※本記事は、東京機械製作所の有価証券報告書(第169期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京機械製作所ってどんな会社?
■(1) 会社概要
同社は1888年8月に内務省より三田製作所の払下げを受け、東京機械製造として創業した歴史ある企業です。1906年4月に国産新聞輪転印刷機第1号機を完成させ、長年にわたり新聞業界を支えてきました。1949年5月に東京証券取引所に上場し、2024年4月に東機システムサービスを吸収合併しています。2025年6月にはコーポレート・ガバナンスの充実を目指し、監査等委員会設置会社へ移行しました。
現在の従業員数は連結で303名、単体で230名です。筆頭株主は事業会社の読売新聞東京本社で、第2位は大田昭彦氏、第3位は事業会社の損害保険ジャパンとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 読売新聞東京本社 | 27.03% |
| 大田昭彦 | 11.36% |
| 損害保険ジャパン | 6.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長執行役員営業担当は都並清史氏です。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 都並清史 | 代表取締役社長執行役員営業担当 | 1982年4月入社。営業部長、第一事業部国内販売グループ部長、執行役員国内事業部長、常務執行役員などを経て、2021年4月より現職。 |
| 中野実 | 取締役常務執行役員管理本部長 兼 社長室長 | 1985年4月安田火災海上保険入社。損害保険ジャパン等を経て2016年4月入社。総務部長、執行役員管理本部長等を経て2025年6月より現職。 |
| 米本裕至 | 取締役常務執行役員FA本部長 兼 経営戦略室長 | 1985年4月安田火災海上保険入社。損害保険ジャパン等を経て2020年4月出向。経理部長、営業本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 神崎幸雄 | 取締役(監査等委員) | 1982年4月入社。常務執行役員営業副統括等を経て一度退社後、東機システムサービスに入社。2023年6月同社常勤監査役に就任し、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、竹田いさか氏(弁護士)、戸山幹夫氏(元みずほ銀行勝田台支店長)、大山敬三氏(元損害保険ジャパン執行役員関東本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「印刷機械関連」事業を展開しています。
■(1) 印刷機械の製造販売・保守サービス
主に新聞社などを顧客とし、新聞用オフセット輪転機などの印刷機械の製造販売や、これらを制御するプレスコントロールシステムの製造販売、および保守メンテナンスサービスを提供しています。
顧客である国内外の新聞社から、大型機器の販売代金や保守サービス料を受け取ります。運営は主に東京機械製作所が行っています。
■(2) 周辺機械の製造販売および新規事業
新聞発送システムをはじめとする印刷機械の周辺機器の製造販売を行っています。また、新規事業として製造業や物流業に向けた全天候型自律走行搬送ロボット(AMR)などのFA事業や、加工組立事業にも注力しています。
機器の導入企業などから販売代金や保守料金、受託加工費用などを受け取ります。周辺機器の製造販売などの運営は、主に子会社のKKSが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は68.6億円から一時93.2億円まで拡大したのち、直近期では84.6億円となっています。経常利益は赤字から黒字に転換し、近年は7億円から8億円台で安定して推移しており、利益率は回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 68.6億円 | 87.7億円 | 93.2億円 | 74.0億円 | 84.6億円 |
| 経常利益 | -3.8億円 | 8.2億円 | 6.5億円 | 7.5億円 | 7.8億円 |
| 利益率(%) | -5.6% | 9.4% | 7.0% | 10.1% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9.3億円 | 1.6億円 | 3.0億円 | 13.8億円 | 9.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は74.0億円から84.6億円へと増加し、それに伴い売上総利益や営業利益も拡大しています。一方で、売上総利益率は25.5%から24.0%にやや低下しており、営業利益率も同水準で横ばいに推移しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 74.0億円 | 84.6億円 |
| 売上総利益 | 18.9億円 | 20.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.5% | 24.0% |
| 営業利益 | 6.4億円 | 7.2億円 |
| 営業利益率(%) | 8.7% | 8.5% |
販売費及び一般管理費のうち、事務員給与手当及び賞与が4.9億円(構成比38%)、役員報酬が1.4億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は印刷機械関連事業の単一セグメントです。主力である次世代型標準輪転機の販売活動を積極的に展開した結果、売上高は前年を上回る水準となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 印刷機械関連 | 74.0億円 | 84.6億円 |
| 連結(合計) | 74.0億円 | 84.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはそれぞれマイナスとなっています。これは営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のパターンです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8.7億円 | 10.8億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -3.2億円 |
| 財務CF | -0.1億円 | -0.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.4%でいずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業以来の長い伝統に基づく真の物づくりを通じて、内外の顧客の信頼を築き上げることを基本方針としています。顧客満足を徹底的に追求して対価を得る経営を行い、痛みの伴う構造改革を断行して収益体質を構築することで、長期的に公共社会へ貢献していくことを使命として掲げています。
■(2) 企業文化
自社の強みを再定義し、足りない力は外部に求めてより良い製品・サービスを創り出すことを重視しています。また、組織を集約化し、各人が仕事の領域を広げることでグループ全体の利益を追求するとともに、グループ内各社が対等な関係に立って互いの強みを融合させ、シナジーを創出する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は『TKSグループ中期経営計画』を策定し、「顧客の課題に向き合い、柔軟なカスタマイズ力により新たな価値を創造し、課題解決をサポートする」ことを目指す姿として掲げています。具体的な中期の経営目標として、2027年3月期に以下の数値を設定しています。
* 売上高100億円
* 営業利益7億円〜8億円
* ROE6〜8%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は持続的な成長に向けて、輪転機事業の生産体制の最適化と新規事業の育成を重点施策としています。輪転機事業では次世代型標準輪転機の拡販に注力する一方、新規事業としてFA分野での全天候型自律走行搬送ロボット(AMR)の開発や、電池製造機械向け部品の加工組立事業を展開し、収益基盤の多角化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を重要な基盤と位置づけ、設計から据付までを一貫して担う人材の育成に注力しています。人材育成方針としてOJTを基本に、外部研修の活用や資格取得支援を通じてスキル向上を図っています。また、多様な人材が継続して活躍できるよう、育児・介護の両立支援制度や、創意工夫を促す表彰制度などの社内環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.9歳 | 23.3年 | 7,355,954円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は従業員規模が300人以下のため、有報には男性育児休業取得率や男女賃金差異などの記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新聞用オフセット輪転機市場の縮小
インターネットの普及に伴う新聞購読者数および広告収入の減少により、新聞社の設備投資に対する慎重な姿勢が続いています。これにより同社の主力市場である新聞用オフセット輪転機市場は縮小傾向にあり、同社グループの業績や財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 大型案件への依存と売上構成の偏り
同社グループの売上高は国内外の新聞社を中心とした受注生産により構成されています。個々の契約が巨額に及ぶケースがあり、顧客の設備投資の決定時期や納期によって年度ごとの売上高が大きく変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 新規FA事業における開発投資の負担
同社グループは新規事業として自動搬送ロボットなどのFA事業に注力していますが、当該市場は発展途上で競合も多く、技術革新に対応するための継続的な研究開発投資が不可欠です。この投資負担が重くのしかかり、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) グローバル展開に伴う為替変動
アメリカやアジアなど海外市場への販売を行っており、現地通貨建ての長期契約が存在します。受注から代金回収までに1年以上かかる案件もあるため、為替レートの変動(特に円高の進行)が同社グループの業績および財政状態に悪影響をもたらす可能性があります。



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