※本記事は、株式会社島精機製作所の有価証券報告書(第65期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 島精機製作所ってどんな会社?
コンピュータ横編機やデザインシステムなどの開発・製造・販売をグローバルに展開する機械メーカーです。
■(1) 会社概要
島精機製作所は1961年に手袋編機用半自動装置の製造販売を目的として設立されました。1964年の全自動手袋編機の開発を皮切りに、1967年には横編機業界へ進出しました。その後も技術革新を続け、1995年には完全無縫製型のコンピュータ横編機を市場に投入しています。1990年に大阪証券取引所第二部に上場し、1996年には東京証券取引所第一部へ上場を果たしました。
同社の従業員数は連結で1,654名、単体で1,256名規模の体制となっています。筆頭株主は、代表取締役社長である島三博氏が議決権の100%を直接保有する資産管理会社の和島興産で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は取引金融機関である紀陽銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 和島興産 | 8.85% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.71% |
| 紀陽銀行 | 4.09% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員営業本部長兼内部監査室、サステナビリティ推進室、カッティングソリューション事業部管掌は島三博氏が務めています。なお、社外取締役の比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 島三博 | 代表取締役社長執行役員営業本部長兼内部監査室、サステナビリティ推進室、カッティングソリューション事業部管掌 | 1987年3月同社入社。システム開発部長、取締役等を経て、2018年6月代表取締役社長執行役員に就任。2025年6月より現職。 |
| 大谷明広 | 取締役常務執行役員生産本部長兼開発本部管掌 | 1988年8月同社入社。生産部長、取締役執行役員生産本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 北川尚作 | 取締役常務執行役員経営企画部長兼総務人事部、情報システム部、経理財務部管掌 | 1991年3月同社入社。経営企画部長、取締役執行役員経営企画部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 戸津井久仁 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1988年3月同社入社。内部監査室長、常勤監査役を経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、一柳良雄(一柳アソシエイツ設立代表取締役&CEO)、残間里江子(キャンディッドプロデュース設立代表取締役社長)、新川大祐(北斗税理士法人設立代表社員)、野村祥子(堂島法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「横編機事業」、「デザインシステム関連事業」、「手袋靴下編機事業」および「その他」の各事業を展開しています。
■横編機事業
アパレル・ファッション業界等の顧客向けに、コンピュータ横編機やセミジャカード横編機などの製品や部品を提供しています。消費地における需要動向に対応した適時適量生産を可能にするホールガーメント横編機などを展開しています。
主な収益源は、横編機をはじめとする製品および組み立て用部品の販売代金です。製品の製造は同社が行っており、国内外の販売については、同社が直接または商社・代理店経由で行うほか、海外では島精機(香港)有限公司などの多数の販売子会社が担っています。
■デザインシステム関連事業
国内外のファッション関連教育機関やアパレル企業向けに、コンピュータデザインシステムや自動裁断機(アパレルCAD/CAMシステム)などの開発・製造を行っています。企画から生産・販売までのサプライチェーン全体を支援するソリューションを提供しています。
ハードウェア製品の販売に加えて、デザインシステムソフトウェアのサブスクリプションサービスである「APEXFiz」のライセンス契約料などから収益を得ています。運営や販売は、同社および各種海外販売子会社が担当しています。
■手袋靴下編機事業
シームレス手袋編機や靴下編機などの製造と販売を行っています。全自動パイル手袋編機などを展開し、国内外のユーザーの設備投資需要に応える製品を提供しています。
収益源は、手袋靴下編機の製品や部品の販売代金です。同セグメントの製造・販売活動は、同社を中心としたグループ体制により運営されています。
■その他事業
報告セグメントに含まれない事業分野として、編機やデザインシステム用のメンテナンス部品の製造販売、修理や保守サービスの提供などを手掛けています。
製品販売後のアフターサービスや部品販売、さらには連結子会社である東洋紡糸工業が手掛ける繊維原料の製造・販売などによって収益を確保しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は300億円台で推移していますが、経常利益および当期利益はマイナスに落ち込む期が多く見られます。直近では売上高がやや回復基調にあり、利益面での赤字幅も縮小するなど改善の兆しがうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 310億円 | 379億円 | 359億円 | 325億円 | 335億円 |
| 経常利益 | -34億円 | -17億円 | 10億円 | -115億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | -11.0% | -4.5% | 2.8% | -35.3% | 0.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -38億円 | -44億円 | -5億円 | -143億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近の2期間では、売上高の微増に加えて売上総利益率が大きく改善しており、本業の収益性が高まっています。これに伴い、営業利益の赤字幅が前期から大幅に縮小する結果となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 325億円 | 335億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 119億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.5% | 35.5% |
