※本記事は、木村化工機株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 木村化工機ってどんな会社?
同社はプラント設備の設計・施工や原子力関連機器の製造を手掛ける総合エンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1924年に木村鉛工所として創業し、鉛工事や関連機器の製造を開始しました。1956年には原子力利用関係機器等の設計・製作へ参入し、事業領域を拡大しています。1961年に株式上場を果たし、1969年に現在の木村化工機へ商号を変更しました。2024年には創業100周年を迎えた歴史ある企業です。
現在の同社は、連結で442名、単体で434名の従業員を擁しています。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務などを行う信託銀行であり、第3位には同社の関連グループ持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.97% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.22% |
| 木村化工機関連グループ持株会 | 5.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役取締役会長兼取締役社長は小林康眞氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林康眞 | 代表取締役取締役会長兼取締役社長 | 1972年3月同社入社。2000年6月取締役、常務、専務を経て、2007年6月代表取締役社長。2021年6月より現職。 |
| 佐伯博 | 専務取締役化工機事業部長、エンジニアリング事業部管掌、調達部担当 | 1975年4月同社入社。2016年6月取締役、2021年6月常務取締役を経て、2025年6月より現職。 |
| 井城逸雄 | 常務取締役業務監査室担当、内部統制担当、法務室担当 | 三井住友信託銀行、三井住友トラスト不動産を経て2016年10月同社入社。2018年6月取締役を経て2022年6月より現職。 |
| 重洋一 | 取締役エンジニアリング事業部長兼人材開発部長 | 1986年4月同社入社。2018年6月執行役員エンジニアリング事業部営業部長を経て、2020年6月より現職。 |
| 尾崎真司 | 取締役エネルギー・環境事業部長兼同事業部営業部長、東京支店担当、品質保証部担当 | 日本通運などを経て1999年10月同社入社。エネルギー・環境事業部営業部長、執行役員を経て2022年6月より現職。 |
| 谷口直彦 | 取締役製造部門長兼尼崎工場長 | 1996年3月同社入社。2022年4月製造部門尼崎工場長、同年6月執行役員を経て2023年6月より現職。 |
| 藤井克祐 | 取締役管理部門長兼総務部長、企画室担当、秘書室担当 | 尼崎経営者協会に入職し、事務局長、常務理事、専務理事を歴任。2023年6月同社に入社し、現職。 |
| 正木惠之 | 取締役開発部長、情報システム部担当 | 宇部興産、三菱化工機を経て2025年4月同社入社。同年6月取締役となり、2025年12月より現職。 |
| 粂芳明 | 取締役(監査等委員)常勤 | シャディを経て2007年9月同社入社。経理部長、上席執行役員等を経て2021年6月取締役。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、嶋野修司(弁護士法人色川法律事務所パートナー)、濱田隆祐(はまだ税理士法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンジニアリング事業」「化工機事業」「エネルギー・環境事業」を展開しています。
■(1) エンジニアリング事業
蒸発装置、蒸留装置、晶析装置などの化学機械装置や圧力容器等の設計、製作、加工、販売、付帯工事を提供しています。設計から試運転までを一貫して行うプラントエンジニアリング(EMPC方式)での対応を強みとしています。
顧客から機器の販売代金や据付・配管等の工事代金を受け取ります。また、脱炭素・循環型社会に向けた省エネ型装置の受注拡大にも注力しています。事業の運営は主に木村化工機が行っています。
■(2) 化工機事業
各種プラント設備や機器類の関連工事(製作、撤去、据付、配管等)およびメンテナンス工事の管理や請負施工を提供しています。既存設備の安定稼働に向けた定期修理などが主な顧客ニーズです。
顧客から定期修理工事やメンテナンス工事、単体機器の工事代金を受け取ります。協力会社と良好な関係を構築し、コスト競争力の強化を図っています。事業の運営は主に木村化工機が行っています。
■(3) エネルギー・環境事業
原子力発電所関連の周辺装置や、福島第一原発関連の廃炉・デブリ処理機器、放射性廃棄物処理装置、核燃料輸送容器などの設計・製作・工事を提供しています。
顧客から特殊機器の販売代金や保守・保全業務、解体工事等の代金を受け取ります。事業の運営は主に木村化工機および子会社のフォレコが担い、製造や現地工事を分担して進めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、一時的な落ち込みを経て増収増益基調に転じています。2023年3月期は減収減益となりましたが、その後は底堅い設備投資需要等を捉えて持ち直し、2026年3月期には売上高280億円、経常利益31億円へと回復・成長を遂げています。利益率も改善傾向にあり、安定した収益力を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 246億円 | 216億円 | 247億円 | 264億円 | 280億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 18億円 | 22億円 | 31億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | 11.3% | 8.3% | 8.9% | 11.7% | 11.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 10億円 | 15億円 | 23億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期から16億円増加して280億円となり、売上総利益も6億円増加しました。売上総利益率は微増したものの、営業利益は横ばいの30億円にとどまり、営業利益率はやや低下しました。これは成長に向けた体制強化などに伴う費用の増加が影響しているとみられます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 264億円 | 280億円 |
