アネスト岩田 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アネスト岩田 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アネスト岩田は東京証券取引所プライム市場に上場しており、圧縮機、真空機器、塗装機器・設備の製造販売を主要事業としています。直近の業績トレンドは、売上高は増加したものの、営業利益、経常利益などの利益面では減少となる増収減益で推移しています。


※本記事は、アネスト岩田株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アネスト岩田ってどんな会社?


アネスト岩田は、圧縮機や塗装機器などの産業用機械を製造販売するメーカーです。国内外に拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1926年に岩田製作所として創業し、1957年に岩田塗装機工業を設立しました。1973年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、1991年には世界初のオイルフリースクロールコンプレッサを発売しました。1996年に現在の社名であるアネスト岩田へ変更し、その後も海外拠点の設立やM&Aを通じて事業を拡大しています。

同グループは連結従業員数1,906名、単体従業員数610名の体制で事業を行っています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社である第一生命保険、第3位は取引先で構成される持株会となっており、機関投資家や関係者が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.40%
第一生命保険 5.74%
アネスト岩田得意先持株会 5.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は三好栄祐氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
三好栄祐 代表取締役社長執行役員 1993年入社。アネスト岩田コーティングサービス社長、経営管理本部長、常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。
大澤健一 取締役専務執行役員営業本部長 1990年入社。中国現地法人総経理、執行役員コーティング開発部長、専務執行役員コーティング事業部長などを経て、2025年4月より現職。
深瀬真一 取締役 1988年入社。執行役員真空機器部長、専務執行役員エアエナジー事業部長、代表取締役社長執行役員などを経て、2025年4月より現職。
浅井侯序 取締役 ブラザー工業常務執行役員、フジミインコーポレーテッド社外取締役などを経て、2020年6月より現職。
島本誠 取締役 ヤマハ発動機取締役上席執行役員、同社技術アドバイザーなどを経て、2023年6月より現職。
武田克己 監査等委員である取締役(常勤) 1989年入社。常務執行役員コーティング事業部コーティングシステム部長、常務執行役員営業本部長などを経て、2024年6月より現職。
松木和道 監査等委員である取締役 三菱商事理事、北越紀州製紙取締役などを経て、2020年6月より現職。
大橋玲子 監査等委員である取締役 公認会計士。大橋公認会計士事務所所長、監査法人八雲代表社員などを経て、2022年6月より現職。
白井裕子 監査等委員である取締役 弁護士。日本弁護士連合会監事、東京弁護士会副会長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、浅井侯序(元ブラザー工業常務)、島本誠(元ヤマハ発動機取締役)、松木和道(元三菱商事理事・指名委員長)、大橋玲子(公認会計士)、白井裕子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「欧州」、「米州」、「中国」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


日本国内において、圧縮機(コンプレッサ)、真空機器、塗装機器および塗装設備の製造販売を行っています。顧客は製造業全般にわたり、自動車産業や半導体産業など多岐にわたる分野へ製品を提供しています。

収益は、顧客への製品販売による対価が主な源泉です。運営は主にアネスト岩田が行っており、製造機能は同社の工場のほか、子会社が担う場合があります。また、販売機能についても主に同社が担っています。

(2) 欧州


ドイツ、フランス、イタリアなどの欧州地域において、圧縮機、真空機器、塗装機器の製造販売を行っています。各地域に見合った製品およびサービスを提供し、現地の市場ニーズに対応しています。

収益は、欧州地域の顧客への製品販売による対価から得ています。運営は、ANEST IWATA Deutschland GmbH、ANEST IWATA Europe GmbH、ANEST IWATA Strategic Center S.r.l.などの現地子会社が行っています。

(3) 米州


アメリカ、ブラジル、メキシコなどの米州地域において、圧縮機、真空機器、塗装設備の製造販売を行っています。特にアメリカでは圧縮機や塗装設備の製造拠点も有しており、現地市場への供給体制を整えています。

収益は、米州地域の顧客への製品販売による対価が中心です。運営は、ANEST IWATA Americas, Inc.、ANEST Iwata-Medea, Inc.などの現地子会社が行っています。

(4) 中国


中国において、圧縮機、真空機器、塗装機器、塗装設備の製造販売を行っています。現地の製造拠点からの供給に加え、販売網を通じて中国国内の需要に対応しています。

収益は、中国国内の顧客への製品販売による対価から得ています。運営は、阿耐思特岩田産業機械(上海)有限公司、杭州阿耐思特岩田友佳空圧機有限公司などの現地子会社が行っています。

(5) その他


台湾、インド、タイ、韓国、ベトナム、インドネシア、オーストラリア、南アフリカなどの地域において、圧縮機、塗装機器などの製造販売を行っています。各地域の特性に合わせた事業活動を展開しています。