| 営業利益 | -119億円 | -17億円 |
| 営業利益率(%) | -36.6% | -5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が39億円(構成比29%)、研究開発費が33億円(同24%)を占めています。売上原価は216億円で、売上高に対する構成比は64%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の横編機事業は、バングラデシュや欧州市場での需要回復により増収となり、利益も大幅に黒字転換しました。デザインシステム関連事業やその他事業も増収増益を達成しており、全社的な業績改善を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 横編機 | 232億円 | 239億円 | -50億円 | 26億円 | 10.9% |
| デザインシステム関連 | 28億円 | 30億円 | 1.1億円 | 6.7億円 | 22.3% |
| 手袋靴下編機 | 7.6億円 | 5.2億円 | 0.3億円 | 0.8億円 | 15.4% |
| その他 | 57億円 | 61億円 | -1.3億円 | 10億円 | 16.4% |
| 調整額 | - | - | -69億円 | -61億円 | - |
| 連結(合計) | 325億円 | 335億円 | -119億円 | -17億円 | -5.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業CFと資金調達によって事業転換などのための投資を行う再建・転換型の局面にあると言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -45億円 | 4.1億円 |
| 投資CF | -32億円 | -15億円 |
| 財務CF | 54億円 | 55億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「創造の力で未来に幸せを」というパーパス(存在意義)のもと、「人と地球の未来のためにあらゆる課題解決に挑戦し続けます」「つながりを大切にワクワクする新たな価値をつくります」というミッションを掲げて経営を行っています。
■(2) 企業文化
「相互尊重」「広い視野」「チャレンジ」「時間を大切に」「共につくる」という5つのバリュー(大切にする価値観)を掲げています。この価値観のもと、従業員一人ひとりが自律的に考え行動し、「世の中になくてはならない企業」となることを目指す文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度からスタートした3カ年の中期経営計画「Ever Onward 2026」において、2027年3月期の経営目標として以下の数値を定めています。
・売上高 410億円
・営業利益 3億円
・経常利益 10億円
・当期純利益 9億円
・ROE 1.1%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
アパレル業界が抱える課題解決のため、市場ニーズに即した「あるべきビジネスモデル」の構築を目指しています。これを実現するため、収益安定化に向けた「経営基盤の再構築」、業界全体の付加価値を高める「ソリューションビジネスの確立」、新製品開発による「横編機事業の再生」、機械性能を向上させる「自動裁断機事業の拡大」の4つの重点施策を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「創造の力」の源泉である人材を重要な人的資本と位置づけ、多様な価値観を持つ人材の採用と育成を推進しています。自律的な学びを支援する充実した研修制度や社内公募制度を整備し、個々の能力を最大限に発揮できるダイバーシティの推進や、ワーク・ライフ・バランスを重視した社内環境の構築に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.5歳 | 22.3年 | 5,984,096円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 44.2% |
※女性管理職比率は省略理由が明記されていないため記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境・競合状況の変動リスク
消費者の生活様式の変化やサステナビリティ対応の要求、天候不順等により、主要な販売先であるニット製品メーカーの設備投資が減退する可能性があります。また、競合他社の技術革新や原材料価格の高騰も、同社の競争優位性や業績に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
■(2) 知的財産保護戦略の課題
同社の高度な技術やノウハウが、海外での模倣製品の流通により侵害されるリスクがあります。また、生成AIやSNSの普及による新たな権利侵害リスクや、他社の知的財産権を意図せず侵害してしまうことによる損害賠償や販売支障のリスクも認識されています。
■(3) 情報セキュリティに関するリスク
情報通信システムの不具合や、外部からのサイバー攻撃、コンピュータウイルス感染により、取引処理の遅延や情報流出が発生するリスクがあります。これらの情報セキュリティインシデントは、同社グループの事業活動や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 組織及び人材に関するリスク
高度な専門性や創造性を持つ人材の確保・育成が計画通りに進まず、人材流出や確保難が深刻化した場合、製品開発力や品質の低下を招く恐れがあります。特定の人材への過度な依存は事業競争力の低下につながるため、技術伝承や多様な採用活動等の対策が求められています。



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