トーヨーカネツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーヨーカネツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場し、物流システムや各種タンクの製造・販売を行う企業グループです。2025年3月期の連結業績は、物流ソリューション事業の大型案件やプラント事業の安定収益が寄与し、売上高605億円(前期比12.4%増)、経常利益44億円(同23.0%増)の増収増益となりました。


※本記事は、トーヨーカネツ株式会社 の有価証券報告書(第117期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーヨーカネツってどんな会社?

物流システムやエネルギーインフラ用タンクの製造・販売を主力とし、社会課題解決を目指す企業グループです。

(1) 会社概要

同社は1941年に東洋火熱工業として設立され、1950年に全溶接タンクの製造を開始しました。1969年に現社名へ変更後、1970年に東証一部へ上場しています。2002年には物流システム事業を分社化しましたが、2019年に同子会社を吸収合併しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

同グループは連結従業員1,218名、単体608名の体制で運営されています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行、第3位は機関投資家の日本生命保険相互会社となっており、信託銀行や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.96%
日本カストディ銀行(信託口) 3.71%
日本生命保険相互会社 2.65%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は大和田 能史氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
大和田 能史 代表取締役取締役社長 1985年入社。システム本部長等を経て、2022年より現職。
小林 康紀 取締役専務執行役員 1990年入社。ソリューション事業本部長等を経て、2025年より現職。
米原 岳史 取締役専務執行役員 1986年入社。管理本部経理部長、コーポレート本部長等を経て、2025年より現職。
兒玉 啓介 取締役(常勤監査等委員) 1982年入社。管理本部長、副社長執行役員等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、渡邉 修(元アークランズ代表取締役社長CEO)、牛田 一雄(元ニコン代表取締役会長)、岩村 修二(元名古屋高等検察庁検事長・弁護士)、酒井 由香里(元ユナイテッドアローズ社外取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「物流ソリューション事業」「プラント事業」「次世代エネルギー開発事業」「みらい創生事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 物流ソリューション事業

物流システムの製造・販売・メンテナンスや、同事業に特化したコンピューターシステムの設計・開発・販売を行っています。小売、卸売、生協、製造業などの物流センターや、国内空港の手荷物搬送システム向けに製品・サービスを提供しています。

収益は、顧客からのシステム納入代金やメンテナンス契約料などから得ています。運営は主にトーヨーカネツが行い、子会社のスクラムソフトウェアやToyo Kanetsu (Malaysia) Sdn. Bhd.も関与しています。

(2) プラント事業

各種タンクのメンテナンス業務および人材の派遣を行っています。国内製油所などを顧客とし、既設の原油タンク等の補修工事などを請け負っています。

収益は、顧客からの工事代金やメンテナンス料などから得ています。運営は主にトーヨーカネツが行い、子会社のTKKプラントエンジや関連会社の木本産業も関与しています。

(3) 次世代エネルギー開発事業

各種タンクの製造・販売を行っています。LNGプラントや製油所等向けに各種タンクを納入するほか、水素や燃料アンモニア向けタンクの開発も進めています。

収益は、顧客からのタンク製造・建設工事代金などから得ています。運営は主にトーヨーカネツが行い、海外ではPT Toyo Kanetsu Indonesiaなどが製造・販売を担っています。

(4) みらい創生事業

産業用設備・機器の製造・販売、建築請負、アスベスト等の環境調査・測定・分析、環境計測機器の保守管理などを行っています。また、B to B領域を主とするベンチャー企業への投資事業も展開しています。

収益は、機器販売代金、工事代金、調査・分析料などから得ています。運営は、トーヨーコーケン、マックスプル工業、トーヨーカネツビルテック、環境リサーチ、環境計測などが各事業を行っています。

(5) その他

複写・印刷業、事務用品・機器の販売、家具・家電や物流システム機器のリース、不動産の賃貸・管理などを行っています。

収益は、製品販売代金、リース料、賃貸料などから得ています。運営は主にトーヨーカネツ、トーヨーサービスシステムが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は変動しつつも直近では増加傾向にあり、利益面でも経常利益や当期純利益が堅調に推移しています。特に直近では売上高が600億円を超え、利益率も向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 436億円 592億円 474億円 538億円 605億円
経常利益 31億円 35億円 29億円 36億円 44億円
利益率(%) 7.0% 5.9% 6.1% 6.7% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 25億円 19億円 17億円 26億円 29億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、利益率も改善しています。営業利益も増益となり、本業の収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 538億円 605億円
売上総利益 118億円 132億円
売上総利益率(%) 21.9% 21.9%
営業利益 31億円 41億円
営業利益率(%) 5.7% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が26億円(構成比29%)、支払手数料が13億円(同15%)を占めています。売上原価は472億円であり、売上高に対する構成比は78%です。

