※本記事は、豊和工業株式会社の有価証券報告書(第188期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 豊和工業ってどんな会社?
工作機械や火器、特装車両など多様な機械製品や建材を開発・製造するメーカーです。
■(1) 会社概要
1907年に豊田式織機として設立されました。1941年に昭和重工業を合併して豊和重工業と改称し、1945年に現在の豊和工業へと社名を変更しています。1949年に東証・大証・名証市場第一部に上場を果たし、2022年には東証スタンダード市場へ移行するなど、長年にわたり事業を拡大してきました。
現在の従業員数はグループ全体で706名、単体で594名です。筆頭株主は信託業務を行う日本カストディ銀行で、第2位は生命保険事業を展開する日本生命保険相互会社、第3位は同社の協力グループの持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行 | 4.92% |
| 日本生命保険相互会社 | 4.29% |
| 豊和工業協力グループ持株会 | 3.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は塚本高広が務めており、社外取締役比率は60.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 塚本高広 | 代表取締役社長事業部門長 | 1978年11月同社入社。2003年機械事業部営業グループ部長、2007年取締役機械事業部長、2015年専務取締役等を経て、2018年7月より現職。 |
| 北村誠 | 常務取締役総務部門長兼総務人事部長兼経理部長兼法務室長兼サステナビリティ推進室長 | 2012年8月同社入社。2021年法務室長、2023年総務人事部長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、田中雅子(元古河電気工業執行役員)、服部誠一(元岡谷鋼機取締役)、水野泰二(パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「工作機械関連」「火器」「特装車両」「建材」「不動産賃貸」「国内販売子会社」「国内運送子会社」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 工作機械関連
マシニングセンタ、各種専用機および空油圧機器などの生産・販売を行っており、主に自動車関連部品メーカーを顧客としています。
これらの機械製品の販売や技術サービスの提供によって収益を得ています。事業の運営は主に豊和工業が行っており、中国における現地販売は子会社の丰和(天津)机床が行っています。
■(2) 火器
小銃、迫撃砲などの防衛用火器や、民間向けのスポーツライフルなどの生産・販売を行っており、防衛省や米国市場などを主要顧客としています。
防衛省向けの装備品の納入代金や、民間向けスポーツライフルの販売代金から収益を得ています。当事業の運営は豊和工業が行っています。
■(3) 特装車両
路面清掃車、産業用清掃機、床面自動洗浄機などの特殊車両の生産・販売を行っており、自治体や清掃事業者などを顧客としています。
清掃車両や関連機器の販売によって顧客から対価を受け取っています。当事業の運営は豊和工業が行っています。
■(4) 建材
アルミサッシ・ドア、スチールサッシ・ドアおよび防水板などの生産・販売を行っており、防衛省の防音工事などを主な顧客としています。
防音サッシなどの建材販売や工事代金から収益を得ています。当事業の運営は豊和工業が行っています。
■(5) 不動産賃貸
自社で保有している土地や建物などの不動産を活用した賃貸サービスを提供しています。
入居するテナントなどからの賃貸料が主な収益源となっています。当事業の運営は豊和工業が行っています。
■(6) 国内販売子会社
鉄鋼などの販売サービスを提供しており、主に国内の企業を顧客としています。
鉄鋼などの製品販売によって収益を得ています。当事業の運営は子会社の豊友物産が行っています。
■(7) 国内運送子会社
製品の荷造りや運送などの物流サービスを提供しています。
製品の輸送に伴う運送代金から収益を得ています。当事業の運営は子会社の中日運送が行っています。
■(8) その他
造園や緑化管理などのサービスを提供しています。
緑地整備などの代金から収益を得ています。当事業の運営は子会社の豊苑が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高は190億円台から240億円台へと拡大傾向にあります。一方、利益面では市場環境の変動により増減を繰り返しており、経常利益率は一時2%台まで低下したものの、直近では5%台に回復して推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 197億円 | 197億円 | 198億円 | 248億円 | 241億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 6億円 | 5億円 | 14億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 3.2% | 2.4% | 5.7% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 4億円 | -9億円 | 7億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となったものの、売上総利益はほぼ同水準を維持し、売上総利益率は上昇しました。一方で営業利益は減少しており、営業利益率も小幅な低下を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 248億円 | 241億円 |
