※本記事は、株式会社加地テック の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 加地テックってどんな会社?
石油化学プラントや水素ステーション等で使用される特殊ガス圧縮機の製造販売を主力とする機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1905年に加地鉄工所として創業し、1934年に改組して空気圧縮機の製造を開始しました。1962年に大阪証券取引所市場第二部(現・東証スタンダード)へ上場。2015年に三井造船(現・三井E&S)と資本業務提携を行い、2017年の株式公開買付けを経て同社の子会社となりました。
現在の従業員数は単体205名です。大株主は、筆頭株主が事業会社の三井E&S、第2位は取引先で構成される持株会、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井E&S | 51.05% |
| 加地取引先持株会 | 2.04% |
| 桜井 昭一 | 0.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は松岡克憲氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松岡 克憲 | 代表取締役社長 | 三井造船入社後、三井E&S取締役執行役員等を歴任。2023年6月より現職。 |
| 塩口 修治 | 取締役 | 三井造船入社後、三井E&S財務経理サービス部主管等を経て2025年4月より現職。 |
| 田邉 雄三 | 取締役 | 加地テック入社。生産部長、アフターサービス部長等を歴任し2025年6月より現職。 |
| 桑田 和正 | 取締役 | 三井造船入社。三井E&S成長事業推進事業部管理部長を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、中塚秀聡(税理士)、寺本真裕美(元長谷工管理ホールディングス常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「圧縮機事業」および「その他」事業を展開しています。
**(1) 本体・部品販売**
日本国内および東アジア、東南アジア、中近東等の顧客に対し、各種ガス・空気圧縮機本体の製造・販売を行っています。また、これらの圧縮機の安定稼働に必要となる交換用消耗部品の販売も手掛けています。
この事業の主な収益源は、顧客である石油化学プラント、ガス会社、エンジニアリング会社等からの製品および部品の販売代金です。運営は加地テックが行っています。
**(2) 保守・メンテナンスサービス**
製品を納入した顧客に対して、当社作業員を派遣して行う定期点検、稼働状況の分析、メンテナンス作業、オーバーホール、修理などのアフターサービスを提供しています。
この事業の収益は、役務提供完了時に顧客から受け取るサービス対価です。運営は加地テックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は46億円から73億円の間で推移し、当期は70億円となりました。利益面では変動があり、2023年3月期に一時落ち込みましたが、直近2期は経常利益7〜8億円台、当期利益5億円台と比較的高い水準を維持しています。利益率は5%〜11%台で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 57億円 | 46億円 | 60億円 | 73億円 | 70億円 |
| 経常利益 | 4.2億円 | 4.6億円 | 3.0億円 | 8.2億円 | 7.7億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 9.9% | 5.0% | 11.3% | 11.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 3.1億円 | 2.9億円 | 5.8億円 | 5.8億円 |
■(2) 損益計算書
減収となったものの、原価低減への取り組み等により売上総利益は微増し、売上総利益率は2.1ポイント改善しました。一方で、研究開発費や人件費などの販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 73億円 | 70億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.0% | 29.1% |
| 営業利益 | 7.7億円 | 6.2億円 |
| 営業利益率(%) | 10.6% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が3.7億円(構成比26%)、試験研究費が2.7億円(同19%)、雑費が2.4億円(同17%)を占めています。売上原価においては、材料費が41%、労務費が27%、経費が32%を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は水素市場の伸び悩みや海外向け販売の減少により減収となりましたが、アフターサービス事業が堅調に推移し、利益面での下支えとなりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 圧縮機事業 | 73億円 | 70億円 | 7.7億円 | 6.2億円 | 8.9% |
| 連結(合計) | 73億円 | 70億円 | 7.7億円 | 6.2億円 | 8.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
加地テックは、営業活動により資金を創出し、投資活動で設備投資を行い、財務活動で借入金の返済や配当金の支払いを行っています。営業活動では、税引前当期純利益の計上や売上債権の減少が資金増加に寄与しましたが、仕入債務の減少や法人税等の支払いがそれを一部相殺しました。投資活動では、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出が資金減少の主な要因となりました。財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払いが資金減少につながりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.4億円 | 5.4億円 |
| 投資CF | -1.6億円 | -2.5億円 |
| 財務CF | -1.3億円 | -1.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
技術に立脚し社会が求める優れた商品とサービスを提供することで、全てのステークホルダーの繁栄と経済・社会の発展に貢献することを基本方針としています。また、常に技術の研究開発に努め、グローバル化時代に即した国際競争力のある企業体質を涵養し、世界の企業として発展することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、社是「心」「技」「体」と企業理念の精神に基づき、倫理に適った企業活動を行うことを重視しています。コーポレートガバナンス・コードへの対応とともに、全ステークホルダーとの協働を可能にする行動基準を策定・実践し、内部統制や法令遵守の徹底に努めるなど、誠実で透明性の高い組織運営を志向しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けた長期経営計画「KAJI 2030VISION」の第一ステップとして、2023年度から2025年度までの中期経営計画を策定しています。最終年度である2025年度の数値目標については、水素ステーション普及の遅れ等を踏まえて修正を行っています。
* 売上高:71億円
* 営業利益:6.8億円
* 純利益:5.1億円
* ROE:6.3%
■(4) 成長戦略と重点施策
カーボンニュートラル社会の実現に向け、超高圧技術を活用した製品開発と新市場での商品化を推進しています。特に水素サプライチェーン市場でのシェア拡大を目指すほか、既存事業の品質・コスト・納期(QCD)強化、アフターサービス拡大による収益力向上、海外市場での展開強化を重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「顧客志向」「技術志向」「フォア・ザ・チーム」を人材ビジョンに掲げ、人材と組織の成長を重要な経営戦略と位置付けています。各階層・各職種での教育・研修を実施し、従業員エンゲージメントを高める経営やTQM(総合的品質管理)活動を通じて、製品品質・サービスの向上とSDGsへの取り組み強化を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 15.6年 | 6,895,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 90.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たりの年間研修受講時間(7.2時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
**(1) 材料価格高騰に係るリスク**
主要原材料である鋼材や部材の調達価格が市況変動により高騰した場合、収益を圧迫し経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は新規調達先の開拓や調達仕様の見直しに取り組み、リスク低減に努めています。
**(2) 品質問題に係るリスク**
ISO9001に基づく品質管理体制を構築していますが、予期せぬ欠陥や不具合が発生した場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。製造物責任賠償保険への加入や品質管理体制の強化により、リスク低減と品質向上に注力しています。
**(3) 設備投資動向に係るリスク**
主力製品である特殊高圧圧縮機およびサービスの販売は、顧客企業の設備投資状況に影響を受けます。各業界の動向を把握し、新規需要開拓や受注拡大に注力することで、特定市場への依存リスクの低減を図っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。