(3) セグメント収益

物流ソリューション事業は大型案件の計上やメンテナンス事業の拡大により増収増益となりました。プラント事業も増収増益で、次世代エネルギー開発事業は海外案件の完工等で大幅増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
物流ソリューション事業 325億円 378億円 33億円 37億円 9.8%
プラント事業 94億円 103億円 7億円 10億円 10.1%
次世代エネルギー開発事業 15億円 22億円 -5億円 -4億円 -20.1%
みらい創生事業 99億円 98億円 8億円 9億円 8.9%
その他 4億円 4億円 1億円 2億円 43.4%
調整額 -3億円 -3億円 -13億円 -12億円 -
連結(合計) 538億円 605億円 31億円 41億円 6.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

トーヨーカネツは、成長に向けたM&A推進により関連費用が先行したものの、産業機械事業や環境事業の増収が寄与し、みらい創生事業は増益となりました。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上や棚卸資産の減少等により資金を得ましたが、売上債権及び契約資産の増加や法人税等の支払により、前年とは異なり資金が増加しました。投資活動では、固定資産や子会社株式の取得による支出がありましたが、投資有価証券の売却収入等により、支出額は前年よりも増加しました。財務活動では、短期借入金の純減少や長期借入金の返済、配当金の支払い等により、資金は大幅に減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -7億円 53億円
投資CF -10億円 -18億円
財務CF 31億円 -54億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、社是「わが社は 常にすすんで よりよきものを造り 社会のために奉仕する」を経営理念としています。また、経営ビジョンとして「革新的な技術と実行力で、社会課題を解決する「ソリューションイノベーター」」となることを掲げ、グループの持続的企業価値向上と社会の発展への寄与を目指しています。

(2) 企業文化

同社は、「ACTION FOR THE FUTURE 期待を超える実行力で、未来を支えるチカラになる」をスローガンに掲げています。社会課題解決に資するテーマ(気候変動対応、労働力不足対応)や事業競争力強化のための技術開発を重視し、サステナビリティ経営を推進する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標

同社は新グループ中期経営計画(2025~2027年度)において、2030年に向けた長期戦略の第2フェーズとして、以下の数値目標を掲げています。
* 2027年度 売上高:680億円
* 2027年度 営業利益:43億円
* 2027年度 ROE:8%

(4) 成長戦略と重点施策

「未来に向けた成長基盤の確立」を基本方針とし、事業構造の再構築、生産性向上、人材力強化を柱としています。物流ソリューション事業では新領域への拡大や標準化、プラント事業ではメンテナンスの安定収益確保、みらい創生事業では環境・防災領域の拡大を図ります。また、次世代エネルギー開発センターを新設し、大型液化水素タンクの技術確立を目指します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

性別や国籍等を問わず優秀な人材を登用し、自ら学ぶ意欲を支援する育成方針を掲げています。階層別研修や専門研修に加え、自己啓発支援も充実させています。また、多様な人材の定着に向け、在宅勤務や育児休業取得支援等の職場環境整備、エンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 15.1年 7,295,768円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 67.5%
男女賃金差異(正規) 68.5%
男女賃金差異(非正規) 49.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(56.3%)、年次有給休暇取得率(71.3%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動に関する影響

脱炭素社会への移行により、原油等のタンク需要が減少し、業績に影響する可能性があります。これに対し、同社は大型液化水素タンクの開発や、水素・アンモニア需要への対応を進めています。また、Scope1・2のGHG排出削減目標を掲げ、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指しています。

(2) プロジェクトの遂行に関するリスク

物流センターの大型化や短納期化に伴い、予期せぬ計画変更や同時進行による調整などで想定外のコストが発生する可能性があります。また、海外からの部材調達の滞りや資機材価格の高騰、工事従事者の不足などが事業遂行に影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 人材の確保・育成に関する影響

人材の流出や採用コストの上昇は事業活動に影響を与える可能性があります。同社は多様な人材の採用、女性活躍推進、働きやすい職場環境づくりに取り組み、人材の定着を図っています。また、エデュケーションセンターでの技能強化なども実施しています。

(4) 受注競争の激化による影響

主力事業は受注型産業であり、厳しい競争により採算が悪化する可能性があります。物流ソリューション事業では標準化や内製化による価格競争力強化、プラント事業では技術力を活かした受注活動や海外展開を進めています。技術開発の遅れは競争力低下につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。