※本記事は、株式会社島精機製作所 の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 島精機製作所ってどんな会社?
世界初の完全無縫製横編機「ホールガーメント」を開発した、和歌山県に本社を置く繊維機械のリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
1961年に設立し手袋編機用半自動装置の製造を開始。1995年に世界初の完全無縫製型横編機(ホールガーメント)の製造販売を開始し、業界に革新をもたらしました。1996年に東証一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。近年は自動裁断機やデザインシステムの開発にも注力しています。
連結従業員数は1,762名、単体では1,328名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は代表取締役社長の資産管理会社である和島興産、第3位は地元和歌山の地方銀行である紀陽銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.35% |
| 和島興産 | 8.69% |
| 紀陽銀行 | 4.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員は島三博氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 島 三博 | 代表取締役社長執行役員営業本部長兼内部監査室、サステナビリティ推進室、カッティングソリューション事業部管掌 | 1987年入社。システム開発部長、取締役副社長、営業本部長などを経て、2017年より現職。 |
| 大谷 明広 | 取締役常務執行役員生産本部長兼開発本部管掌 | 1988年入社。生産部長、執行役員生産部長、取締役執行役員生産本部長兼開発本部担当などを経て、2025年より現職。 |
| 北川 尚作 | 取締役常務執行役員経営企画部長兼総務人事部、情報システム部、経理財務部管掌 | 1991年入社。経営企画部長、執行役員、取締役執行役員経営企画部長兼総務人事部担当などを経て、2025年より現職。 |
| 戸津井 久仁 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1988年入社。内部監査室長、常勤監査役を経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、一柳良雄(元通商産業省総務審議官)、残間里江子(キャンディッドプロデュース社長)、新川大祐(北斗税理士法人代表社員)、野村祥子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「横編機事業」「デザインシステム関連事業」「手袋靴下編機事業」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 横編機事業
コンピュータ横編機や、縫製なしでニットウェアを編成できるホールガーメント横編機などの製造販売を行っています。主な顧客は国内外のアパレルメーカーやニット製品メーカーです。
製品の販売対価として収益を得ています。製造は主に島精機製作所が行い、販売は同社および海外の連結子会社(SHIMA SEIKI EUROPE LTD.、SHIMA SEIKI U.S.A. INC.、島精機(香港)有限公司など)が担当しています。
■(2) デザインシステム関連事業
アパレル製品の企画・デザインを行うコンピュータデザインシステムやアパレルCAD/CAMシステム、生地などを裁断する自動裁断機(P-CAM)の製造販売を行っています。アパレル・ファッション業界だけでなく、産業資材分野の顧客にも提供しています。
ハードウェアおよびソフトウェアの販売、サブスクリプションサービスの利用料などが主な収益源です。島精機製作所が製造を行い、同社および各国の販売子会社を通じて顧客へ提供しています。
■(3) 手袋靴下編機事業
作業用手袋やファッション手袋、5本指靴下などを編むためのシームレス手袋編機・靴下編機の製造販売を行っています。国内外の手袋・靴下メーカーが主な顧客です。
製品の販売により収益を得ています。製造は島精機製作所が担い、販売は同社および海外子会社が行っています。
■(4) その他
上記セグメントに含まれない事業として、各事業に関連するメンテナンス部品の販売や修理・保守サービス、紡毛糸の製造販売などを展開しています。
部品販売やサービス料、繊維原料の販売代金などが収益源です。部品・サービスは島精機製作所および販売子会社が、繊維原料等は子会社の東洋紡糸工業などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後で推移していますが、利益面では変動が激しい状況です。直近の2025年3月期は、売上高が減少したことに加え、大幅な営業損失および当期純損失を計上し、厳しい決算となりました。特に2025年3月期は経常損失が100億円を超える規模に拡大しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 245億円 | 310億円 | 379億円 | 359億円 | 325億円 |
| 経常利益 | -73億円 | -34億円 | -17億円 | 10億円 | -115億円 |
| 利益率(%) | -29.7% | -11.0% | -4.5% | 2.8% | -35.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -179億円 | -36億円 | -56億円 | 10億円 | -143億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は9.4%減少しました。売上原価の増加により売上総利益が大幅に減少し、売上総利益率は40.9%から26.5%へと悪化しました。さらに、販売費及び一般管理費が大幅に増加した結果、営業損益は前期の黒字から119億円の赤字へと転落しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 359億円 | 325億円 |
| 売上総利益 | 147億円 | 86億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.9% | 26.5% |
