平河ヒューテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

平河ヒューテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

平河ヒューテックは東京証券取引所プライム市場に上場し、機器用電線・加工品や車載用ケーブル、特殊チューブ等の開発・設計・製造・販売を主力事業としています。直近の業績は売上高が384億円、営業利益が44億円と大幅な増収増益を達成しており、伝送・放送機器や医療分野などで安定した成長を続けています。


※本記事は、平河ヒューテック株式会社 の有価証券報告書(第85期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 平河ヒューテックってどんな会社?


同社は電線・加工品や電子・医療部品の開発・製造・販売を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1948年9月に平河電線として設立され、電線の製造・販売を開始しました。1990年10月に現在の平河ヒューテックに社名変更しています。その後、海外拠点や子会社の拡充を進め、2006年5月に東証二部、2007年9月に東証一部へ上場し、2022年4月には東証プライム市場へ移行しました。直近では2025年6月に吉野川電線を子会社化し、事業の多角化と生産体制の強化を図っています。

現在の従業員数はグループ全体で2,321名、単体では351名です。大株主については、筆頭株主ならびに第2位株主は資産管理業務などを行う信託銀行・海外金融機関であり、第3位も同様にファンド等が保有する形態となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.47%
NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE IEDP AIF CLIENTS NON TREATY ACCOUNT (常任代理人 香港上海銀行東京支店) 4.73%
BRIDGESTREAM LIMITED, AS TRUSTEE OF AXC STRATEGIC OPPORTUNITIES DIRECTOR KH ALID OMARI ITON (常任代理人 立花証券) 4.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は篠祐一が務めており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
篠祐一 代表取締役社長 1996年同社入社。管理本部長、執行役員社長などを経て、2017年より代表取締役執行役員社長。2025年よりケーブル事業部長を兼務。
隅田和夫 取締役会長 1971年同社入社。代表取締役社長などを経て、2014年より取締役会長。同年よりヒューテックグループ代表を兼務。
目黒裕次 取締役 1975年同社入社。総務部長、管理本部長、代表取締役社長などを経て、2017年より取締役。


社外取締役は、戸田哲郎(元戸田工業技監)、山本夕子(馬場・澤田法律事務所勤務)、髙宮勝也(元三菱電機常務執行役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電線・加工品」「電子・医療部品」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電線・加工品


スーパーコンピュータやサーバ・ストレージ用、医療機器用、産業機械用などの各種ケーブルやワイヤーハーネス、電源コードなどを製造・販売しています。IoTやAIの進展により高い伝送特性と品質が求められるマーケットの顧客を対象としています。

製品の販売を通じて顧客から収益を得ています。運営は同社が行うほか、国内子会社の四国電線や吉野川電線、新潟電子が製造・販売を担い、海外では中国やベトナム、フィリピン、メキシコなどの各種子会社が製造・販売・販売支援体制を構築しています。

(2) 電子・医療部品


情報通信や放送のデジタル化に対応した光中継器やスイッチングHUB、EV用普通充電器などの電子デバイスと、医療用特殊チューブや関連加工品を製造・販売しています。ネットワークの高速化や医療機器の高度化ニーズに応える製品群です。

製品の提供により顧客から収益を得ています。デバイス機器・電子部品は同社のほか中国やメキシコの子会社が製造・販売を行い、特殊チューブは同社やフィリピンの子会社が製造し、アジア各拠点の子会社が販売を担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、転売品および不動産事業などを展開しています。

