石川製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石川製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石川製作所は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、紙工機械、防衛機器、受託生産などを展開しています。直近の業績では、防衛機器部門の売上が大きく伸びたことなどにより、全体として増収増益を達成しました。安定した経営基盤の確立と継続的な利益還元を目指し、技術の研鑽による品質向上に注力しています。


※本記事は、株式会社石川製作所の有価証券報告書(第125期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 石川製作所ってどんな会社?


同社は段ボール製函印刷機械などの紙工機械や、機雷などの防衛機器の製造販売を主力とする企業です。

(1) 会社概要


1921年に石井鉄工所として創立し、繊維機械の部品製作を開始しました。1937年に石川製作所へ社名変更し、1953年には大阪証券取引所に株式上場を果たしました。1954年に防衛機器製造の事業許可を受け、1964年には米国企業との業務提携により紙工機械の生産を開始するなど、事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で538名、単体で265名です。筆頭株主は紙工機械の主要販売先でもある事業会社のレンゴーで、第2位は日本生命保険、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。

氏名 持株比率
レンゴー 20.02%
日本生命保険相互会社 3.08%
日本マスタートラスト信託銀行 2.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は野口俊和氏が務めています。社外取締役の比率は23%です。

氏名 役職 主な経歴
野口俊和 代表取締役社長 1993年に同社へ入社し、営業統括部長や東京研究所副所長などを歴任。企画管理部門長や開発部門長を経て、2025年に代表取締役専務へ就任し、2026年より現職。
福本出 専務取締役 1979年に海上自衛隊に入隊し、海将などを歴任。2014年に同社へ入社して東京研究所副所長を務め、取締役や常務取締役を経て2025年より現職。
橋場良春 常務取締役 1985年に同社へ入社し、特機生産部長などを歴任。製造部門長や執行役員などを務め、取締役を経て2024年に常務取締役へ就任。2025年より現職。
辻清志 常務取締役 1974年に同社へ入社し、紙工機械部長などを歴任。執行役員や事業部門長、産機部門長などを務め、取締役を経て2025年に常務取締役へ就任。
小長谷育教 取締役相談役 1971年に伊藤忠商事へ入社。2006年に同社へ入社して執行役員や取締役に就任し、常務取締役や代表取締役社長を務め、2026年より現職。
水野孝 取締役 1981年に同社へ入社し、原価管理部長や企画開発部長などを歴任。執行役員や経営企画部長を務め、2024年に取締役に就任し、2026年より現職。
長宗浩 取締役 1981に関東航空計器へ入社し、財経部長や企画管理部長などを歴任。同社執行役員や代表取締役社長を務め、2025年に同社の取締役に就任し現職。


社外取締役は、三部廣美氏(レンゴー副社長執行役員)、村上克宏氏(元ジェイ・エム・エス専務取締役)、笠川信之氏(伊藤忠アビエーション取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「紙工機械」「防衛機器」「受託生産」および「その他」事業を展開しています。

(1) 紙工機械


段ボール製函印刷機械などの紙工機械の製造販売を行っています。主な顧客として、筆頭株主であり関係会社でもあるレンゴーなどの包装資材メーカーに対して、生産設備の要となる機械製品を開発・提供しています。

機械の販売から収益を得ています。運営は同社が製造販売を担うほか、イッセイが紙工機械の機械加工部品の一部を製造し、イシメックスが紙工機械に内蔵される制御盤などの電装関係部品の製造を行っています。

(2) 防衛機器


機雷や航空機用電子機器などの防衛機器の製造販売を行っています。防衛省と緊密に連携して研究開発や製品提供を行っており、防衛省のほか三菱重工業などを主要な顧客として、専門性の高い機器を供給しています。

防衛機器の販売や製造に関する契約から収益を得ています。同社および関東航空計器が製造販売を主導するほか、イッセイが機械加工部品の一部を製造し、イシメックスが機器に内蔵される制御盤などの電装関係部品の製造を担っています。

(3) 受託生産


他社から各種機械の生産を受託し、製造を行っています。島精機製作所のニット編み機の部品製造など、外部企業からの委託に基づいて部品や機械を供給し、産業の基盤を支えています。

委託元からの製造受託料から収益を得ています。同社が生産を受託するほか、イッセイが各種機械の機械加工部品の一部を製造し、イシメックスが機械に内蔵される電装関係部品の製造を行っています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、主に電子機器や繊維機械などの製造および販売を行っています。多様な産業向けに機械関連製品を提供し、事業基盤の安定化を図っています。