| 営業利益 | 4億円 | -119億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | -36.6% |
販売費及び一般管理費のうち、貸倒引当金繰入額が48億円(構成比23%)、給料手当が38億円(同18%)、研究開発費が38億円(同18%)を占めています。特に貸倒引当金繰入額が前期の戻入益から大幅な繰入額へと転じたことが販管費増加の主因です。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて減収または利益の悪化が見られます。主力の横編機事業は中国市場の回復遅れや欧州市場の減速により減収となり、営業損失へ転落しました。デザインシステム関連事業も減収減益となり、手袋靴下編機事業は増収ながら減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 横編機事業 | 259億円 | 232億円 | 44億円 | -50億円 | -21.6% |
| デザインシステム関連事業 | 35億円 | 28億円 | 9億円 | 1億円 | 4.0% |
| 手袋靴下編機事業 | 4億円 | 8億円 | 0.6億円 | 0.3億円 | 3.3% |
| その他 | 61億円 | 57億円 | 13億円 | -1億円 | -2.3% |
| 調整額 | - | - | -62億円 | -69億円 | - |
| 連結(合計) | 359億円 | 325億円 | 4億円 | -119億円 | -36.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -41億円 | -45億円 |
| 投資CF | -2億円 | -32億円 |
| 財務CF | 3億円 | 54億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-16.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「創造の力で未来に幸せを」というパーパス(存在意義)を掲げています。また、「人と地球の未来のためにあらゆる課題解決に挑戦し続けます」「つながりを大切にワクワクする新たな価値をつくります」というミッション(使命)のもと、「世の中になくてはならない企業」になることを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念の実現に向け、グループ全体で共有するバリュー(価値観)として、「相互尊重」「広い視野」「チャレンジ」「時間を大切に」「共につくる」の5つを掲げています。これらを全社員が一丸となって実践し、邁進していくという姿勢を示しています。
■(3) 経営計画・目標
10年後のあるべき姿の実現に向け、2024年度から3カ年の中期経営計画「Ever Onward 2026」を推進しています。最終年度である2027年3月期の経営目標として、以下の数値を掲げています。
* 連結売上高:550億円
* 営業利益:70億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:55億円
* ROE:6.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
ビジネスチャンスを確実に掴むため、以下の4つの重点施策を推進しています。
* 経営基盤の再構築:収益の安定化と成長に向けた意識改革、社内体制・業務プロセスの刷新。
* ソリューションビジネスの確立:サプライチェーンの課題解決ソリューションを提供し、業界全体の付加価値を向上させる。
* 横編機事業の再生:市場に合った新製品開発、徹底したコストダウン、ファッション産業以外の新規市場開拓。
* 自動裁断機事業の拡大:製品ラインアップの拡充と販売ルート・アフターサービス網への積極投資。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「創造の力」の源泉である人材を企業の持続的成長に不可欠なものとし、個人の成長を支援する充実した研修制度を整備しています。階層別研修や語学研修に加え、次世代経営人材の育成も推進しています。また、社内公募制度や部門間トレーニー制度により自律的なキャリア形成を支援し、多様な人材の採用と活躍を推進するダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.7歳 | 21.6年 | 6,371,103円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 84.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 68.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 43.0% |
※女性管理職比率については、有報の記載箇所に数値の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境・競合状況の変動リスク
主要顧客であるニット製品メーカーの設備投資意欲は、消費者の生活様式や環境意識の変化、経済活動の停滞、天候不順等により大きく変動する可能性があります。また、競合他社の技術革新や、国際情勢によるサプライチェーンの混乱、原材料費高騰も業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 財務に関するリスク(与信及び売上債権)
横編機事業では債権回収が長期化する傾向があり、特にアジア市場での大規模取引においては1社あたりの金額も大きくなります。回収リスク低減策を講じていますが、主要市場でのリスク拡大や顧客の資金繰り悪化により、貸倒引当金の計上が増加し、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 為替レートの変動
海外売上高比率が約80%と高く、取引の多くが外貨建てで行われているため、急激な為替レートの変動は業績に影響を及ぼします。先物為替予約等によるリスクヘッジを行っていますが、為替動向によっては業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。



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