| 売上総利益 | 42億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.9% | 17.6% |
| 営業利益 | 13億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、賃金給料が7億円(構成比23%)、荷造運搬費が4億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
火器や建材事業が前期比で増収を達成した一方で、工作機械関連や特装車両事業は市場環境の影響により減収となりました。国内販売子会社や国内運送子会社も微減傾向で推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 工作機械関連 | 70億円 | 54億円 |
| 火器 | 79億円 | 90億円 |
| 特装車両 | 33億円 | 29億円 |
| 建材 | 30億円 | 32億円 |
| 不動産賃貸 | 5億円 | 5億円 |
| 国内販売子会社 | 22億円 | 21億円 |
| 国内運送子会社 | 8億円 | 7億円 |
| その他 | 2億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 248億円 | 241億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で得た資金により借入金の返済を進めつつ、設備投資等も手元資金で賄っており、堅実な資金繰りを行う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 48億円 |
| 投資CF | -26億円 | -1億円 |
| 財務CF | 15億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ものづくりを通じて、社会に貢献し、企業価値の向上を目指します」という経営理念を掲げています。また、「人々の幸せな社会生活をまもり、ものづくりと共に成長し続ける会社」をパーパス(存在意義)と定め、技術発展や社会インフラ整備、国防や災害防止への貢献を通じて社会を支えることを使命としています。
■(2) 企業文化
「より良い商品とサービスを提供し、顧客の期待と信頼に応える」「コンプライアンスを重視し、社会から信頼される会社であり続ける」「議論・対話を尽くし、活力ある企業風土を醸成する」を行動規範に定めています。多様な価値観を尊重し、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮して成果を高められる環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画において、収益構造の抜本的な改革と既存事業の生産性向上による収益力の向上を喫緊の課題として位置づけています。成長投資と株主還元の強化を図ることで持続的な成長を目指しています。
* 売上高 250億円
* 営業利益 22億円
* ROE 8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
工作機械関連事業では市場規模に合わせた生産体制への再編やニッチトップ領域の開拓を進め、収益構造改革を推進しています。また、既存事業では生産性向上とコストダウンにより利益率の向上を図ります。さらに、新たな市場への製品投入や関連ビジネスの創出を通じて、同社の特性を活かした新規事業の立ち上げに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営計画で掲げる収益構造改革を支えるため、人的資本の強化を経営戦略の中心に据えています。職務遂行能力と役割を基軸とした評価制度や株式報酬制度を導入し、従業員のエンゲージメント向上を図っています。さらに、次世代経営人材の育成やDX推進に向けた専門スキル習得を支援し、組織全体の競争力強化を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.9歳 | 16.1年 | 5,355,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.1% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 63.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性の割合(18.2%)、女性従業員の育児休業取得率(100.0%)、毎月の残業時間(14.1時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車業界の動向による影響
工作機械関連事業は主に自動車関連メーカーを顧客としており、EV化の進展鈍化や設備投資の抑制、サプライチェーンの不確実性が専用工作機械の需要減少につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 防衛予算や海外市場の需要変動
火器事業や建材事業は防衛省向けの依存度が高く、調達予算の執行状況や方針変更の影響を受けます。また、米国市場向けのスポーツライフルは現地需要の停滞や為替変動、関税政策による競争力低下のリスクを抱えています。
■(3) 原材料等の価格上昇と調達難
地政学リスクの長期化に伴い、主要な原材料や副資材の調達難や価格高騰が発生するリスクがあります。これらのコスト上昇分を生産性向上や製品価格への転嫁で十分に吸収できない場合、収益を圧迫する可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。