| 売上総利益 | 58億円 | 64億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.0% | 22.9% |
| 営業利益 | 30億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 11.4% | 10.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が8億円(構成比23%)、役員株式給付引当金繰入額が3億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別に見ると、エネルギー・環境事業が大幅な増収増益となり、全体の業績を牽引しました。同事業は廃炉関連機器などの需要を取り込み、利益率も19.2%と高い水準を示しています。一方、エンジニアリング事業と化工機事業は顧客の設備投資に対する慎重姿勢などの影響を受け、減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エンジニアリング事業 | 73億円 | 72億円 | 4億円 | 3億円 | 3.6% |
| 化工機事業 | 120億円 | 124億円 | 15億円 | 12億円 | 9.3% |
| エネルギー・環境事業 | 71億円 | 84億円 | 11億円 | 16億円 | 19.2% |
| 連結(合計) | 264億円 | 280億円 | 30億円 | 30億円 | 10.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 25億円 |
| 投資CF | -4億円 | -20億円 |
| 財務CF | -6億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.0%と、いずれもスタンダード市場の平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「努力・調和・忍耐」を社是に掲げ、「価値ある技術・製品・サービスを提供することによって顧客の期待とニーズに応え、健全な企業活動を通じて社会の発展に貢献する」ことを企業理念としています。また、製品安全に関する基本理念も定め、顧客と従業員、環境の安全確保に最大限の努力を注いでいます。
■(2) 企業文化
「顧客第一、人間尊重、変革への挑戦、法の遵守 ~すべては、すべてのために~」を行動指針としています。コンプライアンスの徹底や高い倫理観に基づき誠実に行動する企業文化の醸成を重要課題とし、製品の安全確保や労働安全衛生の維持など、人権と環境に配慮したサステナブルな組織運営を志向しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2027年度までの第14次中期経営計画において、「地球と未来を考える。一丸となって目指そう3・3・4!」というスローガンを掲げています。
・売上高:300億円
・経常利益:30億円
■(4) 成長戦略と重点施策
脱炭素社会の実現と事業成長の両立に向け、得意とする技術を応用・発展させる成長戦略投資を進めています。省エネ型装置の開発や原子力発電をサポートする機器の提供を通じ、代替エネルギーの普及促進に貢献します。さらに、品質マネジメントの深化や、技術伝承に向けた人材基盤の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「技術基盤」「営業基盤」「組織基盤」の強化を支える技術者の確保・育成を最重要課題と位置づけています。キャリア採用の強化による多様な人材の確保を進めるとともに、専門性の向上や資格取得を強力に支援する人事制度改革を実施し、従業員の能力開発を最大化できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.8歳 | 16.3年 | 8,563,040円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.6% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 50.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、時間外平均労働時間(16.8時間/月)、入社3年後定着率(87.5%)、平均有休消化率(73.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 設備投資動向に影響される市場環境リスク
同社の主な製品である化学機械装置やエネルギー関連機器はすべて受注生産であり、化学・繊維・医療等の主要顧客における設備投資動向の影響を強く受けます。国内外の経済情勢悪化等によって設備投資計画の延期や中止が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) プラントエンジニアリング特有の事業リスク
大規模で工期が長期間にわたるプラントエンジニアリングの案件では、不測の事態による納期・工期遅延や、労働者の確保困難によるコスト増加のリスクが内在しています。また、技術面や品質面での予期せぬ問題が発生した場合、収益を圧迫する要因となります。
■(3) 原子力分野における国策や外的要因のリスク
エネルギー・環境事業のうち原子力分野は、国家の政策による影響が大きく反映される領域です。事故の発生や世論の変化など、予測困難な外的要因によってエネルギー政策が変更された場合、関連機器の受注に影響を与え、同社の財務状況に変動をもたらす可能性があります。



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