代表取締役社長兼事業部門長に就任。特装車両事業部長等を兼務し、2018年7月より現職。 |
| 北村誠 | 常務取締役総務部門長兼総務人事部長兼経理部長兼法務室長兼サステナビリティ推進室長 | 2012年入社。法務室長、総務人事部長等を歴任し、2024年取締役就任。2025年6月より現職。 |
| 田中雅子 | 取締役(監査等委員) | 1981年古河電気工業入社。同社執行役員、古河電池監査役を経て、2021年6月より現職。 |
| 服部誠一 | 取締役(監査等委員) | 1975年岡谷鋼機入社。同社取締役、顧問、東海プレス工業社長を経て、2025年6月より現職。 |
| 水野泰二 | 取締役(監査等委員) | 1999年弁護士登録。本町シティ法律事務所開設を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、田中雅子(元古河電気工業執行役員)、服部誠一(元岡谷鋼機取締役)、水野泰二(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「工作機械関連」「火器」「特装車両」「建材」「不動産賃貸」「国内販売子会社」「国内運送子会社」および「その他」事業を展開しています。
**工作機械関連**
マシニングセンタや各種専用機等の工作機械、チャックやシリンダ等の空油圧機器、電子機械を製造・販売しています。主な顧客は自動車関連業界などです。
収益は製品の販売代金等から得ており、運営は同社および丰和(天津)机床有限公司が行っています。
**火器**
防衛省向けの小銃や迫撃砲などの防衛装備品、および民生用のスポーツライフルを製造・販売しています。
収益は防衛省や市場からの製品販売代金から得ています。運営は同社が行っています。
**特装車両**
路面清掃車や産業用清掃機、床面自動洗浄機などを製造・販売しています。国内の道路維持管理や工場内清掃などで利用されています。
収益は車両および関連製品の販売代金から得ています。運営は同社が行っています。
**建材**
アルミサッシ・ドア、スチールサッシ・ドア、防水板などの金属製建具を製造・販売しています。防音サッシなどが主力製品の一つです。
収益は建材製品の販売代金から得ています。運営は同社が行っています。
**不動産賃貸**
同社が保有する土地や建物の賃貸事業を行っています。
収益は賃貸料から得ています。運営は同社が行っています。
**国内販売子会社**
鉄鋼等の販売を行っています。
収益は商品の販売代金から得ています。運営は豊友物産が行っています。
**国内運送子会社**
同社製品の荷造、運送業務などを請け負っています。
収益は運送サービス料等から得ています。運営は中日運送が行っています。
**その他**
造園および保険代理業などを行っています。
収益はサービス提供の対価から得ています。運営は豊苑などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね横ばいで推移していましたが、当期は前期比で大幅な増収となりました。利益面では、前期に赤字を計上しましたが、当期は火器事業の伸長などにより営業利益、経常利益ともに大幅に改善し、当期純利益も黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 188億円 | 197億円 | 197億円 | 198億円 | 248億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 13億円 | 6億円 | 5億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 6.6% | 3.2% | 2.4% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 8億円 | 4億円 | -9億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
当期は前期と比較して売上高が約50億円増加し、売上総利益も拡大しました。営業利益は前期の約3倍となり、収益性が大きく向上しています。これは主に火器事業の増収効果によるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 198億円 | 248億円 |
| 売上総利益 | 35億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 16.9% |
| 営業利益 | 4億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 5.0% |
販売費及び一般管理費のうち、賃金給料が7億円(構成比25%)、荷造運搬費が4億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
火器事業が防衛省向け装備品の納入増により大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。特装車両や建材も黒字化しましたが、工作機械関連は赤字幅が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 工作機械関連 | 67億円 | 70億円 | -4億円 | -5億円 | -6.6% |
| 火器 | 45億円 | 79億円 | 4億円 | 9億円 | 11.5% |
| 特装車両 | 19億円 | 33億円 | -1億円 | 1億円 | 3.9% |
| 建材 | 32億円 | 30億円 | -0億円 | 0億円 | 1.3% |
| 不動産賃貸 | 5億円 | 5億円 | 4億円 | 4億円 | 80.2% |
| 国内販売子会社 | 21億円 | 22億円 | 1億円 | 1億円 | 6.2% |
| 国内運送子会社 | 8億円 | 8億円 | 0億円 | 0億円 | 5.2% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 34.7% |
| 調整額 | -15億円 | -15億円 | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 198億円 | 248億円 | 4億円 | 13億円 | 5.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**積極型**
本業の営業活動から得た資金に加え、借入等の財務活動でも資金を調達し、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -11億円 | 1億円 |
| 投資CF | -9億円 | -26億円 |
| 財務CF | 25億円 | 15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「ものづくりを通じて、社会に貢献し、企業価値の向上を目指します」という経営理念を掲げています。また、パーパス(存在意義)として「まもる」をキーワードに、「人々の幸せな社会生活をまもり、ものづくりと共に成長し続ける会社」を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「より良い商品とサービスを提供し、顧客の期待と信頼に応える」「コンプライアンスを重視し、社会から信頼される会社であり続ける」「議論・対話を尽くし、活力ある企業風土を醸成する」ことを重要な行動規範と位置付けています。これに基づき、ステークホルダーとの信頼関係構築や環境課題解決に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は2028年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。最終年度の財務目標として以下の数値を掲げています。
* 連結売上高:250億円
* 連結営業利益:22億円
* ROE:8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画では、「収益構造の抜本的な改革」を基本戦略としています。事業環境の変化に応じた資源配分を行い、ニッチトップを目指す体制を構築します。
* 工作機械関連事業の収益構造改革:市場規模に合わせた体制への再編、採算性重視の戦略推進。
* 既存事業の収益力向上:生産性向上、コスト低減、営業力強化。
* 新事業・将来事業の創出:既存製品の拡充や新市場への投入、新たな製品・市場の調査。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、会社に変革を起こせるイノベーション人材の創出を目指し、教育・研修制度の整備や次世代経営層の育成に注力しています。また、女性従業員の活躍促進や育児休業取得の奨励など、従業員が安心して働き続けられる職場環境の整備を進め、人的資本への投資と人事制度改革を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.4歳 | 16.1年 | 5,393,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.9% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 54.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性の割合(25.0%)、毎月の残業時間(15.4時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 工作機械関連事業の変動リスク
主力である工作機械事業は、自動車業界の設備投資動向に大きく左右されます。モデルチェンジ時期やCASEの進展、EV需要の鈍化などにより需要が変動し、業績に影響を与える可能性があります。また、米国関税政策などの海外情勢もリスク要因です。
■(2) 防衛省予算・海外市場への依存
火器事業は防衛省の予算執行状況に依存しており、予算の増減が業績に直結します。また、民間向けスポーツライフルは米国市場への依存度が高く、同市場の需要停滞や為替変動、関税政策の影響を受ける可能性があります。
■(3) 原材料価格の上昇
原材料価格の高騰に対し、社内でのコストダウンや製品価格への転嫁が十分にできない場合、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。アルミなどの素材価格変動が建材事業等の収益性に影響します。
■(4) 固定資産の減損
新中期経営計画に基づき収益構造改革を進めていますが、収益性の低い事業の強化・改善が想定通りに進まない場合、固定資産の減損損失が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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