機械や機器の販売から収益を得ています。同社および関東航空計器が製造販売を担うほか、イッセイが機械加工部品の製造を行い、イシメックスが電装関係部品の製造を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで順調に推移しており、直近の2026年3月期には大幅な増収を達成しています。利益面でも経常利益や当期純利益が継続的に拡大しており、利益率も改善傾向にあるなど、着実な成長と収益力の向上がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 121億円 126億円 136億円 162億円 185億円
経常利益 2億円 2億円 3億円 6億円 12億円
利益率(%) 1.6% 1.7% 1.9% 4.0% 6.4%
当期純利益 1億円 1億円 2億円 1億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴って売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は上昇傾向にあります。販売費及び一般管理費は増加しているものの、それを上回る利益の伸びにより、営業利益および営業利益率ともに大きく改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 162億円 185億円
売上総利益 25億円 32億円
売上総利益率(%) 15.4% 17.5%
営業利益 7億円 13億円
営業利益率(%) 4.3% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比28%)、役員報酬が2億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である防衛機器部門が売上・利益ともに大きく牽引しており、大幅な増収増益を記録しています。一方、紙工機械部門や受託生産部門の売上は前年を下回りましたが、受託生産部門は安定した利益水準を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
紙工機械 30億円 27億円 -0.7億円 -0.2億円 -0.9%
防衛機器 111億円 142億円 13億円 21億円 14.8%
受託生産 13億円 11億円 0.8億円 0.8億円 7.1%
その他 8億円 5億円 2億円 0.2億円 4.6%
調整額 -0.3億円 -0.3億円 -8億円 -8億円 -
連結(合計) 162億円 185億円 7億円 13億円 7.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる「勝負型」です。本業からのキャッシュ創出がマイナスである一方、将来成長のために借入等による資金調達を行い、設備投資などを継続している状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -22億円 -34億円
投資CF -6億円 -7億円
財務CF 27億円 39億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、段ボール製函印刷機などの販売を通じて持続可能な循環型社会の形成に寄与するとともに、グループの持続的な成長によって地域社会の経済に貢献することを社会的意義として掲げています。ものづくりを通じて社会の期待に応え、顧客からの信頼を得ることを基本姿勢として事業を展開しています。

(2) 企業文化


「ものづくり」を通じて社会に貢献することを目指し、顧客の満足と信頼を得ることを第一としています。また、従業員が有する技術の継承と研鑽による品質向上に努め、無駄なコストの削減や作業効率化の徹底を図る実直な社風です。コンプライアンス意識の強化と経営の透明性向上にも力を入れています。

(3) 経営計画・目標


同社は継続的かつ安定的な配当を行う上で収益力の強化を最重要課題と位置づけ、財務体質の強化や利益還元を目指す方針を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


安定した経営基盤を確立し収益力を強化するため、主に3つの重点施策を推進しています。第一に顧客のニーズに対応する製品開発を通じた受注の拡大、第二に作業効率化や無駄なコストの徹底的な削減による原価低減、第三に従業員の技術の研鑽と継承による品質向上に取り組み、製品の信頼を高めて販売拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ものづくり」において人材が重要な財産であるとの認識のもと、「経営基盤の確立、地域TOPの給与を目指す」を目標に掲げています。奨学金返還支援制度などの導入により待遇改善や福利厚生の充実を図るほか、マイスター制度による若手への技術伝承を行い、専門性の高い人材の養成と定着を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.8歳 15.1年 6,349,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 86.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 44.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の不良発生リスク
同社グループは受注生産で多様な仕様の製品を扱っており、品質管理の徹底に努めていますが、製品に不良が生じた場合、補修や代替品の追加費用が発生する可能性があります。また、販売先での事故による損害賠償責任が生じるリスクがあり、経営成績に影響を与える可能性があります。対策として製造物賠償責任保険に加入しています。

(2) 株価等の下落リスク
同社および一部の連結子会社は、投資有価証券として上場株式を保有しています。景気後退等により一定以上株価が下落した場合、特別損失として投資有価証券評価損を計上するリスクがあります。また、確定給付企業年金制度の年金資産運用において、株価等の下落により運用状況が悪化し、退職給付費用が増加する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。