収益は、各地域の顧客への製品販売による対価が主な源泉です。運営は、岩田友嘉精機股分有限公司、ANEST IWATA MOTHERSON Private Ltd.などの現地子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、事業規模は拡大していますが、利益面では変動が見られます。直近では売上高が過去最高を更新する一方で、原材料価格の高騰や販売費及び一般管理費の増加などが影響し、各利益段階で減少が見られます。利益率は10%台前半を推移しており、一定の収益性は維持されています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 356億円 423億円 485億円 534億円 544億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 43億円 56億円 70億円 80億円 71億円
利益率(%) 12.0% 13.2% 14.5% 14.9% 13.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 37億円 28億円 34億円 37億円 54億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し増収となりましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。売上総利益率は若干改善したものの、販管費の増加が利益を圧迫し、営業利益は減少しました。結果として、本業の儲けを示す営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 534億円 544億円
売上総利益 245億円 253億円
売上総利益率(%) 45.8% 46.5%
営業利益 62億円 59億円
営業利益率(%) 11.6% 10.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が21億円(構成比10.6%)、支払手数料が14億円(同7.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上が減少しましたが、欧州、米州、中国などの海外セグメントは総じて売上が増加しました。特に欧州の伸び率が高くなっています。国内市場が伸び悩む一方で、海外市場での事業拡大が進んでいる状況が見て取れます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
日本 182億円 183億円
欧州 87億円 93億円
米州 69億円 71億円
中国 114億円 115億円
その他 83億円 82億円
調整額 -120億円 -105億円
連結(合計) 534億円 544億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 68億円 97億円
投資CF -13億円 -33億円
財務CF -36億円 -39億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、100年企業に向けて、お客様の立場に立ち、誠心を込めて高性能かつ高品質な製品とサービスを提供する「活力と新規性に満ちた開発型企業」となることを経営ビジョンとして掲げています。また、世界No.1を目指し、革新的な技術・製品を生み出す「真のグローバルワン・エクセレントメーカ」になることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「社是」および「グループ経営理念」を中核とした「アネスト岩田フィロソフィ」を共有しています。コストダウンや改良型商品開発にとどまらず、市場のニーズを捉え、多様な企業とコラボレーションする柔軟性を重視しています。全従業員が一丸となり、誠心(まことのこころ)を持ってお客様満足度の最大化に努める文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は「Vision2035」の実現に向けた第一段階として、2026年3月期から3カ年にわたる新中期経営計画を開始しました。従業員の意識改革と行動変容を促し、変革への第一歩を踏み出す期間と位置付けています。2028年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:620億円以上
* 連結営業利益:61.7億円以上
* EPS:132.0円以上
* ROE:11.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業を軸としつつ、周辺分野や新規領域におけるM&Aを含むインオーガニックな「新領域の創出」と、海外重点地域を中心とした販路拡大に注力します。具体的には、海外市場を主戦場と位置付け、エリア特性に応じた成長戦略を策定します。また、新規事業開発やグローバル人材育成への投資を拡大し、「真の開発型企業」を目指します。

* M&Aや新規事業の推進
* DXの推進による業務効率化と新ビジネスモデル構築
* サプライチェーンの最適化と生産計画改革

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成方針として「変革と成長」を掲げ、「当事者であれ」「志を持つ、やり抜く」「外に目を向ける」という3つの姿を目指しています。多様な人材の活躍推進のため、通年採用やキャリア採用を強化し、適所適材の配置を進めています。また、「ダイバーシティ&インクルージョン」と「健康経営」を推進し、従業員の健康維持や働きがいのある職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 15.2年 5,821,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.4%
男女賃金差異(正規雇用) 73.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化


海外販売比率が高く、急速に変化する事業環境の影響を強く受ける可能性があります。既存市場・製品への固執による需要減少や、為替変動、各国法令・規制の変更などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新規事業開拓や事業ポートフォリオの多角化、サプライチェーン強化などで対応します。

(2) 製品の品質


製品に欠陥が生じた場合、多額の費用発生や信頼喪失につながり、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。厳格な品質基準の順守や品質保証部門による開発段階からの関与、ISO9001認証取得などを通じて未然防止に努めるとともに、不測の事態には迅速なリコール対応やサービス体制の強化を図っています。

(3) M&Aをはじめとした事業拡大


M&A後の統合プロセス不備や想定したシナジー効果が得られない場合、対象企業の業績低迷やのれんの減損などにより、業績に重要な影響を与える可能性があります。事前の慎重なデューデリジェンスやPMI(統合計画)の適切な実行、経営支援体制の構築によりリスク低減に努めています。

(4) 人材の確保


市場環境や事業戦略の変化に応じた採用・育成・評価制度の見直しが不十分な場合、必要な人材の確保が困難となり、企業価値向上施策の進展が遅れる可能性があります。通年採用やキャリア採用の強化、人事評価制度の再構築、ダイバーシティ・マネジメントの推進などにより、多様な人材の確保と定着を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。