ヒラノテクシード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒラノテクシード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒラノテクシードは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、塗工機、化工機、その他の産業用機械の製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績は、主力市場である北米での電気自動車関連の設備投資需要減速の影響を受け、売上高、経常利益ともに前期を下回る減収減益の厳しい決算となっています。


※本記事は、株式会社ヒラノテクシードの有価証券報告書(第102期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヒラノテクシードってどんな会社?


ヒラノテクシードは、塗工機や化工機などの産業用機械の製造と販売を行うメーカーです。

(1) 会社概要


1935年に平野金属として創業し、1939年より熱風乾燥機や化学機器などの設計・製造・販売を開始しました。1962年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1978年にはヒラノ技研工業を設立しました。その後、1989年に現在のヒラノテクシードへ社名を変更し、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で417名、単体で315名体制となっています。大株主の状況としては、筆頭株主として明治安田生命保険と、同社製品の販売など取引関係のある総合商社の伊藤忠商事が並び、第3位には同社の取引先持株会であるヒラノ会が名を連ねています。

氏名 持株比率
明治安田生命保険(常任代理人 日本カストディ銀行) 9.58%
伊藤忠商事 9.58%
ヒラノ会 9.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は安居宗則が務めており、社外取締役の比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
岡田薫 取締役会長代表取締役 1981年同社入社。設計部部長代理、取締役等を経て、2015年に代表取締役社長就任。ヒラノK&E代表取締役社長を歴任し、2026年4月より現職。
安居宗則 取締役社長代表取締役 1982年同社入社。総務部部長代理等を経てヒラノ技研工業代表取締役社長を務める。常務取締役などを歴任し、2026年4月より現職。
原昌史 取締役兼執行役員コーポレート部門管掌 1989年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年同社へ出向し2018年入社。取締役総務部長、執行役員総務部門管掌等を経て、2024年4月より現職。
大森克洋 取締役兼執行役員設計・開発部門管掌 1988年同社入社。2016年設計部長、2018年取締役設計部長等を経て、2023年5月より現職。
鶴谷信佳 取締役兼執行役員営業部門管掌 1991年伊藤忠商事入社。2019年同社へ出向し執行役員を務める。2024年に執行役員営業部門長に就任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、藤本万太郎(元新日本理化社長)、小西隆志(元東洋炭素社長)、大久保俊哉(元タキロンテック社長)、吉田郁子(エクスリンク法律事務所パートナー)、西田真規子(西田公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「塗工機関連機器」「化工機関連機器」「その他」の3つの事業を展開しています。

(1) 塗工機関連機器


二次電池電極、磁気テープ、包装用複合フィルム、粘接着テープ等の製造に用いるコーティング・ラミネーティング関連機器や各種乾燥熱処理装置の製造・販売、メンテナンスサービスを提供しています。主に電池や電子部品メーカーなどが顧客となります。

顧客に対する機器の販売代金やメンテナンス費用、各種工事費用を主な収益源としています。同事業の運営は主に親会社であるヒラノテクシードのほか、子会社のヒラノ技研工業やヒラノK&Eが行っています。

(2) 化工機関連機器


プラスチックフィルムや電子プリント基板、セラミックシート成形等の高分子化工機械のほか、真空成膜装置、各種乾燥熱処理装置などの製造・販売、およびメンテナンスサービスを提供しています。電子材料や産業資材の製造メーカーに向けて事業を展開しています。

各種機械装置の販売代金やメンテナンスにかかる費用を顧客から受け取り、収益を上げています。事業の運営は、同社を中心にヒラノ技研工業やヒラノK&E、アメリカにおける関連サービスの現地法人が連携して担っています。

(3) その他


染色整理機械装置や各種機器の部品製造、販売、および既存設備の修理や改造などの事業を展開しています。既存設備の継続利用やメンテナンスを必要とする様々な産業分野の企業を対象としています。

