※本記事は、株式会社加地テックの有価証券報告書(第93期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 加地テックってどんな会社?
加地テックは圧縮機の製造販売を主たる事業とし、水素ステーション向け製品などで市場を牽引しています。
■(1) 会社概要
1905年5月に加地鉄工所として設立されました。1934年2月に株式会社に改組し、空気圧縮機を製造品目に追加しました。1962年7月に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1991年10月に社名を持株会社制などへの対応から現在の加地テックに変更しました。2017年3月には三井E&Sが親会社となりました。
現在の従業員数は単体で207名です。筆頭株主は親会社である三井E&Sで、第2位は取引先を中心とした加地取引先持株会、第3位は個人の早川直希氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井E&S | 51.06% |
| 加地取引先持株会 | 2.18% |
| 早川 直希 | 0.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は松岡克憲氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松岡 克憲 | 代表取締役社長 | 三井E&S(旧三井造船)出身。企画管理部長や戦略企画室長を歴任し、2023年6月より現職。 |
| 塩口 修治 | 取締役 | 三井E&S出身。財務経理部主管などを経て、2025年4月より現職。 |
| 田邉 雄三 | 取締役 | 同社入社後、生産管理部長や生産部長を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 桑田 和正 | 取締役 | 三井E&S出身。産業機械サービス事業部営業部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、中塚秀聡(中塚秀聡税理士事務所代表)、寺本真裕美(寺本社会保険労務士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「圧縮機事業」を展開しています。
加地テックは、単一セグメントとして圧縮機の製造販売を推進しています。主力製品である空気やガス圧縮機等の風水力機械、産業機械およびその他諸機械の製造販売を行っています。また、燃料電池自動車用水素ステーション向け超高圧圧縮機も提供し、国内外の様々な企業を顧客としてビジネスを展開しています。
収益は、主に圧縮機本体の販売代金から得ています。さらに、交換用の消耗部品の販売や、作業員を派遣して行う保守点検、オーバーホールなどのメンテナンスサービス等のアフターサービス事業からも安定した収益を獲得しています。事業の運営は主に加地テックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は概ね増加傾向にあり、順調に事業規模を拡大しています。利益面でも一時的な落ち込みがあったものの、その後は回復し、直近では利益率も向上して増益基調を維持しています。水素ステーション向け製品やアフターサービスが好調に推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 46億円 | 60億円 | 73億円 | 70億円 | 78億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 3億円 | 8億円 | 8億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 9.9% | 5.0% | 11.3% | 11.0% | 12.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 3億円 | 6億円 | 6億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
直近の業績は増収増益となっており、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。利益率も順調に改善しており、原価低減やアフターサービスの好調が収益性の向上に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 78億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.1% | 30.9% |
| 営業利益 | 6億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 8.9% | 11.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が4億円(構成比26%)、試験研究費が3億円(同19%)を占めています。売上原価の主な内訳としては、材料費が21億円(構成比40%)、経費が17億円(同32%)、労務費が15億円(同28%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は圧縮機事業の単一セグメントであるため、売上高は全社業績と一致しています。水素モビリティ関連やカーボンニュートラル関連の大口案件が存在し、圧縮機本体販売が堅調に推移したことに加え、アフターサービス事業の好調が売上成長を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 圧縮機事業 | 70億円 | 78億円 |
| 連結(合計) | 70億円 | 78億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 10億円 |
| 投資CF | -2億円 | -5億円 |
| 財務CF | -1億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「技術に立脚し社会が求める優れた商品及びサービスを提供することにより、全てのステークホルダーの繁栄並びに経済・社会の発展に貢献すること、及び常に技術の研究開発に努め、グローバル化の時代に即した国際競争力のある企業体質を涵養し、世界の企業として発展すること」を経営の基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、社是である「心」「技」「体」と企業理念の精神に基づき、倫理に適った企業活動を通じて、株主・顧客・従業員などの全てのステークホルダーから信頼される経営を目指す文化を持っています。また、人材ビジョンとして「顧客志向」「技術志向」「フォア・ザ・チーム」を定め、当事者意識と相互支援を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「2026中期経営計画」において、2028年度の最終年度に向けた経営目標を設定しています。水素社会への動きを見据え、アフターサービスを伸ばして利益を積み上げる方針です。
- 売上高:78億円
- 営業利益:11億円(営業利益率14%)
- 純利益:7.8億円
- ROE:8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「稼ぐ力の最大化」「圧縮機事業の次世代化」「経営基盤の進化」を三本の矢とした戦略を実行しています。具体的には、アフターサービスへの重点強化、水素領域のブランド化、DXによる生産性革新などを推進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するモノづくりとソリューションサービス企業を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
商品とサービスの提供主体は人であり、人材を重要な経営資源と位置付けています。一人ひとりがより深く顧客の視点を持ち、より一層の技術力の向上を図ること、そして当事者意識と相互支援を通じて組織の力を高めていくことで持続的な成長を目指し、各階層・職種での教育や研修を通じた人材育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.2歳 | 15.3年 | 7,023,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 材料価格の高騰
製品の主要原材料である鋼材や部材の調達価格が市況変動により高騰することで、収益が圧迫される可能性があります。同社は新規調達先の開拓や調達仕様の見直しに取り組むことで、このリスクの低減に努めています。
■(2) 顧客企業の設備投資動向
主力製品である特殊高圧圧縮機やサービスの販売動向は、顧客となる企業の設備投資状況から直接的な影響を受けます。同社は各業界の設備投資動向を把握し、新規の需要開拓や受注拡大に注力することで対応しています。
■(3) 市場での製品販売価格の下落
市場競争力を持つ差別化された製品の提供に注力していますが、他社との競合によって受注価格の下落を招く可能性があります。これに対して、市場ニーズに応じた付加価値の高い製品を持続的に提供することでリスク低減を図っています。



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