これらの事業から収益を得ており、グループ内の経営資源や資産を有効活用してサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、需要の変動や事業環境の影響を受けつつも、全体として売上規模を拡大させています。特に直近の事業年度では、車載用ケーブルやエネルギー産業関連ケーブルの好調に加え、吉野川電線の新規連結効果も寄与し、大幅な増収増益を記録しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 278億円 322億円 293億円 308億円 384億円
経常利益 20億円 35億円 21億円 26億円 46億円
利益率(%) 7.3% 10.9% 7.1% 8.3% 12.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 14億円 8億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益が増加しており、利益率も大きく改善しています。付加価値の高い製品の国内生産と量産品の海外生産という分業体制が機能し、高い収益性を確保する構造が定着しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 308億円 384億円
売上総利益 72億円 99億円
売上総利益率(%) 23.5% 25.9%
営業利益 23億円 44億円
営業利益率(%) 7.4% 11.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が17億円(構成比31%)、研究開発費が7億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の電線・加工品セグメントでは、車載用ケーブルやエネルギー産業関連ケーブルが好調に推移したほか、新規子会社の連結も寄与し大幅な増収増益となりました。電子・医療部品セグメントもネットワーク機器の好調などにより増収増益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
電線・加工品 262億円 335億円 22億円 44億円 13.2%
電子・医療部品 46億円 49億円 9億円 9億円 18.6%
その他 0.3億円 0.3億円 0.2億円 0.2億円 84.6%
連結(合計) 308億円 384億円 23億円 44億円 11.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.8%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 39億円 36億円
投資CF -22億円 -19億円
財務CF -9億円 15億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界水準の製品を創り出すことにより、持続的な成長を遂げ、永遠の存在を目指す」こと、「国際社会に共生する一員であることを意識するとともに、法規等を遵守し、環境保全に努力する」ことを基本理念としています。すべての関係者に調和のとれた満足を提供し、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「互いの価値を認め合う人々の集団であり、熱意をもって向上・革新へ挑戦していく」ことを基本理念の一つに掲げています。多様な視点や価値観の存在が持続的な成長に不可欠であると認識し、ジェンダーや国籍を問わず主体性をもって新たな挑戦ができる人材を尊重する風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年5月に中期経営計画(FY2026〜FY2030)「Plan 600」を策定しました。AIやIoTなど高速データ処理の需要増を背景に、ハイパフォーマンスケーブルを基軸とした市場開拓を進める方針です。

* 2030年度売上高:600億円以上
* 2030年度営業利益率:12%以上
* 2030年度ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業である車載事業、医療機器事業、産業機器事業に経営資源を集中して拡大を図るとともに、成長が期待できるエネルギー産業関連ケーブルの収益性を高めコア事業へと育成します。また、事業環境に対応した生産拠点のグローバルネットワーク化や、サプライチェーンを意識した生産フローの見直しに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長には多様な視点や価値観が必要不可欠であると認識し、ジェンダーや国際性、職歴等の属性を問わず、管理職への登用を進めています。各事業戦略に必要な人材の獲得並びに事業戦略底上げのための人材の多様化に努め、重点分野のビジネスユニットにおいてマネジメント力の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 20.7年 5,850,700円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.6%
男女賃金差異(正規雇用) 62.4%
男女賃金差異(パート・有期) 40.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の比率(44.8%)、グループの管理的地位にある労働者に占める女性の比率(17.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化と価格競争

製品の多様化・短命化や、海外品の台頭による価格競争の激化、小ロット・短納期要請の強まりがあります。同社は製造・販売・技術の一体化や海外生産への移管によるコスト削減を進めていますが、顧客の購買政策の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 銅および石油製品の価格変動

電線ケーブルの主たる原材料である銅の販売価格は市況価格を反映して決定される商習慣があり、価格変動リスクが存在します。石油化学製品等も安定供給に努めていますが、中長期にわたる市況価格の上昇が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 各国における法的規制

国内外において許認可、安全保障、租税、環境など様々な法的規制を受けており、これらを遵守できない場合や新たな規制が課せられる場合には事業継続に影響が及びます。特に電気用品安全法の受検漏れが生じた場合、出荷停止や信用失墜につながる恐れがあります。

(4) 外国における事業リスク

中国、メキシコ、フィリピン等に複数の生産拠点を有しており、投資・金融・輸出入に関わる法制の変更や税制変更が生産・事業運営に影響を及ぼすリスクがあります。また、為替レートの変動も現地通貨建ての債権・債務や輸出入取引を通じて業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。