機器部品の販売代金や設備の修理・改造にかかる費用が主な収益源です。これらの事業運営は、主に子会社であるヒラノK&Eが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は順調に拡大を続け484億円まで成長しましたが、直近では顧客の設備投資計画見直し等の影響を受け、323億円へと減少しています。利益面でも過去最高水準から減少傾向にあり、経常利益率は10%台から3%〜5%台へと推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 379億円 424億円 469億円 484億円 323億円
経常利益 41億円 32億円 34億円 19億円 17億円
利益率(%) 10.9% 7.6% 7.2% 3.9% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 22億円 22億円 1億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は484億円から323億円へと大幅な減少となりましたが、売上総利益率は13.5%から17.5%へと改善しています。それに伴い、営業利益の減少幅は小幅にとどまり、営業利益率は3.5%から5.0%へと上昇しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 484億円 323億円
売上総利益 65億円 56億円
売上総利益率(%) 13.5% 17.5%
営業利益 17億円 16億円
営業利益率(%) 3.5% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が9億円(構成比22%)、給料及び手当が7億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力セグメントの塗工機関連機器は、電気自動車市場の減速に伴う北米主要顧客の設備投資計画見直しの影響等により、売上高が前期から大きく減少しています。一方、化工機関連機器は電子材料関連の成膜装置を中心として産業資材向け装置が堅調に推移し、増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
塗工機関連機器 420億円 253億円
化工機関連機器 46億円 55億円
その他 17億円 15億円
連結(合計) 484億円 323億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -7億円 47億円
投資CF -1億円 -8億円
財務CF -18億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「コーティング・ラミネーティング技術と乾燥技術及び走行制御技術を柱に、高精密・高精度の製造装置を市場に供給することで、社会の進歩発展に貢献すること」を基本理念として掲げています。各業界の技術革新に対応した最新機器を提供し、全てのステークホルダーの信頼と期待に応えることを行動指針としています。

(2) 企業文化


「最新の技術で最善の創造、最適な製品で最大の信頼」というポリシーを掲げ、事業を展開しています。顧客満足度の向上と環境エネルギー市場への拡販、コスト競争力の強化を最優先とし、営業、開発、製造からアフターサービスまでグループが一体となり、「より高い精度の製品を供給し続けること」を念頭に日々の活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長によって企業価値を向上させる観点から、株主資本効率と株主還元の適切なバランスを検討し、利益水準とキャッシュ・フローを重視した経営を進めています。

* 経常利益率10%以上の確保
* DOE3.5%または配当性向60%のいずれか高い金額を目安とした安定的かつ継続的な株主配当

(4) 成長戦略と重点施策


電気自動車(EV)需要に基づく二次電池塗工装置を中心とした生産能力向上重視の戦略から、各先端分野の薄膜新素材の開発に重点を置いた戦略へ転換を図っています。幅広い市場への納入実績を活かし、北米以外の地域やEV関連以外の分野への営業を強化するとともに、既存顧客への設備改造や移設、保守サービスの提案を推進し、安定的な収益力向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人と技術と未来を創る」というコンセプトのもと、多様化・高度化する社会ニーズに応え続けるため、従業員の育成に注力しています。次代を担う優秀な人材を確保するための継続的な採用活動に加え、国内外の大学機関との共同研究開発や計画的なOJT、各種研修等を通じた人材育成を積極的に実施し、技術者や経営層の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.3歳 14.4年 6,992,422円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.8%
男女賃金差異(正規雇用) 85.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 83.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働災害件数(3件)、一人当たり教育投資費(104,011円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新規設備投資の需要変動


同社の事業はグローバル経済下の設備投資需要に大きく影響されます。世界的な電気自動車(EV)需要の減速や各国の政策転換などにより顧客の投資計画が見直された場合、受注済み案件のキャンセルや不良債権の発生などが生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 材料・部品の調達コスト上昇


製造原価の約6割を鋼材や部材が占めており、電気部品等も外部調達に依存しています。急激な市場変化による原材料価格の高騰分を販売価格へ転嫁できない場合や、半導体不足などで部品の調達が遅延した場合、生産活動に支障をきたし収益が低下するリスクがあります。

(3) 特殊技術者の確保と育成


数年から数十年にわたり利用される特殊な製品を提供しているため、固有技術の継承と新技術の開発が不可欠です。労働市場の逼迫などにより専門性を持った優秀な人材の採用や育成が計画通りに進まず、従業員の大量退職などが発生した場合、事業展開が制約される可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。